胃と腸 25巻10号 (1990年10月)

今月の主題 中垂腫瘤

序説

虫垂腫瘤の画像診断 牛尾 恭輔
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 消化管全体をみると胃の噴門部や回盲部のように,臓器の境界部で管腔の幅は急に変化する.だが内容物は1本の管の中を通過してゆく.虫垂は消化管という系に属するが,消化管の主な経路ではなく,内容物が必ず通るということではない.消化管のわき道を形成し,人間が直立歩行する関係上,内容物が溜まりやすい.また虫垂は免疫系の一翼を担っている.そのため物理的刺激や免疫能の低下などによって,種々の炎症性病変や腫瘍性病変が発生しやすい.虫垂の単位面積当たりの病変の発生率は高いと考えられている.しかし管腔が狭いため,病変を画像として捉えにくい.

 虫垂は盲腸の下端から内側かつ下方に走行し,虫様に突出した細長い盲管である.虫垂は解剖学的にみて虫垂間膜と盲腸に付着しているため,通常は内側,下方に弓状に走行する.しかし,その結合は弱いため,X線検査の際,時相を変えたり,圧迫することにより,その位置は容易に変化し,捻れ,屈曲,ループ形成などが見られる.また虫垂の形状,特に長さ,太さ,走行などには,変異が多い.そのため虫垂に生じた腫瘤が,小腸や卵巣などの他臓器の疾患とも間違われやすい.

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要旨 術前検査が施行され組織学的に検索された虫垂の腫瘤形成性疾患16例を対象に,各種画像診断法の有用性について検討した.虫垂切除歴のない全例において注腸X線検査(BE)では虫垂は造影されず,大腸内視鏡検査(CF)で虫垂開口部は確認できなかった.結腸型虫垂癌2例はBEとCFで悪性所見が認められ,うち1例は生検でGroup Vであった.粘液瘤7例はBEとCFで粘膜下腫瘍に極めて類似した像を呈し,盲腸内腔への突出が目立つ3例では“はち巻きひだ”が認められた.これに対して,CTと超音波検査(echo)は粘液瘤診断に極めて有効であり,境界明瞭な薄壁で囲まれた囊胞像を呈し,更にBEとCFでは指摘困難な腹膜偽粘液腫の合併を描出できた.虫垂周囲膿瘍はBEとCFでは盲腸の変形や圧排所見が認められ,CTでは石灰化や索状影がみられたが,1つの検査法による虫垂周囲膿瘍の診断は困難であった.翻転虫垂切除断端では病歴の確認が重要である.

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要旨 虫垂腫瘤様病変を,虫垂癌(以下ACA):11例,虫垂粘液囊胞腺腫(以下AMCA):6例,虫垂周囲膿瘍(以下PAA):12例の3つに規定し,計29例を対象とした.すべて注腸X線検査を施行し,そのX線所見と他の画像診断所見とを比較した.注腸X線所見のほとんどは,管外性圧排か粘膜下腫瘍様隆起であった.ACAとPAAには偏側性の辺不整が多い傾向であった.AMCAは管腔内の粘膜下腫瘍様の隆起を呈するものが多かった.虫垂の描出は,ACAとPAAに5例認められたが,AMCAにはなかった.虫垂開口部の変形はAMCAの33%にみられた.各画像診断の特徴は以下のごとくであった.ACAの粘液囊胞腺癌では,CT・USで粘液囊胞成分の所見が特徴的であった.血管,RI検査は癌に特異的ではなかった.AMCAには,CT・USが極めて有用であった.PAAでは管外性の膿瘍の所見をCT・USで検出できれば診断可能であった.なお,内視鏡検査は管外性圧排がみられるのみで診断には有用でなかった.

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要旨 虫垂腫瘤のうちではカルチノイド,粘液囊胞腺腫,粘液囊胞腺癌,腺癌の頻度が高く,その他の腫瘍性病変は極めてまれである.大垣市民病院外科で過去10年間に経験した虫垂腫瘍は14例で,虫垂切除術あるいは結腸右半切除術を施行した4,654例の0.3%にあたった.虫垂腫瘍の内訳は粘液囊胞腺腫5例,粘液囊胞腺癌1例,カルチノイド2例,腺癌5例,悪性リンパ腫1例であり,これらの症例を中心に,虫垂腫瘤の診断,治療,予後について文献的考察も加えて述べた.虫垂腫瘤はUS,CTなどを用いてその存在診断は可能なことが多いが,質的診断は困難である.このため術前に治療方針を決定することは難しいが,良性腫瘍や小さいカルチノイドは虫垂切除術を,悪性腫瘍や1cmを越すカルチノイドは結腸右半切除術を行う方針がよいと思われる.

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要旨 虫垂の腫瘤性病変の病理所見を概観し,特に以下の点に注意を喚起した①カタル性虫垂炎,慢性虫垂炎という臨床病理学的概念は存在しない.②切除虫垂の病理学的検索で全身性疾患の診断が可能なことがある.③虫垂憩室はまれでなく,憩室炎は虫垂の炎症性腫瘤の原因として重要である.④いわゆる虫垂粘液囊腫(mucocele)は低悪性度粘液上皮性腫瘍であり,組織学的に良性に見え,adenoma-carcinom asequenceを示さなくても,その破裂により臨床的悪性腫瘍となりうる.⑤いわゆる虫垂gobletcellcarcinoidは,ほとんどが偶然発見され,臨床的に良性である典型的虫垂カルチノイドとは異なり,悪性腫瘍と考えるべきであろう.

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要旨 切除虫垂2,169例について,臨床病理学的立場から検討した.急性・亜急性虫垂炎の診断のもとに切除された1,943例の病理診断は,①著変なし群444例(22.9%),②急性虫垂炎微小変化群727例(37.4%),③急性蜂窩織炎性虫垂炎群649例(33.4%),④急性壊疽性虫垂炎群73例(3.8%),⑤亜急性虫垂炎群4例(0.2%),⑥慢性虫垂炎群46例(2.7%)の6群に分類された.この6群の平均白血球数はそれぞれ10,613.2,10,265.8,15,170.5,16,3319,8,875.0,12,286.5/mm3であり,①②群と③④群の間,⑥群と③④群の間には有意差が認められた.2,169例中,合併ないし偶発病変として10例(0.46%)にカルチノイド,9例(0.41%)に類上皮細胞性肉芽腫,8例(0.37%)に壊死性動脈炎がみられた.以上の結果をもとに,臨床診断と病理診断の異同,白血球数と病型との相関および合併ないし偶発病変についての考察を加えた.

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要旨 虫垂原発の癌は比較的まれである.今回われわれは虫垂癌が盲腸・回腸末端部の背側で膨張性に増殖し回腸内腔に穿破し潰瘍を生じた1症例を経験したので報告する.患者は58歳男性,右側腹部痛を主訴として来院大腸内視鏡検査,注腸検査で虫垂入口部に中心陥凹を伴った辺縁平滑な隆起性病変が認められた.また終末回腸において,Bauhin弁近傍については明らかな粘膜面の変化は認められなかったが,それより口側にほぼ全周性の比較的伸展のよい潰瘍性病変が認められた.組織学的には膨張性に発育する虫垂原発の粘液癌であり,回腸末端にまで浸潤していた.

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要旨 colonic typeの虫垂癌で回腸に内瘻を形成し,術前の諸検査で強く疑い切除標本で確診を得た症例を経験した.患者は62歳女性で右下腹部痛,血便を主訴として来院した.注腸造影検査で盲腸に陰影欠損,回腸末端に辺縁不整・狭窄および浅い潰瘍を認め,回腸盲腸間に瘻孔が形成されていた.大腸内視鏡検査では盲腸盲端部にBorrmann2型様の腫瘤を認め,生検で腺癌と診断された.右半結腸切除術および右卵巣摘出術を施行した.摘出標本の詳細な病理組織学的検査で,先端部と思われる破壊されていない虫垂組織を認め,その粘膜に乳頭管状腺癌の増殖があり原発性虫垂癌と診断した.術後5年経過したが再発の兆候なく健在である.

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要旨 患者は34歳,男性.右下腹部痛を主訴に来院.注腸造影で盲腸下極に比較的軟らかい粘膜下腫瘍がみられたが,虫垂は造影されなかった.内視鏡では粘膜下腫瘍の中心に虫垂入口部を同定しえた.腹部超音波検査で内部に微細な反射像をもった低エコー性囊胞性腫瘤像がみられた.以上より虫垂粘液瘤を疑い,手術を施行した.虫垂内腔および壁内に粘液が貯溜しており,組織学的には粘液を産生する上皮細胞に腫瘍性変化はみられず,良性粘液瘤と診断した.患者は本症と診断される約2年前から大腸ポリープにより注腸造影,内視鏡検査で経過観察されており,腫瘤の増大を確認できた興味ある1例と思われ報告した.

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要旨 画像所見から術前に診断しえた虫垂の粘液嚢腫の1例を報告した.患者は73歳,女性.スクリーニングとして行った大腸X線検査で,盲腸内側に,圧迫すると容易に変形する表面平滑な半球状の粘膜下腫瘍像を認めたことが発見の動機となった.虫垂粘液囊腫の画像診断上の特徴的所見は,大腸X線検査と内視鏡検査により,虫垂開口部が同定されない盲腸部の粘膜下腫瘍様病変として捉えられ,超音波・CT検査によりそれが囊胞性病変であること,更に,腹部血管造影検査で回腸一盲腸動脈支配の腫瘤として確認されることである.これらの所見が得られれば,本症の診断の根拠となる.

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要旨 2年6か月間経過観察した虫垂粘液囊腫の1例を報告した.患者は73歳,男性.腹痛,下痢を主訴に来院.注腸X線検査で盲腸末端に径3cmの円形腫瘤像を認め,内視鏡検査では頂部に黄白色の膿苔が付着した半球状隆起がみられた.抗生剤投与でいったん腫瘤像は消失したが,その後腹痛,炎症反応の反復と共にX線的に虫垂重積様所見が繰り返し観察された.切除標本で壁肥厚と内腔にゼラチン様物質が貯溜した虫垂の腫大が認められ,病理組織学的に良性虫垂粘液囊腫と診断された.本症例では虫垂粘液囊腫に炎症反応が繰り返されたことによりX線像が経時的に変化したと考えられた.

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要旨 患者は47歳,女性.主訴は右下腹部鈍痛.同部に5×8cmの腫瘤を触知した.大腸X線検査で盲腸は全周性の伸展不良が認められspring coil様であり,虫垂は描出されなかった.腹部超音波およびCT検査では境界が不鮮明で,内部が不均一な腫瘍として描出された.虫垂炎に起因する盲腸周囲膿瘍を疑い内視鏡検査を行った.盲腸に発赤調の隆起を認め,一部に黄白色の液状物が付着,生検で膿汁の流出が認められた.膿の細菌培養でPeptostrePtococcasが検出された.抗生剤を投与したところCT検査で腫瘍は縮小した.以上より盲腸周囲膿瘍と診断した.根治的治療のため回盲部切除を行った.盲腸周囲膿瘍に対して内視鏡的に排膿が認められた症例は本邦で3例目であった.

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要旨 下腹部の疼痛と重圧感を主訴とした26歳女性の虫垂重積症の1例を報告した.注腸造影では手指頭状の隆起を認め,4か月後の再検時には球型の隆起に縮小変化していた.大腸内視鏡では表面平滑で基部がややくびれた隆起を認めたが,頂上部には虫垂開口部と思われる陥凹はなかった.本例は盲腸平滑筋腫と疑診され,術前に確定診断はなされなかった.反復する右下腹部痛を伴う盲腸の隆起性病変の鑑別診断の1つに虫垂重積症を念頭に置くことが必要である.

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要旨 下腹部痛を主訴とする78歳女性に対し大腸内視鏡検査を施行し,虫垂開口部内に小さな隆起性病変を認めた.生検で分化型腺癌を証明し,原発性虫垂腺癌の術前診断のもとに一期的に右半結腸切除術を行った.病理組織学的にはvillous adenocarcinomaで,壁深達度は固有筋層まで,リンパ節転移を認めず,stageⅠであった.術後8年の現在再発を認めず生存中である.

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要旨 患者は55歳,男性.右下腹部痛および右下腹部腫瘤,発熱を主訴として来院.注腸X線検査で上行結腸の限局性収縮と比較的狭窄があり線状潰瘍を認めた.更に盲腸底部に径2cmの粗大顆粒状隆起が見られた.大腸内視鏡検査では,上行結腸の比較的狭窄部位に線状潰瘍を伴った敷石状所見がみられ,回盲弁に接し虫垂入口部と思われる部位に粗大顆粒状隆起を認めた.生検で悪性所見は得られなかったが,虫垂癌を否定しえず,回盲部切除術を施行した.切除標本の病理組織学的所見では,虫垂入口部に糞石があり,盲腸から上行結腸の粘膜下に著しい線維化が認められた.粗大顆粒状隆起は,非腫瘍性の粘膜隆起であり,Lawenの言う線維形成性虫垂炎および盲腸周囲炎と診断した.

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要旨 持続性の右下腹部鈍痛で発症し,注腸X線検査および大腸内視鏡の肉眼所見で盲腸の腫瘍性隆起性病変と類似した所見を示した虫垂腫瘤の患者に,開腹手術を施行したところ,虫垂の著しい腫大と盲腸を含む強い炎症所見を認めた.回盲部切除術を施行し,臨床的および病理組織学的に検討したところ,極めてまれな虫垂および虫垂入口部付近の盲腸に発生したCrohn病と診断されたので報告する.

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 〔患者〕67歳,男性.1986年9月,64歳時にS状結腸の進行癌のため手術を施行,その後の経過観察のため1989年6月,近医で大腸内視鏡検査を行い下行結腸部脾彎曲寄りに異常病変を指摘され精査加療目的で当科へ入院した.

 〔大腸内視鏡所見〕肛門縁より約35cmの部位に発赤調の陥凹性病変を認め,辺縁は明らかな盛り上がりを呈していた.この病変は易出血性であり(Fig.1a),送気を増すと辺縁の盛り上がりは消失し,その形態は胃癌で言うIIc様の所見を呈した(Fig.1b).

初心者講座 胃X線検査のポイント―私の検査法

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 1.はじめに

 腸にバリウムを流出させずに,のりの良い写真を撮ろうというのは胃X線撮影の永遠の課題である.のせるためには頻回のローリングが必要だし,そうすると流出が多くなるという相反する命題だからである.

 矛盾を克服し少しでものりが良く流出の少ない写真の撮影のためには,種々の工夫が必要となる.

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 通常行われている上部消化管ルーチンX線検査では食道,胃,十二指腸を診断の対象領域としているため,本講座のテーマである十二指腸へのバリウムの流出を防いだ造影を意識的に行うことは少ない.確かに,十二指腸~空腸へのバリウムの流出による胃との重なりが読影の盲点になるというのも困りものであるが,かといって十二指腸が全く造影されていないのも上部消化管ルーチン検査としては片手落ちである.また,初心者では十二指腸へのバリウムの流出を極力少なくするよう指示して検査を行わせると,バリウムの流出を恐れるあまり体位変換が不十分となり,その結果バリウムののりが悪い写真を撮りがちになる.しかし,少なくとも二重造影時には前庭部から胃体部が十二指腸・空腸と重ならず,かつバリウムの付着の良い状態で撮影することは努力と工夫次第で可能と思われる.本稿ではわれわれの行っているルーチン検査において,十二指腸へのバリウムの流出を極力少なく造影する方法を中心に解説したい.

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 筆者の検討1)によると,胃X線検査,特に二重造影法における早期胃癌の見逃しの原因は,①十二指腸へ流出したバリウムの病変への重なり,②厚いバリウムの溜まりによる病変の覆い隠し,③バリウムの付着不良による病変の描出不良,が挙げられる.バリウムの付着を良好にするためには十分な量のバリウム飲用が必要であり,バリウムの溜まりを除くには体位変換が必要である.ところが,バリウムの量が多すぎたり不用意に体位変換をするとバリウムが十二指腸へ容易に流出し,十二指腸陰影が胃陰影へ重なり,その部が盲点となる.見逃しの少ない診断能の高いX線写真を撮るには,これらの矛盾点を解明する工夫がいる.

入門講座・10

小腸X線検査の実際 八尾 恒良
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②偏側性変形

 欧米ではasymmetric segment,asymmetric involvementなどの記載がみられる.しかし,変形そのものに着目して診断しようとする傾向に乏しく,偏側性変形についての記載は少ない.本邦では片側性狭窄(中村裕一ら,1975),偏心性狭窄(政ら,1978),偏側性硬化像(八尾ら,1978)などと記載されている.いずれも腸結核とCrohn病の鑑別のための所見として,腸結核の両側性変形に対する対照的所見として用いられている.しかし,Crohn病の偏側性変形は腸間膜付着側の長い縦走潰瘍に基づく変形であるので,長い範囲に及ぶことが多く,腸結核の輪状,帯状潰瘍に基づく比較的短い範囲の両側性変形とは明らかに異なり,同列に論じる所見ではない.

 Fig.1はその1例で,充盈像(a)では20cm以上にもわたる偏側性変形が描出されているが,腸結核の両側変形と異なり“狭窄”は著明でない.二重造影像(b)で,この変形が縦走潰瘍による所見であることが理解される.この長い縦走潰瘍は場所によってその深さ,幅,活動性が一定ではなく,また縦走潰瘍の近傍,横軸方向に種々のsatellite ulcerを伴っているので,縦走潰瘍が位置する腸間膜付着側の反対側からの“ひきつれ”も一定ではない.すなわち,腸間膜付着側反対側の辺縁も不整となる.白壁,政らは,この所見が十二指腸潰瘍のタッシェ形成の機序と同じであることに着目し,矢印1,2などの所見も偽憩室形成またはタッシェ様変形と呼んでいる.

早期胃癌研究会

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 7月度の早期胃癌研究会は7月18日,福地(虎の門病院消化器科),長廻(東京女子医大消化器病センター)の司会で行われた.

 〔第1例〕54歳,男性.食道原発悪性黒色腫(症例提供;東京慈恵会医科大学第1内科 野沢).

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欧文目次

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 「CT・MRI診断のための断層解剖アトラス」は,著者(P.Gerhardt&W.Frommhold)も序で述べているように,Ttibingen大学解剖学教室の故Wetzel教授による教育用供覧資料を基にしてつくられた頸部・胸部・腹部の冠状,矢状および水平断面解剖像とX線CT像およびMRI像を対比した正常アトラスである.A3変形サイズで索引を含めると131頁にのぼる大著であるが,書価のほうは1万5千円弱と学生にとっても容易に手の届く範囲の値段である.

 解剖断面図はすべて単色ではあるが,カラー図譜にもひけをとらない綺麗でかつ鮮明なセピア色で統一されている.解剖図の下方に一連番号のついた日本語の解剖名が列記されている.それらの番号は見開きの頁にあるX線CT像およびMRI像の番号と共通しており,引用が極めて容易である点が大変優れている.原著の中の一部のMRI像が訳者らの最新のもので置き換えられている.また所属リンパ節や病期分類が適所に挿入され,末尾にMRIの基礎についての解説が加えられているなど,訳者らの努力と読者に対する思いやりは高く評価されるべきである.

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Does a detailed explanation prior to gastroscopy reduce the patient's anxiety: Levy N, et al(Endoscopy 21: 263-265, 1989)

 患者に対し消化管内視鏡についてあらかじめ詳しい説明を行えば,検査に対する恐怖が軽減されるという説を検証するために,以下の研究を行った.

 様々な人種からなるイスラエル人243人(女性130人,男性113人)の患者(18~84歳,平均57歳)を5つのグループに分けた.グループA:主治医より簡単な説明を受けた.グループB:検者自身より詳しい説明を受けた.グループC:手技を示す写真のアルバムを見せられ詳しい説明を受けた.グループD:手技のビデオフィルムを見せられた.以上の説明はいずれも24~48時間前に行われた.グループE=既に内視鏡を受けたことがある患者から成る.患者の不安は,患者自身が記入する.

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 近年,MRIの進歩と普及は目覚ましく,腹部領域においても,MRIは不可欠な診断法となりつつあり,腹部MRIの専門書の発刊が待ち望まれていた.本書は世のニーズに応えたものであり,上梓を達成された河野敦氏に,心からお喜びと敬意を表したい.

 腹部には多くの臓器と疾患が存在し,これらを見逃すことなく正確に診断を進めていくには,横断像に加えて冠状断と矢状断像により腹部全域を同時に描出できるMRIは,今後ますます威力を発揮するであろう.一方,腹部MRIの診断に当たっては,CTよりも更に一定以上のレベルですべての臓器と腔を診断できる能力が要求される.

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 本著書は,虎の門病院副院長秋山洋先生が,長年にわたる豊富な臨床経験に基づいた食道癌の治療体系のエッセンスを凝縮したものである.

 秋山先生が東京大学,および虎の門病院でなされてきた研究は,一貫して極めて臨床に即したものであり,すべてが外科治療成績向上に直結している.わが国における食道癌手術の5年生存率が平均20~25%である現状において,彼の5年生存率が35%と群を抜いていることよりみても明らかである.この「Surgery for Cancer of the Esophagus」は,その治療成績を獲得するに至る彼の philosophy,techniquesを,貴重なexperienceに基づき集積したものである.すなわち食道癌に関する基本的な外科解剖や吻合手技から,最も高度な判断と手技を要する重複癌の手術などが網羅されている.更にそのうえ,文中に“臓器や組織はatraumaticにgentleに扱うこと”,“大きな手術も小さな手術の積み重ねであり,常に基本的な手術を疎かにしてはならない”という,彼の日頃のphilosophyが貫かれている.

編集後記 武藤 徹一郎
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 “虫垂腫瘤なんて主題では絵にならないし,取ってしまえば診断もついてしまうから外科的にはあまり問題にはなりませんよ,”本主題が提案されたときの私の第一声がこれであった.同じ意見の方も読者の中には少なくないと思う.しかし,本号を見てその考えを率直に改めねばならぬと反省している.この特集を強く主張した牛尾氏の情熱と眼力に脱帽せざるを得ない.編集会議でこの主題が決まった直後に虫垂Crohn病を経験した(提示症例)が,虫垂病変をバカにしていたバチが当たって,術前診断はつけられなかった.主題症例を読んでみると,いろいろな面白い例があることに驚かされる.主題の写真をみれば虫垂腫瘤の病態のアウトラインはつかめよう.病理の項を熟読すれば虫垂腫瘤に関する臨床病理の知識が十分に得られるはずである.虫垂病変が見過ごされるのは,切除された虫垂を真面目に見ようとしないからだという斉藤氏の指摘もそのとおりだと思う.これから消化管画像診断における鑑別診断の項目が1つ増えることになった.皆さん,アッペをもっと可愛がることにしましょう!

基本情報

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胃と腸
25巻10号 (1990年10月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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