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日本消化器関連学会週間(DDW-Japan 1995)は1995年5月9日から12日まで,パシフィコ横浜で行われた.今回の特徴の1つとして,一般演題の中から特により深い議論が必要と考えられる演題について,プレリナリーセッション(ミニワークショップ)を設けて十分に時間をかけて討論がなされていた.特に消化器病学会のプレナリーセッションは司会,コメンテーターともその分野の第一人者の先生方がされており,時間も1演題30分と十分に深く細かい討論がなされていた.大腸に関係した分野ではNO(一酸化窒素)関連の発表が多くみられ,消化管の基礎的分野でのトピックスの1つとなっているとの印象を受けた。また,個人的には潰瘍性大腸炎に対する新しい治療法である白血球除去療法の有用性に関する発表が興味深かった.
11日に行われた合同パネルディスカッション「早期大腸癌の深達度診断と内視鏡的治療」は八尾先生(福岡大筑紫病院消化器科),多田先生(京都第一日赤胃腸科)の司会の下に行われ,早期大腸癌の深達度診断の現状と展望に関する詳細な討論が行われた.大腸粘膜病変(腺腫および粘膜内癌)における病理組織学的判定基準や表面型大腸腫瘍の肉眼分類が各施設問で一定していないことはよく問題となっているが,sm癌のsm浸潤度の基準に関しても施設ごとの違いが明らかとなった.すなわち,一般的に用いられている相対分類(工藤らの分類)のみでは,特に内視鏡切除後に追加手術を施行するか否かの判定には不十分で,sm浸潤量は絶対浸潤量を用いるべきであるとの意見が出され,sm癌の亜分類についても今後の意見統一が望まれた.また各施設から多くの症例をもとにした深達度診断に有用な所見,指標が示されたが,フロアから長廻先生(群馬県立がんセンター),丸山先生(癌研病院内科)らのご意見があったように,既報と同様の所見や指標を独自の名称に変更しての発表もみられ,新たに名称を変える意義について考えよ,以前言われたことの繰り返しであるとの厳しい指摘もあった.会場は盛況であったが全体に演者間での討論が少なく,今一番ホットな分野の1つであるだけにやや残念な感があった.
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