胃と腸 26巻1号 (1991年1月)

今月の主題 早期胃癌―診断の基本と方法

序説

早期胃癌診断の基礎 丸山 雅一
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 今日,早期胃癌の診断(X線・内視鏡)はあまりにも進歩したために,われわれは,既にこれを理論的に診断する段階を超えて,直観的な診断を下す段階に到達しているような気がする.すなわち,X線所見にしろ,内視鏡所見にしろ,ある異常所見に遭遇した場合,多くの場合には,自分の記憶の中で過去における同様な異常所見を検索・照合して,瞬時にして正確な診断を行うことが可能になっている.われわれの早期癌の経験がそれだけ豊富になったということの証であろう.

 かつて,この道の先人たちは,手探りとも言える状況の中で早期胃癌の診断を模索し,それらしい1例を経験すれば,祈るような気持ちで病理の最終診断を待ったものだという.祈るような気持ちという中からは,牽強付会な診断の理論も出現したことがあったし,また,特殊例から一般論を導くといった危険な論理の構築が行われた時代もあったようだ.

主題 Ⅰ.診断の基本

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要旨 胃癌の発生の場と組織型と肉眼型とは,F境界線の経時的変化と癌組織発生でもって強く結ばれていて,いわば“胃癌の三角(the triangle of stomachcancer)”とも言うべきものを形成している.早期胃癌診断のための基本とは,それらの関係についてである.胃癌の場と組織型と肉眼型とに関する情報は,X線・内視鏡・生検によって術前に得ることができるのであるが,それらから良質な情報が1つしか得られなくとも,“胃癌の三角”を考慮することによって他のことを推測することができる.更には,それらの術前の情報に基づいて最善の処置が可能となる.癌発生の場{F線内部領域,F線近傍領域,F線外部領域}を3つに分けることによって,それぞれの場における“胃癌の三角”を早期胃癌診断の基本とすることができる.

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要旨 1cm以上の潰瘍を伴わない陥凹型早期癌のうち,術前に空気量を変えて病変を写し分けたX線所見とホルマリン固定後の肉眼所見との対比が可能であった39病変(m癌25病変,sm癌14病変;分化型27病変,未分化型12病変)を材料とした.ルーチンX線検査を施行した33病変のうち11病変(33.3%)を拾い上げた.陥凹面の性状は顆粒状では陥凹が0.5mm以下が87%(20/23)を占め,均一無構造状では1.0mm以上が56%(9/16)と多く,陥凹の深さと関連がみられた.陥凹周囲に隆起所見を認めたものは4&1%(19/39)で,分化型に多く,X線所見において隆起所見は78.9%(15/19)にあり,いずれも圧迫法で透亮像としてみられた.辺縁の変形のあるものはsmが80%(4/5),ないものはmが81.8%(9/11)を占め,変形と深達度とに関連がみられた.肉眼所見とX所見との対比が困難な症例を呈示し,圧迫では陥凹周囲の隆起性変化の有無が描出には重要であること,二重造影では陥凹が軽微になるほど肉眼所見とX線所見の一致は難しく,この差を認識して診断する訓練や部位,空気量の違いを考慮する必要があることが考えられた.

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要旨 慢性胃炎と鑑別困難な早期胃癌74例を対象として内視鏡所見とマクロ所見の比較検討を行った.内視鏡的に褪色を主体とする15例中9例(60%)はマクロ上,陥凹像に一致した.発赤を主体とする40例では陥凹像(19例:48%)以外に隆起,胃小区の腫大像など多彩なマクロ像と対応した.凹凸像を主体とする19病変では内視鏡的にみられた領域性が切除標本では不明瞭となり,約半数が孤立性の小陥凹像として認められた.新鮮マクロと固定マクロの対応性は76%の症例で良好であったが,新鮮標本で異常所見を指摘できなかったものが16例あり,うち9例は固定標本で凹凸の異常が明らかとなった.これら9例は他の7例に比して分化型腺癌優位であり,Ⅱbを伴う頻度は少なかった.対象74例の領域診断成績は極めて不十分であり,一般に実際よりも小さく読む傾向が認められた.長径1cm以上の48例について,術後の構築図に基づいて浸潤境界部の内視鏡所見を見直すと,色調の異常を主体とするものでは褪色像が,凹凸の異常を示すものでは発赤像が最も高率に認められた(各59%,67%).色素撒布法を施行した63例について撒布前後の内視鏡所見および切除標本のマクロ所見を比較検討したが,質的診断,領域診断ともに本法の有用性は明らかであった.質的診断の有用性は発赤像,凹凸像の強調によって得られ,領域診断では発赤,陥凹像に加え褪色像が有用な診断指標となった.慢性胃炎像と鑑別困難な早期胃癌の診断学はまだまだ不完全であるが,存在診断における発赤や凹凸像,領域診断における褪色像の意義とその有用性などについては,今回の検討によって1つの手掛かりが得られたように思われた.

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要旨 早期胃癌の診断におけるコントラスト法の有用性を評価するため,スクリーニングの段階からコントラスト法を積極的に行っているわれわれの早期胃癌症例について検討した.長径20mm以下の病変が49.7%と多く,早期胃癌に占めるm癌の割合が71.6%と高かった.内視鏡的に根治可能な病変も16.3~22.6%含まれていた.コントラスト法による診断の内訳は,早期癌確診とその疑いが86.4%と多く,見逃しは3.6%にすぎなかった.通常内視鏡に比べてコントラスト法は,特に小病変の診断において格段に優れていた.内視鏡治療が可能になった現在,胃癌の診断目標は,早期胃癌の中でも,確実にリンパ節転移がないと言えるm癌に置くべきである.これには胃内に観察難点を持たないスコープ(筆者らは斜視型)を用い,そしてコントラスト法を応用した定期的な内視鏡検査が有効である.

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要旨 この10年間に長足の進歩を遂げ,臨床診断の場において術前検査の1つとして位置付けられつつある超音波内視鏡(EUS)の検査方法,現状,将来的展望について述べた.検査時には脱気水注入量の調節,体位変換,呼吸位の調節が重要で,また病変の同定が難しい場合には,鉗子生検を用いて同定する方法もある.EUSによる深達度診断を,胃癌321例(早期胃癌190例,進行胃癌131例)を対象として検討した.その正診率はm癌90.4%(94/104例),sm癌69.8%(60/86例),pm癌73.3%(22/30例),ss~s癌87.1%(88/101例)で,全体では82.2%(264/321例)であった.EUSによる胃癌深達度診断における現時点の問題点は,癌浸潤と潰瘍に伴う線維化の鑑別,Ⅰ型などの隆起型の成績がやや不良であること,胃角,前壁の正診率が他と比較しやや不良であること,病変が大きくなるに従い正診率が低下することなどである.まず第1の問題である癌浸潤と線維化の鑑別は,パターンよる判定である程度可能であるが,線維化内,近傍への微小浸潤例の正診は現時点では困難である.将来的にEUSによる深達度診断が現状を打破するためには,走査性の改善と臨床上の分解能の向上が重要と考えられる.また内視鏡用超音波プローブの今後の発展が期待される.

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要旨 現在の電子スコープ中,最も画素の多いEVG-HRのルーチン検査としての使用経験から,早期胃癌診断への応用についての検討を行った.画像は他器種より優れているが,早期胃癌の性状診断では分化型胃癌の範囲の診断,Ⅱbの診断には問題が残っている.微小胃癌の診断には今なお有用性は示されていない.しかし,今後の電子スコープの進歩はこれらの問題を解決していくものと思われる.

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 食道早期癌,特にep癌はX線検査での発見は困難であると言われている.本症例は内視鏡検査で発見された重複癌(EiとIu)の症例であるが,X線検査によるep癌の拾い上げ診断の指標として有効と思われる所見を得たので呈示する.

 〔患者〕63歳,男性.人間ドックで便潜血反応陽性を指摘され当科を受診.上部消化管内視鏡検査で下部食道に異常を指摘され精査入院となった.狭心症の病歴がある.

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 昨年,筑波大学基礎医学系病理の中村恭一教授,国立病院九州がんセンター放射線科の清成秀康部長,新潟大学医学部第1病理の渡辺英伸教授,それに都立駒込病院病理科・小池盛雄部長の4氏は,チリ共和国政府から消化器癌早期診断の指導教育の功績に対して“ベルナルド・オーヒギンズ勲章(Bernardo O'Hig-gins)”の叙勲を受けた(写真).チリ共和国には,このベルナルド・オーヒギンズ勲章と南十字星勲章の二つの勲章があるが,学術文化部門で貢献したものについてはベルナルド・オーヒギンズ勲章である.“ベルナルド・オーヒギンズ”はチリ国の“建国の父”と言われた人で,この叙勲は高く評価したい.

 チリ国保健省は日本の国際技術協力事業団(JICA)の後援により,毎年1回,サンチャゴ市にある保健省パウラ・ハラケマダ病院・胃癌診断センター(センター長はチリ大学医学部内科ペドロ・ヨレンス教授)で国際消化器病研修会(Curso Internacionalo de Avances en Gastroenterologia)を行っているが,4氏は研修会の講師として長年にわたって参加し,貢献してきたものである.その研修会には中南米諸国から多数の参加者があり,平成2年3月に行われた研修会には,参加者総数は約500余名にも達したということで

ある.

早期胃癌研究会

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 〔第1例〕54歳,女性.食道腺扁平上皮癌(症例提供:名鉄病院消化器科 間宮).

 食道X線写真は八巻(虎の門病院放射線診断科)が読影した.Eiの隆起性病変で立ち上がりがなだらかで,表面が平滑で潰瘍形成がみられず,粘膜下腫瘍様の悪性腫瘍すなわち既往歴にある乳癌の食道移転あるいは低分化・未分化の食道癌と診断した.内視鏡は長野(仙台市医療センター内科)が易出血性,隆起の立ち上がりに血管透見が見られる点から粘膜下発育型の悪性腫瘍であり,乳癌の転移,basaloidまたはadenocysticな特殊な食道癌と診断した.病理は下川(岐阜大病理)が説明した.切除標本はX線,内視鏡検査の1か月後のものであり,表面に潰瘍形成がみられ,術前診断時とは様相が異なっていた(Fig.1).上皮下,固有筋層,外膜に浸潤する腺扁平上皮癌であり,腺癌の部分は肛門側に,扁平上皮癌は口側に主にみられたと説明した.岩下(福岡大筑紫病院病理)は扁平上皮癌の中にはpseudogrand構造を持つものが10%ぐらいあると文献的にも報告されており,この症例は扁平上皮癌の診断でもよいとの見解が出された.吉田(都立駒込病院外科)は本例は腺扁平上皮癌としては粘膜下発育の顕著な症例であり,比較的めずらしいとコメントを述べた.出題者の意図もその点にあった症例であった.

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要旨 1976年10月に胆囊薄層造影法を開発し,これを1988年10月までに164症例に応用した.病変は胆囊小隆起性病変20例(胆囊癌1例,結節状隆起2例,コレステロールポリープ17例),胆囊腺筋腫症4例,胆囊胆石症23例,総胆管結石症8例,総胆管拡張症11例,胆管癌2例などである.同造影法は1回の検査で連続して前壁像,後壁像を描出する.薄い薄層像,薄層像,薄層+薄混合層像,薄層圧迫像,混合圧迫像から成り立ち,それぞれの性状を利用して,胆囊粘膜表面の凹凸を描出する.臨床例,基礎実験より胆囊薄層造影法による各種疾患の診断に言及し,薄層像ならびに薄層+薄混合層像が胆囊小隆起性病変の診断に最も有用であることを報告した.

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要旨 胃の実測立体模型を作製して左右側臥位の内視鏡像の違いを検討し,胃体部の観察には従来の左側臥位よりも右側臥位のほうが合理的であることが明らかとなった.左側臥位のみの内視鏡検査で7年5か月間に発見した96例の胃癌と,右側臥位での検査を追加した内視鏡検査で4年間に発見した胃癌50例のCMA領域別の早期癌比率を比較すると右側臥位を併用して以降はC領域40%,M領域39%,A領域41%と均一で,従来の左側臥位のみの検査での早期癌発見率の部位による偏りがなくなった.また小彎側への偏りも改善され,胃体部大彎の胃底腺および腺境界領域に深達度mの3例の未分化型早期癌と1例の分化型早期癌も発見されている.検査体位としての右側臥位の併用は,内視鏡検査における盲点の改善に寄与するものと思われた.

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要旨 未治療の成人T細胞性白血病3例と全身性悪性リンパ腫2例について大腸病変の有無をX線および内視鏡検査で検索した.5例中4例に1~7mmの微細病変が認められ,病変部からの生検では全例に腫瘍細胞とみなされる異型リンパ球の浸潤を証明した.化学療法により微細病変はほとんど消失し,治療後の生検標本には異型リンパ球を証明しなかった.未治療の成人T細胞性白血病や全身性悪性リンパ腫には大腸に高頻度に病変が存在するが,病変自体が微小・微細なために見逃されている可能性が高いと考えられた.

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要旨 患者は54歳,男性.糖尿病,肝機能障害で外来通院中,1987年7月下旬,黒色便と高度の貧血のため入院.消化管透視,内視鏡では出血源は明らかでなかったが,貧血の進行を認めず9月19日退院.10月下旬,再び黒色便となり11月2日再入院.入院時,赤血球146×104/mm3,血色素4.5g/dlヘマトクリット14.0%.第3病日,腹部血管造影を施行.上腸間膜動脈空腸枝末梢に異常血管の集簇,早期静脈還流を認め,小腸動静脈奇形と診断.小腸部分切除術を施行,以後貧血の進行は認めない.通常の消化管透視,内視鏡によって出血源不明な消化管出血の症例には血管造影も有用と思われ報告した.

初心者講座 胃X線検査のポイント―私の検査法

13.術後胃の撮影法 浜田 勉
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 1.検査前の基礎的事項

 まず,残胃と手術前の胃との解剖学的位置関係を理解しておく必要がある.胃の幽門側部分切除術を施行した後である残胃は,通常の胃のC領域にほぼ相当する.したがって,残胃における縫合部,吻合部,残胃部の各部は,術前の胃のC領域では,それぞれ胃体上部の小彎を中心とした全周の3/4の部分,胃体上部の大彎を中心とした全周の1/4の部分,噴門部と穹窿部を合わせた部分に対応させることができる(Fig.1).X線検査では,以上の各部を意識しながら撮り分けていく.

 検査の前に初回手術時の病名,術式,術後の経過年数をできるだけ知っておくことが肝要で,これにより,潰瘍の術後では吻合部潰瘍に,胃癌術後10年以内なら断端再発や切り残しを考えて縫合部に,10年以上ならBillroth Ⅱ法では残胃の新生癌の可能性を考えて吻合部に検査の重点を決めることができる.

13.術後胃の撮影法 石川 勉
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 現在,胃の手術は原疾患の良悪性にかかわらず,多くは幽門側部分切除術が行われ,Billroth Ⅰ法で再建されている.したがって,今回は幽門側部分切除され,Billroth Ⅰ法により再建された残胃のX線検査を中心に述べる.

 手術直後を除けば,残胃の検査の目的や方法は,通常の胃X線検査と同じであり,異なるのは解剖学的に胃の形が変化していることである.したがって,残胃のX線検査においても,バリウムと発泡散を使用した充盈法,圧迫法,二重造影法を行っている.しかし,通常の胃と比較して残胃には以下のような特徴がみられる.①幽門輪は切除されているため,造影剤のバリウムや空気の流出は速やかである.そのため,残胃では十分な充盈像は得られない.また,残胃の大部分は肋骨弓下に存在するようになるため,圧迫法はほとんど使えない.したがって,残胃のX線検査の場合,二重造影法が主体となる.②手術操作により吻合部や縫合部などの変形,周囲臓器との癒着による変形が加わっている.以上の点に留意して検査を行う必要がある.

13.術後胃の撮影法 高見 元敞
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 1.はじめに

 術後胃のX線検査は,通常の胃の検査に比べてはるかに難しい.残胃に対する検査の目的は様々であるが,手術直後に吻合部の通過状態を知るために行う検査を除くと,検査の目的の大半は,残胃癌をはじめとする胃病変の発見にあると考えられる.

 残胃の検査はなぜ難しいのであろうか?残胃の検査に関する技術的な方法論は,X線診断のエキスパートである他の2人の執筆者に譲り,ここでは,胃切除に実際に携わり,しかも再開腹などで残胃の状態をつぶさに観察する機会の多い消化器外科医の立場から,残胃に対する検査の在り方について述べる.

 これは,残胃の特異性を熟知していないために生じる,様々な誤診や病変の見逃しが,日常の臨床の場でいかに多いかを肌で感じている医師からのメッセージとして受けとっていただきたい.

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欧文目次

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 このたび,日本臨床細胞学会の次代を担う旗頭,矢谷隆一,坂本穆彦両先生が「細胞診を学ぶ人のために」を編集上梓された.

 近年,細胞診断学は穿刺吸引細胞診の導入・普及により,その適応領域も拡がり,また老健法の施行により子宮癌,肺癌で集団検診における第一次スクリーニングに,乳癌でも精検の一部に取り上げられており,細胞診断学の需要と実施範囲が著しく拡がってきた.したがって,これまでの剥離細胞診に加えて現在では穿刺吸引細胞診の比率がほぼ同様ということになってきた.

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Histamin-2- receptor antagonist and gastric cancer risk: La Veccia C, et al (Lancet 336: 355-357, 1990)

 H2ブロッカーは胃酸分泌を抑制し,細菌増殖やニトロソアミン産生を介して胃癌発生と直接的な関連があるのではないかと憂慮されているが,長期投与についての資料がない.H2ブロッカーと胃癌のリスクについてcase-control studyを行った.

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 名著「胃癌の構造」第2版が刊行された.一昔前,胃癌の組織発生について,“未分化型癌”は胃固有粘膜から,“分化型癌”は腸上皮化生粘膜から発生するという中村博士の大胆な仮説が病理学会において発表された.評者も次演者席で拝聴していた.故滝沢延次郎教授から,少し無理な説ではなかろうかと発言されたことが想起される.「胃癌の構造」初版が上梓されてから既に8年,その間,著者自身の業績はもとより,病理形態学者を含め,胃癌診療に携わる多くの人達の研究,特に時系列を加味した症例の積み重ねによりその仮説が実証され,現在では学説として絶大な支持を得ている.胃癌研究会においても,中村分類を胃癌組織の2大別分類の便に供することが検討されている.

 従来から病理形態学者は組織切片上に見られる形態変化を平面的にのみ把握する嫌いがある.「胃癌の構造」初版に際しても評したことであるが,癌研病理の時代から中村博士は,外科的切除材料を余すところなく切り出して組織標本に作製する,という大変な努力を重ねて病変を立体的・三次元的に解析,更に微小胃癌から進行胃癌に至る時間の経過や,時間の経過に伴う胃底腺退縮などを踏まえた四次元的考察を加え,説得力に満ちた“胃癌の構造論”が展開されている.そこには中村教授の主張と哲学が脈々と流れ,第2版に受け継がれている.

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Safety of azathioprine in pregnancy in inflammatory bowel disease: Al-stead EM, et al (Gastroenterology 99: 443-446, 1990)

 azathioprineは,高用量の動物実験で催奇形性がみられるが,人間では認められていない.実際,腎移植を受けた患者や全身性エリテマトーデス患者の妊娠の際,azathioprineが安全に使用されたことが報告されている.しかし,炎症性腸疾患では,意見の統一がみられないため,著者らはこの点について検討した.

編集後記 西澤 護
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 1例の早期胃癌を見つけだすことに情熱を傾け,汗を流し,組織診断が確定したときの喜びと生きがいを感じた30年前に比べれば,胃の形態学は何と進歩したことか.

 もう行きつく所まで行ったのではないかと,何度も思ったことがあるのは,筆者だけではないと思う.特に生検で消失してしまうような微小癌を見つけたときには,なおさらその思いを深くした.しかし,それらの微小癌の限界の追求が,非観血的治療に結びつき,深達度診断の必要性がエコー内視鏡を生みだし,電子スコープやCRの開発が,画像の向上だけでなく画像処理という未知の世界を開かせたように,早期癌診断から派生してきたもろもろの分野は,ますます拡がるばかりである.

基本情報

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胃と腸
26巻1号 (1991年1月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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