胃と腸 47巻1号 (2012年1月)

今月の主題 腸管三次元CT診断の現状

序説

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はじめに

 Helical CTの発達により腸管の三次元表示が可能となり,Viningら1)はこの方法を応用してCTC(CT colonography)を報告した.その後,多列検出器型CT(multi detector-row CT ; MDCT)が開発され空間画像分解能は飛躍的に向上し,消化管を内腔側から三次元的に,より詳細に評価することが可能となった.

 近年,CT colonographyはX線被曝を除けば大腸内視鏡検査よりも非侵襲的であり,新しい大腸の検査法として大腸癌スクリーニングなどでその有用性が評価されている2)~8).また,最近では,潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease ; IBD)に対してもその臨床応用が試みられている.

 一方,CT enterographyは長くて屈曲や重なりの多い小腸を目的臓器とするため,病変の描出能,診断能はCT colonographyに比べ良好とはいえない.しかし,64列MDCT装置の出現によって,その臨床応用への試みが益々盛んとなり9)~16),小腸X線造影検査,バルーン小腸内視鏡検査,カプセル内視鏡検査に加えて小腸疾患アプローチの手段のひとつとなりつつある.

 本号では,経験豊かな各施設によって,腸管の腫瘍性病変や炎症性病変の診断におけるCT enterography/colonographyの現況と問題点が熱く論じられるものと期待する.

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要旨 CT colonographyは大腸の画像診断法として,欧米ばかりでなくわが国においても広く認知され,具体的な臨床診断へ導入されるようになった.最近では術前診断のみならず,大腸癌スクリーニングへ導入する施設が増加しており,一般的な大腸検査法としての地位を確実に築きつつある.デジタルCT画像のメリットを生かし,従来の消化管診断からは予想不可能な大腸の画像表示方法が開発され,実際の臨床診断に応用されるに至った.これまで研究されてきたコンピュータ支援検出,tagging前処置やelectronic cleansingの精度も向上し,画期的な新しい大腸の画像診断システムが構築されている.関連各社から様々な画像処理アルゴリズムを搭載した新しい画像ワークステーションが次々と登場し,フルデジタル画像処理による大腸CT三次元診断が現実のものとなった.既にCT colonographyによる大腸癌スクリーニングは世界的な傾向となり,今後,わが国の大腸内視鏡診断における経験を生かすことにより,真に有効性のあるCTC診断システムが構築されていくと予想される.

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要旨 CTC(CT colonography)は,腸管を送気ガスによって拡張し,得られた腹部CT画像から,腸管内のガスと腸管壁のコントラストを3次元画像表示することによって行われる大腸画像診断法である.かねてより,わが国においても多くの施設で研究がなされ,各種学会においてトレーニングコースなどのイベントも盛んに行われるようになってきた.しかしながら,検査に対する前処置法や腸管の拡張法などの技術は適正な画像診断を行ううえで重要な項目であり,これらの技術革新は今後のCTC普及に欠かせない要素の1つである.“高精度”で,“受容性の高い”良質な技術となり得るCTCの前処置法,腸管拡張法と撮影法について概説する.

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要旨 CT colonographyの大腸腫瘍の存在診断における有用性について自験例をもとに検討した.大きさ5mm以上の病変の描出能は良好であるが,表面型腫瘍は隆起型腫瘍に比べて有意に低いため診断精度のさらなる向上が求められる.大腸癌術前検査として,注腸X線検査はCT colonographyで代替可能である.造影CT colonographyによる大腸癌術前シミュレーションは,腹腔鏡下大腸癌手術において,安全かつ迅速に施行するために必要不可欠な術前情報を提供する.大腸癌による内視鏡不通過例に対して閉塞部の口側腸管の検査法として有用性が高い.盲腸まで内視鏡を挿入できない全大腸内視鏡検査不成功例では深部大腸の精査は注腸X線検査に替えてCT colonographyで行ってもよい.腸管外病変のスクリーニングとしても有用性が高い.今後,CT colonographyは大腸癌診断法の有力なmodalityとしてわが国でもニーズが高まることが予想される.

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要旨 大腸癌の予後および治療法の選択は深達度と密接に関係している.CT colonographyでは,MDCTの技術革新に伴って,短時間で仮想内視鏡像や仮想注腸像,MPR像といった様々なpost processing imageの作成が可能となった.一方,大腸内視鏡や注腸造影検査においては,これまでに培われたそれぞれの診断基準が存在する.CT colonographyにおける大腸癌の深達度診断においては,得られた様々なpost processing imageに,従来のモダリティで培われた診断基準を用いて,総合的に診断することで的確な深達度診断が可能と考える.

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要旨 近年,マルチスライスCTの普及と解析ソフトの精度向上により,大腸癌スクリーニングにCTC(CT colonography)が臨床応用され,精度の高い検査法として認識され始めている.また,CTCには検査の客観性や再現性があり,標準化しやすい点や苦痛の少ない低侵襲性な検査という点からスクリーニング法としての潜在能力も高い.当センターではCTCによる大腸癌スクリーニングを導入し,その精度は感度91.4%,特異度92.4%,陽性反応的中度69.6%,陰性反応的中度98.3%,正診率92.3%,癌発見率0.21%と良好であった.CTCは大腸癌スクリーニングとして,その役割を十分果たすことのできる“新しい大腸癌検査法”になり得ると考えられる.

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要旨 炎症性腸疾患の画像診断は,X線造影検査,内視鏡検査が主体であり,CTは腸管外病変の評価などに補完的に用いられる検査だった.Crohn病による炎症病変は腸管だけではなく,腸管膜,リンパ節あるいは膿瘍形成など腸管外にも及ぶ.これらを同時に描出できる方法として,経口造影剤を併用するCT enterographyが欧米では広く用いられている.簡便かつ有効な方法だが,アフタなどの軽微な粘膜病変は描出できないため,内視鏡検査との組み合わせが必要である.炭酸ガスで腸管を拡張させるCT colonographyは重症の炎症性腸疾患には腸管損傷の可能性があり,その使用には慎重を要するが,診断に有用な画像を得られるため,今後の臨床応用が期待される.

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要旨 近年,大腸癌診療におけるCTC(CT colonography)の需要は高まり,術前診断のみならず大腸癌スクリーニング検査として導入する施設が増加している.前処置法や撮影機器のさらなる開発・改善に伴い,CTCの診断精度は向上し,今後さらなる検査の標準化,普及が進んでいくと考えられている.従来より,CTCの診断精度を保ち,かつ効率的な診断環境を整備するため,コンピュータ支援検出(computer-aided detection ; CAD)の研究開発が欧米を中心に積極的に進められてきた.CTCにおけるCADは優れた病変検出能を有しており,病変の見落としの防止や読影時間の短縮が可能である.大腸癌スクリーニング検査としてCTCが普及するに従い,読影医の負担軽減や読影医間での病変検出能の差を軽減するために,CADの併用が必須となるであろう.

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要旨 側方発育型腫瘍(laterally spreading tumor ; LST)27病変のCTC(CT colonography)での描出能に関して検討した.従来より平坦型病変のCTCでの描出は困難であるとされているが,CTCでの描出を規定する因子として,腫瘍高2mm以上,腫瘍径20mm以上が有意であった.また,腺腫と比較して癌は有意に高率に描出された.臨床的には治療が必要な病変が描出される傾向にあり,CTCに関する機器・技術・知識の進歩により今後臨床においていっそう重要な役割を果たすようになると考える.

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要旨 CTE(CT enterography)は侵襲性が低く,Crohn病の初期診断および経過観察に有用な検査である.しかし,一方でCTEは縦走潰瘍や敷石像といった粘膜病変の描出能はX線造影検査や内視鏡検査に劣るとされている.今日ではCrohn病の治療は内視鏡的に診断されるmucosal healingに治療目標が置かれるようになりつつある.今後mucosal healingを目指していく治療戦略が主流となるとすれば,それを正しく評価できる,より低侵襲な検査法が重要となってくる.筆者らが現在取り組んでいるCTEにCAD(computer-aided diagnosis)技術を用いたCrohn病小腸画像診断について紹介する.

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要旨 患者は73歳,男性.めまいを自覚し,近医で脾彎曲部に狭窄性大腸癌を指摘され,当科を受診した.大腸内視鏡検査では脾彎曲部の大腸癌による狭窄のため,口側は検査できなかった.注腸X線検査では脾彎曲部に強い狭窄を呈する病変が認められ,口側の横行結腸に病変は認められなかった.CTCによるvirtual endoscopyで,脾彎曲部の狭窄病変の他に横行結腸中央部の病変が新たにIIa+IIc型の病変として描出された.術中内視鏡検査で,virtual endoscopyと近似した内視鏡像が得られ,SM癌が強く疑われたため,2つの病変をともに切除する形で結腸左半切除術を施行した.主病変は深達度pSSの進行癌であり,副病変は深達度pSMの早期癌であった.CTCは狭窄性大腸癌の口側の検索に有用である.

画像診断道場

十二指腸隆起性病変 赤松 泰次
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症 例

患 者:50歳代,男性.

主 訴:検診要精査(自覚症状なし).

既往歴:特記すべきことなし.

現病歴:人間ドックで上部消化管内視鏡検査を受けたところ,十二指腸下行部に異常を指摘された.

病理学的所見:異常所見なし.

血液検査所見:異常所見なし.

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はじめに

 松井(司会) きょうは遠方からも,残暑が厳しいなかをお集まりいただきましてありがとうございます.

 本日は「胃と腸」の歴代の編集委員長にお集まりいただきまして,「胃と腸」のこれまでを振り返ってみようということが1つのねらいです.なぜ,このような座談会が企画されたかといいますと,購読者のためにこれまで出版された「胃と腸」を創刊号より全部電子化して,閲覧できるようになりまして,それは大変有意義なことではないかということです.

私の一冊

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 「私の一冊」をと指定されて困った.

 「胃と腸」はどれをとってもすべてもう一度読み直してみたい文章でいっぱいだからである.私が特に関心をもっていたのは「早期胃癌の肉眼分類」が決定され普及されていった頃のことであったから,10年か20年はかかっている.早期胃癌の経験・研究などがいずれにしろ世界の一流を超えたと思われるが,その発展普及に大きな力を発揮してきたのが,その「肉眼分類」の決定と普及であると信じているからであり,そうなると一冊では済まなくなるからである.とりあえずここに絞りに絞って次の5つにしてみたがどうであろうか.

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1概念,病態

 癌とその周囲へのリンパ球浸潤が高度である胃癌を指し,「胃癌取扱い規約第14版」で特殊型に亜分類された.胃癌全体の1~4%の頻度と報告され,リンパ球浸潤は粘膜下層を中心に髄様増殖を来すため粘膜内癌例はない1).“癌細胞数より浸潤リンパ球数のほうが多い”との組織学的定義が推奨される2).in situ hybridizationでEBV(Epstein-Barr virus)感染が認められることが多く,その頻度は70~90%と報告され,陽性の場合はほぼすべての癌細胞核にEBVが検出されることから,前癌期ないしは発癌初期に感染したと推論される3).リンパ球浸潤の免疫学的意義やvirus感染の発癌へのかかわりは解明されておらず,EBV陰性例に関してはさらに不明な点が多い.男性に多く,腫瘍は近位胃に局在することが大半である

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はじめに

 Helicobacter pylori(H. pylori)非感染の胃が本来の正常な胃である.幽門輪の周囲に幽門腺粘膜が,食道胃接合部から数mmには噴門腺が存在する以外は胃底腺粘膜である1)2).H. pylori感染により炎症が生ずると胃底腺粘膜は肛門側より萎縮が発生し,偽幽門腺化生粘膜に置き換わる.また,口側も噴門腺粘膜が拡がり,胃底腺粘膜は前庭部,体部小彎から消褪し始める1)2).正常の胃底腺粘膜では酸,ペプシンを分泌するための導管として,円形の腺開口部が密に配列している(Fig. 1a, c).腺窩上皮の腺窩は円形の腺開口部に一致する(Fig. 1a, b, d).一方,幽門腺粘膜の腺窩は円形の開口部は形成せず,横に溝状に拡がっている(Fig. 1e~h).蠕動が激しい幽門腺領域では粘膜の伸び縮みが必要であり,腺窩は粘膜の伸縮のために畳み込まれたような構造になっている(Fig. 1e~h).

海外だより

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 2010年11月23日から2011年1月20日まで,オックスフォード大学Green Templeton College(GTC)とJohn Radcliffe(JR)Hospital消化器科に短期留学いたしました.1990年にドイツ連邦共和国ハノーバー市にありますハノーバー医科大学消化器科(このときは,広島市とハノーバー市が姉妹都市であるとのことで,両大学間の人事交流にて),1992年には,当時の文部省在外研修にて米国ミネソタ州ロチェスターにありますメーヨクリニックGI Research Unitに留学しておりますので,まさかこの歳になり,もう一度留学の機会に恵まれるとは思っていませんでした.オックスフォード大学GTCと私が勤務しております川崎学園が姉妹校の関係にあり,広い分野で人事交流を行っており,そのプログラムの一環として留学の話があり,教室の先生方の快い協力のもと,勉強に行く機会を得ることができました.

 歳を取ってからの留学であり,見聞録といたしましたが,実際には聞いただけで見てはいないことや確認していないこと,さらに私の英語能力での理解ですので,間違っているあるいは誇張されている所があるかもしれません.あくまでも個人の感想として,お読みいただき,関係者の方々に失礼がありましたらこの場を借りましてお詫び申し上げます.

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欧文目次

「今月の症例」症例募集
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 「今月の症例」欄はX線,内視鏡写真など形態学的所見が読めるようにきちんと撮影されている症例の掲載を目的としています.珍しい症例はもちろん,ありふれた疾患でも結構ですから,見ただけで日常診療の糧となるような症例をご投稿ください.

第18回「白壁賞」論文募集
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 「胃と腸」編集委員会では,故白壁彦夫先生の偉業を讃え,「白壁賞」を設け,優秀な研究・論文を顕彰しております.今回は「白壁賞」の論文を下記の要領で公募いたしますので,奮ってご応募ください.英文誌に発表された消化管の形態・診断学に関する論文が応募の対象となります.

早期胃癌研究会 症例募集
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早期胃癌研究会では検討症例を募集しています.

画像のきれいな症例で,

・比較的まれな症例,鑑別が困難な症例.

・典型例だが読影の勉強になる症例.

・診断がよくわからない症例.

学会・研究会ご案内

投稿規定

編集後記 山野 泰穂
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 本誌「胃と腸」の年頭を飾る号は,これまでの長い歴史の中で「胃」に関するテーマで企画されることが慣例となっていたが,本号は編集委員会の同意を得て10年ぶりにその慣例を打ち破った.しかもX線二重造影画像でも,近年めざましく発展してきた内視鏡画像でもなく,全く新しいCTにより得られたデジタルデータを駆使したバーチャルリアリティともいうべき診断学である.これまでアナログの世界で培ってきた診断学に,この新しい手法を用いて小腸・大腸疾患にどこまで迫れるのか,優れている点は何か,あるいは課題は何かを冷静に読み解いてみたい.

 序説から各論文,主題研究,関連症例を通じてCT colonography(CTC)/enterographyの欧米も含めた現状,実際が紹介された.検査時間の短さ,処理能力の高さ,多彩な画像表示は,これまでの検査と異なり群を抜いて優れている.さらにソフトウェア,ワークステーションの進化,炭酸ガス持続注入装置による腸管拡張法,前処置としてのtaggingの確立,electronic cleansingの精度向上,コンピュータ支援診断(computer-aided detection ; CAD)による優れた病変検出能に関して詳述され,腫瘍性病変に限らず炎症性腸疾患も含めて管腔内の所見はもちろんのこと,これまでの検査手法では得ることができなかった腸管外の所見も同時に得られることが示され,目を見張るものがあった.

次号予告

基本情報

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胃と腸
47巻1号 (2012年1月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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