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書評「レジデント初期研修マニュアル」
高久 史麿
1
1東京大学
pp.1056
発行日 1989年9月25日
Published Date 1989/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403106570
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今中孝信氏の監修による『レジデント初期研修マニュアル』を一読する機会を得た.この本は,レジデント経験者や指導医によって書かれたとのことであるが,基本的な診察法,基本的検査法,病室での基本的な手技,基本的治療法,特殊な検査,外科手術と術前術後管理,救急外来での小外科に関して要領の良い,しかも実際に役立つ記載がなされている.監修の今中氏が所属されておられる天理よろづ相談所病院は総合診療教育部をつくり,そこで研修医に対して幅広い研修を行っていることでよく知られている有名な教育病院であるが,今中氏はその総合診療教育部の責任者なので,まさにうってつけの方に監修していただいたと言ってよいであろう.
最近卒直後の臨床研修の間に,できるだけ幅広い研修を行うことの重要さが強調されている.医師の専門家志向が高まっており,それも医学の進歩に伴って必然的に起こってきた現象ということができるが,その傾向が強くなればなるほど,卒直後の初期研修の時期に幅広い基本的な知識や手技を修得することの重要さが痛感される.このことは大学病院の指導医の間でも広く認識されるようになってきているが,そのような初期研修のための具体的な方法や評価については,まだまとまった意見が出ていない.その意味でこの『レジデント初期研修マニュアル』は,初期研修の間に修得すべきことを明らかに示しており画期的な内容の本と言えるであろう.また数多く挿入された「研修メモ」は,臨床の実地で役立ついろいろな事柄が,研修医の立場に立って書かれており非常に興味深く読ませていただいた.
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