胃と腸 24巻9号 (1989年9月)

今月の主題 胃粘膜下腫瘍の診断―現況と進歩

序説

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 胃の診断に携わるものにとって,胃の粘膜下腫瘍の診断ほどおもしろくないものはなかった.比較的大きく,中心に潰瘍を伴って筋腫や悪性リンパ腫あるいは膠様癌などの鑑別が問題になるようなものはまだしも,全隆起がほぼ完全に粘膜に覆われたものでは粘膜の下の隆起の主成分が何であるかを診断することは,いわゆる靴の中の足の格好を想像するに等しいようなものであった.すなわち,どんなにきれいなX線を撮影しても,どんなに精密な内視鏡的な観察を行っても,隆起の表面が周辺の非病変部粘膜と変わらない粘膜で覆われているということ以外に描出のしようがなかったからである.また,生検診断も同様で,出血の危険を冒して特殊な生検を行う以外に診断の進めようがなかった.そして,そのほとんどが良性であるために,粘膜下腫瘍と診断できればそれ以上の診断は必要がないことが多かった.逆に経験例の病理組織構築を含む,あらゆる知識と経験を動員して,隆起の格好や硬度から粘膜下の病変を推定しても,それが本当であるかどうかは病変が切除されないために確かめようがないことも少なくなかった.その逆に,たまたま切除標本中に見出された小粘膜下腫瘍も診断屋の興味をひくこともなく,retrospectiveにX線・内視鏡所見が再検討されることも少なかった.

 このことは胃粘膜下腫瘍が胃病変の中で比較的よく遭遇する病変でありながら,「胃と腸」に特集して取り上げられたのが1巻9号(1966)および,10巻7号(1975)の2回にすぎないことを考えてみてもよく理解できよう.

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要旨 病理組織が確認できた粘膜下腫瘍46例48病変を研究材料とした.(1)隆起全体の要素:腫瘍の長径,厚さと粘膜面上での大きさ,高さとを比較し,粘膜面上20mm未満の場合,腫瘍の大きさに相関せず,粘膜面上20mmを越えると腫瘍の大きさとほぼ相関する傾向を得た.X線診断の限界は粘膜面からの高さが3mmであった.(2)隆起の辺縁の要素:山田分類による肉眼型は腫瘍の主座と腫瘍の厚さとに関係があったが,胃壁外への発育を判定できなかった.X線では山田Ⅰ型のうち主座がsmでは厚さ3mm以下,pmでは6mm以下を診断できなかった.(3)隆起の表面形態の要素:bridging foldは高率にみられたが部位に関係なかった.中心陥凹は組織学的に潰瘍形成するものに悪性の頻度が高かった.(4)X線の見逃し例の検討で辺縁の二重輪郭として描出されるものがみられた.

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要旨 通常内視鏡による胃粘膜下腫瘍の診断の現況について検討した.対象は過去14年間の内視鏡診断群347例354病巣,内視鏡的切除群7例7病巣および手術群45例45病巣である.頻度は1.4,2.8,2.1%である.病理組織学的診断は筋原性腫瘍,カルチノイド,異所膵,脂肪腫,inflammatory fibroid polyp,hamartomatous polypなどである.部位別頻度では内視鏡診断群ではC領域小彎,後壁およびA領域大彎に多く,手術群ではC領域に多い.内視鏡診断での上皮性病変との鑑別は,病変をあらゆる方向から観察すること.質的診断のためには,人工潰瘍を含めて潰瘍形成部からの生検が,胃外発育型の場合は体位変換のほかに各種画像診断の必要がある.

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要旨 胃粘膜下腫瘍の診断において,従来からの画像診断を越えるEUSの長所は胃壁内の腫瘍像を明瞭に描出できることにある.胃粘膜下腫瘍の診断におけるEUSの有用性を明らかにするために,EUSで診断された40症例の胃粘膜下腫瘍と13症例の胃外圧迫における,X線および内視鏡検査の診断能を検討した.その結果,X線および内視鏡検査の正診率は胃粘膜下腫瘍の診断において88%(35/40例),胃外圧迫の診断において23%(3/13例)であった.次に,組織診断のついた胃粘膜下腫瘍18症例において,EUS所見から粘膜下腫瘍の組織診断が推定できるかどうかを検討した.その結果,EUS画像上における,腫瘍の内部エコーレベル,腫瘍と胃壁層構造との連続性,腫瘍の主病変の局在,腫瘍周囲の層構造の破壊性変化は腫瘍の組織の推定および良・悪性腫瘍の鑑別において大変重要な所見であった.更に,われわれはEUS画像を観察しながら3症例の胃粘膜下腫瘍の生検を試み,1例において成功した.

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要旨 従来行われている内視鏡検査,X線検査による粘膜下腫瘍(SMT)の診断は,粘膜表面に表れた腫瘍の間接所見に基づき行われているものであり,その診断能には多くの問題点が残されていた.これに対し超音波内視鏡(EUS)は壁外部分を含む腫瘍そのものの直接所見に基づいて診断するものであり,まさに画期的な検査法である.EUSの腫瘍断層所見より,SMTと壁外圧迫との鑑別は容易に,しかも確実となり,腫瘍の正確な大きさ,由来組織,発育形態の把握が可能となった.また,その内部エコー性状より,脂肪腫,囊腫,迷入膵などの質的診断も可能である.臨床的に最も問題となる筋原性腫瘍の良悪性の鑑別については依然として問題が残されているが,SMTの診断および内視鏡的治療の適応決定において,EUSは今や必要不可欠の検査法である.

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要旨 粘膜下腫瘍の中では非上皮性腫瘍が多く,組織学的には紡錘形細胞の形態をとり病理組織診断上,鑑別が困難であることがある.近年,免疫組織化学的染色法が開発され,細胞の細胞骨格や産物組成の中の物質を特定することができるようになった.この方法は,特定の物質を抗原として抗体を作り,この抗体にペルオキシダーゼを結合させたもので,抗原抗体反応により微量定性的な手法で染め出すものである.その方法はperoxidase anti-peroxidase complex(PAP)法であるが,また二次抗体以後の反応にレクチンを用いたアビチン・ビオチンcomplex(ABC)法などが考案され,これは感度も高く,著しく応用範囲が拡がった.現在,消化管の粘膜下腫瘍の鑑別によく利用されている抗体は,vimentin,desmin,S-100 蛋白,neuron-specific enolase(NSE)などの抗体である.これらの抗体を用いた免疫組織化学的染色性は筋原性か神経原性腫瘍かの鑑別に有用であることを述べた.

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要旨 胃粘膜下腫瘍の経過観察中に胃X線写真上,腫瘍径が24×20mmから32×28mmに増大し,1年6か月後には中心陥凹も形成された.手術の結果は平滑筋肉腫であり,病理組織学的に潰瘍底に壊死が認められた.このことより,腫瘍の発育と共に腫瘍中心部の壊死が大きくなり,その壊死が胃粘膜表面に達して中心陥凹が形成されたものと推定された.

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要旨 径1.5cmのくびれを持つ,大きさ5.0×4.0×4.5cmの胃壁外発育型の平滑筋肉腫の1例を報告した.患者は69歳,女性.無症状で胃検診を目的とした上部消化管X線検査で病変の存在が指摘された.この病変の形態・内部変化を把握するには,超音波内視鏡検査が極めて有用であった.しかし,術前の質的診断となると,内視鏡検査,超音波内視鏡検査での腫瘍の形態から内視鏡下での粘膜切開組織生検法は難しく,平滑筋腫との鑑別は困難であった.

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要旨 患者は51歳,男性で,人間ドックを受診し,胃X線,内視鏡検査で胃前庭部の長径約50mmの粘膜下腫瘍を指摘された.超音波内視鏡検査で腫瘤は第3層(粘膜下層)にはまり込むように存在し,低エコーの部分と無エコーの部分から成り,無エコー部は腫瘤の粘膜側に広範に存在し,低エコー部が樹林状に無エコー部に突出するように描出された.また,低エコー部と第4層(固有筋層)の連続性は認められなかった.腫瘤が大きいことや,10年前に行った検査のときに比し増大しているため手術を施行した.腫瘍は境界明瞭な45×45×20mmの半球状を呈し,腫瘍内には液体を貯溜し,腫瘤は液腔内に樹枝状に発育しており,病理学的には平滑筋腫であった.

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要旨 患者は54歳,女性.無症状で集団検診で胃腫瘤を発見された.X線,内視鏡検査で胃体下部後壁にbridging foldを持つ直径5cmの粘膜下腫瘤を認めた.生検で平滑筋腫の診断を受け,胃切除術を施行した.肉眼的には5×5×4cmの大きさの腫瘤で弾性硬,割面は黄白色,境界明瞭で出血や壊死はみられなかった.病理組織所見では腫瘍は固有筋層を中心に存在し,周囲にはリンパ球の密な集簇が認められた.紡錘型で好酸性の胞体を持つ腫瘍細胞は束状に配列し,核は不規則な柵状配列を示した.S-100蛋白質とGFAPが陽性を示し,平滑筋腫に陽性のdesminは陰性であり胃神経鞘腫と診断された.胃神経鞘腫と平滑筋腫との鑑別には腫瘍割面の肉眼所見ならびに特徴的組織所見と免疫染色が有用である.

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要旨 71歳女性の胃体中部前壁に発生した粘膜下腫瘍様形態を呈する早期胃膠様腺癌の1例を報告する.本症例は肉眼的には典型的な粘膜下腫瘍の形態を呈しており,隆起表面は周囲と同じ萎縮粘膜で覆われていたが,頂部に認めた臍窩からの生検で癌細胞を認めた.そこで,性状診断および治療適応の決定を目的として行った超音波内視鏡検査で,腫瘍が第3層内に限局していることが確認されたため,診断および治療を目的として,内視鏡的切除術を行い,粘膜下に限局性に発育した膠様腺癌と診断された.

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要旨 多発性異所性胃囊胞症は比較的まれな疾患で,術前診断は困難とされている.今回われわれは超音波内視鏡およびjumbo biopsyで本症と確診した症例を経験したので報告した.患者(38歳,男性)は心窩部痛を主訴に来院.胃X線,内視鏡検査で巨大皺襞を認め,超音波内視鏡を施行.第3層の肥厚と同部に囊胞と思われる無エコー領域の多発を認めた.jumbo biopsyでは粘膜下層に多発囊腫を証明した.本例では癌の合併は認めなかった.本疾患の臨床および組織学的特徴を述べると共に,その発生原因について若干の考察を加えた.

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 早期大腸癌の形態で,従来の隆起型と異なる,扁平隆起(Ⅱa)や平坦・陥凹型(Ⅱb,Ⅱc,Ⅱc+Ⅱa)が重要視されるようになってきたが,褪色調を呈したⅡc型病変の報告はほとんどない.われわれは褪色調を呈した微小Ⅱc型sm癌の1例を経験したので報告する.

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要旨 granular cell tumorは皮膚,舌,乳腺などに多くみられる腫瘍であり,消化管に発生する例は少なく,特に胃ではまれである.筆者らは胃に発生したgranular cell tumorの1例を経験したので報告する.患者は51歳の男性.吐血を主訴として来院.X線・内視鏡検査で胃体中部後壁に,頂上に小潰瘍を有する粘膜下腫瘍を認めた.超音波内視鏡検査では腫瘍は第3層に限局して存在する低エコーの腫瘤として描出された.切除胃標本では,腫瘍は大きさ20×18×16mmで粘膜下層内に限局して存在する白色調の腫瘍であり,病理組織学的にgranular cell tumorと診断された.

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要旨 胃リンパ腫および類縁疾患は胃癌と同様,多彩な形態をとる.早期胃癌分類,進行胃癌分類で表現できるそれらをそれぞれⅠ群(17例),Ⅱ群(28例)とすると,両者の病態には明らかな差異が認められた.Ⅰ群には4個以上の多発病巣が広範囲に散在する例があった.生検上は至適部位から挫滅の少ない大きな組織を採取することのほか,Ⅰ群では異型度の判定における病理組織像の解釈が問題となった.Ⅱ群はdiffuse,large cellが多いのに比べ,Ⅰ群はgradeの低い細胞型が多かった.また,Ⅰ群はm,sm例が多くリンパ節転移は少なかった.Ⅰ群は表在型あるいは表層型リンパ腫あるいはリンパ腫類縁疾患,Ⅱ群は大小の潰瘍を伴う腫瘤形成型で古典的なリンパ腫で,Ⅰ群とⅡ群がお互いに移行し合うものか,全く独立したdisease entityなのか診断学上も大変興味深い.

早期胃癌研究会

1989年7月の例会から 小越 和栄
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 7月の早期胃癌研究会は19日に仙台市医療センター望月福治の司会で開催され,胃,大腸の合計6題が出題された.

〔第1例〕 68歳,男性.胃外性に発育した胃癌(症例提供:足利赤十字病院 玉井).

初心者講座 座談会

消化器疾患とUS・CT・13

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 US検査で大腸のどの範囲を検査しうるか

 牛尾 USで信頼をもってチェックできるのは,体表から何cmぐらいですか.

 中林 15cmぐらいのものですね.

初心者講座 食道検査法・21

超音波内視鏡検査(2) 伊藤 忠彦
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 はじめに

 超音波内視鏡検査(endoscopic ultrasonography; EUS)は,開発されて以来,約9年が経過しているが,この短い期間にいろいろな改良が加えられ,現在では食道疾患の診断になくてはならない検査法となってきたと言っても過言ではない.

 食道疾患においてEUSで得られる情報としては,①食道癌の深達度診断やリンパ節転移の診断,②粘膜下腫瘍の形態,発生母地,内部性状や壁外圧迫との鑑別,③食道壁内外の静脈瘤の性状や内視鏡的食道静脈瘤硬化療法後の効果判定,などが挙げられる.

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欧文目次

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 Endoscopic laser therapy for watermelon stomach: Gostout C, et al (Gastroenterology 96: 1462-1465, 1989)

 watermelon stomachは原因不明の,幽門前庭部に限局した血管拡張がスイカの皮の縞模様を彷彿させるような所見を呈する疾患で,組織学的には粘膜内のフィブリン塞栓と粘膜固有層の筋,線維成分の増生がみられる.臨床像は慢性的な鉄欠乏性貧血と便潜血陽性で,出血に対する治療として,ステロイド,幽門切除術,硬化療法,ヒートプローブ,YAGレーザーなどが報告されている.

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 Vitamin C in the human stomach: relation to gastric pH, gastroduodenal disease, and possible sources: O'Connor HJ, et al (Gut 30: 436-442, 1989)

 疫学的研究で胃癌のリスクとビタミンCに富む食物の消費量との逆相関が示されている.胃癌は胃内でニトロソ化合物が生成され,それに曝されることにより発生するとされているが,ビタミンCは亜硝酸塩のスカベンジャーの1つで,ニトロサミンは生成を妨げる.

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 私は,1982年に本書のオリジナルである英語版が出たとき,既に,これに目を通している.その内容の理解については,英文であることもあって,果たして自家薬籠中のものとなしえたかどうか,正直言って自信がない.今回,この本の日本語訳が出版されて間もなく,これを読む機会があった.

 この本の心臓部を構成しているのは,ファイバースコープの挿入法と生検・ポリペクトミーに関する所だから,本書の第10章“大腸の内視鏡診断”,第11章“腫瘍性隆起性病変”,第12章“その他の悪性病変”の3章は蛇足である.むしろ,そのために本書がセミナーのテキストの域を出ないかのように見える.ましてや,絵の質にこだわる日本の読者には,それが香港製と断りがあっても,色のバラツキと焦点の甘さが不満として残る.

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 Impaired oxygenation of gastric mucosa in portal hypertension: The basis for increased susceptibility to injury: Sarfeh IJ, et al (Dig Dis Sci 34: 225-228, 1989)

 うっ血性胃病変が門脈圧亢進症(PHT)の特異的合併症の1つであることはよく知られており,かつ,この場合の胃粘膜の攻撃因子に対する脆弱化もしばしば経験される事柄である.著者らは,胃粘膜の脆弱化が,PHTによる体循環の変化と,粘膜および粘膜下層における血流改変により惹起されると仮定し,ラットを用いた外科的PHTモデル(P群)を作製し,血中酸素飽和度(PO2/mmHg)を指標とした血流の変化を測定すると共に,アスピリンによる胃粘膜障害度を測定し,血流変化との相関を併せて検討した.対照群として,PHTは作製しないが,同一手術操作を加えたSham-operationラット(S群)を用いた.測定の結果,基礎状態におけるP群の粘膜側血中PO2はS群に比し著明に減少(24±5 vs 45±7 mmHg,P<0.02)していた.一方,漿膜側血中PO2は両群間に差がなかった.しかし,胃内にアスピリンを投与した状態では,漿膜側血中PO2もP群はS群より低値となり,粘膜側血中PO2はS群のそれの1/3にまで低下していた.また,アスピリンによる粘膜障害の程度は,S群に比しP群で著しく,かつPO2の値と粘膜障害度の間には,負の相関(γ=0.43,p=0.04)を認めた.

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 A randomized trial of nonoperative treatment for perforated peptic ulcer: Crofts TJ, et al (N Engl J Med 320: 970-973, 1989)

 穿孔性消化性潰瘍の患者に外科的治療を避けることができるかどうかを決定するために,著者らは臨床診断された穿孔性消化性潰瘍患者を対象として非手術的治療と緊急手術における成績について無作為抽出法で比較検討した.期間は1985年11月~1986年12月の13か月間で,入院した83人の患者に対して無作為に40例を選んだ.非手術治療には経静脈的輸液,経鼻吸引,抗生剤(セフロキシム,アンピシリン,メトロニダゾール)の経静脈投与とラニチジン投与が行われた.結果は患者40人のうち11例(28%)が12時間後臨床的な改善が得られず,手術が必要となったが,29例(72%)の患者では非手術治療が成功した.その11例の内訳は十二指腸潰瘍7例,胃潰瘍1例で,2例は穿孔した胃癌,残り1例はS状結腸癌の穿孔であった.他の43例の患者は緊急開腹手術が施行され,そのうち1人は穿孔した胃癌であった.死亡例は各々2例ずつで,全体の死亡率は,両群とも同様で5%であった.合併症の罹患率(感染,心不全,腎不全)も手術群40%,非手術群50%と明らかな相違はなかった.しかし,非手術群では入院期間がやや延長し,非手術群における70歳以上の患者は,40歳未満の若い患者に比べて治療に対する反応がより乏しかった.

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 今中孝信氏の監修による『レジデント初期研修マニュアル』を一読する機会を得た.この本は,レジデント経験者や指導医によって書かれたとのことであるが,基本的な診察法,基本的検査法,病室での基本的な手技,基本的治療法,特殊な検査,外科手術と術前術後管理,救急外来での小外科に関して要領の良い,しかも実際に役立つ記載がなされている.監修の今中氏が所属されておられる天理よろづ相談所病院は総合診療教育部をつくり,そこで研修医に対して幅広い研修を行っていることでよく知られている有名な教育病院であるが,今中氏はその総合診療教育部の責任者なので,まさにうってつけの方に監修していただいたと言ってよいであろう.

 最近卒直後の臨床研修の間に,できるだけ幅広い研修を行うことの重要さが強調されている.医師の専門家志向が高まっており,それも医学の進歩に伴って必然的に起こってきた現象ということができるが,その傾向が強くなればなるほど,卒直後の初期研修の時期に幅広い基本的な知識や手技を修得することの重要さが痛感される.このことは大学病院の指導医の間でも広く認識されるようになってきているが,そのような初期研修のための具体的な方法や評価については,まだまとまった意見が出ていない.その意味でこの『レジデント初期研修マニュアル』は,初期研修の間に修得すべきことを明らかに示しており画期的な内容の本と言えるであろう.また数多く挿入された「研修メモ」は,臨床の実地で役立ついろいろな事柄が,研修医の立場に立って書かれており非常に興味深く読ませていただいた.

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 去る7月14日,エーザイ本社5階ホールで開催された早期胃癌研究会7月例会において第14回村上記念「胃と腸」賞贈呈式が行われた.

 本年の受賞論文は「電子スコープによる早期胃癌の内視鏡所見と切除標本の対比」(「胃と腸」23巻1号掲載)で,論文執筆者は星原芳雄氏(虎の門病院消化器科)ら6名.同氏らの研究は「電子スコープを用いて,早期胃癌の表面微細構造を観察し,それらを切除固定標本の実体顕微鏡所見および病理組織所見と対比・検討したものであり,この方法は早期胃癌の鑑別診断,癌の浸潤範囲の診断に有用というだけでなく,癌の組織型の推定(分化型腺癌,未分化型腺癌の形態学的特徴など)も可能である」ことを明らかにしたもの.

編集後記 牛尾 恭輔
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 胃粘膜下腫瘍(SMT)の診断に,最近,超音波内視鏡,免疫組織化学的方法が取り入れられ,新たな展開が生まれつつある.そこで本誌で14年ぶりに企画されたのが本特集号「胃粘膜下腫瘍の診断―現況と進歩―」である.隔靴搔痒の感があった胃SMTの診断法に,ようやく手が直接届くようになったことを,読者の方々はわかっていただけよう.

 主題論文はそれぞれ現況と進歩をよく示している.浜田らはSMTの長径,厚さと粘膜面での大きさ,高さとの比較でX線診断の描出能とその限界を科学的に掘り下げ,川口らはレーザーやエタノールで人工的に潰瘍を作製し,そこからの生検で腫瘍成分の検出率を論じている.次に相部らや吉田らの示した超音波診断は,胃壁の5層構造を基に,エコー像の分析で,腫瘍の鑑別診断が可能であることを,美しい画像で説得力をもって示している.それを基に超音波内視鏡像はSMTの診断に今や必要不可欠な検査法であると論陣をはっている.

基本情報

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胃と腸
24巻9号 (1989年9月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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