胃と腸 26巻2号 (1991年2月)

今月の主題 食道“dysplasia”の存在を問う

序説

食道“dysplasia”とは 中村 恭一
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“異形成 dysplasia”と“異型性 atypia”

 よく,“dysplasia”と“atypia”との違いが問題とされる場合があります.それらはほとんど同じ意味として,同義語として用いられているので,厳密に使い分けをせずとも考えの伝達あるいは理解するということについて不都合さはありません.しかし,そうは言っても,何か釈然としません.そこで,それらに与えられている概念の源流を辿ってみますと,いずれもギリシア語です.“dysplasia”のdys-は英語でabnormal,difficult,-plasiaはto formを意味するplassein(現在はplasso)からであります.ですから,“dys-plasia”は異常な形成であり,日本語では“異形成あるいは形成異常”と呼ばれています.このように,“異形成dysplasia”は発育が異常であるという“こと”を対象としている言葉です.一方,“atypia”はと言いますと,“a-typia”のa-は英語でnot,-typiaはtypeを意味するtiposからのもので,日本語では“非定型”です.その意味することからは,何についても用いることのできる言葉です.ですから,“非定型atypia”はそれだけでは何がそうなのか不明ですから,その対象となる事物つまり非定型な“こと”あるいは“もの”が必要となります.非定型である対象が発育という“こと”ですと,それは“非定型的な発育atypical development”となり,“異形成dysplasia”と同じことになります.それが非定型な“もの”ですと,ここで問題としていることは癌に似た病変についてですから,それは“非定型的上皮あるいは異型上皮atypicalepithelium”となります(Dr.ラザラトス・スピリドン,Gastroenterology Department Athens University Medical School,との問答より).

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要旨 癌,dysplasia病変,良性病変の臨床診断で,外科的に切除された食道の詳細な肉眼観察とルゴール染色の後,異常病変を組織学的に分析した.また,食道扁平上皮dysplasiaの有無を検討するために,上皮内腫瘍病変(上皮内癌と従来のdysplasia)と浸潤癌の上皮内腫瘍部分との形態学的比較をした.上皮内腫瘍と浸潤癌の上皮内腫瘍部分とは,形態学的に同一であった.浸潤部では,組織異型度が一般により高度であった.しかし,これら腫瘍と反応性幼若上皮は組織学的に異なっていた.従来のdysplasiaに相当する上皮は,ときに粘膜固有層,粘膜筋板,粘膜下層へ浸潤しており,低いBrdU標識率を示した.したがって,食道扁平上皮が組織学的に異型を示す病変は,反応性幼若上皮(食道炎,びらん・潰瘍,過形成=乳頭腫,など),低異型度癌と高異型度癌とに分類でき,用語“dysplasia”は不要と結論された.

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要旨 全割のなされた早期食道癌切除症例40例(ep癌10例,mm癌14例,sm癌16例)と,それらから採取された生検標本205例とを対象として,癌といわゆるdysplasiaとの関係を検討し,更に切除標本と生検標本との組織学的1対1対応を行うことによって,生検組織診断基準について検討した.その結果,①早期食道癌の異型組織所見はモザイク様であることが多く,それらの間には境界は認められず連続的であり,癌に随伴する異型上皮は認められなかった.②切除標本と生検標本との組織学的検討からは,異型上皮巣と診断された生検組織のほとんどは癌と診断すべきものであり,異型上皮巣の癌化を裏付ける所見は認められなかった.③したがって,食道癌は直接扁平上皮から発生すると推測された.④生検標本の癌組織診断には,核の大小不同,N/C比の増加,配列の乱れ,肥厚した上皮の乳頭状下方進展の所見が認められれば容易である.更に,水滴様下方進展が認められれば,浸潤癌を疑うべきである.また,紡錘状細胞集団の所見に注意すべきである.

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要旨 食道“dysplasia”は通常の内視鏡観察では認められず,ヨード染色を行うと不染あるいは淡染域として認められる病変である.まれには白色調の軽度隆起や淡い発赤を示すものもある.ヨードの染色性により異型度を測定することがある程度可能でsevere dysplasiaは白色の不染域となり,moderateあるいはmild dysplasiaでは淡染域となる.mildあるいはmoderate dysplasiaでは点状線状に染色される部分を混じているものもある.dysplasiaを発見したら注意深い経過観察を行って,増大するものや内視鏡所見の進行するものについては内視鏡的粘膜切除術を行って治療を兼ねて診断を確定するのがよいと考える.

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要旨 食道異型性病変の鑑別をルゴール散布所見を中心に検討した.ルゴール非染部をgrade Ⅲ~Ⅴの3段階に分類し検討を試みると,grade Ⅲは良性病変,grade Ⅳは食道dysplasia,gradeⅤは扁平上皮癌というように,ある程度組織型の推察ができた.このルゴールによる染色程度の差は非染となる部分のグリコーゲン量を反映している.また,病理学的にdysplasiaと判定された病変の生物学的特徴を細胞核DNA量により検討した.DNAヒストグラムパターンは,異型度が増すにつれてaneuploidyの出現頻度が増加した.核DNA量および分散幅においては,dysplasiaは正常上皮と扁平上皮癌の中間のDNA量を有し,異型度が増すにつれてそれらの増加が認められた.今後経過観察されるdysplasiaの予後を推定する手段として核DNA量測定法の活用が望まれる.

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要旨 集検施設において健康成人を対象として,食道ヨード染色法を併用した内視鏡検診を行い,食道dysplasiaの検索を行った.食道dysplasiaはヨード不染帯として認められ,内視鏡検査25,141例中593例(2.4%)にヨード不染帯が発見され,食道dysplasiaは47例(0.19%)であった.dysplasia47例の経過観察を行った結果,47例中13例(28%)に不染帯変化が見られ,13例中8例に癌の診断が得られた.臨床的には食道dysplasiaは腫瘍性病変と考え対処すべきと考える.形態,対策についても述べた.

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要旨 食道dysplasiaの診断について,生検組織診断と内視鏡診断の経過観察例の分析から次のような結果を得た.(1) 食道m癌では,しばしば生検組織診断でatypia(mild,moderate,severe)あるいはesophagitisと診断されるが,術後の見直し診断ではほとんどsevere atypia(1回のみmoderate atypia)またはcancerと診断し直されている.(2) 生検組織診断上,atypiaと診断されるものに炎症性のものと腫瘍性のものがあり,炎症性のものはほとんど食道炎に起因し,腫瘍性のものはほとんど癌である.(3) 生検診断で1度でもatypiaとされたものは26例あるが,内視鏡所見(ルゴール染色を含む)および経過観察を合わせた最終診断では,13例が癌となり,11例が食道炎となり,1例は癌として経過観察中で,1例は4年9か月の観察で診断確定していない.以上の結果から,臨床からみた食道dysplasiaは,独立した疾患としてはほとんど存在しないことになる.

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要旨 われわれは,内視鏡的食道粘膜切除法を新たに開発し,上皮内癌,異型病変の診断向上を目指してきた.自験例の検討から,本法は食道上皮内癌と粘膜癌の多くに対する根治的治療法としても有効と考えられたので,具体的な手技と共に成績を述べた.粘膜切除を施行した異型病変2例中1例の病変内に,ごく一部ではあるが,癌病巣を含む症例があることが判明した.食道上皮内癌と粘膜内癌の深達度診断および局所治療を目的に,ep癌7例とmm癌3例に対して内視鏡的粘膜切除を行った.ep癌7例中6例は深達度epの癌であり,1例は再生性の変化のみで癌病巣は存在していなかった.mm癌3例はすべて深達度mmの癌であった.内視鏡的粘膜切除は,切除組織の病理組織学的検討ができるため,深達度を含めた確定診断と治療の適否および追加治療の必要性を含めた局所根治の評価ができる方法であった.

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 〔患者〕76歳,男性.

 〔現病歴〕1986年10月,S状結腸ポリープのポリペクトミーを施行したところ腺腫内癌であった.1989年7月,内視鏡的経過観察を行い,直腸に2個の小ポリープを指摘された.

学会印象記

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 筑波大学臨床医学系内科 福富久之教授により本総会は平成2年11月28日から11月30日にかけて新宿の京王プラザホテルにて開催された.特別講演3題,招待講演1題,宿題講演1題,指定講演2題,会長講演,シンポジウム4題,パネルディスカッション6題,ビデオ実技討論,そして今回の学会で特徴的テーマであるYoung Investigator Awardが12題,一般演題454題,ポスター97題が8会場で発表された.秋にしては珍しく本土に向かう台風のため,あいにくの天候となったが,聴衆は結局会場内にいることが多くなり,どこの会場も盛況であった.以下に本総会における筆者らの印象を報告する.

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要旨 患者は70歳女性.当院ドックで胃X線検査の異常を指摘され当院入院となる.胃X線,内視鏡検査で,幽門部前壁にⅡa集簇型を呈する病変を認めた.術前の生検では,粘膜表層部は腺窩上皮型の異型上皮に極めて類似した異型腺管で覆われ,粘膜深層部に印環細胞癌を認め,腺窩上皮(胃)型の異型上皮に印環細胞癌を併存したものと診断,手術を行った.術後の病理組織学的検索で,幽門部前壁の病変は,80×65mm大の1つの領域内に大小の結節状の隆起の多発集簇があり,Ⅱa集簇型胃癌と診断されたが,隆起部粘膜は,表層部で極めて分化した腺窩上皮型の分化型腺癌があり,中層から深層部にかけてその腺管構造が乱れ印環細胞癌に連続的に移行する像を認め,この印環細胞癌の粘膜内増殖が著明であった.このような組織像を示すⅡa集簇型胃癌症例は極めてまれであり文献的考察を加えて報告する

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要旨 患者は68歳女性で主訴は食欲不振.上部消化管X線検査および内視鏡検査で胃体部小轡の不整形の陥凹性病変と球部に隆起性病変の2つの病巣を認めた.生検によりいずれも悪性所見が得られ手術を施行した.胃病変は深達度seの印環細胞癌でlinitis plastica様の粘膜下浸潤を来していた.十二指腸病変は高分化型管状腺癌で深達度はseであった.非常にまれな胃および十二指腸球部の重複癌を報告した.

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要旨 胃消化性潰瘍の経過観察中に発見しえた微小胃悪性リンパ腫を経験した,患者は78歳男性.74歳時より消化性潰瘍で治療を受けている.今回胃X線検査で前庭部の小隆起性病変を指摘される.胃内視鏡検査では前庭部前壁の周囲粘膜よりなだらかな移行を示す粘膜下腫蕩を思わす隆起性病変で,中心に三角形の白苔を伴う陥凹を認めた.生検により悪性リンパ腫が疑われ,1988年7月26日手術を施行した.肉眼的にはbridging foldを伴う径0.6cm大の粘膜下腫瘍で中心に陥凹を伴っていた.組織学的にはsmまで浸潤を示す大細胞型B cellリンパ腫であった.本症例は粘膜下腫瘍様の形態を示す微小胃悪性リンパ腫で,胃リンパ腫の初期像を示しているものと考えられる.

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要旨 患者は62歳,男性.肛門出血を主訴に来院した.内視鏡検査では,肛門縁より約4cmの部位から発赤を伴う粘膜ひだの腫大が15cm口側まで認められた.直腸下部が最も著明で,S状結腸移行部あたりから次第に正常粘膜に移行していた.生検では悪性リンパ腫と診断された.術前の検索により直腸原発悪性リンパ腫と診断し,直腸切断術を行った.切除標本では,肛門縁よりS状結腸下部まで連続性に拡がる巨大皺襞型の悪性リンパ腫であった.このtypeのものは直腸では非常にまれである.病理所見では,LSG分類でdiffuse lymphoma, medium-sized cell type, B cell(IgM産生)typeであった.術後は,化学療法(CHOP)を行っているが現在のところ再発の徴候もなく経過している.

初心者講座 胃X線検査のポイント―私の精密検査法

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精密X線検査とは

 既に病変の存在がわかっている場合に,その病変の肉眼所見に可能なかぎり1対1の対応を求めることができるX線所見を得ることを目的として行う検査を精密検査と定義する1).したがって,精密検査を行う際には,その対象となる病変に関する既知の情報があることが前提になる.また,精密検査とは,手術,ないしはこれに準ずる治療法を目的とした病変に対して行われるべきである.ゆえに,消化性潰瘍などの良性疾患は,原則として,精密検査の対象とはならない.

 かつて,既知の情報とは,ルーチンX線検査(初回検査)と内視鏡検査(生検の情報も含む)の両者の情報を意味するものであった.しかし,細径ファイバースコープによるパンエンドスコピーが上部消化管の検査としてルーチン化された時点で,それは,必ずしも両者の情報を意味するものではなくなってしまった.具体的に言うならば,パンエンドスコピーから精密X線検査という検査のルートがありふれたものになっているということである.現実的な状況認識としてのルーチンという言葉は,X線検査の場合にのみ使うものではないということであろう.

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 胃X線検査には,異常所見を見つけ出し病変を拾い上げることを目的とした検査と,異常所見について更に詳しく検査し,病変の性状や拡がりを判定することを目的とした検査がある.一般に前者をルーチン検査,後者を精密検査と呼んでいる.両者は前処置や撮影手順の点で異なる.ところで,胃X線検査は被写体があり,造影剤とX線撮影装置を用いて胃の形や粘膜面の形態を画像として表現することであるが,その診断成績は撮影された写真の質の良し悪しに左右される.更に,この写真の質の良し悪しは,撮影手技,被写体(胃の形や胃内溶液など),撮影装置(感材系を含めた),造影剤などの諸因子に大きく左右される.したがって,精密検査とは,これらの諸因子を可能な限り最良にした検査であって,切除胃肉眼所見に近い像を表すことができ,病変の存在診断をはじめ,質的診断や浸潤範囲,更には深達度診断も可能な検査ということになる.「どうして精密検査が必要か」との問いに対する答は,以上述べたことに尽きる.以下,現在行っている精密検査の概要について述べる.

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 最近,内視鏡の守備範囲の拡大,X線CT,MRI,超音波などの画像診断の多様化時代を迎え,内視鏡検査至上主義への短絡化傾向にあり,胃X線診断学の位置付けが徐々に変化しつつある.しかし消化器診断学の原点に立ち戻って考えると,X線診断学の果たす役割は依然大きく,基本的かつ不可欠の検査法である.本項では外科の立場より胃X線精密検査の重要性を述べる.

早期胃癌研究会

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 1990年最後の早期胃癌研究会は,12月19日,岡崎(周東総合病院内科),磨伊(金沢大学がん研究所外科)の司会で開催された.

 〔第1例〕30歳,女性.①膵囊腫癌,②膵囊腫癌の胃壁浸潤による瘻孔形成,③膵囊腫癌の一部膿瘍形成と瘻孔よりの膿流出(症例提供:済生会熊本病院消化器科瀬上).

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欧文目次

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 本書は一般消化器外科医にとって最もポピュラーな疾患である痔核の手術書であるが,肛門管の局所解剖,生理のポイントを突いた解説に始まり,痔疾患の診断および実際的な診察法が述べられ,そして痔疾患の中でも最も多い内痔核を中心として,手術のための術前処置,麻酔,手術手技,術後の管理について記載されている.

 全般的に外科の初心者にも理解されやすいように懇切,丁寧に書かれており,特にすべての記述に関して図解されているところが本書の特色となっている.

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 このほど『今日の消化器疾患治療指針』が刊行されたが,総編集者の1人多賀須幸男関東逓信病院副院長に書評を依頼され,お引き受けした.本書は,編者の序に「“消化器疾患の現代治療事典”を構築することを目標とした」と述べられているように,消化器病学のすべてにわたる問題があらゆる角度から取り上げられ,12章,425項目に分けて,必要不可欠の量にまとめられている.

 本書の特徴の第1は,執筆者が消化器病の第一線で日夜実際に苦労されている方々に限定されていることで,所謂老大家でなく若手のバリバリ働いている方々が書かれている点である.この執筆者の選択は恐らく編者の強い意向を反映したものであろうが,所謂既成の大家を極力避けている点は極めて合理的であり,新鮮さを感じさせ,本書の価値を非常に高めていると言える.大学の方も,研究所の方も,市中病院の方も,開業の方も,それぞれ自らの専攻とする分野について,御自分の豊富な経験をもとに簡明に記載されている.北海道から九州まで,全国各地から多くの方が筆者として参加されていることも読者に親しみを与えており,本書に好感を抱かせる点であろう.

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 Effect of intravenous nutrition on nutrition and function in acute attacks of inflammatory bowel disease: Cristie JM, Hill GL(Gastroenterology 99:730-736, 1990)

 炎症性腸疾患(IBD)の急性増悪時には経静脈栄養が根拠がないまま行われている.病期分類で重篤に属する潰瘍性大腸炎4例,Crohn病15例,計19例の蛋白栄養と生理機能に対する経静脈的栄養(IVN)の効果について検討した.年齢・性・身長がマッチした健康人コントロールに比して,体蛋白貯蔵量は最大35%を減じ,生理機能は20~40%低下していた.患者は少なくとも3週間のプレドニゾロン1日40mg内服を含む外来治療に反応しなかった者である.IVNは14日間行われ,最終計測は臨床的に軽快したIVN中止後90~900日,平均200日後に行った.

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 本書の著者である牛尾恭輔先生と私は同年代の仲間であると共に,氏には一目も二目も置いているライバルでもある.著者は次世代の消化器病学会を担うホープであるが,おそらく消化器病学を専攻する者で牛尾恭輔氏の名前を知らない者はいないであろうし,俊英並びいる国立がんセンターの中でもひときわ際立つ,市川平三郎,山田達哉門下生の俊才である.著者の卓越した大腸診断理論,それを支える腫瘍学,生物学,科学に対する造詣の深さと学問的展開は常に私達を魅了するところである.中でも癌発生とその成長・増殖についての生物学的立場からの理論は万人をうなずかせる説得力がある.

 その牛尾先生が2年前に「大腸疾患診断の実際」上下2巻を刊行した際の快挙に,自分ごとのように喜び胸をときめかせながらインクの香りの新しいページを繰ったものであった.その不朽の名著がわずか2年目にして改訂されたとのこと,その理由を問い質すと,第1にこの書物の評判がよくて早くも第1刷を完売したこと,第2に完全主義者である著者の立場から,単に増刷するだけでなく旧版の気にかかる箇所を訂正すると共に,自らの考え方の進歩を徹底的に加筆したとのこと,何とも羨ましい話であるし,本を造ることに対する真摯な態度に脱帽するばかりである.

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 The aetiology of gastric stump carcinoma in the rat:Mason R,Filipe Ⅰ(Scand J Gastroent 25:961-965,1990)

 著者らはラットの胃断端癌の発生に十二指腸液の逆流が関与していることを既に報告しているが,膵液の逆流が重要か十二指腸液の逆流が重要かを確かめる目的で,オス250g Wistar系ラットを用いて以下の実験を行った.

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 Perirectal abscess in Crohn's disease Drainage and Outcome: Pritchard TJ, et al(Dis Colon Rectum 33:933-937, 1990)

 直腸肛門病変を有するCrohn病患者に対する手術療法の役割には議論の余地がある.今回,著者らはCrohn病患者の直腸周囲膿瘍における切開ドレナージと留置ドレナージの効果と予後について検討した.

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治療内視鏡に携わる者にとって必携の書

 第2版である.まず,文字が大きくなり,取っつきがよく,読みやすくなった.第1版が出版されてから5年,その間に,内視鏡治療も大きく変貌した.多くの手技は更に洗練され,臨床医学におけるそれぞれの役割も明確となってきたための改訂である.

 さて,第1章はブジー療法である.本邦では馴染みが薄いが,欧米では歴史が古く,さすがに記述には重みがある.本邦では10年ほど前から徐々に普及し始めたが,まだその知識は十分ではない.本章では,種々のブジーが図示され,その使用方法,注意点が詳細に述べられている.ブジーの握り方から,劣化したゴムブジーや金属ブジーのガイドワイヤー先端の折れの危険性まで写真で示し解説している.また,何か月あるいは何年もかかって形成された狭窄を一気に正常な内腔径にまで拡張することを戒め,“rule of threes”の重要性を説いている.ブジー療法施行者は一読の価値がある.更に,バルーン拡張についてもその位置づけに言及加筆され,狭窄治療は大幅な増頁となっている.

編集後記 吉田 操
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 肉眼所見に乏しい“ヨード不染性の食道粘膜異常”を,臨床側は一括して“dysplasia”と呼び,解析に励んできた.この中には上皮内癌・粘膜癌が含まれ,良性の変化も多い.食道癌早期診断の最前線である.染色所見と生検組織診断との対比で,良性上皮性病変や明らかな癌は速やかに診断がつくまでになった.しかし,臨床と病理の双方に限界があり,一部の病巣は異型を認めながらも癌とも良性とも言えず,繰り返し検討し,年余にわたることもある.食道の上皮あるいは粘膜病変は,生検により大きな影響を受けやすく,病理組織所見まで変化して,ますます診断が困難になる.内視鏡的粘膜切除法は少ない侵襲で,病巣全体の組織学的検索を可能にしたので,この課題を解決する道が開けた.

 “dysplasia”の概念は現状に合わなくなってしまったので,今後は,“ヨード不染性の食道粘膜異常”のうち,明らかな異型性があるが,最終診断に至らないもののみを“食道異型上皮esohageal atypical epithelium”と呼び,はたして良性か悪性か,“真の食道異型上皮”というものが本当に存在するのか,検討する時代になった.

基本情報

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胃と腸
26巻2号 (1991年2月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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