胃と腸 44巻9号 (2009年8月)

今月の主題 背景粘膜からみた胃癌ハイリスクグループ

序説

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はじめに

 「背景粘膜からみた胃癌ハイリスクグループ」を特集することとなった.“胃癌のハイリスクグループ”としてはH. pylori(Helicobacter pylori)感染と関係する萎縮性胃炎,腸上皮化生がよく知られている.また,これらの萎縮,炎症を示す血清ペプシノゲンによるハイリスクグループの拾い上げも行われている1)

 今回は純粋に形態学のみ,すなわちX線所見・内視鏡所見から胃癌のハイリスクグループの拾い上げが可能かどうかを検討することとなった.

 企画案を提出したときは筆者自身興味があったので,おもしろい企画かなと思った.しかし,実際に特集を企画するとなると,どうまとめてよいのか混沌としてしまった.

 われわれは,どのような胃粘膜に胃癌が発生しやすいのかを画像で見たいのである.

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要旨 癌検診を契機に発見された胃癌51例について,X線像から遡及的に胃の萎縮状態を評価し,胃癌のハイリスクグループを選別できるかを検討した.遡及的(平均期間50.6か月)に評価した胃のX線的萎縮度は,萎縮軽度な群が29例(57%)と最も多く,この群から22例の分化型癌が認められた.この結果から“萎縮の少ない胃であっても,相当数の分化型癌が発生する”ことが判明した.胃全域の萎縮が軽度と判定されても,局所的には腸上皮化生粘膜が存在する.こういった粘膜は分化型癌の組織発生母地となることから,萎縮の軽度な胃でも胃癌のリスクが低いとは断言できないと考えられた.

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要旨 目的 : X線的胃粘膜萎縮度からみた胃癌ハイリスクグループの抽出.対象 : 胃癌発見3年以上前のX線画像の見直しが可能であった逐年受診発見胃癌82例.方法 : 発見3年以上前のX線画像における萎縮度(grade 1~3)と発見胃癌の臨床病理学的因子の関係の分析.結果 : 単変量解析では萎縮度別に,年齢(歳),性別(女性,男性),F線領域(F線内部,近傍,外部),肉眼型(陥凹型,隆起型),組織型(未分化型癌,分化型癌)に有意差が認められた.多変量解析ではF線領域と組織型が独立した危険因子で,grade 1と萎縮が弱いほどF線内部領域,未分化型癌の発生リスク,grade 2,3と萎縮が強いほどF線外部領域,分化型癌の発生リスクが高かった.結論 : より的確な癌発見のためには,X線的萎縮度別にF線領域と組織型を考慮した撮影・読影体制を構築する必要がある.

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要旨 わが国においてX線検診に加えて内視鏡胃癌検診が開始されたが,費用対効果の面から問題があり,対象集約が必要と考えられる.初回検査から3年以内の間隔で追跡内視鏡検査を3,672名に実施し,胃癌81例(2.2% : 男性57例,女性24例)を発見した.初回検査から発見までの期間は3年未満24例,3年以上6年未満26例,6年以上31例であった.男性発見率は女性より高く,8年累積発見率は3.9%であった.55歳以上の発見率は54歳以下より高く,8年累積発見率は4.4%であった.粘膜萎縮が中程度以上群の発見率は萎縮軽度・なし群より高く,8年累積発見率は8.1%であった.初回検査で胃潰瘍や胃腺腫と診断された被検者から胃癌が発見される比率が高かった.内視鏡所見と性別,年齢で胃癌ハイリスク群を選定することは可能であり,ハイリスク群に対しては短期間で重点的な内視鏡検査を行う必要がある.

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要旨 人間ドックにおける内視鏡検査による胃癌スクリーニングは,胃癌発見率0.30%,内視鏡治療率40.9%,早期胃癌率89.6%,粘膜内癌率67.6%と高く,胃癌の早期発見・早期治療,QOL向上に寄与していると考えられた.しかし,前年度内視鏡写真の見直しで約半数が見落とし病変とも考えられ,さらなる精度向上が求められた.内視鏡発見胃癌の背景粘膜は分化型のみならず,未分化型においてもopen typeの胃粘膜萎縮が多く,胃癌診断における胃粘膜萎縮の把握の重要性が示唆された.また,1996年度受診者について内視鏡的胃粘膜萎縮別にその後11年間の発見胃癌の頻度を検討すると,C-0・C-1群で0.0%(0/591),C-2・C-3群で2.2%(9/406),O-1・O-2群で4.4%(13/294),O-3・O-p群で10.3%(4/39)であり,胃粘膜萎縮の進展に伴い頻度は高くなっていた.このことからも胃粘膜萎縮の把握は重要と考えられた.

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要旨 当院で1998~2007年度の10年間に実施された社員ドック(検診)の際の上部消化管内視鏡検査件数は97,007件であった.胃癌は138例発見され,そのうちで経過観察中に発見された症例は65例であった.背景粘膜には癌発見以前より全例に慢性萎縮性胃炎があり,しかも萎縮の程度は癌発見前,癌発見時ともにほとんどがC-3(木村・竹本分類)以上であった.したがって,内視鏡検査医としては確実に萎縮所見,なかでもその拡がりの程度を読み取ることが大切であり,その時点で悪性所見を見い出せなくとも,胃癌ハイリスクグループとして経過観察(再検査)が必要であることを銘記すべきである.

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要旨 胃癌をはじめ胃疾患のリスクはH. pylori(Helicobacter pylori)感染と深く関わっており,これを踏まえた背景胃粘膜分類を提案した.血清H. pylori抗体価(Hp)と血清pepsinogen値(PG)でABC(D)分類を行うと胃癌のリスクが層別化され,血清A群 : Hp(-)PG(-)はローリスク,血清A′群 : H. pylori除菌後Hp(-)PG(-),血清B群 : Hp(+)PG(-)は中等度リスク群,血清C群 : Hp(+)PG(+),血清D群 : Hp(-)PG(+)はハイリスク群と考えられた.胃癌ハイリスク群を囲い込むと同時に,ローリスク群(H. pylori未感染,血清A群)を特定し,日常診療や検診の場に応用することが大切である.

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要旨 鳥肌状胃炎はH. pylori(Helicobacter pylori)感染により生じる胃炎の1つで,小児や若年者に頻度が高い.以前は,鳥肌状胃炎は若年女性によく認められる生理的現象と理解されていたが,鳥肌状胃炎の胃粘膜にはH. pylori感染により引き起こされた組織学的炎症があり,炎症は高率に胃体部粘膜にも存在する.鳥肌状胃炎は胃体部に発生する未分化型胃癌を伴う頻度が高く,胃癌発生の高リスクファクターである.

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要旨 H. pylori感染は胃発癌と最も強く関連する因子であり,胃癌予防としてのH. pylori除菌が注目されている.胃発癌をエンドポイントとした5件の無作為化比較試験が報告されているが,これらの各試験およびメタ解析においては,H. pylori除菌による胃癌抑制に関して有意な結果が得られなかった.わが国からは,胃・十二指腸潰瘍患者を対象にした非無作為化の前向き試験が3件報告されているが,いずれも除菌群での胃癌発症は非除菌群より有意に低値であった.さらに,早期胃癌の内視鏡治療後の二次癌に対する多施設による無作為比較試験がわが国から報告され,H. pylori除菌は有意に二次癌の発症を抑制することがわかった.胃発癌をエンドポイントとした無作為化試験の中で初めて有意差を認め,H. pylori除菌の胃癌予防効果を明確にした.観察期間が3年と短いことから,この試験で除菌治療によって抑制された癌は潜在癌と考えられた.また,遺残再発に対しては除菌効果が認められないことから,ある程度の大きさになった癌に対しては,除菌効果は十分に発揮できないと考えられる.胃癌撲滅のためにはH. pylori除菌を基本に据えた対策が重要である.

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要旨 以前よりH. pylori(Helicobacter pylori)感染による萎縮性胃炎,腸上皮化生が胃癌の発生母地になるという研究がなされているものの,いまだに明らかになっていない部分もある.今回われわれは,早期胃癌のESD標本を用いて背景粘膜の萎縮を粘膜の高さ,腺管の数,腸上皮化生の3つで評価し,胃癌と背景粘膜との関連性について病理組織学的に検討した.結果は胃型形質の癌において,肉眼型が陥凹型のものや組織型が中・低分化型は,腸上皮化生が少ない萎縮粘膜であった.Correaの仮説とは異なる経路の癌の発生が示唆され,また,萎縮形態が異なることにより,性質の異なる癌が発生する可能性が認められた.

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要旨 腸上皮化生(intestinal metaplasia ; IM)の存在を含めた背景粘膜の形質と胃癌の発生との関連について,様々な状態の胃における解析結果と文献報告を総合して考察した.微小胃癌および同時性多発胃癌の解析結果から,分化型癌はIMを背景として発生するのではなく,癌が発生する状況ではIMも発生しやすい,すなわちIMは前癌病変というより傍癌病変であると考えられた.IMを伴わない胃粘膜に発生した胃癌や若年者胃癌の解析からは,未分化型癌の発生においては,少なくともIMは癌化の母地として重要ではないことが示された.また,良性病変切除後の残胃癌ではIMは癌化と無関係で,逆流性胃炎の存在が重要であった.胃癌切除後の残胃に発生した癌(特に10年以内に発生)は同時性多発胃癌と同様にIMとの関連があった.過形成ポリープに癌が発生する場合も過形成上皮におけるIMは癌化とは無関係であった.以上より,背景胃粘膜のIM(腸型形質発現)は前癌病変とは考えにくいが,その出現は分化型癌発生の危険因子として意義があり,IMを伴わない粘膜に発生する胃癌ではH. pylori感染による炎症や腸液の刺激が癌化の危険因子として意義があると考えられる.背景粘膜の癌発生の危険性を判定する場合には,これらの因子(IM,炎症,腸液の刺激など)の影響を総合的に評価する必要があると思われる.

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要旨 目的 : 分化型胃癌の分子特性を粘液形質に従って解析した.対象と方法 : 分化型胃粘膜内癌119例(男性80例,女性39例)を対象にした(組織学的内訳は高分化腺癌106例,中分化管状腺癌10例,乳頭状腺癌3例).LOHおよびMSIはPCR-microsatellite法により,メチル化はCOBRA法で解析した.LOH型の判定は,5q,17p,18q,4p,13q,9p,3p,22qにおいて30%以上のLOHを示したものを高LOH型,それ以下を低LOH型とした.メチル化の判定は,p16,RUNX3,MLH-1,RASSF2-A,DKK-1,SFRP1,HPP-1,ZFP64,SALL4の各遺伝子の中から3個以上メチル化陽性のものを高メチル型,それ以下のものを低メチル型にした.MSIは従来の基準に従った.これらから,癌を高LOH型,高メチル型,MSI型,そのほかに分類した.腫瘍の免疫染色は摘出標本を用いて自動免疫染色装置で行った.粘液形質は,各粘液形質抗体を用い,腸型,胃型,混合型,分類不能型に分類した.加えてp53過剰発現,増殖能(ki-67陽性細胞率)も免疫組織化学的に行った.結果 : 各粘液形質に共通して高メチル型が多かったが,胃型癌は高LOH型も多かった.一方腸型癌では低LOH型が多かった.混合型は両者の中間型であった.MSIは胃型と混合型にみられた.p53過剰発現は,胃型に多かった.結語 : 胃癌の発癌機序は粘液形質により異なっていることが示唆された.

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要旨 Helicobacter pylori(H. pylori)は胃癌の重要なリスク要因であることが知られている.筆者らはH. pylori感染が安定的に成立するスナネズミによる胃癌モデルを確立し,H. pyloriが胃発癌を促進する強力なプロモーターであること,早期感染あるいは食塩の過剰摂取が胃癌発生率を上昇させることを明らかにしてきた.除菌はH. pylori関連疾患の予防治療に有効であるが,耐性菌の増加や除菌後胃癌の発生が近年問題となっている.代替的化学予防法の開発,またH. pyloriの毒性,宿主側因子,環境要因など胃癌のリスクファクター解明のため,スナネズミ胃癌モデルのさらなる応用が期待される.

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要旨 H. pylori感染の進展による胃粘膜拡大像の変化はA-B分類で表現されている.この分類を基本にH. pylori胃炎進展のNBI併用拡大像をまとめた.非感染胃体部粘膜拡大像は集合細静脈,真性毛細血管のネットワーク,ピンホール状の腺開口部から形成されている(B-0型).感染粘膜では集合細静脈は見えず,毛細血管のネットワークと円形の腺開口部から成るB-1型,楕円形腺開口部と胃小溝から成るB-2型,さらに開大した卵円形やスリット状の腺開口部と胃小溝から成るB-3型,さらに萎縮が進展すると溝状,スリット状の腺開口部に伴い管状・うろこ状の粘膜模様を呈するA-1型,腸上皮化生が高率に発生する粘膜では絨毛状・顆粒状模様を呈するA-2型に進展していく.この構造変化は腺開口部の変化を反映している.すなわち炎症を伴うと小円形の腺開口部から開大した腺開口部・胃小溝へと変化し,萎縮が高度になると胃小溝が連続して粘膜模様は管状・うろこ状に観察される.さらに腸上皮化生を合併すると連続した胃小溝はより深い溝となって乳頭状構造が絨毛状・顆粒状の粘膜模様として観察される.

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要旨 患者は52歳,女性.2002年にA型胃炎と診断し,定期的に経過追跡を行っていた.経過中,2007年2月の上部消化管内視鏡検査にて前庭部大彎に0IIc型胃癌を認め,内視鏡的粘膜下層剥離術にて切除した.病理組織学的には萎縮に乏しい幽門腺粘膜内の0.3cm大,粘膜内の高分化型管状腺癌であった.A型胃炎はcarcinoidとならび腺癌の発生母地としても考えられている.A型胃炎を背景とした胃癌は,萎縮した体部に認めることが多いとされているが,本例のように萎縮に乏しい幽門腺粘膜内に発生することもあり,全胃を観察することが重要と考えられた.

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 〔患 者〕 64歳,男性.上腹部不快感を主訴に近医を受診し,上部消化管内視鏡検査で腫瘍性病変を認めた.生検にてGroupIIIと診断され,精査加療目的にて当科に紹介となった.臨床症状・血液生化学的検査では異常を認めなかった.

 〔胃X線所見〕 胃体中部大彎に大きさ約4cmの辺縁隆起を伴う陥凹性病変を認めた(Fig. 1).左側臥位での病変の正面像では,陥凹辺縁は不整で鋸歯状を呈し,陥凹面は比較的平滑で肛門側に境界明瞭な陥凹内隆起を伴っていた(Fig. 1b).辺縁隆起の立ち上がりは比較的境界明瞭であった.空気量を増すと辺縁隆起および陥凹面は軟らかさを有していたが,陥凹内隆起の形態は変化せず硬い印象であった(Fig. 1c).第二斜位における病変の側面像では陥凹内隆起に一致して弧状変形を認めた(Fig. 1a).

早期胃癌研究会

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 2009年4月の例会から 2009年4月の早期胃癌研究会は4月15日(水)に笹川記念会館国際会議場にて開催された.司会は小林広幸(福岡山王病院消化器内科)と長南明道(仙台厚生病院消化器内視鏡センター),病理は九嶋亮治(国立がんセンター中央病院臨床検査部病理)が担当した.画像診断レクチャーは二村聡(福岡大学医学部病理学講座)が「消化管切除標本の取り扱いとマクロ写真撮影─私のやり方」と題して行った.なお,今回の例会より,研究会終了後に事前配布の投票用紙に,参加者が最も勉強になった症例を記入してもらい,優秀症例選考の参考にすることとなった.

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要旨 症例は50歳代,男性.胃X線検査,内視鏡検査にて,胃角部後壁やや大彎寄りにひだ集中を伴う径3cm大の隆起性病変を認め,ひだの先端には明らかな蚕食像はなく,粘膜下腫瘍様を呈していた.拡大内視鏡では,病変部分は腸上皮化生の拡大像に類似しており,周囲の萎縮した背景粘膜の拡大像とも類似していた.EUSでも,腫瘍は粘膜下腫瘍様の形態を呈し,一部筋層への浸潤が疑われた.生検にて超高分化型腺癌が疑われたため,粘膜下腫瘍様の形態を呈する胃癌と診断し幽門側胃部分切除術を施行した.病理診断は,完全腸型の超高分化型腺癌〔SM2,0IIa+IIc,ly0,v0,n(-)〕であった.

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要旨 症例は57歳,男性.人間ドックで胸部X線の異常陰影と便潜血陽性を指摘されたため,諸検査を施行した.大腸内視鏡検査では回腸末端に小潰瘍が多発し,上行結腸から下行結腸の広範囲に粘膜下腫瘍様の粟粒大隆起が多発していた.1か月後に再度施行した大腸内視鏡検査では,前回の粟粒大隆起が増加し癒合傾向がみられ,生検にて乾酪性肉芽腫が確認された.さらに,喀痰,胃液,糞便の培養検査で結核菌が検出されたため,肺結核および続発性腸結核と診断した.3剤併用療法を開始し,3か月後には大腸病変は萎縮瘢痕帯へと推移した.一般に,活動性腸結核では種々の進展時期の病変が多中心性に混在して認められるのに対し,自験例は初期病変が広範囲に多発して認められた点が特徴的であった.

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欧文目次

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 本書は『臨床外科』誌に連載され好評だった「外科の常識・非常識 : 人に聞けない素朴な疑問」に,番外編として12の設問を加えて1冊にまとめたものである.精選された設問と適切な解答のおかげで,小冊子ながら大変内容の濃い興味深い本に仕上がっている.内容に引かれて,しっかりと初めから終わりまで読まされるほど面白かった.

 本書の第1の特色は執筆者が2名の例外(昭和38年卒1名と病理医1名)を除いて平成14年から昭和44年の間の卒業で,いずれも若く第一線で活躍している現役の外科医だということである.彼らが各設問に関する文献をよく調べて解答してくれているので,期せずして文献的知識を豊富にすることができる.

編集後記 赤松 泰次
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 本号は,経過観察例やH. pylori(Helicobacter pylori)感染からみた臨床データ,病理学的所見,分子生物学的所見,動物実験など,様々な立場から胃癌発生の高危険群となる背景粘膜について検討した特集である.これらの内容を読むと,胃癌発生の高危険要因となるキーワードは,H. pylori 感染と胃粘膜萎縮の2点に集約されると考えられる.H. pylori感染の胃癌への関与はいろいろな議論はあるものの,initiator作用というよりもprom-oter作用と考えるべきであろう.H. pylori感染による慢性活動性胃炎は,正常胃粘膜と比較して細胞回転が数倍亢進しており,H. pylori感染が胃癌発生のpromoter作用を担っていることは容易に想像できる.一方,胃粘膜萎縮は,A型胃炎などの特殊な病態を除けば,長期にわたるH. pylori の持続感染が主な要因と考えられている.

 このように胃癌発生のハイリスク要因が明らかとなってきた今日,二次予防については,血清pepsinogen値と血清H. pylori抗体を測定して胃癌のリスクを判定し,検診の方法や間隔を設定する乾らの方式は,胃検診の効率化に大きく寄与する可能性がある.一方,H. pylori感染成立後早い時期に除菌治療を行うほど発癌抑制効果が高いというスナネズミを用いた動物実験より,胃癌の一次予防は今後,若年者をターゲットにした対策を検討すべきであろう.

基本情報

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胃と腸
44巻9号 (2009年8月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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