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書評「胃癌の病理―微小癌と組織発生」
谷口 春生
1
1大阪府立成人病センター病理
pp.215
発行日 1973年2月25日
Published Date 1973/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403108366
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本邦において最もポピュラーな癌であるはずの胃癌とそれをめぐる胃疾患について,病理形態学に関するモノグラフは皆無にひとしい.本書は,目常胃癌の診療にたずさわる臨床医にとっても,また胃癌の病理に興味をもっ基礎研究者にとっても,必読の書であり,刊行が待たれていた.著者・中村恭一博士の並々ならぬ御努力に深甚な敬意を表する.
胃癌の発生に関しては,潰瘍癌をはじめとして歴史的に論争が繰り返されてきたことは本書にも詳しく記されているが,著者はその歴史を背景に加えて,特に副題にもあるように,胃癌の成長に従って現われる修飾像が最小であるべき微小癌病巣の知見を軸として,胃癌組織発生の解析を試みている.殊に,胃底腺の加齢的な非可逆の退縮を綿密な組織検索にもとついて実証し,それを基盤として,電顕レベルの細胞学的形態に裏打ちされた所見から,胃癌の組織発生論に肉迫している.
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