視座
老人医療とコンパニオン・アニマル
武内 章二
1
1岐阜大学医療技術短期大学部
pp.223
発行日 1995年3月25日
Published Date 1995/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408901573
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高齢化社会の進む中で,老人の人口は増加の一途をたどり,整形外科領域においても,特に老人を対象とする疾患は増加しているのが現状である.
現代医学はめざましい進歩をとげ,新しい診断,治療法の開発とともに高齢者に対しても積極的な手術療法が行われ,画期的な治療効果もあげてきた.しかし,一方ではその妥当性が危惧されるような実態も最近見聞されるようになってきた.例えば手術療法についてみると,患者はあたかもエスカレーターのようなマニュアルに乗せられ,また末期に近い悪性腫瘍の患者もaggressive instrumentation治療や,スパゲッティ療法によりベッドにしばられ,職業的介助者に囲まれ,次から次へと行われる最新的な医療行為に,治癒への意欲を期待するよりは,むしろ恐怖感をいだいて闘病生活を送っている患者も決して少なくない.患者のQOLのための近代的な治療がむしろ患者の心を疎外し,次第に自閉的な状況に追込んでいるのも事実である.
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