胃と腸 39巻13号 (2004年12月)

今月の主題 大腸sm癌の内視鏡治療後の長期経過

序説

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 「大腸sm癌の内視鏡治療後の長期経過」が本号の特集である.内視鏡治療の適応拡大症例が年々増加している.手技としては,古くはpolypectomy,さらにはendoscopical mucosal resection(EMR),そして近年はendoscopic submucosal dissection(ESD)が一般化しつつある.大腸sm癌の内視鏡治療後を考えるとき,初回の内視鏡治療がどの方法で行われたかも重要であるがESDの長期経過症例はまだ多くないので次回の特集を待つことになる.本号では,5年以上経過例の分析から,①内視鏡治療後の再発,転移の時期,再発様式について明らかにする.その中で,②内視鏡治療のみで経過観察可能なsm癌の条件を臨床経過から検証する.さらに③内視鏡治療後の再発,転移に対する早期発見のためのfollow up法を確立する,等が“ねらい”である.

 ①のねらいについて,この結果の善し悪しは初回の内視鏡治療の質,病理診断の質によって左右される.現状のこれまでの分析などをみていると,ひとたび内視鏡治療後と呼称されてからは,すべて同等になって扱われている.したがって,前述の質を問わなければデータだけが先行し,読者も含めてますます混乱に陥ることになる.「胃と腸」のもっている社会的な位置付け(消化管を専門とする領域に属する方々に対する影響力が大であること)を考えると,この特集は大変責任のあるものである.これまでの分析と同じでは困る.また,これらの結果から,摘除された標本の病理診断の精度管理の重要性を強調したある種の抑止効果,あるいは警告の役目も期待したい.転移する可能性(肝を含む臓器転移は別にしておおよそ10%前後でリンパ節転移する)をもつ大腸sm癌を内視鏡治療だけで経過観察することの重大さを認識させるために,これらの質についても特集の中で論じられる必要がある.病理診断の質の違いで脈管内浸潤の有無,深達度いずれも評価が変化する.癌の組織型診断ひとつをとっても100%高分化腺癌と30%の低分化腺癌を含んだ高分化腺癌では同等には取り扱えないだろう.また,内視鏡治療のやり方次第で再発因子の評価も変わる.深達度の浸潤距離を考えるとき,潰瘍化した病変では癌の実質的な厚さが薄くなり浸潤距離が浅くなるのは自明である.そもそも摘除できるからといって潰瘍病変をむりやり内視鏡治療することのほうが問題であろう.たとえ手術標本でこのような症例の中から転移例が見つかったとしても,EMRやpolypectomyの内視鏡的治療の経過観察のための判断根拠とはなりにくい.実際的ではないと思う.重箱の隅をつついても,かえって混乱が生じるだけである.「胃と腸」34巻6号(1999年)の序説に飯田が“…これまでに報告されてきた大腸sm癌の転移リスクファクターは,外科的切除標本の病理組織学的検索によって得られたものである.今後は,内視鏡的切除後の長期経過例をできるだけ多数例集積し,それを基に従来のリスクファクターの妥当性を検証するとともに,より客観性のある新たな指標を見い出す努力をしていくことが必要であろう…”とまとめている.まさにそのとおりである.したがって,本号の特集では内視鏡治療が行われて摘除,局所の遺残がなくても治療が完了したことにはならないことを示す症例提示も必要である.その中でどこに問題があったかも指摘することである.医事紛争を考えると勇気がいるが,専門誌だからできる高いレベルでの消化管専門医の養成のためにまとめる必要のある事例といえる.もちろん,今後の防止のための分析と対策を付記することも大切である.また,おそらくこれらの事例は貴重であろうから,既論文あるいはこれから英論文にされることも考えて,duplicated publication(二重投稿)にならない配慮も編集上必要である(International Committee of Medical Journal Editors,October,2001).いずれにしてもこれらの分析や症例を通して大腸sm癌の内視鏡治療は摘除直後から実質的な精度管理がスタートすることを示すことが肝要である.

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要旨 大腸sm癌症例におけるEMR後の治療方針決定には,EMRによる局所切除の完全性とリンパ節転移の可能性の2点からの検討が必要となる.前者すなわち断端陽性の診断基準には,大腸癌取扱い規約(第6版)においては断端距離0.5mm未満が断端陽性の目安として提示されているが,露出所見のみを陽性と判定するものから,断端距離2mmまでを陽性ととるものまで幅広い主張がみられる.リンパ節転移危険因子に関しては,これまで重視されてきた,明らかな脈管侵襲,低分化腺癌・未分化癌に加え,budding陽性所見にリンパ節転移の質的リスク因子としての意義が認められつつある.量的な因子であるsm浸潤距離に関しては,大腸癌研究会のsm癌プロジェクト委員会によるアンケート調査結果として,質的リスク因子がない場合,浸潤距離1,000μmまでの症例にはリンパ節転移の危険性は極めて低いことが報告されている.

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要旨 近年,大腸sm癌の内視鏡治療の適応が注目され,各施設でその適応の拡大が行われ始めている.今回当施設での大腸sm癌に対する内視鏡治療後の再発様式および再発時期について検討した.その結果は,危惧されていたリンパ節転移からの再発は認めず,原病死は360例中4例(1%)であり死因としては局所再発が主体であった(3/4例).これに対しては,経過観察時の内視鏡治療後の瘢痕の観察を容易にするため同部位のマーキング等の対策や超音波内視鏡検査の併用が今後必要と考えられた.

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要旨 大腸sm癌内視鏡治療後再発を認めた7例(局所再発およびリンパ節再発4例,血行性転移再発3例)を検討した.(1)局所再発およびリンパ節再発4例:再発様式は局所再発のみが2例,リンパ節再発のみが1例,おのおのの重複が1例で,転移時期は4~48か月(平均20.3か月)であった.局所再発の2例に再度内視鏡摘除術,リンパ節再発の1例に経仙骨的腫瘍切除術,おのおのが重複した1例にリンパ節郭清を含めた腸管切除術を行い,いずれも治癒的切除が行いえた.(2)血行性転移再発3例:再発様式は肝再発のみが2例,肝・肺・骨多発転移が1例で,転移時期は6~60か月(平均25.3か月)であった.3例中2例は内視鏡摘除後追加腸切除を行っており,肝再発のみの2例に治癒的肝切除を行いえた.内視鏡治療後大腸sm癌の経過観察は厳重に行い,局所・リンパ節再発の診断には大腸内視鏡検査による局所の観察,特に瘢痕部の粘膜下腫瘍様所見に注意すべきで,分割摘除例はより厳重な経過観察が必要である.血行性転移再発の予測は困難であることが少なくないが,血行性転移再発の存在を念頭に置き,定期的に血中CEAの測定あるいは腹部超音波検査などの検索を行うべきと考えられた.

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要旨 内視鏡的切除を施行した大腸sm癌172病変を対象に,われわれの内視鏡的切除後の根治判定基準“切除深部断端陰性,浸潤先進部組織型が高分化度(W,Mw),sm浸潤実測値1,500μm未満,脈管侵襲陰性”からみた遺残,局所・転移再発,予後との関係,および,5年以上長期観察しえた大腸sm癌42例の異時性多発病変の累積発生率について検討した.(1)局所根治と判定し,外科的追加手術を行わず経過観察した102例の予後は,肺・肝・リンパ節転移を1例,同時性肝・リンパ節転移を1例,局所再発を2例に認めた.しかし,すべて根治基準外病変であった.根治基準内の67例は,多病死5例を除いて局所・転移再発はなく全例生存中である.(2)外科的追加切除例の検討では,病変側方断端部のm癌遺残を1例に,sm癌の遺残を2例に認めた.リンパ節転移は6例に認めたが,すべて根治基準外病変であった.(3)大腸sm癌内視鏡的切除後の異時性多発病変の累積発生率は,腺腫54.8%,癌11.9%で,浸潤癌は1例も認めず,すべて内視鏡的追加切除にて根治された.以上,上記の根治基準内病変であれば,今回の臨床経過例における解析結果からみて局所・転移再発例はなく,内視鏡的切除のみで経過観察可能であった.

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要旨 教室におけるEMR施行症例を検証し,大腸sm癌のEMR後の治療方針につき検討した.対象184例のうち,リンパ節転移の有無を確認しえた98例中7例(7.1%)にリンパ節転移を認め,2例(1.1%)に異時性肝転移を認めた.sm1ではリンパ節転移はなく,sm浸潤が高度のものでリンパ節転移の危険性が高くなる傾向が認められた.その他のリンパ節転移の危険因子に関しては特徴的なものは見い出せなかったが,深達度sm1では脈管(リンパ管・静脈管)侵襲が陽性であっても,追加切除が不要である可能性が示唆された.一方,高度sm浸潤(sm2~3)症例に関しては,リンパ節郭清を伴う追加腸切除が必要と考えられた.追加腸切除の際には原則として全大腸を適応とした腹腔鏡下腸切除術を施行しており,良好な成績を得ている.

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要旨 内視鏡切除を行い,1年以内に外科的追加切除せず経過観察したsm癌93例(sm浸潤が300μmまでのsm1が62例,sm2以深が31例)を検討した.sm1癌では62例中61例では再発を認めなかった.1例で局所再発を認めたが,見直し診断ではsm2癌に変更となった.sm2以深の癌では31例中6例19.4%で再発を認め,全体では93例中7例7.5%(局所再発6例,リンパ節再発5例,肝転移2例)に再発を認めた.再発の危険因子は,切除断端陰性もしくは不明,脈管侵襲陽性,中分化型腺癌ならびに滴状浸潤であった.再発確認までの期間は16~132か月で,1~6か月直前の検査から急速に発育するものがあった.内視鏡所見上は瘢痕部の変形の増強があり,超音波内視鏡検査およびCT検査では,腸管壁の壁肥厚所見が認められ,3例でEUSが診断の端緒となった.1例でPETが有用であり,サーベイランス時には粘膜下および腸管外の再発に留意する必要がある.

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要旨 内視鏡的治療を行った大腸sm癌133例のフォローアップの実際を明らかにし,より安全で有効なフォローアップ法の確立に向けて検討した.フォローアップ法は患者に予定検査時期の案内を郵送,sm癌の場合は3~6か月後に局所を観察,その後は1年目のTCSを行い,異常なければclean colonとして2~3年に1回のTCSあるいはSCSを伴った注腸X線検査を行う.遠隔転移に対しては腫瘍マーカー,腹部超音波検査を年2回,3年間施行する.初回に内視鏡的治療を行った133例のうち局所再発と遠隔転移は各々1例(0.75%)に認めた.この間のフォローアップで発見された異時性腫瘍性病変は44例(33.1%)で,このうち癌病変はm癌の2例(1.5%)であった.これらはすべて内視鏡的治療が可能な時期に発見できた.現フォローアップ法は概ね有効と考えている.

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大腸癌治療ガイドライン

 斉藤(司会) 皆さんお忙しい中ありがとうございます.座談会「大腸sm癌内視鏡摘除の適応および摘除後のfollow upをめぐって」を始めさせていただきます.

 近年,大腸sm癌の内視鏡治療が非常に増えてきております.早期癌ですから,ぜひとも患者さんの命を落すことはないようにしたいのですが,少ないながらも不幸な転帰をとる場合があります.それをいかに減らすかという一方で,大腸sm癌に対する内視鏡摘除後に外科手術を行っても,そのほとんどが遺残やリンパ節転移がみられず,追加外科手術の基準の変更が必要であるということが言われておりました.それに対する最近の主な動きとして,大腸癌研究会で新しい大腸癌治療ガイドラインが作成中となっており,今までより内視鏡適応基準が少し拡大されようとしています.まず田中先生,大腸癌治療ガイドラインの作成メンバーに入っておられますが,その辺りの概略からご説明いただけますでしょうか.

 田中 大腸癌研究会の「大腸sm癌取り扱いプロジェクト研究委員会」でsm浸潤度の実測方法が統一され,一応1,000μmまでのsm浸潤癌は脈管侵襲等の条件がなければ転移がないということで,1,000μmまで大腸sm癌EMR後の根治基準が適応拡大できるという指針が出ました.それを受けて杉原健一教授(東京医科歯科大学腫瘍外科)が委員長となって「大腸癌治療ガイドライン作成委員会」が立ち上がり,1,000μmという具体的なsm浸潤距離が盛り込まれました.現在,評価委員会で検討されている最中だと思います.J Gastroenterolに報告された内容は,かなり将来的な可能性も含めて考察されていますが,「大腸癌治療ガイドライン」に取り込まれる条件は,あくまで“sm浸潤距離1,000μm未満,脈管侵襲陰性かつ高分化~中分化腺癌”で,低分化や未分化成分を含まないことが条件です.もちろん切除断端陰性であることが必須条件です.

 斉藤 大きさに関しては基準がありますか.

 田中 大きさは特に根治基準の条件ではありません.治療指針に関するフローチャートでは,mまたはsm微小浸潤と診断した病変は内視鏡治療を行うけれども,mまたはsm微小浸潤と診断されても,径2cmを超えるもので内視鏡的切除がきちんとできない病変は外科的切除に回すよう薦められています.

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 〔患 者〕 62歳,男性.口腔内出血で近医を受診し,上部消化管内視鏡検査を施行されたところ,胃に病変を指摘され,加療目的に当科紹介となった.

 〔胃X線所見〕 胃体下部後壁にバリウムがわずかに溜まった浅い陥凹性病変が存在する.口側から集中するひだの先端は中断がみられるが,腫大や融合などは認められない(Fig.1a).周囲にバリウムを溜めると,病巣全体が隆起していることが判明した(Fig.1b).粘膜ひだが消失しない程度の弱い圧迫を加えると,病巣全体が透亮像として描出され(Fig.1c),ひだが消失するような強い圧迫を加えても病巣の輪郭が追えることから,ある程度の厚みがある病巣と判定できる(Fig.1d).

 〔胃内視鏡所見〕 胃体下部後壁に発赤調の強い陥凹性病変を認めた.陥凹局面はほぼ均一な小区構造を有している(Fig.2a).空気量を少なくして,斜め方向から観察しても,凹凸は少なく,周辺隆起も存在しない(Fig.2b).色素撒布を行うと,病巣の均一構造がより明瞭となる(Fig.2c).

 〔超音波内視鏡所見〕 20MHz超音波プローブを用いた観察では,病巣部の第2層は保たれており,粘膜下層への直接癌浸潤の所見は認めなかった.しかし,第3層内に低エコーの濾胞様小結節が存在することから,粘膜下層のリンパ濾胞と考えられた(Fig.3).生検で得られた癌組織がEBV(Epstein-Barr virus)関連胃癌を示唆するものであったことより,粘膜下層のリンパ濾胞浸潤を疑った.

 以上より,粘膜下層に浸潤した胃癌と診断し,内視鏡的切除ではなく幽門側胃切除術を施行した.

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要旨 症例は73歳の女性.体重減少を主訴に当院受診,上部消化管内視鏡検査にて異常を指摘された.胃X線では体上部前壁にbridging foldを伴う粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認め,隆起の頂部には星芒状の陥凹を有していた.胃内視鏡検査では陥凹辺縁に蚕食像を認めた.胃亜全摘術が施行され,病理診断はpor2,pT1(sm),infα,ly0,v0,n0であった.腫瘍細胞は著明なリンパ球浸潤を伴って粘膜下層に浸潤しており,いわゆるリンパ球浸潤性髄様癌であった.免疫組織学的検索にてEBV-encoded small RNA(EBER)-1 in situ hybridization陽性であり,Epstein-Barr virus関連胃癌と考えられた.

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要旨 症例は69歳,女性.左下腹部痛と下痢,さらに左下腹部に圧痛を伴うおよそ10cmの索状物を触知して,当科を受診した.注腸透視では,S状結腸の腸間膜付着側辺縁に偏側性の不整鋸歯状変化と,さらにその口側に硬化像を伴う腸管の狭小化がみられた.大腸内視鏡検査では,S状結腸に浮腫性変化と思われる低い敷石状の隆起性変化が観察され,隆起頂部にはびらんが存在し,送気による内腔の拡張も不良であった.血管造影検査にて,下腸間膜静脈閉塞と上直腸動静脈瘻が確認された.保存的治療では症状は軽快せず,むしろ所見上,びらん潰瘍の増悪がみられたため,手術を施行した.切除標本では,結腸および腸間膜が硬化・肥厚し,粘膜面には,腸間膜側と対側に沿って縦走びらんがあり,中心部ではそれらが融合して亜輪状を呈していた.組織学的に,S状結腸壁の腸間膜に脂肪織炎がみられ,腸間膜から粘膜下層の静脈は中膜肥厚で壁肥厚と内腔狭窄を示し,臨床的に増悪した虚血性病変を併発していた.本例は脂肪壊死とfoamy macrophagesが主体の腸間膜脂肪織炎が先行し,これに静脈系障害による虚血性病変を随伴したものと診断された.

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要旨 症例は73歳の男性.持続する上腹部痛のために近医で行った上部消化管内視鏡検査にて噴門部に径50mmの腫瘤を認め当院に紹介となった.噴門部に表面は凹凸不整なやや発赤調の腫瘤があり頂部に線状の陥凹を伴っていた.造影検査では噴門小彎に立ち上がりは境界鮮明で表面凹凸不整な径50mmの球形の上皮性様腫瘍を認めた.腫瘍からの生検結果は胃平滑筋肉腫であった.全身検索にて胃周囲リンパ節,腹腔内リンパ節の腫脹著明であり,手術は断念し,対症療法のみ行ったが,約2か月後に死亡した.剖検にて,腫瘍は食道胃接合部から立ち上がり,胃内に発育していた.組織学的には,腫瘍の大部分は肉腫様であったが,基部とその周囲は口側,肛門側ともに扁平上皮癌が存在していた.腹腔リンパ節や肝臓には扁平上皮癌の転移が認められた.したがって,食道胃接合部の食道寄りから発生し,胃内へ脱出していた食道癌肉腫であった.

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 DDW(Digestive Disease Week)-Japan 2004は2004年10月21日(木)から24日(日)の4日間福岡国際会議場を中心に開催された.筆者は前半の2日間しか参加できなかったが,「胃と腸」編集室から学会印象記を書くようにとの依頼を受けていたので,いつになく熱心に会場に足を運んだ.

 当初は学会前日(20日)に福岡入りし開会式から参加するつもりでいたが,超大型の台風23号のために交通機関がマヒし移動できなかった.翌日新大阪駅午前7時発ののぞみに乗り台風一過の青空が広がる福岡に向かった.会場には午前10時に到着し,まずワークショップ2「症候性GERDの病態と治療戦略」の会場に行った.このワークショップは9時30分開始だったので,既に2題の発表が終わっていた.会場に入って聴衆の少なさにまず驚いたが,さらにびっくりしたのは壇上の司会者席には春間賢先生(川崎医科大学食道・胃腸内科)の姿しかなく,浅香正博先生(北海道大学消化器内科)の姿が見えなかったことだ.台風のために間に合わなかったようだ.ほかの会場でも座長や演者の欠席があったという話をあとから聞いた.会長はさぞ肝を冷やされたことと思う.肝心のワークショップであるが,聞いていて非常にわかりにくかった.テーマが「症候性GERD(gastroesophageal reflex disease)」となっているのに“内視鏡陰性GERD”として発表する演者もいて,各演者で対象が統一されていなかった.もっとも“症候性GERD”は症候群なので,ある程度は致し方ないところもあろうが,従来からの食道内pHや内圧測定に加えて,下部食道の血管像の拡大観察,バルーンによる知覚の検討,生検材料を使った分子生物学的検討など目新しい方法論の発表もあった.“症候性GERD”から“逆流性食道炎”への移行例は少なく,そのほとんどがグレードAであることから,両者は異なった病態であろうと感じた.また,全くの私見ではあるが,“GERD”の中には“逆流”とは無関係な病態が結構含まれていると思っていたので,噴門形成術によって“症候性GERD”が全例完治したという外科の発表にはいささか驚いた.

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 DDW-Japanは,アメリカとヨーロッパにその範を求め,消化器関連6学会の合同会議として1993年に産声を上げて以来12年の歴史を刻んできた.今回のDDW-Japan 2004は10月21日より4日間にわたり福岡の地で開催された.天候にも恵まれ,“食欲の秋”の福岡,中洲もあることから,海外からの参加も含め連日多数の出席者により熱気に満ちていた.ただ,残念なことに第3日目に新潟県中越地震が発生し,当地より参加されていた方々の心中を察するにより早期の復興を心より祈念する次第である.

 筆者は2日目から参加したが,全体の印象としては各ポスター演題のレベルの高さである.特に胃EMRと大腸の診断および治療のセッションではいずれも演者と座長を多くの聴衆が取り囲んでいた.演者と聴衆との距離が近いぶんお互いによそ行きではない,欧米の学会で見受けられるような熱いディスカッションが繰り広げられ,ある意味でシンポジウム以上の熱気が感じられた.

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 DDW-Japan 2004が10月21日(木)から10月24日(日)の4日間,福岡で開催された.開催前日の10月20日に台風が西日本を襲ったため,同日の交通機関は混乱し,翌日の21日もその影響が続いた.そのため,諸種のbusiness meetingや打ち合わせが行えないなどの影響はあったが,期間中の発表には大きな支障もなく運営されたようである.会場は福岡国際会議場,福岡サンパレス,マリンメッセ福岡の3か所に分散していたが,どこも満員であった.会場が相互に隣接していて移動が容易であったこともあるが,いずれも興味を惹くテーマであったためであろう.

 小腸および大腸関連では11題の主題が企画された.初日の10月21日はシンポジウム2「炎症性腸疾患(IBD)の新しい治療法」,ワークショップ1「小腸疾患の新しい診断法をめぐって」,22日はシンポジウム8「colitic cancerの内視鏡診断と治療」,23日はワークショップ21「カプセル内視鏡の可能性を探る」,パネルディスカッション6「大腸sm癌内視鏡治療後の長期経過」,24日はシンポジウム15「大腸LST(2cm以上)に対する内視鏡的治療と成績」,シンポジウム18「便潜血陰性進行大腸がんの実態と対策」,シンポジウム16「腸疾患における消化吸収異常とその対策」,ワークショップ25「Virtual endoscopyの現況」,ワークショップ26「大腸狭窄に対する内視鏡的治療」,パネルディスカッション15「大腸がん検診・診療における注腸X線検査の意義と役割」である.筆者はワークショップ1「小腸疾患の新しい診断法をめぐって」とシンポジウム8「colitic cancerの内視鏡診断と治療」さらに特別講演「colitic cancerの内視鏡診断」(東京女子医科大学 長廻紘先生)を視聴した.いずれも会場は満席で立ち見が出るほどの盛況であった.ワークショップ1「小腸疾患の新しい診断法をめぐって」では8題および追加4題の計12題の発表があった.内容は腸管洗浄液を用いたCT・MR,multidetector-row CT,白血球シンチグラフィ,造影超音波,ダブルバルーン内視鏡,カプセル内視鏡,消化吸収機能,拡大内視鏡,自然免疫機能である.なかでもカプセル内視鏡が2題でダブルバルーン内視鏡3題と,内視鏡検査に関連する演題が最も多く採用されていた.カプセル内視鏡は日本では認可されていないが,欧米ではすでに汎用されており,その検査能力と診断能力を認識させられた.いずれの内視鏡検査法も,今後ますます注目され実施されるであろう.シンポジウム8「colitic cancerの内視鏡診断と治療」では8題の発表があった.surveillance法,内視鏡・拡大内視鏡診断,さらに諸種検査によるhigh risk群の診断についての発表がなされた.またdisplasiaとcancerの内視鏡像さらに拡大内視鏡像が数多く例示された.さらに,癌に対するpit patternの基準には合致しない症例やdysplasiaから進行癌への短期間での移行例も提示され,診断の難しさとsurveillanceの重要性を再認識させられた.このシンポジウムに先立つ長廻先生の特別講演では,炎症を背景にした癌の発見はいわば無秩序のなかの秩序であり,病変の同定はいまだ容易ではないことが強調されたが,理解しやすく示唆に富む内容であった.口演のほか,ポスター発表も会場の設定がわかりやすく,また参加者も多く活気に満ちていた.発表形式を問わずすべての演題が魅力あふれる内容であったといえるであろう.学会長をはじめとしたスタッフの方々に敬意を表する.

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欧文目次

編集後記 斉藤 裕輔
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 今月は「大腸 sm 癌の内視鏡治療後の長期経過」というテーマでお届けした.基本的には生命予後の極めて良い大腸 sm 癌で患者の命を失うことはわれわれ消化器医にとっては残念なことである.一方,大腸 sm 癌の発見頻度の増加と高齢化によるリスクの増加により,内視鏡的に切除後経過観察を行う例やリンパ節転移の危険性が低いと判断して経過観察を余儀なくされる例の増加がみられており,今後,不幸な転機をとる患者様が増加することも危惧される.本号では内視鏡切除後に経過観察が可能な sm 癌の特徴,また内視鏡治療後の局所再発,リンパ節再発,遠隔転移再発の特徴,またそれらの危険性がある sm 癌の特徴が示され,大変参考になったと考える.さらに大腸 sm 癌の内視鏡摘除後の再発をできるだけ早期に発見するための follow up 法と時期についても data が示された.そして内視鏡摘除後に follow up する条件として,切除前の正確な診断,標本の十分な評価が可能な完全切除,リンパ節転移リスクを正確に評価するための病理との密な連携が最も重要であることが座談会から読みとれたことと思われる.本号が明日からの診療に十分役立つものと確信するとともに,今後の 10 年以上の長期間の大規模な sm 癌 follow up data の集積が望まれる.

基本情報

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胃と腸
39巻13号 (2004年12月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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