Japanese
English
今月の主題 胃粘膜下腫瘍の診断―現況と進歩
序説
胃粘膜下腫瘍の診断―現状と進歩,将来への課題
Introduction
八尾 恒良
1
Tsuneyoshi Yao
1
1福岡大学筑紫病院内科・消化器科
pp.977-978
発行日 1989年9月25日
Published Date 1989/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403106554
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胃の診断に携わるものにとって,胃の粘膜下腫瘍の診断ほどおもしろくないものはなかった.比較的大きく,中心に潰瘍を伴って筋腫や悪性リンパ腫あるいは膠様癌などの鑑別が問題になるようなものはまだしも,全隆起がほぼ完全に粘膜に覆われたものでは粘膜の下の隆起の主成分が何であるかを診断することは,いわゆる靴の中の足の格好を想像するに等しいようなものであった.すなわち,どんなにきれいなX線を撮影しても,どんなに精密な内視鏡的な観察を行っても,隆起の表面が周辺の非病変部粘膜と変わらない粘膜で覆われているということ以外に描出のしようがなかったからである.また,生検診断も同様で,出血の危険を冒して特殊な生検を行う以外に診断の進めようがなかった.そして,そのほとんどが良性であるために,粘膜下腫瘍と診断できればそれ以上の診断は必要がないことが多かった.逆に経験例の病理組織構築を含む,あらゆる知識と経験を動員して,隆起の格好や硬度から粘膜下の病変を推定しても,それが本当であるかどうかは病変が切除されないために確かめようがないことも少なくなかった.その逆に,たまたま切除標本中に見出された小粘膜下腫瘍も診断屋の興味をひくこともなく,retrospectiveにX線・内視鏡所見が再検討されることも少なかった.
このことは胃粘膜下腫瘍が胃病変の中で比較的よく遭遇する病変でありながら,「胃と腸」に特集して取り上げられたのが1巻9号(1966)および,10巻7号(1975)の2回にすぎないことを考えてみてもよく理解できよう.
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