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本誌「胃と腸」では,23巻12号(1988年)と24巻5号(1989年)の2号にわたって,「腸の悪性リンパ腫」が特集として組まれた.そののち6年の問に,消化管の悪性リンパ腫には,従来のRLH(reactive lymphoreticular hyperplasia)と悪性リンパ腫との関係についての新たな考え方,MALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫とMLP(multiple lymphomatous polyposis)との関係,ATLL(adult T-cell leukemia/lymphoma)とMLPとの鑑別診断などが話題になってきた.特に1983年,Isaacsonらが,リンパ節外性に発生し,予後が比較的良いと報告したリンパ腫は,現在ではMALTリンパ腫と呼ばれ,消化管の悪性リンパ腫にも少なからぬ影響を与えている.その1つに,これまで胃の“前リンパ腫状態”とみなされた病変やRLHと呼ばれてきた病変の中には,このMALTリンパ腫が含まれるものがあることがわかりつつある.すなわち,従来の胃RLHの中には,消化管のリンパ組織の中で,マントル層に由来する悪性度の低いリンパ腫である,とみなす見解が強まりつつある.
このような背景のもとで,①大腸でもRLHやMALTリンパ腫とみなす病変はあるのか? あるとすればその特徴は? ②RLHやMALTリンパ腫の病変は,胃と腸で形態に類似性や相違性がみられるか? ③いわゆるrectal tonsilは良性か,それとも悪性度の低いリンパ腫か? ④大腸原発の悪性リンパ腫と全身性の悪性リンパ腫の鑑別はつくか? ⑤MLPの初期像とは? ⑥遺伝子解析の手法はどこまで可能となっているか? などが新たな話題となっている.なお,RLH,MLPやrectal tonsilの病変と10mm以下の病変の形態像からみて,リンパ腫でも肝癌や大腸癌のように多段階的な発育進展によって,悪性度が増して悪性リンパ腫となると考えたほうが理解しやすい.この意味からしても,臨床側が画像的に明らかにしてきた小さな病変は,リンパ腫の腫瘍学に新たな概念と知見を与えるであろう.今回の特集では,MLP,ATLL,小さなリンパ腫,良性のリンパ濾胞性ポリープ,T-cellリンパ腫などが報告されるはずである.
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