胃と腸 19巻6号 (1984年6月)

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要旨 1962年~1984年1月までに,国立がんセンター病院にて26家系49例(男37例,女12例)の大腸腺腫症を経験した.死亡は10例で,生存39例中11例は年齢15歳未満の小児例である.大腸病変以外の随伴性腫瘍の頻度は,顎骨内骨腫86.8%(33/38),十二指腸ポリープ71.9%(23/32),胃ポリープ56.8%(25/44),顎骨以外の骨病変(骨腫,外骨腫,骨皮質肥厚)50.0%(16/32),体表の軟部組織腫瘍(異時性を含む)27.0%(10/37),腸間膜デスモイド腫瘍13.5%(5/37),歯牙腫13.2%(5/38)であった.なお大腸癌以外の悪性腫瘍としては,胃癌2例(53歳 男,41歳 女),甲状腺癌1例(27歳 男)であった.本症における大腸腺腫,および種々の随伴性腫瘍の経過を観察した結果,以下の知見と推測が得られた.①外・中・内胚葉に由来する良性の腫瘍性病変の多くは,学童期には既に発生しており,思春期~青年期までは数の増加と大きさの増大がみられたが,それ以後は一般的にみて腫瘍の発育は止まるものと推定された.②中胚葉由来の悪性腫瘍(肉腫)の合併はまれである.③外胚葉由来で被蓋上皮が主体である上皮組織の悪性化もまれである.④内胚葉由来の組織でも,大腸,小腸,胃,甲状腺のごとく,腺上皮としての機能が主体である上皮組織の悪性化(癌腫)は多い.以上の知見から,大腸腺腫症の経過観察に際しては,内胚葉由来でかつ腺上皮と吸収上皮の性格を有する上皮組織,およびこの組織を有する器官・臓器を中心に行うことが重要であると考える.

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要旨 家族性大腸腺腫症14家系21症例の胃・十二指腸が,X線・内視鏡検査および生検によって平均5年以上経過観察された.胃底腺ポリポーシス10例の経時的変化は,増加4例,減少2例,減少→増加1例,消失→増加1例,新生1例,不変1例であった.これらの変化と大腸切除との間に明らかな関係は認められなかった.胃腺腫7例のうち5例は不変であったが,他の1例では2個の腺腫のうち1個が消失,残りの1例では腺腫の癌化が示唆された.十二指腸に単発ないし多発性の腺腫が認められた12例(対象13例中)のうち,9例は不変であったが,他の2例では部分的に軽度増加あるいは減少が観察された.更に,残りの1例では初回検査で見落とされた径17mmの球部隆起が,1年10カ月後50×30mmの進行癌に増大した.10例中4例の乳頭部に腺腫が発見されたが,その内視鏡像および生検組織像に経時的変化は認められなかった.以上の成績より,本症における胃・十二指腸病変は,大腸に比べると発育は緩徐で,癌化の頻度も低いが,今後長期生存例が増えるにつれ,上部消化管癌の発生頻度も増すことが予想され,長期間の定期的follow-upが必要であることが示唆された.

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要旨 初回検査で癌の合併がないと判断して長期間follow-upを行った家族性大腸腺腫症5例について形態学的変化を考察した.家族性大腸腺腫症においては,ポリープの密度が長期間変化しない静止期があり,その後に密度が高くなる変動期のあることが推測された.一方,ポリープの大きさは変化する傾向にあり,その静止期は密度の静止期に比して短いものと考えられた.著明な増大傾向を呈する病変については,大腸隆起性病変の診断理論に基づき,大きさに形の要素を加えて分析することにより癌化の可能性を判定できた.しかしながら,癌化した病変をすべて検査所見上(X線・内視鏡所見)に把握することは困難であり,長期間のfollow-upは極めて危険なものであることが示された.

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要旨 当センターの登録例で,大腸腺腫症513例の手術予後を生死と死因調査により検討した.臨床経過については自験例65例で検討した.手術予後を術式別に検討すると手術時の癌有病率を反映し,直腸温存術式が最も生存率が高く,次いで全結腸直腸切除術であった.長期的には全結腸直腸切除術が最も安定していた.直腸温存術式では術後6年までに17.9%に直腸癌が発生すると計算された.大腸癌以外に胃癌,十二指腸膵頭部癌,小腸癌発生が多く,甲状腺癌の合併が目立った.本症術後にデスモイド腫瘍が8.1%に発生した.いずれも術後2年以内に発生し30歳以下の者に発生しやすい傾向を認めた.

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要旨 症例は35歳男性,25歳時大腸ポリポーシスにてS状結腸部分切除術を受けた.1983年1月に腸閉塞症状にて来院.腹部に成人頭大の腫瘤を触知,急性腹症にて手術.腹腔内に巨大な腸間膜腫瘤を認めたが切除不能と判断,生検施行し閉腹.その後巨大な腸間膜腫瘍を伴った家族性大腸腺腫症と診断し再手術を施行.腫瘍の大部分と腫瘍により圧迫壊死を起こしていた十二指腸第2部より第3部を合併切除し救命しえた.切除標本の大きさは23×22×6cm,重さ3kgで組織所見はデスモイドであった.デスモイドを合併した家族性大腸腺腫症は本邦では14例が報告され本例が15例目でありデスモイドは報告例中最大であった.

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要旨 症例は37歳の男性で,1974年9月に家族性大腸腺腫症の診断にて結腸全摘術を受けた.大腸の腺腫は密生型で,進行癌はなかった.その後,年に数回の頻度で残存直腸のポリープ摘除を目的として外来通院していた.初回入院時,1976年5月,1977年3月,1979年4月の計4回にわたって上部消化管X線検査を施行したが,胃・十二指腸にポリープを認めなかった.1983年4月に無症状であったが,定期検査として上部消化管内視鏡検査を行ったところ,十二指腸乳頭および副乳頭の腫大を認め,生検にて腺腫と診断されたため,経十二指腸的に腫瘤切除を施行した.乳頭はO.8×1.6cm,副乳頭は0.8×1.4cmの腺腫で,悪性所見はなかった.大腸腺腫症患者の上部消化管にはポリープが高頻度に合併し,また,胃癌,十二指腸傍乳頭部癌も多数報告されていることから,大腸腺腫症患者のfollow-upの際,定期的に上部消化管を検索することが大切である.

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要旨 26歳男性,左下腹部の痛みと腫瘤,粘血便を主訴として受診.家族性大腸腺腫症に伴う大腸癌と診断され,大腸亜全摘を受けたが,術後8カ月で同癌の肝転移のために死亡.大腸の全割標本で,無数の腺腫,16個の腺癌,168個の内分泌細胞微小胞巣の巣状集団が確認された.同集団は,直腸~S状結腸に多く分布し,腺腫の深部にみられることが多かった.同集団は1~38個の同胞巣から成り,大きさは12~1,050μmで,あるものは粘膜下層へ浸潤していた.同胞巣はすべて好銀性細胞で構成され,電顕的に径140nmの円形顆粒を有する内分泌細胞(D1細胞)の均一集団で形成されていた.以上の特徴を有する内分泌細胞微小胞巣の巣状集団は,通常の大腸疾患にみられず,家族性大腸腺腫症に随伴する微小カルチノイドおよびカルチノイドの芽と考えられる.

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要旨 家族性大腸腺腫症は大腸に無数の腺腫が発生するのみならず,軟部腫瘍,骨腫および歯芽異常(Gardner症候群)や,中枢神経腫瘍(Turcot症候群)を随伴する.また,大腸以外の消化管にもポリープが発生することがある.特に本邦において胃に多数のポリープが報告されている.その組織学的所見は,胃前庭部のものは腺腫で,胃底腺部のものは過形成性ポリープである.後者の一部は経過中に縮小したり消失したりする.筆者らは,20歳,女性の家族性大腸腺腫症で,胃底腺領域にポリープが多発し,その組織像は過形成性ポリープであった(胃底腺の過形成と小嚢胞から成る隆起性病変で,炎症性変化に乏しい)が,大腸切除後に胃病変が消失した症例を経験したので報告した.

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要旨 家族性大腸腺腫症の結腸全摘後約1年に左下腹部腫瘤がみられ来院.その腫瘤が急速に増大し,呼吸困難が出現したため入院.腹部超音波検査にて腫瘤は左腹部全体を占居していた.腹部血管造影検査にてその腫瘤は腰動脈と上腸間膜動脈によって栄養されていた.更に左腎は排出機能の低下を示していた.手術は回腸部分切除,左腎摘出術,左総腸骨動脈再建,姑息的腫瘤切除術を施行した.切除標本にて,被膜に覆われた腫瘤の大きさは35.5×27.0×14.Ocmで,その重量は7.8kgであった.組織学的には線維肉腫であった.家族性大腸腺腫症の結腸全摘1年3ヵ月後に巨大な後腹膜線維肉腫の認められた1例を経験したので報告した.

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要旨 兄弟2人が胃癌を合併した大腸腺腫症の1家系を報告した.症例1は39歳(兄)で,開腹時に偶然,肝転移(H3)を伴うT3N2S3の末期胃癌が発見された.症例2はその弟で,33歳でS状結腸切除術を受け,8年後に胃体下部のBorrmann 3型と前庭部のⅡb様の早期胃癌のため,胃切除術および肝左葉切除術が施行された.2例とも,いわゆる癌年齢に達しており,また胃ポリープは合併していないと考えられ,全身性腫瘍形成因子の関与よりも胃癌が多発するという本邦特有の事情を考慮すべきと思われた.

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要旨 ヒト大腸腺腫の組織発生について,特に微小腺腫の発生様式の解明を試みた.ヒト家族性大腸腺腫症6症例の平坦な粘膜の,微小腺腫病変を完全連続切片法を用いて観察した.その結果,腺腫は正常腺管の増殖帯から,粘膜固有層に発芽する異型上皮の増殖巣,すなわち“腺腫の芽”として最初に観察された.正常腺管上皮の上方への移動に伴って,腺腫の芽も上方に移動し,かつ増殖して,粘膜表層部で正常腺管と分離・独立して,単一腺管腺腫となる.しかし完全に分離せずに正常腺管の開口部を占拠する単一腺管腺腫も少数例観察された.この腺腫発生の過程には,増殖帯の拡大や逆転というような異常は関与していないことがわかった.

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 武藤(司会) 北は弘前から南は鹿児島まで,日本各地から大腸腺腫症に関する権威の方に集まっていただきましたので,本日の座談会で日本の大腸腺腫症の現況を知ることができるのではないかと期待しております.

 約10年前に“消化管の特殊なポリポージス”の特集がありました(「胃と腸」第9巻第9号).現在では大腸腺腫症の疾患概念はよく理解されるようになったと思います.今回は診断されてからの経過および治療,特に外科の治療やその予後の実際に焦点を当てて特集を組んだわけです.皆さんのそれぞれの御経験を話していただき,日常の治療,診断に役立つ指針を与えていただければ大変ありがたいと思います.

Coffee Break

食べ物にご用心 武藤 徹一郎
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 初老の男性が1年来の軽い粘血便を主訴に他院から紹介されてきた.症状は結核療養に入院中から始まり,肺結核が治癒して退院してからも症状が継続しているらしい.注腸造影検査では右側結腸直腸に変形が認められる.内視鏡検査も行われていて上行結腸に潰瘍性病変が認められ,大腸結核が疑われて抗結核療法が行われたのは当然のことで,誰でもこのように処置したであろう.少し変なのは抗結核治療を行っているにもかかわらず,症状が一向に良くならないことである.

 内視鏡を盲腸にまで挿入して診ると盲腸,上行結腸の粘膜は全体に浮腫状で,所々にベットリした白苔に覆われた潰瘍が散在していた.潰瘍性大腸炎とは全然違うしCrohn病とも違う.結核にしてもちょっと変だ…….まさかアメーバ赤痢では? 等々と考えながらとにかく生検を採った.今までに経験して,頭の中に整理されているIBDの像のどれにもピッタリとは合致しないので,診断には自信がなかった.

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 第70回日本消化器病学会総会は,3月26日から3日間,日本医科大学第3内科常岡健二教授を会長に,国立教育会館虎の門ホールを中心に開催された.今年は大雪に泣いた東京の街も,第1日目には暖かい陽が照り,やっと春の訪れを感じさせてくれた.

 第1日目午後にパネルディスカッション“Crohn病の病態,診断,治療”が行われた.診断に関しては,ごく少数の特殊な症例を除けば,どの施設でも臨床診断に迷うことはほとんどなくなっており,数年前と比較してわれわれの“目”がCrohn病に慣れてきていることが推察された.治療については薬物療法(サラゾピリン,プレドニンなど)に比し,栄養療法(ED,TPN)のほうが,臨床症状,X線・内視鏡所見の改善や予後の面で良好な成績を上げていることが報告された(西俣,樋渡,渕上).しかしながら,緩解導入後に高頻度に再燃がみられることも示され,松枝らは再燃予防を目的にhome hyperalimentation(H-HA)を行い,良好な成績を得ている.早期や急性増悪期の内科的治療としては栄養療法が中心になることでは意見の一致をみたが,栄養療法の適切な期間,投与方法(24時間持続投与の可否など),適切な脂肪含量などの問題点は残っており,更に薬物療法の位置づけ,緩解期におけるH-HAの評価や薬物療法の必要性の有無(外国文献では緩解維持効果なしと言われているが)については今後の検討が必要であろう.外科手術に際しての切除範囲については,“広範囲切除”を主張する発表はなく,必要最小限にとどめるべきとする意見が大勢を占めた.病態に関しては脂肪吸収障害,胆汁酸,腸内細菌について発表があったが,十分な討論は行われなかった.近い将来,胃・十二指腸病変も含めたCrohn病の長期予後と共に,病態に関しても十分な討議の場が持たれることを期待したい.

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 肝臓関係の特別講演として,国立台湾大学内科の宋瑞樓教授の講演があった.宋教授は台湾におけるB型肝炎ウイルス感染の現状とその問題点について詳細な発表をされ,台湾では,本邦以上にB型肝炎が重大な疾患であることを強調された.そして印象的だったのは,国民病とも言うべきこの疾患に対し,国をあげて母児感染予防などの対策に取り組んでいるという報告であった.シンポジウムでは,“肝硬変の治療と予後”が取り上げられた.今回の発表によって,重症の肝硬変患者の予後は,利尿剤などによる治療の進歩により著明に改善されていることが明らかにされた.しかし,近年肝硬変症の治療に頻用されている血漿製剤については,その功罪が討論され,栄養学的側面も踏まえての使用法の確立が望まれた.食道静脈瘤の治療では,最近の新しい治療法の報告のほか,脾摘の免疫能や予後に与える影響が注目を集めていたが,癌化の問題ともからめて,今後とも検討が必要のように思われた.また一般演題では,基礎的・実験的研究から,肝疾患の新しい診断法・治療法の検討までと多岐にわたっていた.どの会場も盛況であり,ポスター会場では会場内に入りきれないほどであった.したがって討論も活発になり,討論時間に余裕のないのが残念であった.(井本正巳)

 胆道系では種々のドレナージ法の効果の比較,手技・道具の改良,胆石溶解療法関連ではその機序,UDCAとCDCAの併用の成績が報告された.肝内結石では癌発生母地の観点からの病理学的検索の報告がなされたが,今後症例数が増えていけば興味深い成績が得られよう.胆嚢癌では,診断面では依然ポリープ型病変に的がしぼられており,他の型の術前診断が困難であることは変わらないようである.また,発生学的見地からは,培養,実験癌などの手法により,発生過程の解明が試みられている.胆石形成に関しては,胆石の組成,胆汁レベル,ホルモン作用からみた形成因子の検討,消化管手術後の胆石形成過程の観察に基づく知見などが報告された.(木本英三)

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欧文目次

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 日本の胃癌診断が世界最高レベルにあることに異論はない.これは単に日本の胃癌発生率が欧米に比して極度に高いことによるだけでなく,X線,内視鏡といった診断結果を手術所見と克明に対比して,存在診断から質的診断へと常に診断能の向上を志した先人の精力的努力の賜にほかならない.今回医学書院から上梓された「腹部疾患の超音波・CT診断」も正にこの流れに沿う好著である.

 著者の新妻伸二博士は新潟県立がんセンターの放射線科部長であるが,開院以来の同院の放射線診療を担ってこられた.元来X線診断,特に消化器疾患の診断に造詣が深く,非凡な着想をたちまち実行に移す行動力にも恵まれている.例えばジャイロ式と呼ばれる大型で高価な装置が定着する以前から,消化管の仰・伏・側臥位水平方行透視撮影の可能な装置を考案して,注腸二重造影検査に優れた成果を挙げた.また,経口胆囊造影法の欠点として肝内胆管が描出されないことについては,胆囊収縮剤セルレイン筋肉注射後約10分間右側臥位を保持して,水平方向撮影を行う方法によりこの問題を解決するなど,学会内で高く評価される業績を発表している.このような著者の鋭い認識が今回の著書の主張となっている.すなわち,透視,CT,血管撮影,US,RI検査など数多い腹部画像診断法の中で,USをdecision treeの根幹にしようというものである.上述の各種診断法は長所短所を有し,それぞれが補完し合って診断が確定するのであるが,侵襲が全くなく,即時性の極めて大きいパーソナルUSを,聴・打・触診の次に据えて以後の検査の振り分けを行うという狙いである.同院での過去3年余のCT8,000例,US3,000例の経験を踏まえて,ほぼ同時期に再検査の行われた代表的な80数例を掲げて,両者を対比しつつUSの使用法が説明されている.特に未だ早期診断の機会に恵まれることの少ない腹部悪性腫瘍のスクリーニングに果たすUSの役割の大きいことを述べており,極めて説得力のある主張で,全幅の讃意を表するものである.

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 本書の特徴は,序文にも,また本書のサブタイトルにも示されているように,肝硬変と肝腫瘍を取り上げ,27の主題を設け,それぞれの項目について最もup-to-dateな内容を示しながら,annual review的論文を集載し,原著を読む煩雑を略して,専門家の纒めた論文から最新の情報,考え方を理解できるように編集されている.また,これらの領域は内科と外科とが常に緊密な連繋のもとに治療を考えなければならなくなっており,例えば食道静脈瘤に対する処置がそうであるが,そのような集学的な診療をめざして,まず内科側のreview的な論文を配し,外科に何を求めるかを示し,次いで外科側の論文,殊に外科的治療のことを示し,その中間に画像診断の論文を置いてある.

 内容はまず慢性肝炎から肝硬変への移行の問題,肝硬変の予後を規定する因子,腹腔鏡および生検診断,肝硬変患者の管理,静脈瘤からの出血の危険度の問題,PTPによる静脈瘤塞栓法,内視鏡的硬化療法,静脈瘤出血に対する緊急措置,待期的外科治療,費用の問題,肝不全の治療法,腹水に対する処置,肝硬変と腎障害の問題,surgical risk,肝腫瘍発見のためのアプローチ,肝癌の画像診断,腹腔動脈造影,発癌因子としての経口避妊薬,肝の良性腫瘍に対する手術,原発肝癌の自然経過と予後,内科的治療法,外科的治療法,および最後に転移肝癌に対する治療の考え方から成っている.執筆者は計41名の第一線の専門家で,内容は現時点での最先端を行くものであり,内科と外科の関連がよく浮き彫りになっていて,なかなか良い企画の書である.

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 放射線診断学は,従来のX線診断学に超音波,核医学,X線CT,NMRなどを包括したものとなり,欧米ではすべての画像診断を総称してdiagnostic radiologyと呼称している.本邦でも最近,“画像診断学”や“総合画像診断学”という言葉が広く用いられるようになってきた.種々の診断法や呼称が流行しても,X線診断は編者も冒頭で強調しておられるように,画像診断のうち最も基本的かつ中心であることには変わりない.

 本書の特徴の1つは,X線診断がCTや超音波を含めた総合画像診断の立場から記載されていることである.本書のタイトルの“新”は,本書が各種の画像診断の発達の中で,X線診断がどのような位置づけにあるかを明確にしながら,必要に応じて超音波,CTまたはRI検査を取り入れて診断することの重要性を意識した,時代の進歩に即応したX線診断学書である点に,その意味がある.

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 Does intercurrent hepatitis have a beneficial effect on the course of Crohn's disease?: G Vantrappen,G Coremans,J Janssens,et al(Gastroenterology 84: 843-845,1983)

 著者らはウイルス性肝炎併発後,すべての臨床症状が緩解した重症な小腸大腸型のCrohn病に遭遇した.ベルギーのLeuven大学病院で4年間に経験した235人のCrohn病をreviewしたところ,3人が急性肝炎を併発していた.これら4症例を対象に,肝炎の併発がCrohn病の経過に有益な効果を与えるか否か臨床,X線的および内視鏡的に検討した.

編集後記 丸山 雅一
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 小生も主題の1つを担当した都合上,編集後記を書くのはいささか面映ゆい気持であるが,家族性大腸腺腫症(FAC)という疾病において医師は,患者およびその家族とお互いに全人格をぶつけあって取り組み,最善の道を捜し求めなければならないものだと思う.座談会の司会をされた武藤氏には批判を受けるだろうと覚悟している小生のデータも,頑なに手術を拒否する患者というよりも,FACを病んでいる人間そのものとの長い闘争の歴史である.

 弁解はともかく,長い年月の集積であるデータのまとめを限られた活字空間の中で生かし,主義主張を貫こうと努力された執筆者諸氏の情念とも言うべきものを感じ取ってもらえれば本号の企画は成功したものと言ってもよいのではあるまいか.胃・十二指腸病変を担当した飯田氏の気迫,組織発生を追求した中村氏の緻密さなどはまさしく情念のなせる業であろう.手術の予後についての岩間氏の成績も患者を説得する際の指標として重要である.牛尾氏の論文,特に大腸病変についての記載は重大な内容を含んでいる.欲を言わせてもらえば,FACが完成されるまでのポリープの大きさと密度の変化について更に細かな具体的事実の提出ができなかっただろうか.残念な気がしないでもない.

基本情報

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胃と腸
19巻6号 (1984年6月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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