胃と腸 46巻9号 (2011年8月)

今月の主題 若年者の胃・十二指腸病変の特徴

序説

若年者の胃・十二指腸病変 九嶋 亮治
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一般的に“若年者”とは

 一般的に若年とはどの年齢層を指すのであろうか.広辞苑によると“若年”は“年が若いもの.青年.年が若いこと.若齢”と説明されている.医学書院の医学大事典には若年の項目はない.Googleで“若年”を検索するとWikipediaの“青年”にヒットする.それによると,“青年とは統一の基準はないが,一般的には,おおむね15~39歳までの年齢を指すとされる.高校生・大学生の学齢を含む15~22歳ごろまでを指すことや,少年法でいう少年期を過ぎた20~29歳ごろまでの男女を指すこと,厚生労働省の一部資料(健康日本21など)では15~25歳ごろまでとすることもある.若年者雇用の定義では青年層に相当する15~34歳ごろを若年者としている”とのことである1)

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要旨 まず進行癌を含めた30歳未満の若年者胃癌65例と,41歳以上の胃癌115例の臨床病理学的事項と癌周囲粘膜の慢性胃炎の程度,次に30歳未満の粘膜内胃癌18例(全例低分化腺癌)と41歳以上の低分化粘膜内胃癌42例の背景粘膜を比較した.背景粘膜はthe updated Sydney system guidelines(1994)に従い,組織学的に評価した.結果,若年者には,女性(69.2% vs. 36.5%,p<0.001),低分化腺癌(84.6% vs. 65.2%,p=0.004)が多かった.癌周囲粘膜の比較では,若年者のH. pylori感染率は高く(81.5%vs. 20.9%,p<0.001),より多くの好中球浸潤を認め(p=0.028),固有腺の萎縮や腸上皮化生の程度は軽かった(p<0.001).粘膜内胃癌の背景粘膜の比較では,体部のH. pylori菌体密度が若年者で有意に高く(p=0.0012),体部,前庭部ともに腸上皮化生の程度は低かった(p<0.01).また,若年者の前庭部粘膜にリンパ濾胞過形成を認めた(p=0.005).以上から,若年者胃癌は,女性,低分化腺癌が多く,背景に腸上皮化生を伴わず,前庭部のリンパ濾胞過形成を示すH. pylori感染性胃炎(鳥肌胃炎)を伴うことが多いことがわかった.

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要旨 H. pyloriによる慢性活動性胃炎により進行した胃粘膜萎縮が胃癌の発生母地となることが明らかとなってきた.その過程には数十年単位の自然経過を要するが,日常臨床では20,30歳代の若年者胃癌症例をまれに経験する.若年者胃癌の特徴を検討するために当院における50歳未満の若年者症例と75歳以上高齢者症例の臨床病理学的特徴の検討を行った.その結果,若年者は高齢者に比べてM領域発生,未分化型,内視鏡的軽度・中等度胃粘膜萎縮が多かった.早期胃癌では陥凹性病変が多く進行癌ではスキルス胃癌が多かった.症状を有してから診断されることが多く,高齢者よりも進行した状態で発見されることが多かった.

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要旨 29歳以下に発生する胃癌は全胃癌例中0.1%程度のまれな病態であり,そのほとんどが未分化型癌の組織像を呈する.その発症には,中高年の胃癌と同様,Helicobacter pylori感染が重要な役割を果たす.症例対照研究では,若年者胃癌におけるH. pylori感染のodds比は23.5と算出され,中高年胃癌におけるodds比より高値となる.若年層においてH. pylori感染者は徐々に減少傾向にあるが,たとえ若年者であっても感染者には萎縮性胃炎が既に存在し,胃癌の発生母地となる.特に結節性胃炎症例では,体部胃炎を伴い未分化型胃癌の高危険群として臨床的に重要である.

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要旨 H. pylori陽性消化性潰瘍患者における30歳未満の若年者と中高年者の違いについて,山形県における大規模臨床研究と北海道大学病院における内視鏡と組織学的検討の成績を用いて検討した.若年者の消化性潰瘍は中高年者と比較して,H. pylori陽性率が高く,NSAIDs起因性潰瘍など薬剤性潰瘍が少ない.若年者は前庭部優勢胃炎が多く,十二指腸球部に潰瘍発生が多い.一方,中高年では凡胃炎から体部優性胃炎が多く,潰瘍は胃角部から胃体部に発生する.除菌治療後の潰瘍再発率は高齢男性,深掘れ潰瘍,糖尿病などで有意に高く,これらの症例では除菌治療後も再発に注意が必要である.

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要旨 近年,若年健常者のH. pylori感染率は過去30年間で著しく低下しており,組織学的胃炎も有意に軽減し,H. pylori陽性者における胃炎の分布は,欧米に多い幽門部優位型胃炎が増加していた.また,H. pylori陽性若年者の内視鏡的胃炎の特徴は軽度な萎縮性胃炎と鳥肌胃炎であった.若年者H. pylori胃炎の典型である鳥肌胃炎の内視鏡像は,顆粒状~結節状隆起が前庭部から胃角部を中心にほぼ均等に分布し,拡大観察にて隆起の中心には陥凹した白色斑点が認められるのが特徴である.また,鳥肌胃炎は若年者胃癌のリスク群でもあり,合併する胃癌の特徴は胃体部に発生する未分化型胃癌であった.将来的な胃癌予防のため,若年者のH. pylori陽性胃炎はできるだけ早期の除菌治療が望ましいと考えられた.

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要旨 学校検診で行った尿中Helicobacter pylori(H. pylori)抗体陽性者のうち,信州大学附属病院を受診した高校生30人を対象にして若年者の内視鏡所見を検討した.全例に対して上部消化管内視鏡検査を行い,同時に生検組織を採取して培養法と鏡検法で二次検診を行った.30例中24例にH. pylori感染を認め,内視鏡所見は鳥肌胃炎とclosed typeの萎縮性胃炎の頻度が高かった.生検組織所見では,1例を除いて腸上皮化生を認めなかった.これに対して,他の6例はH. pylori感染はみられず,そのうち4例は内視鏡所見,生検組織所見とも正常であった.一方,残りの2例はopen typeの萎縮性変化がみられ,血清中H. pylori抗体価が陽性であったことからH. pylori既感染と考えられた.H. pyloriに感染している若年者の胃粘膜萎縮の所見は,日常診療で遭遇するH. pylori陽性の中高年者と比較して明らかに軽度であり,胃癌予防のためには胃粘膜の不可逆的変化が起きる前に除菌治療を行うべきであると考えられた.

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要旨 小児のH. pylori胃炎の内視鏡所見では104例中98例(94%)に結節性胃炎(鳥肌胃炎)が認められた.結節性胃炎は幽門前庭部一面に特異なびまん性の小結節状の隆起が認められ,体部や十二指腸にまで及ぶこともあった.そして,結節の中心に陥凹を認めた.結節状変化は病理組織所見から,単核球浸潤と大型のリンパ濾胞の増生によるものと考えられた.結節性胃炎98症例のうち,19例は十二指腸潰瘍を合併していた.また,胃潰瘍合併3例のうち2例はH. pyloriの初感染により急性胃粘膜病変を呈した.除菌治療によって結節性変化は6か月以後には消退した.病理組織学的にリンパ濾胞数,炎症細胞浸潤の有意な改善を認めた.

若年者の上部消化管病変 清水 俊明
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要旨 若年者の上部消化管病変は,中高年者とは異なった病態を示すことが少なくない.さらに若年者の中でも,いわゆる15歳未満の小児と20歳代の若年成人との間には,やはり大きな差がある.小児期では胃癌の頻度は極めて低いこと,H. pylori感染の頻度は10%弱であり多くは結節性胃炎を呈することなどの違いがある一方で,NSAIDsやストレスによる胃・十二指腸病変は同様に存在する.小児期における内視鏡検査の難しさが,正確な病態把握を困難にしているものと思われるが,小児期から成人に至るまでの消化管免疫機構の変化を十分に把握することが,両者間に存在する相違点の解明に必要と考えられる.

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要旨 患者は25歳,女性.心窩部痛を主訴に近医を受診し,前庭部前壁に進行胃癌を指摘され,加療目的で当院に紹介となった.当院外科で幽門側胃切除術(D2郭清)を施行された.病理診断はType 3,33×30mm,por2-sig>muc,T3(SS),N0,Stage IIAであった.術後補助化学療法は行わず,外来で経過観察中で,現在まで再発は認めていない.若年者の胃癌は頻度が低いが,未分化型の腺癌がほとんどである.また,鳥肌胃炎はまれな病態であるが若年女性に多く,胃癌の高危険病変とされている.

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要旨 患者は19歳,女性.主訴は心窩部痛,吐下血.前医で上部消化管内視鏡検査にて出血性胃潰瘍と診断されプロトンポンプ阻害剤(proton pump inhibitor ; PPI)を投与されていたが,胃潰瘍の再発を認め,当院に紹介となった.胃角から前庭部の前壁から小彎にかけてひだの集中像を伴った陥凹性病変を認めた.ひだは一部に融合を伴い,陥凹面は発赤した粘膜面を呈し,所々に白苔が付着した不整な潰瘍を認めた.生検でMALTリンパ腫と診断され,Helicobacter pyloriが陽性であった.CTやガリウムシンチにてLugano分類のI期と診断し,除菌療法を行った.二次除菌で除菌され,3か月後には症状は消失し,上部消化管内視鏡検査,組織検査にて寛解した.その後に再発は認めていない.

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要旨 患者は25歳,女性.妊娠初期から心窩部不快感があり,嘔吐と体重減少を伴うようになったため,上部消化管内視鏡検査を施行した.前庭部に狭窄があり,一部潰瘍を伴っていた.生検で印環細胞癌を含む低分化腺癌を認め,4型胃癌と診断した.CT検査では前庭部に全周性の腫瘍と幽門上リンパ節腫大を認めた.全身状態が安定した後に手術を行った.腹膜播種を認めたが,幽門狭窄を来していたため幽門側胃切除術を施行した.妊娠中に胃癌を合併する頻度は非常に低く,発見時には大半は進行している.妊娠中の胃癌に対する化学療法の報告は少なく,他臓器癌の報告を参考にして化学療法を施行した.休薬期間に合わせて妊娠37週に出産し,児は低出生体重児であったが,呼吸循環動態や骨髄抑制を含めた採血異常は認められなかった.分娩後2週間後に化学療法を再開する.

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要旨 患者は23歳,女性.心窩部痛を主訴に当科を受診した.胃X線造影検査で,胃体上部から胃角部の前後壁に広範な不整形陥凹面を認めた.陥凹面の内部には淡いバリウム斑を伴う平皿状の透亮像を多発性に認めた.内視鏡検査で同陥凹面は褪色調であり,その内部には大小不同で円形から楕円形を呈する取り残し様の島状粘膜が敷石状に多発していた.陥凹面をNBIで観察すると萎縮性胃炎のパターンを認めた.陥凹面からの生検で,粘膜上皮下にcollagen bandの肥厚を認め,粘膜固有層内に慢性炎症細胞浸潤を認めたことから,collagenous gastritisと確診した.本症は極めてまれな疾患であり,その病態病因は依然不明であるが,過去の本邦報告例と同様に本例もH. pylori陰性であり,原因不明の胃粘膜萎縮による陥凹面の形成がその本態と考えられた.

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 〔患者〕 60歳代,男性.

 〔主訴〕 胃病変精査加療.

 〔既往歴・家族歴〕 特記事項なし.

 〔X線検査所見〕 胃穹窿部から体上部大彎に粘膜ひだの集中を伴う広範な淡い陰影斑を認めた.陰影斑の輪郭は不明瞭であり,粘膜ひだは陰影斑の辺縁で,なだらかに消失していた.病変部は浅く平滑な陥凹であるが,中央部には大小不同の顆粒状陰影が不均一にみられ,病変部の伸展性は良好であった(Fig. 1).

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 1982年4月のある日,1通の封書が師の竹本忠良山口大学第一内科教授(当時)のもとに届いた.虎の門病院放射線部で活躍しておられた中島哲二先生からであった.内容は,「最近の論文に,Kammrötungを櫛状発赤と訳した論文が多い.これは誤訳であるから,今のうちに何とかしていただきたい」とあり,その理由の記載とGutzeit KおよびHenning Nの著書の該当部分がコピーされ同封されていた.当時,教授が非常に多忙であったため,返事のための資料収集などを仰せつかり,お手紙やコピーをお預かりした.

 中島先生のお手紙では,Gutzeit K,Henning N,Bruel Wの著書からは,胃炎の項でKammとTalが頻繁に出ており,KammはFaltenkammの略であり,Faltentalに対している.したがって,Kammは,櫛ではなく谷間のTalに対する峰・頂・山の背・稜線の訳をとるべきである,と記されていた.

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要旨 患者は60歳代,女性.検診を目的に施行した胃内視鏡検査で胃前庭部に粘膜下腫瘍を指摘され,当科を受診した.胃X線検査ならびに胃内視鏡検査で胃前庭部大彎に径2cm大の立ち上がりのなだらかな粘膜下腫瘍を認め,表面性状は平滑であった.EUSでは,第4層内に11×10mm大の境界明瞭な腫瘤を認め,内部エコーは高~低エコーが散在し不均一であった.腹部CT検査では腫瘤が造影早期相から強く濃染された.腹腔鏡下胃局所切除術にて切除した標本の病理診断では,胃固有筋層内のglomus腫瘍と診断した.胃glomus腫瘍は前庭部に好発し,EUSで内部エコーは固有筋層より高く不均一で,造影CT検査で早期から強く濃染することが鑑別診断に有用と思われた.

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要旨 患者は75歳,女性.心筋梗塞の既往をもち抗凝固薬内服中であった.血便が出現し,大腸の潰瘍病変精査加療のため当科を紹介され受診した.内視鏡検査で下部回腸から全大腸の広範囲に多発する類円形や楕円形の深掘れ潰瘍を認め,肛門・会陰部周囲の皮膚潰瘍を併発していた.腸管Behçet病を疑いインフリキシマブを導入したところ著効し,維持投与により粘膜治癒を含めた寛解維持が可能であった.

形態診断に役立つ組織化学・分子生物学

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はじめに

 消化管壁に発生する間葉系腫瘍のうち,臨床的に問題となって切除されるものの多くはGIST(gastrointestinal stromal tumor)である.平滑筋腫瘍や神経鞘腫がそれに続き,まれなものとしてdesmoid,solitary fibrous tumor,inflammatory myofibroblastic tumorなどもある.筆者ら1)がGISTの腫瘍発生機構にc-kit遺伝子の機能獲得性突然変異が極めて重要な働きをしていることを1998年に発表したことを契機に,GISTの病態解明は急速に進展し,それらの成果は現在の進行GISTに対するimatinib,sunitinibによる分子標的治療などの形で臨床に応用されている2)3)

 本稿では,GISTと関連の深いc-kit遺伝子と血小板由来増殖因子受容体α(platelet-derived growth factor receptorα; PDGFRA)遺伝子について説明した後,GISTにおける遺伝子変異のタイプ・頻度,さらには遺伝子解析がGISTの確定診断や予後の推定とどのように関連しているのかについて記載し,最後にGISTの悪性度診断について概説する.

胃と腸 図譜

食道乳頭腫 小澤 俊文 , 和知 栄子
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1 概念,病態

 食道乳頭腫は上皮性の食道良性腫瘍である.臨床的にしばしば遭遇し,病的な意義は薄く,一部の症例のみが報告されている程度である.食道乳頭腫のみではほとんどが無症状のため,内視鏡検査時に偶然発見されている.男女比は2 : 1で男性に多く,比較的中高年者に認められる1).好発部位は食道下部とされ,平均7mmと小さなものが多い.発見頻度は0.0722)~0.44%1)との報告がある.病因として,逆流性食道炎や裂孔ヘルニアに合併することが多いことから,酸逆流による慢性刺激が考えられている.また,1980年代になりHPV(human papilloma virus)の関与も報告されているが,現在では否定的とされる.

学会印象記

第97回日本消化器病学会総会 仲瀬 裕志
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 第97回日本消化器病学会総会は,日比紀文会長(慶応義塾大学医学部消化器内科)主催のもと,「日本消化器病学のグローバリゼーションを目指して─from Bench to Bedside─」をメインテーマに2011年5月13~15日の3日間,京王プラザホテルにおいて開催された.

 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の影響があり,開催中止も一時考慮されていた.このような状況の中でも,日比会長の日本の消化器病の進歩を止めないというお考えのもと,総会は開催された.

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欧文目次

「今月の症例」症例募集
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 「今月の症例」欄はX線,内視鏡写真など形態学的所見が読めるようにきちんと撮影されている症例の掲載を目的としています.珍しい症例はもちろん,ありふれた疾患でも結構ですから,見ただけで日常診療の糧となるような症例をご投稿ください.

早期胃癌研究会 症例募集
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早期胃癌研究会では検討症例を募集しています.

画像のきれいな症例で,

・比較的まれな症例,鑑別が困難な症例.

・典型例だが読影の勉強になる症例.

・診断がよくわからない症例.

学会・研究会ご案内
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早期胃癌研究会

地震の影響による諸事情を鑑みまして,7 月まで休会とし9 月度から再開いたします.

※「胃と腸」大会(4 月20 日)は8 月16 日に延期いたします.

日時:8 月      →通年通り休会

   9 月21 日(水)→開催予定(会場調整中)

連絡先:エーザイ株式会社 医薬マーケティング部消化器領域室(川村・奥井)

TEL 03-3817-3843 FAX 03-3811-2284

投稿規定

編集後記 春間 賢
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 医学の分野だけでなく,日常生活でもよく若年者という言葉を使う.10歳代あるいは20歳代の若者を意味して用いることが多いが,本特集号を企画するに当たり,若年者の明確な定義はなく,これまでの多くの報告でも,様々な定義で用いられていることがわかった.若年者をどのように定義するのかについては,巻頭言で,九嶋先生が詳細に述べられている.

 胃粘膜は,他の臓器と同じく,加齢とともに様々な環境因子の影響を受け,萎縮あるいは過形成変化を起こし,腸上皮化生が発生する.これが加齢現象であり,この経過とともに,十二指腸潰瘍,胃潰瘍,過形成性ポリープ,胃癌などの様々な疾患が発生する.いずれも,中年から高齢者に多い疾患である.若年者では,上部消化管病変の発生頻度は成人や高齢者と比べ著しく低いが,環境因子の影響が少なく,病因を比較的同定しやすい.驚くことに,H. pylori(Helicobacter pylori)非感染者では,胃粘膜の炎症,萎縮,さらに腸上皮化生の発生はまれで,H. pylori非感染者の胃では加齢現象はなく,胃年齢について,若年者や高齢者の定義は当てはまらない.これまでの胃十二指腸病変の研究は,主に頻度の高い,中高年者について行われたものが多いが,若年者の発生病態を研究することにより,意外と新しい見解が得られる可能性がある.特に,胃癌については,これまで萎縮や腸上皮化生が病態として注目されていたが,炎症そのものの質,特にリンパ濾胞の変化が内視鏡所見,病理学的な検討からも注目される.

次号予告

基本情報

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胃と腸
46巻9号 (2011年8月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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