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海外文献紹介「門脈圧亢進症における胃粘膜への酸素供給障害―粘膜被障害性増大の根拠」
山本 惠祥
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1愛知県がんセンター消化器内科
pp.1034
発行日 1989年9月25日
Published Date 1989/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403106564
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Impaired oxygenation of gastric mucosa in portal hypertension: The basis for increased susceptibility to injury: Sarfeh IJ, et al (Dig Dis Sci 34: 225-228, 1989)
うっ血性胃病変が門脈圧亢進症(PHT)の特異的合併症の1つであることはよく知られており,かつ,この場合の胃粘膜の攻撃因子に対する脆弱化もしばしば経験される事柄である.著者らは,胃粘膜の脆弱化が,PHTによる体循環の変化と,粘膜および粘膜下層における血流改変により惹起されると仮定し,ラットを用いた外科的PHTモデル(P群)を作製し,血中酸素飽和度(PO2/mmHg)を指標とした血流の変化を測定すると共に,アスピリンによる胃粘膜障害度を測定し,血流変化との相関を併せて検討した.対照群として,PHTは作製しないが,同一手術操作を加えたSham-operationラット(S群)を用いた.測定の結果,基礎状態におけるP群の粘膜側血中PO2はS群に比し著明に減少(24±5 vs 45±7mmHg,P<0.02)していた.一方,漿膜側血中PO2は両群間に差がなかった.しかし,胃内にアスピリンを投与した状態では,漿膜側血中PO2もP群はS群より低値となり,粘膜側血中PO2はS群のそれの1/3にまで低下していた.また,アスピリンによる粘膜障害の程度は,S群に比しP群で著しく,かつPO2の値と粘膜障害度の間には,負の相関(γ=0.43,p=0.04)を認めた.
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