Japanese
English
今月の症例
粘膜下層のリンパ濾胞内に浸潤を認めたEpstein-Barr virus関連胃癌の1例
Epstein-Barr Virus Associated Gastric Carcinoma Invaded into Lymphoid Follicle of Submucosa, Report of a Case
森下 実
1
,
細川 治
1
,
出村 嘉隆
1
,
酒巻 美保
1
,
奥田 俊之
1
,
大田 浩司
1
,
林 裕之
1
,
道傳 研司
1
,
服部 昌和
1
,
武田 孝之
1
,
谷川 裕
1
,
森田 信人
1
,
海崎 泰治
2
,
小野 博美
3
,
大滝 秀穂
3
Minoru Morishita
1
1福井県立病院外科
2福井県立病院臨床病理科
3大滝病院内科
pp.1704-1706
発行日 2004年12月25日
Published Date 2004/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403100592
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〔患 者〕 62歳,男性.口腔内出血で近医を受診し,上部消化管内視鏡検査を施行されたところ,胃に病変を指摘され,加療目的に当科紹介となった.
〔胃X線所見〕 胃体下部後壁にバリウムがわずかに溜まった浅い陥凹性病変が存在する.口側から集中するひだの先端は中断がみられるが,腫大や融合などは認められない(Fig. 1a).周囲にバリウムを溜めると,病巣全体が隆起していることが判明した(Fig. 1b).粘膜ひだが消失しない程度の弱い圧迫を加えると,病巣全体が透亮像として描出され(Fig. 1c),ひだが消失するような強い圧迫を加えても病巣の輪郭が追えることから,ある程度の厚みがある病巣と判定できる(Fig. 1d).
〔胃内視鏡所見〕 胃体下部後壁に発赤調の強い陥凹性病変を認めた.陥凹局面はほぼ均一な小区構造を有している(Fig. 2a).空気量を少なくして,斜め方向から観察しても,凹凸は少なく,周辺隆起も存在しない(Fig. 2b).色素撒布を行うと,病巣の均一構造がより明瞭となる(Fig. 2c).
〔超音波内視鏡所見〕 20MHz超音波プローブを用いた観察では,病巣部の第2層は保たれており,粘膜下層への直接癌浸潤の所見は認めなかった.しかし,第3層内に低エコーの濾胞様小結節が存在することから,粘膜下層のリンパ濾胞と考えられた(Fig. 3).生検で得られた癌組織がEBV(Epstein-Barr virus)関連胃癌を示唆するものであったことより,粘膜下層のリンパ濾胞浸潤を疑った.
以上より,粘膜下層に浸潤した胃癌と診断し,内視鏡的切除ではなく幽門側胃切除術を施行した.
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