胃と腸 8巻2号 (1973年2月)

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 近年,診断学の進歩と共に早期胃悪性リンパ腫の報告もみられるに至った.しかし,多くの臨床的・病理的研究にもかかわらず,未だ癌との鑑別診断は必ずしも容易とはいえない.消化管の悪性リンパ腫には,消化管に原発するものと,全身病変の部分症として消化管にも浸潤するものとの二種類がある.この両者は,少くとも臨床的にはかなり異なる病態像を示すが診断的立場から比較した報告は少ない.

 著者らは,消化管の悪性リンパ腫病変の一般的臨床像,頻度,ならびにそのX線診断について検討すると共に,原発性病変と全身性病変の部分症としての消化管病変にっいても文献的考察を加えながら比較してみた.

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 胃に認められる悪性リンパ腫は,胃に原発する場合の他に,全身に拡がった悪性リンパ腫症の一つの局所変化として胃に発生する揚合もある.また胃原発の悪性リンパ腫が,他臓器に転移したり,全身性の悪性リンパ腫症に発展する場合もある.それゆえ胃に認められた悪性リンパ腫が原発性か否かにっいて臨床的に判定する事が必要である.悪性リンパ腫の中には放射線治療や化学療法によく反応するものが多く,胃に認められる悪性リンパ腫も同様であり,この点は胃癌の場合と異っている.本症の治療に当っては胃のみならず,他臓器,特にリンパ節への病変の拡がりの程度に基づいて,胃切除の適応を決定しなければならず,また術前もしくは術後の放射線および化学療法の併用を考慮せねばならない.従って胃の悪性リンパ腫を臨床的に診断する事は,正しい治療方針を確立するための前提である.従来より,胃の悪性リンパ腫と胃癌との鑑別は臨床的にはむずかしく,胃切除後,組織学的にはじめて診断が明らかにされることが多かった.しかしX線,内視鏡検査および直視下胃生検法の進歩と共に,胃の悪性リンパ腫の臨床的診断が,従来よりも容易になってきた.

 以下,虎の門病院における胃悪性リンパ腫の臨床診断の現状を述べ,内視鏡および生検による診断上の問題点を考察したい.また全身に拡がった悪性リンパ腫症の胃病変に対して,胃切除を行なわず,化学療法により著しく軽快した症例の経過を述べ,胃の悪性リンパ腫の治療上の問題についても検討したい.

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 悪性リンパ腫Malignant lymphomaとは,リンパ細網細胞組織由来の悪性腫瘍の総称で1).一般的にリンパ肉腫Lymphosarcoma,細網細胞肉腫Reticulum cell sarcoma,ポジキン氏病Hodgkin's diseaseを包括している.したがって,このような腫瘍の発生は当然のことながらリンパ腺に最も頻度が高いのであるが,リンパ腺以外のリンパ細網組織lymphoreticular tissueを部分的に含む臓器にも発生する.Hellwig(1947)2)は,全悪性リンパ腫130例のうち2/3がリンパ腺起源で,他1/3のうち扁桃・鼻咽腔が26例,消化管19例で,残りはそのほかの臓器に分散していて発生頻度には優劣が認められないと述べている.また,Freemanら(1972)3)によるリンパ腺以外の悪性リンパ腫の発生部位の比較では,消化管原発なかでも胃原発の頻度が最も高く,次いで扁桃・鼻咽腔の順となっている.このように,悪性リンパ腫のリンパ腺あるいはリンパ装置が主たる臓器(Waldeyer's ring)以外の好発部位は消化管であるといえる.

 一方,消化管の悪性腫瘍ということで条件づけられた集合の組織型別頻度は,癌腫の頻度が圧倒的に高く,次いで悪性リンパ腫の順であるが,たかだか1~4%占めるにすぎない4)

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 癌研外科で1946年から1971年までの問に切除された胃細網肉腫は36例であった.早期胃癌の定義に準拠して,細網肉腫が粘膜下層までに限局したものを早期胃細網肉腫とみなすと,36例中4例がそれにあたる.

 今回,術前に進行癌と考えられて切除された早期胃細網肉腫1例について報告する.

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 われわれは,比較的短期間の間に,きわめて著明な変化をした早期胃細網肉腫の症例を経験したので報告する.

症例

 患 者:T.N. 42歳,男,会社員.

 既往歴:22歳のときに肺結核に罹患し,3年間治療した.

 嗜 好:27歳のときより毎日酒1合,煙草20本.

 現病歴:昭和45年夏頃より,腹部膨満感および停滞感があった.

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 胃の原発性形質細胞腫はきわめて稀なもので,Vasiliu(1939)が第1例目を報告して以来,34例が報告されているにすぎない.本邦では伝田ら1)および吉井ら12)の2例のみである.著者らは本邦第3例目の,胃の原発性髄外性形質細胞腫を経験したが,これは,早期胃癌類似の肉眼型を呈しており,しかも悪性腫瘍性増殖と考えられた.このような肉眼的形態を示し,かっ悪性と考えられる例は,現在まで報告がないと思われるので報告しあわせて多少の文献的考察を加える.

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 小腸原発の腫瘍は良性悪性ともに発生頻度は少く,田井1)は全消化管腫瘍の0.025~0.09%と述べている.中村2)は癌研での1946年から1968年までの23年間の腸管手術例中の悪性腫瘍は560例で,そのうち小腸悪性腫瘍は25例に過ぎず,胃,大腸に比較して非常に少い事を報告している.また本邦における小腸の癌と肉腫の頻度は略々同数であるが,肉腫のうち半数は平滑筋肉腫であるので,悪性リンパ腫の頻度はきわめて少い事になる2).消化管における悪性リンパ腫の分布について,Wood3)は小腸は胃,大腸の約2倍,M.S.Naqvi4)et al.は190例中胃116例(61%)小腸56例(30%)大腸18例(9%),Walter,J.Loehr5)et al.は胃63%,小腸25%,大腸10%と報告しており,全消化管の悪性リンパ腫のうち小腸は25~50%の頻度と考えられる.

 われわれは小腸に原発した悪性リンパ腫4例を経験しているが,全症例の病歴,他覚所見および手術または剖検所見等を一括して表1に示し,手術で切除可能であった症例1および2について詳述する.

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 消化管の悪性腫瘍は,その大部分が癌腫であって,肉腫は悪性腫瘍中4%(Irvine)で比較的稀なものとされている.その内でも胃では細網肉腫および平滑筋肉腫が多く,我国では胃淋巴肉腫の報告はきわめて少ない.また大腸肉腫も同様の傾向を有している.我々は最初に左舌根扁桃に原発と思われる腫瘤を見,組織学的に淋巴肉腫の診断で,コバルト照射により治癒し,その約2年後に消化管症状を現わし,胃および盲腸部の腫瘤を発見され,その手術2年後の現在も元気で生存中の胃および盲腸部淋巴肉腫症例を経験したので報告する.

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 腸管に発生する悪性リンパ腫は比較的稀な疾患で,その過半数は回盲部に発生する.我々の経験した腸重積を起した回盲部細網肉腫を報告する.

症例

 患 者;K.K.,58歳,男.

 主 訴:上腹部痛.

 現病歴:約2カ月前より食事と無関係に軽い上腹部痛が起こるようになり,近医にて薬を内服していたが軽快せず,胃透視,胃カメラで特に異常所見がないので,慢性膵炎の疑で本院に紹介されてきた.この間にも上腹部痛は徐々に増強してきたので精査の目的で,昭和37年1月4日入院した.

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症例

 臨床経過

 31歳男性.扁桃腺炎を時々おこす以外に著患を知らない.昭和44年9月下旬,チクチクする腹痛を臍付近に感じたが,下痢や発熱なし.この症状は3~4日おきに繰り返されたが,11月23日夜間,腹部中央のキリキリする鋭い痛みを自覚し非血性の胃内容を嘔吐,赤黒い血液の混じた下痢が始まった.11月24目本院受診.初診時平熱,腹部は軟で腫瘤を触れず,貧血なく全身のリンパ腺に腫脹はない.急性腸炎の診断の下に行った細菌検査で,サルモネラ,シゲラ,結核菌は塗沫,培養とも陰性であった.11月28日の経口法消化管造影で限局性腸炎と診断し,サラゾピリン投与を開始.しかし症状の改善なく,発症来7kg体重減少あり,12月18日より副腎皮質ホルモンの投与を開始したが効果なく,12月29日腹痛強度となり昭和45年1月8日入院した.入院時腹部所見として右下腹部に腫瘤を触れ軽い圧痛がある.腫瘤は短時間でその硬度,大きさ及び位置に変化を見せ,腹痛の強い時に硬度の増す傾向があり,ブスコパン1~2A静注で硬度を減じた.ステロイド並に種々の抗生物質投与によっても症状の改善は見られず,1月16日,1月23日の各X線検査でも,病態は不変ないし進行性を思わせた.この間体重は更に7kg減少,貧血,低蛋白血症が出現したため,保存的治療の無効な限局性腸炎を老え,手術適応として手術準備を行いながら行った2月20日の注腸造影で回盲部腸重積の診断が得られた.ステロイドの離脱を開始,この間3月6日の大腸ファイバースコープ検査にて,重積先進部に腫瘍を認め二次性腸重積症と診断し3月10日開腹手術を行った.手術中の病理迅速診断で悪性リンパ腫と診断され,重積部を含んだ右半結腸切除術並にリンパ腺廓清が行われた.

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 われわれは,注腸X線検査によって回盲部癌と診断し,ファイバーコロノスコーピーによる生検で術前にmalignant lymphomaと確診しえた症例を経験したので報告する.

症例

 患 者:55歳,女性.

 主 訴:右下腹部痛.

 家族歴:特記すべきことなし.

 既往歴:1952年,虫垂切除.

 現病歴:1972年8月下旬より右下腹部に鈍痛出現.とう痛は持続性で排便とは無関係であった.同時期に下痢が出現した.

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 近年胃疾患診断学の進歩は目ざましく,胃癌ではより平坦なより小さな病巣の発見診断が課題となっている.筆者らは胃X線テレビ検査で発見し,X線精密検査,内視鏡検査,胃生検で確定診断し得た前庭部前壁の比較的小さな早期癌と,X線精密検査に仰臥位空気適量二重造影像で胃角部後壁に限局したarea異常を問題とし,Ⅱbの存在を疑って手術し,病理組織学的診断にて微小Ⅱcと確かめられた重複早期胃癌の1例を経験したので,X線像特に,二重造影像と切除胃標本とを対比させ,また本症例の微小胃癌の発見診断の動機となったarea異常としてX線描写されたⅡcと類Ⅱbの2症例の二重造影像も提示して,若干のX線像を中心とした考按を加えて報告する.

胃と腸ノート

Colitis cystica profunda 小林 世美
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 近年,欧米の文献にColitis cystica profundaなる疾患の症例報告がしばしば登場する.私の知る限り,日本では,昨年末の日本内視鏡学会東海地方会での私の報告が最初のようだ.従って訳語も辞書になく,かりに“深在性囊胞性大腸炎”と訳しておこう.大腸疾患研究での先進国である欧米でも,その報告は40に足りないほどなので,珍らしいには違いないが,粘膜下に存在するCystを見落したり,あるいはその所見を腺の異所性という理由で,腺癌とみなすこともありうるので,この数字は実数より幾分少ないのではないか.目本でも十分注意すれば,もっと発見されるのではないかと思うので,ここでその症例と文献的な知識を御紹介しよう.

 患者は64歳女子.主婦.病歴は,昭和45年6月に腹痛と便秘を発現,そのまま放置したが,11月に裏急復重が現われた.昭和46年1月に粘血便をみ,2月愛知県がんセンター外来を受診した.家族歴,既往歴では特記すべきことなし.3月10日入院.便潜血反応は強陽性だが,貧血はなく,その他の検査所見は異常なかった.外来時の大腸透視では,直腸深部からS状結腸にかけて多数のポリープ様陰影が存在し,潰瘍性大腸炎の偽ポリープが疑われた.3月16日の大腸ファイバースコピーでは,肛門から50cmまでスコープを挿入し,50cmから30cmにわたって多数の隆起を認めた.それらの表面粘膜は正常で,粘膜下隆起の所見を呈していた.空気送入による内腔の開きは乏しく,直腸粘膜は全体に肥厚し,粗大結節状を呈していた.40cmの深さで,2個の隆起から生検を行った.隆起表面の粘膜は,あたかも饅頭の皮を剥ぐようにはがれ,その下に白色の粘液を認め,この隆起がCystであることが判明した.組織像は,腸の腺上皮に乏しく,再生型の上皮と,粘膜固有層の細胞浸潤がみられた.粘膜下層に押しっぶされたような管腔を認め,強拡大でみると,それらは上皮細胞を持ち,Cystであることが分った.再生上皮の見られること,細胞浸潤が全体に強いことから,炎症性の産物を想像させる.治療はSalicylazosulfapyridine6錠を使用.症状は1週間で軽快,8日間の入院で退院.退院後の方針は,薬物療法の他,低残渣食の摂取,6カ月毎のチェックをすすめた.7月20目の大腸ファイバースコピーでは,著明な隆起はみられず,生検でもCysticな所見を得なかった.12月2日の大腸透視では,直腸深部およびS状結腸の病変は軽快し,当初軽かった上行結腸に残存しているが,自覚症状はほとんど消失した.

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〔第9例〕N.N. 70歳,男.

主 訴:心窩部痛.

理学的検査所見:特に異常なし.

胃液酸度:ガストリン法で最高総酸度22mEq/L.

胃カメラ所見:図1に示すように,胃角小彎に不整形の活動期の潰瘍がみられる.潰瘍の辺縁ならびに,周辺には,出血,白苔の付着,びらん等多彩な所見がみられる.胃角は強い変形を示し,前壁および後壁から潰瘍の手前で,強い陥凹を示している.集中している粘膜ひだは,虫喰状中断や階段状のヤセを示している.

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 大腸粘膜における強い炎症性変化の楯の両面とみなすべき炎症性ポリープと粘膜萎縮は,ともに慢性期の潰瘍性大腸炎および他の炎症性疾患の特徴的な所見であり,通常は同一症例において両方の所見がみられることが多い.

 炎症がまだ活動性の場合には炎症性ポリープをとりまく周囲粘膜に炎症所見が強いのが普通であるが,炎症がおさまるにしたがって,その部は萎縮像を示すようになる.その後,再燃がない場合にはさきにも述べたように,粘膜の萎縮像が主体をなし,炎症性ポリープは散在性に残存するかあるいはまったく消失するに至る.さて,過去2年余の間に消化器病センターおよび関連病院で長廻が内視鏡的に観察した炎症性ポリープは次の通りである.

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 オリンパス製直視型Fiberscope GIF type D(以GIFD下と略す)は,我国の胃十二指腸内視鏡機器がこれまで側視型を中心として来ただけに,画期的なものであり,ことに上部消化管全体を連続的に観察できるUpPer GI endoscopeとしての評価は高い.

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 胃粘膜は周知のように胃底腺領域と幽門腺領域の2領域からなり,その境界部は腺境界,境界領域,移行帯などと呼ばれている.両域の粘膜は組織学的にも機能的にも異なるためこの領域の状態を老慮することなく胃液分泌動態や慢性胃炎を正確に把握することは難しい,また,胃潰瘍や胃癌の発生および経過も各腺領域あるいは腺境界との関係から検討され,興味ある事実が報告されている.このように重要な問題を含む胃底腺,幽門腺領域を非手術材料で臨床的に認識できればと望むのは,ひとり筆者らのみではないであろう.

 内視鏡的に両域を識別しようとする試みはすでに2,3なされている.竹本らは通常の胃内視鏡的観察から,幽門腺領域と体部腺領域との境界を指摘し,これを萎縮境界と称している.確かに幽門腺領域の粘膜は胃底腺領域のそれに較べて薄く,やや黄白色調で,しばしば血管像が透見できるなど,粘膜の萎縮性所見が目立っことから,その大略の範囲を知ることができるし,その境界部を観察することも少くない.しかしながら,その境界部の所見が非常に軽微であるために,観察の距離や方向などに左右され,必ずしも全例,全域にわたって認められるわけではない.

印象記

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 外務省並びにO.T.C.A.の派遣にて,昨年5月および11月の2回,中南米諸国に於て内視鏡と早期胃癌についての講習会を行なったので,最近の彼地について2,3報告する.

(1972年5~6月)

 訪問地:ブェノスアイレス,サンチャゴ,リマ.

 アルゼンチンおよびチリーでは現在内視鏡に従事している医師の技術向上という要請により,各1週間ずっ講習会を行なった.ブェノスアイレスは隣りのチリーほど胃癌が多くないためか,食道・胃・十二指腸に関しほぼ同じような技術向上を要求され,そのため三者同時に診断可能なG.I.F-Dのテクニックが最も受け入れられた,印象的だったのは,今回の私の講習会を企画されたブェノスアイレス大学のJ.Segla教授は,V型カメラの時代から噴門病変を重点的に診断し,G.I.F-Dでは一般に難しい噴門附近の操作も器用に使いこなしている.

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欧文目次

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 本邦において最もポピュラーな癌であるはずの胃癌とそれをめぐる胃疾患について,病理形態学に関するモノグラフは皆無にひとしい.本書は,目常胃癌の診療にたずさわる臨床医にとっても,また胃癌の病理に興味をもっ基礎研究者にとっても,必読の書であり,刊行が待たれていた.著者・中村恭一博士の並々ならぬ御努力に深甚な敬意を表する.

 胃癌の発生に関しては,潰瘍癌をはじめとして歴史的に論争が繰り返されてきたことは本書にも詳しく記されているが,著者はその歴史を背景に加えて,特に副題にもあるように,胃癌の成長に従って現われる修飾像が最小であるべき微小癌病巣の知見を軸として,胃癌組織発生の解析を試みている.殊に,胃底腺の加齢的な非可逆の退縮を綿密な組織検索にもとついて実証し,それを基盤として,電顕レベルの細胞学的形態に裏打ちされた所見から,胃癌の組織発生論に肉迫している.

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 永らく待望されていた「電子顕微鏡による細胞組織図譜」(山田英智・内薗耕二・渡辺陽之輔総編集)の第2巻(総頁305頁)が,このたびようやく上梓のはこびとなり,かつ,これによって全6巻が無事完結を見たことは真によろこばしい.

 現在各国で出版されている組織学の教科書や参考書を見亘すと,その中の相当数の頁をさいて電顕像を挿入していることは,米国をはじめ,どこの国でも同じであるが,なおその電顕像は数において甚だ不十分であり,しばしばわれわれの失望するところとなった.かかる意味で,ある程度われわれの期待にこたえてくれたJ.A.G.Rhodin著An Atlas of Ultrastructure(1963)は電顕図だけで167頁に達し,当時その内容に目を見張ったものだが,さてこのアトラスにしても,総論の細胞から各論の感覚器に至る組織学全書であったことを思えば,消化器と呼吸器の二系統だけを扱った上記の細胞組織図譜第2巻が,いかに大著であるかを理解できるであろう.

編集後記 城所 仂
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 今回は消化管悪性腫瘍のなかで大変頻度が少ない悪性リンパ腫をとりあげることになった.この疾患は剖検例をもととして病理の面からは,かなりまとまった仕事があるが,臨床面から多数例を集めてその臨床像を浮き彫りにした業績は少ない.今回比較的集中的に,今口の進歩した診断技術を駆使して細かい検討のできた胃悪性リンパ腫の報告のみならず,その他の腸管の悪性リンパ腫までを含めてその臨床的な問題点を提起していただけた点大変読者にとって有益なものが多いと信じる,尚読んでいただけばわかることであるが,その病像の複雑な現われかたや急速に短期間に肉眼像の変化する点,さらにまた悪性リンパ腫の予後についても従来比較的良いとされていたものの,癌とそれほど差のあるものでなさそうである等の今後の検討に待つべき幾つかの問題点が示されたことも大変興味あるものであろう.

基本情報

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胃と腸
8巻2号 (1973年2月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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