レベルアップ講座 診断困難例から消化管診断学のあり方を問う
生検診断を盲信したⅡc類似進行胃癌の1例
小池 盛雄
1
1東京都立駒込病院病理
pp.960-962
発行日 1995年6月25日
Published Date 1995/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403105461
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(症例)患者は57歳,男性.心窩部痛があり,本院を受診した.1992年9月30日,上部消化管内視鏡検査を施行した.1992年9月30日,上部消化管内視鏡検査を施行した.胃体上部後壁に淡い発赤を呈する楕円形の浅い陥凹がみられた.陥凹底は平坦で周辺粘膜との境界には蚕喰像はみられなかったが,陥凹の形状からⅡCまたは陥凹型腺腫を強く疑った(Fig. 1).しかし,生検組織診断では再生異型(Group Ⅱ)との報告であった(Fig. 2).悪性病変を否定できず,11月9日内視鏡検査,11月10日超音波内視鏡検査,11月13日上部消化管造影検査を行った.内視鏡所見と生検診断は初回と同様であった.超音波内視鏡検査ではulcer echoは扇状に第3層内に拡がり,Ul-Ⅱ潰瘍との鑑別が困難であった(Fig. 3).しかし,造影検査では浅い陥凹境界にはみ出し所見が認められ,悪性を強く疑った(Fig. 4).このため,内視鏡検査を繰り返し行ったが,悪性所見は認められないとの報告があった.1994年3月,生検診断で胃癌(Group Ⅴ)の確診を得るまでに,初回から計5回の生検を施行した.最終回の内視鏡所見は,陥凹は深掘れとなり,周辺にははみ出し所見と病変の台状挙上がみられるようになっていた(Fig. 5).
切除標本では,1.5×1.3cmの陥凹を中心として発育する高分化型腺管腺癌が認められた(Fig. 6,7).粘膜面の浸潤は陥凹部にほぼ一致し浸潤していたが,粘膜下層以深へは幅広く浸潤していた.また,深部浸潤は固有筋層に至っており,ⅡC類似進行癌と診断した.
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