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編集後記
赤松 泰次
pp.1484
発行日 2009年8月25日
Published Date 2009/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403101748
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本号は,経過観察例やH. pylori(Helicobacter pylori)感染からみた臨床データ,病理学的所見,分子生物学的所見,動物実験など,様々な立場から胃癌発生の高危険群となる背景粘膜について検討した特集である.これらの内容を読むと,胃癌発生の高危険要因となるキーワードは,H. pylori 感染と胃粘膜萎縮の2点に集約されると考えられる.H. pylori感染の胃癌への関与はいろいろな議論はあるものの,initiator作用というよりもprom-oter作用と考えるべきであろう.H. pylori感染による慢性活動性胃炎は,正常胃粘膜と比較して細胞回転が数倍亢進しており,H. pylori感染が胃癌発生のpromoter作用を担っていることは容易に想像できる.一方,胃粘膜萎縮は,A型胃炎などの特殊な病態を除けば,長期にわたるH. pylori の持続感染が主な要因と考えられている.
このように胃癌発生のハイリスク要因が明らかとなってきた今日,二次予防については,血清pepsinogen値と血清H. pylori抗体を測定して胃癌のリスクを判定し,検診の方法や間隔を設定する乾らの方式は,胃検診の効率化に大きく寄与する可能性がある.一方,H. pylori感染成立後早い時期に除菌治療を行うほど発癌抑制効果が高いというスナネズミを用いた動物実験より,胃癌の一次予防は今後,若年者をターゲットにした対策を検討すべきであろう.
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