胃と腸 30巻7号 (1995年6月)

今月の主題 大腸の悪性リンパ腫

序説

大腸の悪性リンパ腫 牛尾 恭輔
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 本誌「胃と腸」では,23巻12号(1988年)と24巻5号(1989年)の2号にわたって,「腸の悪性リンパ腫」が特集として組まれた.そののち6年の問に,消化管の悪性リンパ腫には,従来のRLH(reactive lymphoreticular hyperplasia)と悪性リンパ腫との関係についての新たな考え方,MALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫とMLP(multiple lymphomatous polyposis)との関係,ATLL(adult T-cell leukemia/lymphoma)とMLPとの鑑別診断などが話題になってきた.特に1983年,Isaacsonらが,リンパ節外性に発生し,予後が比較的良いと報告したリンパ腫は,現在ではMALTリンパ腫と呼ばれ,消化管の悪性リンパ腫にも少なからぬ影響を与えている.その1つに,これまで胃の“前リンパ腫状態”とみなされた病変やRLHと呼ばれてきた病変の中には,このMALTリンパ腫が含まれるものがあることがわかりつつある.すなわち,従来の胃RLHの中には,消化管のリンパ組織の中で,マントル層に由来する悪性度の低いリンパ腫である,とみなす見解が強まりつつある.

 このような背景のもとで,①大腸でもRLHやMALTリンパ腫とみなす病変はあるのか? あるとすればその特徴は? ②RLHやMALTリンパ腫の病変は,胃と腸で形態に類似性や相違性がみられるか? ③いわゆるrectal tonsilは良性か,それとも悪性度の低いリンパ腫か? ④大腸原発の悪性リンパ腫と全身性の悪性リンパ腫の鑑別はつくか? ⑤MLPの初期像とは? ⑥遺伝子解析の手法はどこまで可能となっているか? などが新たな話題となっている.なお,RLH,MLPやrectal tonsilの病変と10mm以下の病変の形態像からみて,リンパ腫でも肝癌や大腸癌のように多段階的な発育進展によって,悪性度が増して悪性リンパ腫となると考えたほうが理解しやすい.この意味からしても,臨床側が画像的に明らかにしてきた小さな病変は,リンパ腫の腫瘍学に新たな概念と知見を与えるであろう.今回の特集では,MLP,ATLL,小さなリンパ腫,良性のリンパ濾胞性ポリープ,T-cellリンパ腫などが報告されるはずである.

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要旨 腸管の中で,大腸は腸内細菌数が最も多く,また排泄物を貯蔵していることから,大腸粘膜はこれらの菌体抗原や腸管内容物の分解産物に曝され,想像を絶する抗原刺激や化学物質の侵襲を受けている.しかし大腸粘膜には,これらを巧みに排除し,組織細胞の障害を防御する機能が備わっている.その主要な役割を果たしているのが,粘膜表面を覆う粘液層および粘膜免疫を中心とした生体防御機構であり,それを担う構造的基盤が消化管リンパ装置である.このリンパ装置はこうした特異な大腸内環境に適応した形態と機能を獲得している.そしてこの生体防御機構の破綻により,大腸粘膜のみならず全身に様々な炎症免疫疾患が惹起される.

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要旨 原発性大腸悪性リンパ腫26症例について,臨床病理学的立場から検討した.本腫瘍は肉眼的に一応,潰瘍型13例,隆起型9例,びまん浸潤型4例の3型に分類されたが,多少分類に困難を感じる症例も存在し,肉眼的多彩性を示唆していた。Updated Kiel分類に基づく組織分類ではB細胞性リンパ腫21例中15例が低悪性群,6例が高悪性群と分類され,前者群15例中11例が狭義のMALTリンパ腫と診断された.T細胞性リンパ腫4例はすべて高悪性群に属した.1例はT・B細胞型の決定不能であった.このように組織像も多彩性を示していた.本腫瘍の5年生存率は41.6%と低かったが,Updated Kiel分類による組織型別5年生存率は高悪性群で10.8%,低悪性群で61.6%と後者で有意に良好であった.以上の結果から,本腫瘍は肉眼上も組織学的にも多彩性を示し,予後不良の腫瘍であることが確認された.加えて,Updated Kiel分類は肉眼形態とある程度の相関を示し,かつ予後決定因子となりうることを指摘した.

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要旨 悪性リンパ腫の浸潤,転移によると思われる,多発性大腸微小病変(5mm以下)の内視鏡的および生検組織学的検討を行った.大腸内視鏡的特徴は,中心陥凹を有する平滑な粘膜下腫瘍または扁平隆起が多発し,全大腸にほぼ均等に分布していた.通常の腫大したリンパ濾胞よりも平坦な形態が多く,色素撒布による注意深い観察が必要であった.病理組織学的所見の特徴はいずれもびまん性悪性リンパ腫(B細胞型)で,粘膜下層を中心に比較的境界明瞭,かつ密に浸潤・増殖していた.病巣内には胚中心を伴う濾胞構造はほとんど認められなかった.

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要旨 大腸原発悪性リンパ腫10例13病変について大腸X線および内視鏡所見を中心に検討した.肉眼形態は限局型とびまん型に分けられ,限局型は隆起型7病変,潰瘍型5病変,びまん型は1病変であった.隆起型は表面平滑な例では粘膜下腫瘍と診断されたが,粗大結節状を呈し,癌と鑑別困難な例もあった.潰瘍型は周堤が平滑で潰瘍の辺縁が鮮明なものは粘膜下腫瘍と診断されたが,2型癌と鑑別困難な例もあった.びまん型では炎症性腸疾患との鑑別も問題となった.画像診断のみで悪性リンパ腫と診断できるような特徴的な所見はなく,生検で診断できた例も42.9%にすぎなかった.本症は多彩な肉眼形態を取るので,他の腫瘍性疾患はもちろん炎症性疾患と鑑別困難な画像所見を呈しうることを知っておくことが重要であり,悪性リンパ腫に類似する画像を呈した他疾患症例も併せ呈示した.

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要旨 multiple lymphomatous polyposis(MLP)の大腸病変の特徴を明らかにするために12例のMLPの画像所見を検討した.結節性病変は大腸に最も好発し,特徴として,①粘膜下腫瘤の所見を有する様々な大きさの平滑な結節性病変が多発する,②結節性病変は中心陥凹を伴うことがある,③結節性病変は盲腸・直腸に好発する,④結節性病変が密在しても腸管の拡張は良好であり,狭窄は認められない,⑤回盲弁・盲腸の腫瘤性病変を合併することがある,⑥結節性病変に加え,ひだの腫大,bridging fold様所見,びらんなどを伴うことがある,などが挙げられる.これらの特徴的所見から,他の大腸に多発結節性病変を来す疾患と鑑別可能と考えられる.

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要旨 7症例のATLの大腸病変についてX線像および内視鏡像の特徴と腫瘍細胞の浸潤様式について検討した.病変はほぼ大腸全体に広範囲にみられた.画像所見および腫瘍細胞の浸潤様式を考慮し,肉眼型をびまん浸潤型,多発びまん浸潤型および多発結節型の3つに分類した.びまん浸潤型は腫瘍細胞が腫瘤をつくらず,大腸壁をびまん性に浸潤するタイプで2例みられた.画像上はそれぞれ,びまん性の微細顆粒状隆起と顆粒状隆起を呈した.このほかにびまん浸潤型として,文献例では脳回様の粘膜肥厚を呈す症例もみられた.多発びまん浸潤型は腫瘍細胞が小さな腫瘤をつくり,びまん性に浸潤するタイプであり1例みられた.画像上はたこいぼびらん様隆起が密在してみられた.また,多発結節型は腫瘍細胞がポリープまたは結節状の腫瘤をつくり多発散在するタイプで,腫瘤の中心にびらんまたは小潰瘍を伴うことが多かった.多発結節型は4例みられ,画像上はMLP様の所見を呈した.びまん浸潤型は難治性の下痢を呈したが,他の病変では腫瘍細胞の浸潤による下痢はみられなかった.ATLは基本的には全身性悪性リンパ腫であるが,白血化しやすく,また臓器浸潤傾向が強いという性格も合わせて持っており,このことが腫瘍細胞の浸潤の様式と程度に密接に関係し,大腸病変を多彩にしていると考えられた.

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要旨 患者は44歳,女性.発熱,倦怠感,下痢の精査治療目的で入院.両側鎖骨上窩,左鼠径部にリンパ節を触知し,CTでは両側腋窩リンパ節腫大と脾腫を認めた.末梢血では白血球数および分画中の異常リンパ球高値を認め,ATLA陽性,HTLV-Iプロウイルスが検出された.消化管では胃,小腸,大腸に病変がみられ,特に大腸ではポリポーシスの形態を呈していた.大腸からの生検組織でATL細胞の浸潤が確認され,広範に消化管浸潤を伴ったATLと診断し,化学療法を施行したところ,症状は改善し消化管の病変も消褪した.以上,大腸にポリポーシスの形態を呈する浸潤を認めたATLの1例を報告し,ATLの大腸病変の画像所見について文献的考察を加えた.

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要旨 患者は57歳,男性.難治性下痢を主訴に釜石病院を受診し,血液検査で白血球の高値を指摘された.当院初診時,白血球数は171,500/μl,血清抗HTLV-I抗体は陽性で,LDHは461IU/lと高値を示した.末梢血,骨髄ともに腫瘍細胞が多数を占め,末梢血に典型的なflower cellを認め,成人T細胞白血病/リンパ腫と診断された.表在リンパ節腫大は認めなかったが,腹部USで肝門部リンパ節の腫大を認め,腹部CTでは胆囊床,門脈周囲にlow densityを認め腫瘍浸潤と考えられた.消化管X線・内視鏡検査では,胃に多発微小びらんを,小腸にはKerckring皺襞の著明な腫大と微小びらんを伴う不整粘膜像を認めた.特に大腸には,中心陥凹を伴う4~5mmの比較的均一な大きさの小隆起が散在性に多発して認められ,悪性リンパ腫でいうmultiple lymphomatous polyposis(MLP)と類似の所見を呈した.胃の微小びらん,および大腸の小隆起からの生検組織診において,non-Hodgkinリンパ腫(T細胞型)と診断された.以上から,本症例は胃,小腸,大腸に消化管浸潤を伴い,特に大腸においてMLPと類似の所見を呈した成人T細胞白血病/リンパ腫の1例と考えられた.

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要旨 患者は43歳の男性.血便を主訴に来院.緊急大腸内視鏡検査で横行結腸に狭窄病変を認め,入院のうえ加療を行った.注腸X線像でも横行結腸に潰瘍面を伴った全周性の狭窄病変を認めたため,横行結腸切除術を行った.病理組織学的検索の結果non-Hodgkin's lymphoma,large cell typeであり免疫組織化学的染色ではLCA,UCHL-1陽性でL-26は陰性でT細胞性のリンパ腫であった.

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要旨 腹部症状で発症し,胃・回盲部に主病変を認めたが,胸部・腹部のリンパ節腫大があり,病期分類ではⅥB期であった.胃病変は佐野らの分類で表層拡大型と考えられ,良好な治癒成績により,MALTリンパ腫も考えたが,CT・臨床症状から粘膜関連リンパ組織由来のB細胞性リンパ腫の可能性もある.胃・回盲部に病変の存在することから,全身症状に拡がったリンパ腫の可能性を否定できなかった.化学療法(VEPA)によりCR(著効)になり,治療後3年間再発を認めない.

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要旨 直腸原発の小さな限局型悪性リンパ腫の1例を経験した.患者は61歳,女性.症状はなかった.久保医院での大腸癌検診でポリープを指摘され,1994年1月21日当科初診.大腸内視鏡検査,注腸X線検査で上部直腸にX線像上大きさ16mmの粘膜下腫瘍を認めた.生検診断はMALTリンパ腫疑いであった.EUSでは第2層・第3層に限局する境界明瞭な低エコー腫瘤を認め,わずかな内部点状高エコーを混じていた.体表リンパ節および肝・脾を触知せず,また,末梢血液検査,胸部X線・CTでも異常を認めず,直腸に限局した原発性悪性リンパ腫を考え,EMRを施行した.切除標本では大きさ10mmのnon-Hodgkin・びまん型悪性リンパ腫と診断された.

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要旨 患者は,66歳,男性.4年前に直腸カルチノイドを内視鏡的に切除した.その経過観察を目的とした大腸内視鏡検査で,回盲弁に異常を認め,精査目的で入院.大腸X線検査では回盲弁に小隆起が密集し,また内視鏡検査でも同部に発赤した小隆起が多発していた.小隆起の一部を内視鏡的に切除し,その病理組織学的検索の結果,隆起は回盲弁上皮に覆われた良性のリンパ濾胞増殖により形成されていた.以上から,良性リンパ濾胞性ポリープと診断した.本例は回盲弁に限局した良性のリンパ濾胞過形成であったが,上皮性腫瘍との鑑別を要した.また,内視鏡的ポリペクトミーがその診断上有用であった.

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〔患者〕65歳,女性,自営業.下腹部不快感があり近医を受診.便潜血陽性を指摘され,当科を受診した.検査成績では,便潜血陽性のほか軽度貧血を認めた.

〔注腸X線所見〕盲腸に径約2.5cm大の半球状の隆起性病変を認めた.隆起の肛門側は辺縁整で境界も明瞭であったが(Fig.1),虫垂側は辺縁が不整で,その表面は結節状であった(Fig.2).

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〔患者〕42歳,女性,会社員.1987年8月初旬から感冒様症状が出現.9月4日から関節痛,大腿部以下の下肢に紫斑が出現した(Fig.1).9月9日には心窩部痛が出現し,黒色便,コーヒー様残渣を嘔吐したため入院となった.入院時,四肢を中心に紫斑,点状出血を認め,一般検査では尿蛋白,尿潜血陽性,白血球増多,CRP陽性,IgAの軽度高値を認めた.

〔小腸X線所見〕第2病日に施行した小腸造影検査では上部空腸に魚骨状陰影,Kerckring皺襞の腫大を認めた(Fig.2).更に回腸にも粘膜の浮腫および栂指圧痕像などがみられた(Fig.3).

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 世情を反映してか雨天続きの外界から離れ,快適空間のパシフィコ横浜では1995年5月9日から4日間,消化器関連学会が多数の会員の参加のもと盛大に行われた.

 消化器病学会では,より基礎的な分野と臨床的な分野の発表がうまく組み合わされていた.

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 日本消化器関連学会週間(DDW-Japan 1995)は1995年5月9日から12日まで,パシフィコ横浜で行われた.今回の特徴の1つとして,一般演題の中から特により深い議論が必要と考えられる演題について,プレリナリーセッション(ミニワークショップ)を設けて十分に時間をかけて討論がなされていた.特に消化器病学会のプレナリーセッションは司会,コメンテーターともその分野の第一人者の先生方がされており,時間も1演題30分と十分に深く細かい討論がなされていた.大腸に関係した分野ではNO(一酸化窒素)関連の発表が多くみられ,消化管の基礎的分野でのトピックスの1つとなっているとの印象を受けた。また,個人的には潰瘍性大腸炎に対する新しい治療法である白血球除去療法の有用性に関する発表が興味深かった.

 11日に行われた合同パネルディスカッション「早期大腸癌の深達度診断と内視鏡的治療」は八尾先生(福岡大筑紫病院消化器科),多田先生(京都第一日赤胃腸科)の司会の下に行われ,早期大腸癌の深達度診断の現状と展望に関する詳細な討論が行われた.大腸粘膜病変(腺腫および粘膜内癌)における病理組織学的判定基準や表面型大腸腫瘍の肉眼分類が各施設問で一定していないことはよく問題となっているが,sm癌のsm浸潤度の基準に関しても施設ごとの違いが明らかとなった.すなわち,一般的に用いられている相対分類(工藤らの分類)のみでは,特に内視鏡切除後に追加手術を施行するか否かの判定には不十分で,sm浸潤量は絶対浸潤量を用いるべきであるとの意見が出され,sm癌の亜分類についても今後の意見統一が望まれた.また各施設から多くの症例をもとにした深達度診断に有用な所見,指標が示されたが,フロアから長廻先生(群馬県立がんセンター),丸山先生(癌研病院内科)らのご意見があったように,既報と同様の所見や指標を独自の名称に変更しての発表もみられ,新たに名称を変える意義について考えよ,以前言われたことの繰り返しであるとの厳しい指摘もあった.会場は盛況であったが全体に演者間での討論が少なく,今一番ホットな分野の1つであるだけにやや残念な感があった.

レベルアップ講座 診断困難例から消化管診断学のあり方を問う

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(症例)患者は57歳,男性.心窩部痛があり,本院を受診した.1992年9月30日,上部消化管内視鏡検査を施行した.1992年9月30日,上部消化管内視鏡検査を施行した.胃体上部後壁に淡い発赤を呈する楕円形の浅い陥凹がみられた.陥凹底は平坦で周辺粘膜との境界には蚕喰像はみられなかったが,陥凹の形状からⅡCまたは陥凹型腺腫を強く疑った(Fig.1).しかし,生検組織診断では再生異型(Group Ⅱ)との報告であった(Fig.2).悪性病変を否定できず,11月9日内視鏡検査,11月10日超音波内視鏡検査,11月13日上部消化管造影検査を行った.内視鏡所見と生検診断は初回と同様であった.超音波内視鏡検査ではulcer echoは扇状に第3層内に拡がり,Ul-Ⅱ潰瘍との鑑別が困難であった(Fig.3).しかし,造影検査では浅い陥凹境界にはみ出し所見が認められ,悪性を強く疑った(Fig.4).このため,内視鏡検査を繰り返し行ったが,悪性所見は認められないとの報告があった.1994年3月,生検診断で胃癌(Group Ⅴ)の確診を得るまでに,初回から計5回の生検を施行した.最終回の内視鏡所見は,陥凹は深掘れとなり,周辺にははみ出し所見と病変の台状挙上がみられるようになっていた(Fig.5).

 切除標本では,1.5×1.3cmの陥凹を中心として発育する高分化型腺管腺癌が認められた(Fig.6,7).粘膜面の浸潤は陥凹部にほぼ一致し浸潤していたが,粘膜下層以深へは幅広く浸潤していた.また,深部浸潤は固有筋層に至っており,ⅡC類似進行癌と診断した.

早期胃癌研究会

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 1994年12月の早期胃癌研究会は12月21日(水),神津照雄(千葉大学第2外科)と斉藤利彦(東京医科大学第4内科)の司会で行われた.

 〔第1例〕60歳,男性.表層拡大型食道表在癌(症例提供:愛知県がんセンター消化器内科 鈴木隆史).

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 1995年1月度の早期胃癌研究会は1月18日(水)に開催された.司会は吉田操(東京都立駒込病院外科)と渕上忠彦(松山赤十字病院消化器科)が受け持った.昨年12月29日にわれわれの先達である白壁彦夫先生を失い,葬儀後初めての研究会であった.更に,阪神大震災の翌日でもあり関西方面からの出席者が少なかったが,まだ詳細は不明で,あのような大惨事とは予想していなかったのである.研究会の開始に先立ち司会の発議により,白壁彦夫先生の御冥福を祈り,参加者全員で黙祷を捧げた.

 〔症例1〕70歳,女性.胃癌術後検診時のX線透視で発見された上部食道の隆起性病変(症例提供=松山赤十字病院胃腸センター 井廻宏).

追悼

わが心の友,喜納勇先生 中村 恭一
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 1963年秋より太田邦夫先生のご指導のもと,癌研で一緒に外科病理学,なかでも消化管病理の勉強を始めて32年このかた,“喜納さん,今日の夜7時”,“OK”.また,“お一い,今日の夜8時”,“OK”.このような場所のない呼びかけで,年何回となく東京駅に近いホテルのバーで水割りを傾けながら,夜の11時まで,研究のことなどいろいろなことについて話し込んだものです.いつとはなしに場所を言わなくともそこに決まってしまったのは,多少集合時間に遅れても1人で飲んでいれば互いに気にならないこと,また,飲むうちに互いに興奮してきて時間を忘れがちになる傾向がありましたが,このバーは夜の11時に追い出してくれるという,単純なことからです.最近のこの集まりは1月21日土曜日でした.互いに年を取って酒量は多少減ったとはいうものの,病理学の在り方,研究に関すること,学会のこと,遊びのことなどについて甲論乙駁,相も変わらず話がはずみました.また,1月26日の第42回大腸癌研究会が,最後の出会いとなってしまいました.

 喜納さん,今,ここで報告することが1つあります.われわれが毎年行っている国際消化器癌病理学研修会に参加した約150名の研修病理医のうち,3人の病理医(コロンビア,ブラジル,トルコ)が3月下旬に開催された第1回国際胃癌会議に出席しました.そのうちの1人は,1987年に喜納さんの教室で勉強したコロンビアのDr.Gonzalo Valencia Bermudezです.彼にこの悲報を知らせたところ,しばし声もなく,そのあとボソボソと“En tan dolorosos momentos todas las palabras son insuficientes para aliviar tan gran pena.こういう悲嘆のうちにあっては,すべての言葉はこんなに大きな心痛を軽減するには不十分である”というようなことを言ったように記憶しています.彼は会議終了後,大学で喜納さんの教えを乞う予定だったそうです.喜納さんへのお土産,クンビアのCDを預かっているので今渡します.

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欧文目次

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 Metabolism of ethanol in rat gastric cells and its inhibition by cimetidine: Ali S, Mirmiran-Yazdy A, et al (Gastroenterology 108: 737-742, 1995)

 アルコールは経口投与された場合,それが経静脈的に投与された場合に比し血中アルコール値が低値となるが,これは胃にエタノール代謝の第一過程が存在することを示唆する現象である.胃をバイパスする実験系や胃切除後のケースで確認されてきたが,更に,胃には相当量のアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)が存在し,cimetidineやある種のヒスタミンH2受容体拮抗剤はこの活性を抑制するとの報告もみられる.しかし一方で,胃でのアルコール代謝は無視できるほど微量で,H2受容体拮抗剤も血中のアルコール濃度を増加させないとの反論の報告もある.そこで著者らは,アルコール代謝の胃における役割を明らかにする目的で,培養胃粘膜細胞を用いin vitroの系で検討した.

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 Hepatic metastases from colorectal cancer: Detection and falsepositive findings with helical CT during arterial portography: Soyer P, Bluemke DA, Hruban RH, et al (Radiology 193: 71-74, 1994)

 大腸癌の肝転移に対して,ヘリカルCTAPを用いた誤正率を調べ,ヘリカルCTAPの有用性を決定するために検索を行った.

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 このような辞典が欲しいと,かねがね思い続けてきた.この四半世紀,分子生物学・免疫学の発展には目覚ましいものがあり,医学の諸領域はその著しい影響を受けつつある.評者が携わる精神医学の分野も例外ではなく,例えば精神分裂病や痴呆の成因探求や治療法の開発にかかわる様々な分子生物学的研究が近年にわかに活発になり,その成果のいくつかが精神医学研究の最先端のトピックスとして注目を浴びはじめているのもその表れと言える.

 しかし,注目することと理解することとは同じではない.理解したい思いがいくら強くとも,分子生物学や免疫学のような日進月歩の領域で起こっている事柄を理解することは,それらを特に専門とはしない人々にとっては,今日増々難しくなってしまっている.第一,それらの領域で日々つくられ活用されている用語の意味内容を調べるだけでも大変な労力を要するし,そうして個々の用語を調べえても,それらの概念の“組織”が多少とも把握できなければ十分な理解は得られまい.単なる用語辞典はこの領域の門外漢にはあまり役に立たない.のみならず,十分な理解が得られない不全感に苛まれる.

編集後記 西元寺 克禮
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 大腸は食道とともに,全消化管の中で悪性リンパ腫が少ない臓器であるが,近年症例検討会でもしばしばお目にかかるようになっている.胃の悪性リンパ腫は周知のごとく,表層型,巨大皺襞型,潰瘍型,決潰型,隆起型に分けられるが,近年表層型の占める割合が増加していること,組織学的にはこれらがIsaacsonらが提唱したMALTリンパ腫であるものが大部分を占めることなどが注目されている.大腸に発生する悪性リンパ腫の肉眼分類は確定していないが,表層型に相当するものは極めて少ないようで,これは診断学的な問題なのか,小腸や大腸では発育・成長上,胃と異なったものなのか,今後解明されなければならない。本号では浸潤,転移したと思われる多発微小病変,MLPの大腸病変,ATLの大腸病変,良性リンパ濾胞性ポリープ,T細胞性悪性リンパ腫など興味ある症例が掲載されている.これらの病変と悪性リンパ腫との関係は大いに興味のあるところであり,呈示された悪性リンパ腫症例の多彩さも,診断学上の好奇心をかき立ててやまない.症例の蓄積が今後の整理のために必要であろう.

基本情報

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胃と腸
30巻7号 (1995年6月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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