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編集後記
春間 賢
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1川崎医科大学消化管内科
pp.1429
発行日 2011年8月25日
Published Date 2011/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403102347
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医学の分野だけでなく,日常生活でもよく若年者という言葉を使う.10歳代あるいは20歳代の若者を意味して用いることが多いが,本特集号を企画するに当たり,若年者の明確な定義はなく,これまでの多くの報告でも,様々な定義で用いられていることがわかった.若年者をどのように定義するのかについては,巻頭言で,九嶋先生が詳細に述べられている.
胃粘膜は,他の臓器と同じく,加齢とともに様々な環境因子の影響を受け,萎縮あるいは過形成変化を起こし,腸上皮化生が発生する.これが加齢現象であり,この経過とともに,十二指腸潰瘍,胃潰瘍,過形成性ポリープ,胃癌などの様々な疾患が発生する.いずれも,中年から高齢者に多い疾患である.若年者では,上部消化管病変の発生頻度は成人や高齢者と比べ著しく低いが,環境因子の影響が少なく,病因を比較的同定しやすい.驚くことに,H. pylori(Helicobacter pylori)非感染者では,胃粘膜の炎症,萎縮,さらに腸上皮化生の発生はまれで,H. pylori非感染者の胃では加齢現象はなく,胃年齢について,若年者や高齢者の定義は当てはまらない.これまでの胃十二指腸病変の研究は,主に頻度の高い,中高年者について行われたものが多いが,若年者の発生病態を研究することにより,意外と新しい見解が得られる可能性がある.特に,胃癌については,これまで萎縮や腸上皮化生が病態として注目されていたが,炎症そのものの質,特にリンパ濾胞の変化が内視鏡所見,病理学的な検討からも注目される.
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