胃と腸 17巻1号 (1982年1月)

今月の主題 sm胃癌の問題点(1)―隆起型症例

序説

sm胃癌の問題点 白壁 彦夫
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 sm癌は,早期胃癌のアクセサリーではない.本企画は啓蒙ではなくて,再吟味である.今までに,sm癌に対する錯覚のようなものがあるのでは,なども考えられる.ここに,もう一度,見直そうというのだ.順次,話を進めていく.

 早期胃癌はm癌とsm癌を含んでいる.なぜsm癌を早期という中に入れることになったのか.これにかんしては文献上のこともあり,早期胃癌肉眼分類(始めは内視鏡学会分類と言った.ところが,内視鏡分類だと間違える人がでてきたので改められた.この分類は,病理,内視鏡,X線の各委員がでて討議して決まったいきさつがある.)が決まるときには,その当時には,皆さんはそれなりの立場で議論が多かった.私にかんする限りでは,村上忠重教授との間で熱い話し合いがあった.強く申し上げた点は,次のことである.

X線診断からみたsm胃癌 西沢 護
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 本誌が刊行されて以来,胃癌の深達度診断やpm胃癌などの主題で,少なからずsm癌にも触れられてきたが,sm癌というテーマを取り上げるには,それなりの理由がある.

 まず,われわれはどれくらい早期癌と進行癌とを術前に区別しえているであろうか.このことは別に新しい問題ではないが,進行癌の多かった昔と,今とで発見されてくる胃癌の内容がかなり変わってきている.進行癌の中でもかなり進んだ進行癌をみていた昔は,100%に近い的中率であった.しかし,最近のように,より早期癌に近いものが多く発見されてくると深達度診断はますます難しくなってくる.これを正しく診断しようというのがsm癌を分析する第1の理由である.

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 年は争えないものである.というのは,だんだんと加齢現象が現れだしたというか,頻々と激しい変革が起こることについてゆけなくなったようである.したがって,早期胃癌の定義とか分類にも,そう簡単に手入れをして欲しくないのである.また,現時点では,変更の必要性を認めない.

 しかし,さほど遠い時期ではないかもしれないが,新しい時代の要請にこたえてといってもよいし,早期癌診断学の進歩,飛躍に呼応してと表現してもよいが,早期胃癌の定義の変更が余儀なくなるとすれば,早期胃癌のなかからsm癌を外して,m癌だけにすることや,リンパ節転移を問わないという現在の規定も検討されることになるだろう.もっとも,リンパ節転移の問題は,現在の「胃と腸」の編集委員が健在である限り,再び討論の俎上にのぼることはないのかもしれないし,早期胃癌を診断学の立場から定義しようという,われわれ臨床家が踏ん張っている間は,X線と内視鏡という診断武器の性格上たいへん困難なことである.

外科からみたsm胃癌 高木 国夫
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 診断技術の進歩から,早期胃癌が数多く見出されてきているが,早期胃癌の中で粘膜下層までに浸潤した癌(sm癌)に対しては,手術する外科的立場からみると,種々の問題点がある.

 開腹する前にX線検査や内視鏡検査,更に胃生検によりsm癌と診断されているが,開腹後に胃を漿膜面から見たり,触診したときに病変の範囲がわかりにくい.sm癌でも粘膜下層への浸潤範囲が極く一部に限られている揚合もあるし,massiveに入っている場合もあって,術前診断と食い違うことがまれでない.

病理からみたsm胃癌 望月 孝規
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 早期胃癌を定義する際に,理論的には粘膜内(m)癌がそれに該当すると考えられたが,当初はm癌の症例は少なく,また,固有筋層(pm)よりも深部に浸潤している,いわゆる進行癌への移行を知るうえにも必要であるので,粘膜下層(sm)にまで浸潤している癌も,この定義の中に加えられたと聞いている.その後,sm癌の症例が増加するにしたがい,種々の重要な問題が生じてきている.病理組織学的な立場から列挙してみると,以下のようなことである.

 (1)ⅢやⅢ+Ⅱcのsm癌は,果たして他の型の早期胃癌と同じように取り扱うべきであろうか.

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 X線・内視鏡診断学の進歩した今日,その指標となる異常所見が正確に表現されている場合には胃癌の術前深達度診断の信憑性は決して低いものではない.しかし日常の臨床の場では病変の占拠部位,胃内条件の相違や病変を構成している病理組織学的附随変化の違いによって,病変の描出の難易度は異なり,かつ病像の現れ方も変化して術前の深達度診断に苦慮する場合も少なくはない.

 ここに腫脹蛇行する粘膜ひだを有する胃体部大彎側粘膜領域に発生し,術前深達度診断に苦慮した隆起型早期胃癌の症例を報告する.

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 Ⅱa型早期胃癌の深達度診断は比較的容易であるとされているが,われわれは術前,深達度が粘膜内癌mと診断したが,病理組織学的検索の結果,深達度smであった深達度診断困難症例を経験したので報告する.

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症例

 患 者:59歳,男,会社員.

 現病歴:1980年1月より時々心窩部痛があった.9月,近医で胃X線・内視鏡検査を受け,異常を指摘され,10月に入院.

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 術前に深達度mのⅡa+Ⅱc型早期癌と診断したが,切除胃の病理組織学的検索にて,深達度がsmであった症例を経験したので報告する.

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症例

 患 者:50歳,男,会社員.

 現病歴:1977年5月,ドック検査で胃癌を疑われ,6月入院.自覚症状はない.

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 隆起型早期胃癌のうち深達度smの癌は,リンパ節転移,肝転移がしばしばみられ,深達度mの癌との鑑別が臨床上重要である.今回,深達度smのⅡa型早期胃癌の1例を呈示し,文献的および,われわれの施設で経験したⅡa型早期胃癌の深達度診断に関して若干の検討を加えたので報告する.

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 隆起型胃癌の深達度診断は,主としてその大きさならびに起始部の性状によって判定されている.すなわち,大きさが増大するに従い,または隆起起始部の形状が有茎→亜有茎→広基となるに従って深達度が深くなるとされている1)~5).また隆起表面の凹凸が著明なもの,表面に白苔を有するものは,深達度が深いとされている4)5)

 本稿では,典型的な深達度smのⅠ型早期胃癌の1例を呈示する.

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症例

 患 者:46歳,男,自営業.

 現病歴:1973年9月,胃潰瘍を指摘された.1975年3月,心窩部痛があるため,胃X線検査を受け,胃癌を疑われ,4月入院す.

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症例

 患 者:51歳,女,無職.

 主 訴:胸がつかえる感じと食欲減退.

 家族歴:特記すべきことはない.

 既往歴:30歳のとき軽度の妊娠中毒症に罹患したほか,特記すべきことはない.

 現病歴:1979年11月に感冒に罹患して近医を受診し投薬を受けたが,そのころから胸がつかえる感じと食欲減退があったため,同医にて胃X線検査を受けた.その結果,胃の中央部に米粒大の陰影があると言われ,同医のもとで内視鏡検査を受けて,手術を勧められた.1979年12月17日に,癌研内科を受診し,1980年3月21日に入院した.入院までの5カ月間に約6kgの体重減少を認めた.

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 胃の隆起型胃癌の術前の深達度診断は,ある程度正確に行えるようになっている.われわれは術前のX線および内視鏡診断にてBorrmann 2型癌と診断し,術後の病理組織学的検索にてⅠ型早期胃癌であった1例を経験したので,その深達度診断について若干の文献的考察を加え報告する.

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 中央陥凹と辺縁の環状に隆起するⅡa+Ⅱc型早期胃癌は,ときとしてBorrmann 2型進行胃癌との深達度診断が困難な場合がある.われわれが深達度診断に苦慮したⅡa+Ⅱc型早期胃癌の1例を報告する.

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 隆起型胃癌の深達度診断の根拠は,大きさ,表面の性状と共に,起始部の性状,すなわち有茎性か広基性かということにある.一般に広基性のものは深達度が深いとされている1)2).しかし,明確な基準がないため,深達度の判定が困難な症例も少なくないのが現状である.

 本稿では,広基性でありながら深達度mであったⅠ型早期癌を呈示する.

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 今回,われわれはこれまでに経験した早期胃癌症例を洗い直してみた.そして,深達度診断上Ⅱa+Ⅱc型早期胃癌で,中心陥凹部の深達度をmかsmか苦慮し,最終的にはsmと術前診断したm癌を取り上げた.若干の検討を加えて報告する.

Case of the Month

Early Gastric Cancer, Type Ⅱc
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 A 53-year-old woman was admitted to the hospital on June 3, 1980. She had experienced dyspepsia with occasional epigastric pain since January 1980. Upper gastrointestinal x-ray and endoscopy by a neighboring doctor revealed abnormality around the incisura of the stomach. Appendectomy was done at the age of 34. There was nothing in particular in the family history.

 Physical examination revealed no abnormal findings. Blood count, blood chemistry and urinalysis were within normal limits. Stool was negative for occult blood. Chest and plain abdominal films were normal.

Coffee Break

Gastrozymin
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 ブタの上部小腸より抽出されたフラクションでペプシン分泌を促すものがある.Blairはこれをgastrozyminと名付けた.上部小腸から抽出できるもので,胃酸分泌を刺激することなくペプシン分泌を刺激するのはセクレチンである.だから,gastrozyminはセクレチンとよく似たものであろうと推測できる,

 トリプシンやカイモトリプシンで分解されるのでgastrozyminはペプタイドであろうと考えられる.上記のようにセクレチンと似た作用があるが,セクレチンよりは分子量も大きく,塩基性の構造を持っているようである.その他の物理化学的性質もセクレチンとは異なるということである.

アルコール常飲者のビタミン欠乏
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 ビタミンB1(thiamine)はピロ燐酸エステル(thiamine pyrophasphate,TPP)となって助酵素として作用をあらわす.TPPが助酵素として働く酵素反応の代表的なものの1つにTransketolaseの関与する反応がある.TransketolaseはXylulose-5-燐酸とリボース5-燐酸とからsedoheptulose-7-燐酸とグリセリンアルデヒド-3-燐酸を生ずる酵素である.

 肝障害,特にアルコール性の肝臓病ではビタミン欠乏症が高頻度にみられる.この欠乏の状態を調べるのにin vitroでTPP刺激による赤血球のTransketolase活性の変化をみる方法がある.TPP刺激前のTransketolase活性が低かったり,刺激後の活性増加が40%以上だったりすると生化学的にはビタミン欠乏症ということになっている.

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 Eastwoodは2つの仮説を提唱した.すなわち,1つは粘膜再生の遅延,もう1つは粘膜再生への刺激,この2つが消化性潰瘍の原因とその存在による影響であるかもしれないと.

 十二指腸潰瘍辺縁および十二指腸炎の部分からファイバースコープを通して生検し,トリチウムサイミジンを用いてDNA合成細胞を標識し,Labelling indexを調べると,他の部位の組織に比して約2倍の値を示す.だから,粘膜再生そのものの遅延はないと思われる.1腺窩あたりの全細胞数はかなりの幅はあるが,平均では潰瘍辺縁と普通の部位との間に差はない.

小腸切除後の膵肥大
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 小腸切除をすると膵の重量が増加する.しかもこれは浮腫によるものではない.膵のDNA含量が増加しているので,まず膵細胞が増殖しているものと考えられる.特にはっきりしているのはacinar cellである.

 膵組織形成は食餌に影響されると言われている.例えば飢餓状態にすると膵の発育や蛋白,酵素,RNAなどの合成はたちまち抑制されてしまう.十分な食餌を与えると膵はそれに応じて育つのである.しかし,これは食餌によって刺激され放出される消化管ホルモンの作用が関与しているものと考えられている.

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 食道から直腸に至るまでの消化管と,少数例ではあるが膵にみられるむしろ稀だと言ってよい病変が集められている.

 編者岡部教授とは,彼がアメリカ留学中の1958年に初めてお目にかかって以来の長い付き合いであり,帰国後消化管を中心とした分野での研究,特に悪性サイクル,特発性小腸潰瘍等の新しい概念の発表などに大いに敬意を払っていたのであるが,当然,良き理解者,良き協力者がいてとのことと思っていた.本書についても,編者の趣旨に賛同された極めて多くの協力者がいたことは頁をめくればすぐにわかることである.これだけたくさんの珍しい症例を集めることは1施設だけでは到底なしうることではない.しかも,とかく興味ある例とわかったものは後でその資料が不十分で後悔先に立たずの思いをすることが少なくないが,本書では各病変を彷彿とさせる見事なX線写真が各症例ごとに呈示されている.集める側も苦労の多い仕事だったと思うが,各症例を提供されたたくさんの方々もさぞ大変なことだったろうと,その1人1人の方々にむしろ執筆されるまでの苦労に大いに敬意を表したい.

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好天に恵まれ,盛り沢山に

 中村光夫の「今はむかし-ある文学的回想」は,“まだそれほどの齢でもないし,かくべつ面白い経歴があるわけでもないのに,思い出話などすることはあるまいと笑われそうですが,近ごろのように,知人や友人が相ついで世を去るようになると,やがて僕自身もという気になり,今まであまり心にとめなかった半生がしきりに思いだされてきます”という文章でもって,書きはじめられている.

 私は山口大学に転任してからも,何度か米子を訪れた.この米子の地に来ると,山陰の消化器病学をいつも心配し,山陰の地を心から愛し,そしてとうとう山陰に永遠に眠っている田中弘道君のことを思い出さないわけにはいかない.

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 肉眼的に,Ⅲ+Ⅱc様の陥凹と,その周辺に粘膜下腫瘍様の肉眼形態を示し,組織学的に著明なリンパ球浸潤を伴う進行胃癌の1例を経験したので報告する.

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 大腸に発生する静脈瘤は極めてまれであり,近年の大腸X線および内視鏡診断学の著しい進歩にもかかわらず,術前診断は容易とは言えない.われわれは最近,大腸X線検査および大腸内視鏡検査にて粘膜下腫瘍と鑑別困難であった直腸・S状結腸静脈瘤の1例を経験したので,症例を報告し,主として診断学的な立場から若干の考察を加えてみたい.

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 腸の炎症性疾患の診断はX線診断,内視鏡診断の進歩によってかなり微細な所まで描写されるようになってきた.しかし実際診療に際しては,これら描写された潰瘍群をどのように診断し治療していけばいいのか,戸惑うことも決して少なくない.

 大腸の炎症性疾患,潰瘍性大腸炎,クローン病,腸結核についても,なかなか確診のつかない症例をわれわれは数例経験している.X線検査についてみると,これらの症例の中には,1つの疾患の特徴的所見だけでなく,ほかの疾患の特徴を同時に持ち合わせているもの,あるいは,経過観察中にそのパターンが変転し,他の疾患を否定できないものがある.われわれは術前クローン病を疑いながら,潰瘍性大腸炎,腸結核を完全に否定できなかったクローン病の1例を経験したので報告する.

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 胃底腺領域の早期癌は診断が難しく,しかも粘膜下を浸潤するタイプが多く,診断の確定した時点では既にかなり進行しているケースが多い.われわれは胃底腺領域の早期癌1例を経験したので,胃X線検査と胃内視鏡検査を中心に若干の検討を試みた.

入門講座 大腸疾患診断の考え方・進め方・1

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 市川 以前,胃癌診断の入門講座を座談会形式でやりましたところ,たいへん好評だったので,腸についてもやろうということで,この入門講座が企画されました.皆さん方の常々含蓄あるところを披露していただきたいと思います.たくさんの質問が寄せられていますので,それを会話の適当なところに挾みつつ,その質問にもお答えしながら進めていきたいと思います.

 <質問>大腸の診断学は,隆起性病変,潰瘍性病変共に,胃疾患の診断学を基本と考えてよいのでしょうか.

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欧文目次

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Reflux Gastritis Syndrome: Mechanism of Symptoms: H. Meshkinpour, J.W.Marks, L.J.Schoenfield, G.G.Bonnoris, S.Carter (Gastroenterology 79: 1283~1287, 1980)

 逆流性胃炎は,胆汁の嘔吐と食後の胃部痛が特徴であり,胃手術後患者の5~35%にみられる.この症候群は,上部腸管内容の胃への過剰な逆流によるか,あるいは腸内容に対する胃粘膜の強い感受性のためか,あるいはこの2つの機転のコンビネーションによって起こるのではなかろうか.

 上部腸管内容は,胆汁,膵液,腸液の混合液である.このうちのどれが症状発生に関連があるかについて詳しい検討がなされていない.そこで著者らは,既に胃手術を受けた逆流性胃炎11例,無症状者10例,計21例を対象として,自家腸管内容および生理的食塩水を胃内へ注入する実験を試みた.注入後,悪心,嘔吐,上腹部痛,口内苦味感などの症状のうち2つ以上を,5分以上持続して認め,生食水では再現されない場合を陽性反応とした.有症状者11例中10例,無症状者10例中2例に陽性反応を認めた.後者の2例は,自家腸内容と生食水の両者に陽性を示したが,有症状患者では,生食水に対して陽性を示した者はなかった.次に胆汁の人工溶液を胃内へ注入する実験を行ったところ,陽性反応は,有症状者の1例にみられたにすぎなかった.以上から,次の結論が得られた.①逆流性胃炎の症状は,上部腸管内容の胃内注入で再現される.②胆汁酸だけでは症状は起きない.

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Treatment and Prevention of Antimicrobial Agent-lnduced Colitis and Diarrhea: W.L.George, R.D.Rolfe, S.M.Finegold (Gastroenterology 79: 366~372, 1980)

 最近の研究では,Clostridium difficileが抗生物質による偽膜性大腸炎の全例と,偽膜をつくらない抗生物質による下痢の約1/5の例での原因として扱われている.抗生物質と関連のない偽膜性大腸炎や下痢も,しばしばC.difficileによって起こるとされてきた.C. difficileによる下痢の治療で最も広く研究されているのがVancomycinである.消化管からの吸収はわずかである.100例以上がVancomycinで治療が成功している,1日量0.2~2.0gを7~14日間投与する.通常1~2日以内に解熱し,下痢が改善される.ほとんどの例が1~14日で治癒する.ときに治療後4~28日で再燃することがあり,14%に再発をみたとの報告がある.欠点は,高価で,味が悪く,多くの国では手に入らないことである.Metronidazoleも効があり,1日1.2~1.5gを経口で7~15日間投与する.比較的安価である.最近,経口のBacitracinによる治療が報告された.外科的治療は,かつて結腸切除が行われたことがあるが,Vancomycinの出現で切除手術は不要となった.

 次にC. difficileに対する治療原則を述べる.まず軽~中等症に対して;(a)思い当たる抗生剤を中止する.(b)コレスティラミン4gを6時間毎に投与する.(c)反応が48~72時間で起こらねば,コレスティラミンをやめて,Vancomycinを0.125~0.5gを6時間毎経口で7~14日間投与する.重症例に対して;(a)できるなら抗生剤をやめるか,下痢を起こさないクロマイなどの薬剤を用いる.(b)Vancomycinは0.125~0.5gを6時間毎経口で7~14日間投与する.(c)非経口的に水分や電解質を補給する.ただし,Vancomycinを使用する限り再燃の可能性を考えて継続的に培養検査を行う必要がある.BacitracinやMetronidazoleは将来の研究成果を待つべきであろう.抗蠕動剤は禁忌であり,ステロイドの効果も疑問である.

編集後記 白壁 彦夫
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 本号から3回にわたり,sm癌の典型症例が掲載される.

 各科の専門家の率直な意見を,まず,もらうことができた.診断への期待,手術への対応,病理の姿勢が,おわかりになるだろう.

基本情報

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胃と腸
17巻1号 (1982年1月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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