胃と腸 19巻7号 (1984年7月)

今月の主題 早期胃癌の再発死亡例をめぐって

序説

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 癌による死亡は,今やわが国の死因順位で第1位である.にもかかわらず,今までは癌の代名詞のように考えられていた胃癌は,死亡の割合が低下傾向を示している.そこで議論になるのが,胃癌が減っているのか,それとも胃癌に罹っても死亡しなくなったのかということである.

 疫学者の中には,日本人の生活が食事や環境の面で欧米型になったために,胃癌が減っていると主張する人もいる.そのときにしばしば引き合いに出されるのが,ハワイ在住日本人の胃癌死亡の動向である。すなわち,一世の胃癌死亡は日本国内と同じ傾向を示すが,二世になると胃癌による死亡が減少し,その割合は一世とアメリカ白人との中間の値を示すという説明である.

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要旨 過去34年間にわれわれの施設で切除された早期胃癌452例のうち,現在までに107例の死亡が確認された.その内訳は手術直接死亡6例,癌による死亡38例,癌以外の原因による死亡63例であった.癌以外の死因として最も多いのは脳血管障害,次いで心疾患,老衰,肝硬変症,肺炎などであった.癌による死亡38例のうち15例は他臓器癌の進展によるものであり,異時性肺癌,肝癌などが多かった.残胃の癌は3例にみられた.早期胃癌の再発は20例にみられ,このうち5例は相対非治癒切除後の広義の再発であり,治癒切除後の狭義の再発は15例にみられた.術後1年以上経過例を対象とした早期胃癌の再発率は,m癌では1.0%(2/196),sm癌では5.6%(13/231)であった.

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要旨 大阪府立成人病センター外科において治癒手術が行われ,組織学的断端(+)およびstageⅣの症例は除外,術後再発死亡・剖検の行われた37例を対象として再発様式を肝転移優勢リンパ節転移優勢および腹膜転移優勢の3群に分け,それらの原発巣における肉眼的・組織学的特徴や差異の有無を検討した.肝転移再発群では,幽門前庭部のBorrmann 2型,高分化型を呈するものが優位を占め,低分化型のものでも間質に乏しい髄様の胞巣を合併する多彩な組織像をみるものがあり,明細胞型のものもあった.腹膜転移再発群にはss以上に深達したBorrmann 3型,低分化硬性型癌が多数を占め,リンパ節転移再発群にはリンパ管侵襲像の多いことを除くと特徴的な所見は得られ難かった.

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要旨 早期胃癌の再発に関して,発育パターンと癌細胞核DNA量分布パターンによる検討を行い,癌の悪性度についての解析を試みた.術後早期に肝再発を来し,予後不良なPen A型は分散幅の広いⅢ,Ⅳ型のDNA量分布パターンを示すのに対し,経過が長く予後良好なSuper型は分散幅の狭いⅠ,Ⅱ型を示した.そしてPen A型の初期のものがSmall mucosal型に含まれており,その中の一部に再発したものがあることをDNA量分布パターン分析によって明らかにできた.このように,DNA量分布パターンは癌の悪性度をよく反映していた.

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要旨 早期胃癌再発例34例を診断学的な立場から検討した.これらの主たる再発形式は血行性転移,殊に肝転移であり,この場合,多くのものが術前X線・内視鏡像上,進行胃癌様の所見を示すことから,あらかじめその高い生物学的悪性度を予測することが可能である.これに対し,血行性転移以外のものは,頻度も少なく,また病巣も通常みられる潰瘍性の陥凹性早期癌であること以外に特徴像は得られず,不良な予後を予測することは困難である.

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要旨 早期胃癌再発死亡例について検討した.早期胃癌手術1,000例中の再発死亡例は35例(再発死亡率3.5%)であった.m癌の再発率は1.4%,sm癌は5.5%であった.隆起型の再発死亡率は4.3%(7/164),混合型は10%(9/90),陥凹型では2.4%(18/730)であり,混合型に高率であった.再発死亡の多い肉眼型は,混合型sm,n(+)>隆起型sm,n(+)>陥凹型sm,n(+)>陥凹型m,n(+)の順であった.再発形式としては肝転移を主に血行性転移が22/35(62.8%)と多く,進行癌に腹膜播種が多いのに比べて著しい対照を示した.隆起型,混合型では血行性転移が多いので十分なリンパ節郭清,血行遮断など,また,陥凹型でリンパ節転移がある例は腹膜播種,局所再発の可能性があるので,術後の化学療法が必要であろう.

主題症例 特異な経過をたどった早期胃癌の再発死亡例 A.隆起型

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要旨 患者は58歳の女性,手術の6年前より,人間ドックの胃X線検査や胃集検で,胃噴門下部後壁のポリープの診断を受けていた.胃内視鏡検査および胃生検は施行されなかった.胃集検で要精査となり,胃内視鏡および胃生検が施行され,GroupⅤ(papillary tubular adenocarcinoma)と診断され,胃全摘・脾摘・食道空腸吻合術を施行した.術後1年4カ月でVirchowリンパ節腫脹術後1年9カ月で死亡.剖検により全身転移,特にリンパ節転移が著明であった.切除標本の病理組織学的診断は,初めm癌とされ,リンパ節転移(-)だったが,見直しによりsmのリンパ管の腫瘍塞栓を認めた.

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要旨 体重減少(10kg/年)を主訴にした81歳の男性で,術前胃X線検査および内視鏡検査で1型早期胃癌と診断され,1982年4月9日に胃亜全摘術が施行された.肉眼所見では,小結節状凹凸のある7.0×3.0cmの隆起性病変であった.組織学的には,高分化型管状腺癌と一部に印環細胞癌と膠様腺癌がみられた.深達度はsm,脈管侵襲陽性で,転移は小彎リンパ節(No.3)に認めた.術後約4カ月ごろよりイレウス症状が時々あり,同年11月28日に手術を行い,腸間膜組織とリンパ節を生検した.それらの組織学的検査で転移を認め,リンパ管侵襲とリンパ節転移を伴う腹膜播種再発と診断された.化学療法(FT 207)にもかかわらず,Schnitzler転移,腹部腫瘤,腹水を認めるようになり,初回手術後1年3カ月で死亡した.Ⅰ型sm胃癌でありながら腹膜播種により再発死亡した.これはリンパ管侵襲とリンパ節転移を介しての腹膜播種と考えられた.

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要旨 早期胃癌で切除後5年以上経過再発例が7例ある.これは同期間の全早期胃癌切除例634症例の1.1%に当たる.全例が男性であり,再発形式は局所再発4例,リンパ行性広範再発2例,肺転移1例であった.組織型では分化型腺癌が6例,深達度ではsmが6例であった.この中の代表的な43歳,男性,Ⅰ型早期胃癌手術後7年11カ月で再発死亡した症例を呈示した.以上のように,早期胃癌長期経過再発例には局所再発が多いことから,これらの手術に際しては早期胃癌と言えども,十分なリンパ節郭清を含めた根治手術の必要性を再認識した.

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要旨 54歳,女性.胃集団検診にて巨大皺襞を指摘され,精査の結果,胃体上部前壁側大彎寄りの深達度mの未分化型Ⅱc型早期胃癌と診断された.切除胃の組織学的検索にて粘膜筋板直下のリンパ管内への癌の浸潤を1カ所認めた.また,3,4,6,9番の領域リンパ節への転移が認められた.術後経過良好にて退院,以後外来にて経過観察していたところ,術後2年ごろよりALPが上昇,骨X線検査にて広範な骨転移が認められ,化学療法が行われた.術後2年4カ月に腹部圧痛,高度の貧血を主訴に再入院となるも,DICを併発し当日死亡した.病理解剖により,骨髄に高度の癌の転移が認められ,また組織学的には食道空腸吻合部領域,肝,肺,リンパ節に転移が認められた.肝・腎の微小血栓形成と,後腹膜出血,皮膚,消化管粘膜の点状出血,血性心囊水・胸水などの出血素因が認められ,死因はDICによる出血と考えられた.

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要旨 患者は63歳,女性.1969年1月に胃癌と診断され,同年3月幽門側胃切除術(Billroth Ⅰ法)が施行された.病変は胃体下部後壁にあり,線状の潰瘍瘢痕(Ul-Ⅳ)を伴うⅡc+Ⅲ型早期胃癌であった.病理組織学的には低分化腺癌・中分化型管状腺癌・印環細胞癌が混在し,浸潤は粘膜内にとどまっていた.リンパ節転移は陰性であった.しかし,1977年7月ごろ,背部痛と共に両下肢のしびれ感と運動麻痺を生じ,当院整形外科を受診した.入院後の精査で第7胸椎の圧潰扁平化と溶骨像がみられ,転移性骨腫瘍が疑われた.1977年8月,第6~7椎弓切除術および硬膜外腫瘍切除術を施行した.腫瘍は主として低分化腺癌から成り,胃癌病巣の組織像に極めて類似していることから,胃癌の骨転移と診断された.その後,骨転移巣の増悪に加えて肺転移も生じ,1978年3月死亡した.胃癌術後の全経過は9年であった.

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要旨 患者は49歳の男性.1975年10月ごろ左上腹部痛が続き胃X線ならびにGTFで胃前庭部小彎前壁寄りのⅡa+Ⅱcと診断され,1976年4月に胃切除術を施行された.切除胃でみると,同部の5×6mm,周囲の軽い盛り上がりのあるⅡc型早期胃癌であり,組織学的に粘膜下層に達する未分化型癌であり,リンパ節転移はみられなかった.術後2年3カ月目に黄疸が出現し,腹水,肝腫を触知した.CT,US,腹腔鏡で肝の多発性腫瘍像を認め2年6カ月目に死亡した.病理解剖学的診断は肝の多発性転移性癌,膵を巻き込む周囲リンパ節の大きな腫瘤が,三管合流部直下を圧迫し,総胆管閉塞がみられた.肺にも小さな転移巣が認められたが,胃吻合部粘膜には癌の再発はみられなかった.

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要旨 幽門下リンパ節⑥に転移を有した早期胃癌が切除後1年3カ月で,吻合部から十二指腸側に著明な狭窄所見を呈して発見された再発例を報告した.1980年3月6日にR2の胃切除が行われ,Biliroth Ⅰ法で再建された.胃癌は幽門前庭部後壁のⅡc型早期癌で,大きさ10×14mm,深達度smの低分化腺癌であった.ly0,v0,aw(-),ow(-),進行程度はP0H0N(-)S0であったが,6番のリンパ節に転移を認めた.そのほか,胃角部小彎にUl-Ⅳの胃潰瘍,Ul-Ⅱ,Ⅲの2個の十二指腸潰瘍瘢痕を認めた.術後良好であったが1年後より腹痛が時々あり,この時期での上部消化管X線造影では明らかな異常はなかったが,術後1年3カ月後(1981年6月18日)には胃腸吻合部から十二指腸のVater乳頭部までの著明な狭窄を呈した.生検では粘膜層内および粘膜下層に腫瘍塞栓を認め,手術時と同じ組織型を呈し転移と考えられた.症状は次第に悪化し患者は同年9月13日に死亡した.

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要旨 治癒切除後8カ月で再発し,リンパ行性や血行性に広範な転移を来した早期胃癌の1例を報告した.患者は66歳の女性で心窩部痛を主訴として来院した.胃体上部小彎のⅡc型早期癌と診断し1980年8月噴門側胃切除術を施行した.深達度smの低分化腺癌で3番リンパ節に転移がみられたが,補助化学療法は行わなかった.術後8カ月左鎖骨上窩のリンパ節が腫大し,組織学的に胃癌の再発と確認された.その後皮膚や骨・肺への転移が出現し,肺炎と消化管出血を併発して術後1年8カ月で死亡した.剖検では前記転移のほか,頸部・胸部・腹部の諸臓器に転移がみられ,残胃漿膜面にもリンパ節を中心とする転移結節が認められた.本例の再発原因として転移リンパ節の遺残が推定され,早期癌でも噴門側胃切除の適応の決定には慎重でなければならないと考えられる.

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要旨 患者は65歳,男性.1980年7月14日術前診断Ⅱa+Ⅱc型重複胃癌にてR2郭清の根治手術.術中所見はN1S0H0P0,胃病変はM小彎中心の大きさ4.5×4.0cm,2.5×2.0cmのⅡa+Ⅱc型早期胃癌.腹腔内臓器にはほかに異常は認めない.組織学的には,両者ともpapillo-tubular adenocarcinomaであった.口側の病変はsm深部浸潤型であり,ly1,v1であった.術後7カ月ごろより体重減少著明となり,9カ月目に腹腔動脈周囲リンパ節と肺転移を来し,術後12カ月で死亡に至った.Ⅱa+Ⅱc型重複早期胃癌の短期再発死亡例を報告した.

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要旨 患者は初回胃切除時34歳の男性.病変は胃体部前壁にⅡc(3.0×1.7cm,pap,m,ly0,v0,ow(-))と胃体部大彎にⅠ(3.0×3.0×1.2cm,tub2,m,ly0,v0,ow(-))とがあった.1967年2月12日に胃切除{R2,n1~2(-)〔0/15〕}.術後2年3カ月目に残胃再発のため残胃全摘に膵脾合併切除(R2)が行われた.再発癌は残胃小彎からやや後壁にかけ胃腸吻合部に接して存在し,病巣内にⅡa様隆起を有するⅡc,5.7×4.5cm,tub2,ssγ,ly(+),v(+),n1~2(-)〔0/12〕であった.再手術後5年4カ月ごろから腰痛を来すようになり,1975年3月に肝転移と腰椎への転移と診断された.肝転移に対してはMMC(10mg/週)とtegafur(1,200mg/日),腰椎に対してはテレコバルト照射(1回量200cGy)で治療したところ,一時,肝腫は縮小し症状は軽減し,社会へ復帰することができた.しかし,肝再発後1年5カ月,初回胃切除後9年6カ月で死亡した.剖検で肝転移が確認されたが(tub2~por),腰椎への転移は認められず,再発形式は血行性転移であった.

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要旨 患者は68歳男性.約1カ月前より心窩部不快感と時々胸やけを認め来院した.4年前に胃腺腫を指摘され経過をみていた.上部消化管精査により,前庭部に不整な分葉状の隆起を認め,胃生検ではmild dysplasiaの所見であった.しかし4年前の所見と比べると,増大傾向があり,1980年5月28日胃部分切除が施行された.胃切除標本では前庭部に大きさ6.5×3.3cm,高さ1.0cmの隆起をみ,組織学的には巨大腺腫内に,多発性の癌巣を認めた.また偶然的な所見として,手術時肉眼的に認識しえなかった体中部切除断端近くに大きさ1.1cmの平坦型早期癌(Ⅱb型)が発見された.断端癌陰性でリンパ節転移もみられなかった.術後経過は良好で,無症状であったが,術後2年目に内視鏡にて残胃に新たにpolypoid cancerが発見された.1982年11月6日残胃全別術が施行された.その肉眼像は残胃前壁中心の表層性の隆起性癌(Ⅰ+Ⅱa)で,一部穹窿部および噴門直下小彎にまで及んでいた.組織学的には乳頭状腺癌の像を呈し,粘膜下層にも大量の浸潤を伴っていた.2回目手術の術後経過良好であったが,1983年夏ごろより,持続性の咳漱と38℃前後の発熱をみ,当時気管支肺炎として抗生物質の投与により治療された.胸部X線所見では肺門部の結節性肺紋理の増強と右上肺に中等度のテント状の肋膜陰影をみ,喀痰検査にて悪性細胞を認めた.1983年11月2日,右肺葉切除とS6,S10の肺部分切除および肺門リンパ節郭清を施行,その切除標本では右肺に多発する孤立性の転移性結節をみ,組織学的に胃癌の肺転移と診断された.

Case of the Month

Early Gastric Cancer, Type Ⅱa
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 A 75 year-old man visited the First Department of Internal Medicine, Nagoya City University, Hospital with a chief complaint of epigastric pain.

 Upper gastrointestinal x-ray series were done on July 22, 1972 and revealed a slightly elevated lesion with granular surface at the posterior wall of the middle gastric body. Endoscopic examination was performed on July 25, 1972. An irregularly shaped and discolored mucosal elevation with granular surface was observed at the posterior wall of the middle gastric body. Adenocarcinoma was confirmed by biopsy. The diagnosis of early gastric cancer, type Ⅱa was made.

Coffee Break

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 IBDの診断の際に,アメーバ赤痢が穴であることのお話をもう1つ.

 急性型は教科書に書いてあるように赤いhaloを伴う潰瘍が特徴的であるが,これも一度も見たことがないとまごつく.イギリスでこれを初めて見たときも何だかわからず,生検を採ってから,次の検査を同じスコープで行い,後日アメーバ赤痢であることが判明して肝を冷した.幸い次の患者に感染は起こらなかったが…….ひどい場合には1日10回の下痢,低蛋白血症を伴い,注腸造影で著明な狭窄を示すような例もある.この例でも最初の生検に既に栄養型アメーバが存在していたが,やはり壊死組織の中に少数認められるだけのために見落とされていたものである.臨床家,特に内視鏡医がアメーバ赤痢に疑いを持つこと,それを病理に知らせることがいかに大切かがわかる.

Refresher Course・6

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口〔症例1〕(Fig.1a,2a,3a)46歳,男性.主訴:心窩部痛(松本医院,埼玉).

口〔症例2〕(Fig.1b,2b,3b)55歳,男性.主訴:心窩部痛(三軒茶屋クリニック,東京都世田谷)・

口〔症例3〕(Fig.1c,2c,3c)48歳,男性.主訴.空腹時心窩部痛(木下医院,東京都東長崎).

口〔症例4〕(Fig.1d,2d,3d)38歳,男性.主訴:吐血(本院),

 〔初回X線所見〕(Fig.1a~d)4枚の写真は,精密X線検査の2週間から2カ月半前に撮影されたものである(Fig.1a~cは他院で撮影).いずれも不規則な形のニッシェが認められ,ニッシェ周囲(矢印の部)には不整な淡い陰影斑が認められる.Fig.1c〔症例3〕をⅢ~Ⅲ+Ⅱcと診断するのは難しいかもしれないが,Fig.1a, b, d〔症例1,2,4〕はⅢ+Ⅱc~Ⅱc+Ⅲと診断できそうである.

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X線と内視鏡

 質問 X線所見と内視鏡所見が食い違った場合にどうしますか.

 岡崎 この質問には“繰り返して検査をしてください”と言うしかないと思います.病変にもよりますね.もちろん,癌のことだと思いますが,癌であれば生検するということも出てくる.しかし,両方もう一度繰り返してそれでなお食い違うということになれば,他の検査法,例えば,粘膜下腫瘍の可能性があれば,アンギオがありますね.

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欧文目次

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 Effect of metoclopramide on normal and delayed gastric emptying in gastroesophageal reflux patients: SM Fink, RC Lange, RW Mc Callum (Dig Dis Sci 28; 1057-1061, 1983)

 metoclopramide(市販名プリンペラン:訳者注)は,下部食道括約筋圧を上昇させ胃食道逆流疾患(以下,GER)の治療に有効であることが知られている.最近,GER患者は下部食道括約筋圧が低いというだけでなくGER患者の41~57%に胃排出時間の遅延が認められたと報告されている.

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 Wine and five percent ethanol are potent stimulants of gastric acid secretion in humans: HJ, Lenx, JF Tarylor, JI Isenberg (Gastroenterology 85: 1082-1087, 1983)

 最近ビールが強力な胃酸分泌刺激作用を有することが報告されている.

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 “ヘマトポルフィリン誘導体(Hpd)が悪性腫瘍の組織に親和性があり,それが光エネルギーにより励起されると螢光を発生する.しかも,その状態が長く続くと細胞毒性があり悪性腫瘍は壊死におち入る”ということは,1960年から1970年になって知られるようになった.

 1972年ごろより米国のNew YorkのRoswell Park Memorial研究所のT. J. Doughertyらは,Hpdを利用した悪性腫瘍に対する光化学治療の基礎的研究を開始していた.一方,東京医科大学の早田義博らのグループは,肺癌のモデル作成実験を行っており,1974年には,イヌの肺に癌をつくることに成功していたが,その後,肺の扁平上皮癌の作成に成功している,この2つの研究グループが,協同実験を開始し,現代の“悪性腫瘍のHpdレーザー光化学治療”の臨床応用への道を開いたのである.

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 Primary hepatocellular carcinoma following non-A, non-B, posttransfusion hepatitis: RH Resnick, K Stone, D Antonioli (Dig Dis Sci 28: 908-911, 1983)

 原発性肝細胞癌(PHC)とB型肝炎ウイルスの感染との関連は周知のごとくである.米国のある研究では,PHCの約1/4はB型肝炎ウイルス(HBV)との関連を認めず,他のウイルスが関係するだろうと言われている.そこで著者らは,非A非B型の輸血後肝炎の患者で,後にPHCに進展した例を報告している.

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 本書をまず手にとってパラパラと数頁をみた.ところが,内容の生き生きしているのに驚いたのも1つであるが,斬新な内容と迫力とで迫ってくるものがあり,興味深く半日かかって読み通させられた.

 とにかく,良い内容,良い企画で,時代の先端を行くよりも,更にその先の先取りの感じであり,一気に読み通して飽きないの一語につきる.編集された水戸廸郎教授,瀧野辰郎教授のお2人とは親しくさせていただいているが,あまり親しすぎて,このようなすばらしい企画,編集をなさるのにはまた大変な驚きと心からの尊敬の念を抱かざるを得ない.

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 この書に目を通してまず驚かされるのは,その後半の2/3以上のページに盛られた切除食道の生々しい肉眼標本のカラー写真や,そのシェーマの美しいとも言いたくなるほどに見事な出来ばえと,各例についての白黒写真による組織像の鮮明さとその説明の的確さである.私はかねがね肉眼像と組織像との間の有機的なつながりの重要性を指摘してきたが,本書はその生きた手本とも言うことができよう.早期癌を含め,これほど数多くの各疾患の典型例を選出された背後には実に1,000例を超す切除例があることを,また前半に記述されている統計の図表などでそのことがよく納得させられる.まさにローマは1日にして成らざることを思い知らされる.

 遠藤,井手両先生は,東京女子医大消化器病センターの開設当初から一貫して食道疾患の診療に当たってこられ,外科医として毎日の骨の折れる仕事を終わった後,夜遅くまで検査室で,ルゴールやアルシアンブルーによる切除食道の染め物屋さんにも似たマクロ染色と,その微に入り細を穿った検査およびその組織変化との対応などに精を出してこられた.この書は技師諸君,諸嬢の多大な協力があってはじめて実現に漕ぎつけたことも確かであるが,何よりもまず両先生が率先して検査・研究に情熱を傾けられた賜物であることを私はよく知っており,そのような意味を込めてこの本の出版に深い敬意を捧げると共に心からお祝いを申し上げたい.

編集後記 高木 国夫
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 胃癌診断の進歩で,早期胃癌が数多く発見され,その予後が極めて良好なことが明らかになり,診断する側も外科的治療を行う側も早期胃癌と言うと,治るものとして,安易に考えてしまう傾向があるのであろう.早期胃癌の中で,術後5年以内に,ときに5年以後に再発して,愕然とした経験を持たれたことがまれではないであろう.

 本号では組織学的に早期胃癌であった症例の中で再発死亡した症例には,どのような特徴があるかを取り上げた.再発の多くが血行性肝転移で,隆起型早期癌に多いことが今回の検討でも明らかにされ,リンパ節転移が認められた症例に再発があり,術前診断からは,岡村らの細胞悪性度が胃生検の段階で検討されるようになることが期待されよう.

基本情報

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胃と腸
19巻7号 (1984年7月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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