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1963年秋より太田邦夫先生のご指導のもと,癌研で一緒に外科病理学,なかでも消化管病理の勉強を始めて32年このかた,“喜納さん,今日の夜7時”,“OK”.また,“お一い,今日の夜8時”,“OK”.このような場所のない呼びかけで,年何回となく東京駅に近いホテルのバーで水割りを傾けながら,夜の11時まで,研究のことなどいろいろなことについて話し込んだものです.いつとはなしに場所を言わなくともそこに決まってしまったのは,多少集合時間に遅れても1人で飲んでいれば互いに気にならないこと,また,飲むうちに互いに興奮してきて時間を忘れがちになる傾向がありましたが,このバーは夜の11時に追い出してくれるという,単純なことからです.最近のこの集まりは1月21日土曜日でした.互いに年を取って酒量は多少減ったとはいうものの,病理学の在り方,研究に関すること,学会のこと,遊びのことなどについて甲論乙駁,相も変わらず話がはずみました.また,1月26日の第42回大腸癌研究会が,最後の出会いとなってしまいました.
喜納さん,今,ここで報告することが1つあります.われわれが毎年行っている国際消化器癌病理学研修会に参加した約150名の研修病理医のうち,3人の病理医(コロンビア,ブラジル,トルコ)が3月下旬に開催された第1回国際胃癌会議に出席しました.そのうちの1人は,1987年に喜納さんの教室で勉強したコロンビアのDr. Gonzalo Valencia Bermudezです.彼にこの悲報を知らせたところ,しばし声もなく,そのあとボソボソと“En tan dolorosos momentos todas las palabras son insuficientes para aliviar tan gran pena.こういう悲嘆のうちにあっては,すべての言葉はこんなに大きな心痛を軽減するには不十分である”というようなことを言ったように記憶しています.彼は会議終了後,大学で喜納さんの教えを乞う予定だったそうです.喜納さんへのお土産,クンビアのCDを預かっているので今渡します.
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