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書評「食道腫瘍の臨床病理」
長与 健夫
1
1愛知県がんセンター研究所
pp.814
発行日 1984年7月25日
Published Date 1984/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403109543
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この書に目を通してまず驚かされるのは,その後半の2/3以上のページに盛られた切除食道の生々しい肉眼標本のカラー写真や,そのシェーマの美しいとも言いたくなるほどに見事な出来ばえと,各例についての白黒写真による組織像の鮮明さとその説明の的確さである.私はかねがね肉眼像と組織像との間の有機的なつながりの重要性を指摘してきたが,本書はその生きた手本とも言うことができよう.早期癌を含め,これほど数多くの各疾患の典型例を選出された背後には実に1,000例を超す切除例があることを,また前半に記述されている統計の図表などでそのことがよく納得させられる.まさにローマは1日にして成らざることを思い知らされる.
遠藤,井手両先生は,東京女子医大消化器病センターの開設当初から一貫して食道疾患の診療に当たってこられ,外科医として毎日の骨の折れる仕事を終わった後,夜遅くまで検査室で,ルゴールやアルシアンブルーによる切除食道の染め物屋さんにも似たマクロ染色と,その微に入り細を穿った検査およびその組織変化との対応などに精を出してこられた.この書は技師諸君,諸嬢の多大な協力があってはじめて実現に漕ぎつけたことも確かであるが,何よりもまず両先生が率先して検査・研究に情熱を傾けられた賜物であることを私はよく知っており,そのような意味を込めてこの本の出版に深い敬意を捧げると共に心からお祝いを申し上げたい.
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