胃と腸 13巻10号 (1978年10月)

今月の主題 胃・十二指腸 併存潰瘍

主題

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 胃潰瘍としたものはopen ulcerはもちろんulcer scarのみのものも含まれていてGUで表わした.十二指腸潰瘍も同様でDUで表わした.併存潰瘍は(GU+DU)で表わした.

検査対象

 1970年4月より1978年5月まで,杏林大学で胃および十二指腸のX線検査を行ったものを中心とし,一部は内視鏡検査も行い,さらに少数は手術されたものもある.X線検査方法は暗室透視撮影とテレビ装置による直接撮影のみである.透視撮影者はわれわれの他に内科外科などの医師も含まれている.

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 十二指腸ファイバースコープの出現とその発達により,併存潰瘍症例においても胃・十二指腸両潰瘍の正確な経過観察が可能となり,その経過過程における両潰瘍間の消長や新生の関係も明らかにされつつある.ひるがえって併存潰瘍例におけるそれぞれの胃潰瘍,十二指腸潰瘍が単独発生例の胃および十二指腸潰瘍と,その性状について何らかの明らかな差があるかということであるが,われわれの成績からみると,いくつかの特徴はあるにしても際だった差はないというのが結論である.元来X線と内視鏡診断を共に用いて,その欠点を相補うべく努めてきているわれわれにとって,今回与えられた“内視鏡的立場より”という標題には正直なところ著しく困惑したが,結局内視鏡により観察した併存潰瘍の一般的な特徴ということとなった.本号の青山博士の論文と重複する部分も多いと思うがお許し頂きたい.

対 象

 1971年7月開院以来1977年6月までに北里大学病院にて経験した併存潰瘍364例を検討対象とした.これら364例には初回検査時,胃,十二指腸ともに瘢痕であった症例は含まれておらず,胃,十二指腸のいずれかあるいは両者とも活動性であることを内視鏡的に確認したものである.なお,同年月の間に受診した胃潰瘍1,197例および1976年6月までの十二指腸潰瘍1,190例を比較対照とした.

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 胃・十二指腸併存潰瘍(十二指腸潰瘍)の切除は癒着の程度の強弱によってしばしば困難な場合があり,しばらく前まではFinstererの曠置手術(十二指腸潰瘍はそのまま残し幽門部で胃を切断し,断端はそのまま縫合閉鎖してBillroth Ⅱ法の胃空腸吻合をする)が一般的であった.この方法は十二指腸潰瘍の病巣部を胃液や食物などに直接さらされなくなるから潰瘍が自然治癒するであろう,という発想からこのような手術法がしばしば行われていた.したがって十二指腸潰瘍でありながら十二指腸のついていない切除胃標本がしばしば採取されていた.そこで以下に使用した材料の蒐集をわれわれ自身の関係した教室のみの胃切除材料としたのは,原則として十二指腸に多少の癒着はあっても十二指腸を十分に剥離し潰瘍は完全に胃につけて切除する.そしてなるべくBillroth Ⅰ法の胃十二指腸吻合を行う(生理的に近い状態)という方針をとっているので,その切除標本の集計のほうが信用できると考えたからである.しかしこれらの症例はいずれも外科的に切除された材料であるので,内科的な十分な経過観察を行った症例とはある程度の差のある恐れがあることを断っておきたい.

 さて,われわれの関係教室(昭和大学外科)で経験した十二指腸潰瘍の病理所見については,1961年に岩堀1)が,また1965年に村上ら2)が,それぞれの期間の統計的観察を行い報告している.当時対象とした十二指腸潰瘍は,単独例98例,併存例61例計159例である.当時の統計によると十二指腸潰瘍の病理学的な傾向にはほとんど差異がないと報告されている.しかしわれわれがいつも心にとめていたものに単独十二指腸潰瘍と平行して,それより数の少ない胃潰瘍との併存十二指腸潰瘍を経験することである.病理学的な詳細な検索をすればするほどその数は増してくる.両者間に何らかの病理学的,あるいは臨床的な差異があるのではなかろうかという点で常にわれわれの脳裏にこびりついていた.しかし3種(胃潰瘍,十二指腸潰瘍,胃・十二指腸併存潰瘍)の消化性潰瘍のうちで,この併存十二指腸潰瘍は数がもっとも少なく,統計観察を行うのに不十分であったので,われわれ3)は1967年に単独十二指腸潰瘍57例,併存十二指腸潰瘍49例計106例について,前回と同様の統計的観察を試み2~3の知見を得ているが,今回はそれらの症例にその後採取された症例および順天堂大学消化器外科で切除された症例を加え統計的観察を行ったので報告する.

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 患 者:S. H. 37歳 男性

 主 訴:心窩部痛

 既往歴:特記すべきものなく,潰瘍歴もなし

 初診時理学的所見:体格中等度,栄養良,意識清明,眼瞼・眼球結膜に貧血,黄疸認めず.胸部,腹部異常なし.

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十二指腸に瘢痕があり,その後胃潰瘍を併発した症例

 患者:42歳 男性(1977年末現在),水道局(事務職)に勤める公務員

 既往歴:21歳の時の虫垂切除術以外とくになし

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〔症例1〕A. A. 67歳 男

 1958年頃より,空腹時上腹部痛・胸やけ・吐気あり.某病院にてX線検査で,胃潰瘍の診断.1966年3月より当院にて経過観察.Fig. 1に示すように,当初十二指腸潰瘍の再発を繰り返していたが,1970年10月胃角上部小彎に潰瘍の発生をみた.約7カ月後胃潰瘍は治癒したが,その後十二指腸潰瘍は再び再発治癒を繰り返した.1970年4月の検査成績では酸分泌量(MAO)12.65mEq/h.Congo redパターンはFig. 7のⅢ型であった.(Fig. 2はX線,Fig. 3は内視鏡の経過を示す).

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 患 者:1927年生れ,男性,公社事務職員

 既往歴,家族歴:特記すべきことなし.嗜好品:タバコ1日15本前後,完全に禁煙できないでいる.

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 1972年10月から1977年3月までの胃集検受診者(150,828名)と外来受診者(7,309名)の総数158,137名の中,男39,441名,女118,696名で男女比1対3,胃潰瘍4,976名,十二指腸潰瘍2,197名,胃十二指腸併存潰瘍155名であった.この併存潰瘍は男90名,女65名であるが上記の受診者男女比で補正すると男女比は4対1になる.受診者総数に対する胃十二指腸併存潰瘍の比率は約0.1%4)である.また胃潰瘍の中で十二指腸潰瘍併存例の比率は約3%である.胃十二指腸併存潰瘍の瘢痕期の動態(治癒傾向)を年齢階層別,男女別にみたのがTable 1である.検査回数は2~17回,平均検査回数は胃4.8回,十二指腸3.7回,平均検査問隔は2.8カ月,平均観察期間は13.5ヵ月である.ある年齢階層のscarring stageを示した検査回数を,scarring stageとactive stageとの検査回数の和で除した比率(瘢痕化率)は,その世代の治癒傾向を示唆する1つの指標と考え,Table 1のscarring ratioを計算した.厳密には,各世代間の検査条件(期間・聞隔・XP or endoscopy etc.)を一定にしないかぎりscarring ratio各パーセント間に有意差があるか否か統計的に検定できないが,一応の治癒傾向の目安として上記のratioをあげた.胃潰瘍のscarring ratioは,世代別にみると0.4~0.5程度で著明な差はないようであるが,男女別にみると女性のscarrlng ratioの方が高く出ている.また,十二指腸潰瘍のscarring ratioは,世代別にみると,60歳以上(0.75)の方が50歳台以下(0.55前後)より明らかな高値を示し,このことは,十二指腸潰瘍は高齢化につれて自然治癒の傾向が出現してくることを示唆していると推定される.また,男女別にみて,十二指腸潰瘍のscarring ratioに差はない.

 患者:46歳 女性.1975年10月14日胃集検で胃体中部と球部にnicheを指摘され,空腹時心窩部痛を主訴として当センターを受診した.

 家族歴・既往歴:とくになし,また血液生化学などの検査で特記事項を認めない.

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十二指腸潰傷の経過中に胃潰瘍を発症した1例

 消化性潰瘍と総称される胃潰瘍(以下GU)と十二指腸潰瘍(以下DU)の成因上の本質的な差の有無には種種の学説がある.大井の二重規制学説1)ではGU,DUともに局所性要因は同一視できるとしているが,まだ定説はない,われわれは,GU,DU併存例のうら一方が先行し,その後に他方が発症した症例を詳細1に検討すれば,成因の差異に関する知見が得られると考え,併存例を検討した.まず典型的と考えられる1例を呈示する.

 患 者:27歳 男

 既往歴:4年前にGUの疑いといわれた

 家族歴:特記することはない

 主 訴:空腹時心窩部痛

 現病歴:1974年8月より空腹時心窩部痛・嘔気・嘔吐があり,次第に増悪してきたため,10月に本院受診となる.

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 上部消化管疾患ことに十二指腸潰瘍の内視鏡検査(一部胃内視鏡も併用)で診断された十二指腸・胃潰瘍併存例について検討してみた.なお,胃あるいは十二指腸潰瘍の経過中に他方に潰瘍がみられた症例は除外した.まず胃・十二指腸併存潰瘍の経過観察症例を提示する.

 患 者:S. T. 36歳 ♂ (Fig. 1)

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併存潰瘍の症例とその臨床像に関する考察

1.症例呈示

〔症例1〕47歳,男子.消化性潰瘍の既往歴はない.現病歴は右季肋部痛にて来院し,X線透視にて十二指腸潰瘍と診断された.内視鏡検査による経過観察はFig. 1の通りである.1年6カ月間の全経過において,十二指腸潰瘍が先行し,再発再燃→多発→線状化を示したが,遅れて発生した胃潰瘍も順次胃の高位に再発→多発化を示した(Fig. 2, 3).本例は先行する十二指腸潰瘍サイクルに引き続いて短い時間差をもって胃潰瘍サイクルが回り出し,難治性の胃・十二指腸潰瘍併存例として〔症例2〕にみられるようなlife cycleに入っていくものと推定されるが,現在引き続き観察中である.

〔症例2〕43歳,男子.既往歴に特記すべきことなし.現病歴は心窩部痛を主訴として来院.X線透視にて胃・十二指腸潰瘍と診断され,内視鏡検査が行われた.5年5カ月間にわたる全経過はFig. 4の通りである.すなわち,十二指腸潰瘍サイクルと胃潰瘍サイクルとは時相を異にしながら共存している.特に胃潰瘍は約1年半の間隔でサイクルを回っているが,患者の生活背景からはこの理由を説明できる事象を捉えることはできなかった,また経過が長くなるにつれて,胃潰瘍,十二指腸潰瘍とも多発→線状・線型化などの難治性因子を伴う方向に進んでいる.

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 村上(司会) お忙しいところを,また,今日のような不快指数の高い日にもかかわらずお集まりいただいて,たいへんありがとうございました.

 私も,つい3日ほど前にマドリッドから帰ってきたばかりで,体調を整えるのに苦労しておるところですから,うまくお話をまとめられるかどうか,ちょっと心配でございます.

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 DetroitのHenry Ford Hospitalといえば,すぐ自動車のことが思いうかぶが,そこの2人の外科医の手になった本である.

 一冊の本が完成までに何年もかかることがあるのは日本だけではない.このmonographの執筆をC. C. Thomas社のThomasがすすめたときには,6カ月もあれば完成するだろうと楽観していたようである.しかしGahaganはたんに症例を集めるだけでなく,Henry Ford病院の食道裂孔ヘルニア345例についてたいへん骨の折れるfollow up studyを行って2年間の月日が流れた.そのうえ,手術例について10年以上のfollow upの必要性を痛感していたGahaganは1967年倒れた.そこで,Lamが彼の仕事を引継いで,Gahaganの死後7年たって,このmonographを完成させたというわけである.というわけで,この本には1966年に書いたGahaganと1975年のLamの2つの序文がある.あしかけ11年という長い年月をついやしただけに,わずか189頁のうすい本ではあっても,いたるところに2人の著者の並々ならぬ努力がしのばれる.

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 近年,小腸疾患に対する関心が高まり,種々の内視鏡検査が試みられている.しかし現行の小腸内視鏡検査法は,胃や大腸の場合のように精密な観察や直視下生検を目的としたものにはほど遠い.

 われわれは,開腹手術時にファイバースコープを小腸に挿入し,全小腸の観察と直視下生検を行っている.本稿では,その方法と成績を示し,若干の考察を加える.

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 若年性大腸ポリポーシス(Juvenile Polyposis Coli)はきわめて稀な疾患であり,自験例を含めて文献上65例の報告があるにすぎない.さらにこのなかで,家族発生を示したものは12家系・41例におよび,大腸腺腫症(Adenomatosis Coli)の家系に発生したとの報告もある.また腺腫の併存例が11例認められたが,現在までに本疾患に大腸癌の併存を認めたとする報告はない.

 われわれは兄弟に発生した若年性大腸ポリポーシスの1家系を経験し,さらに1例について経過観察中に腺腫内癌の併存を確認したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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 残胃病変のなかで,最近にわかに注目されはじめた病変の1つに,Gastritis cystica polyposaがある.比較的稀な症例で,本邦でもまだ数例の報告例をみるのみである,われわれは,この稀な症例を手術する機会を得たので,ここに発生機点を含めた文献学的考察を加えて報告する.

症 例

 症 例:I. Y. 63歳 男性

 主 訴:上腹部痛

 既往歴:入院の約10年前,胃潰瘍にて胃切除術(Billroth Ⅱ法)をうけたと述べている.他に特記すべきことなし.

 家族歴:癌にて死亡あるいは手術をうけたものなし.他に特記すべきことなし.

 現病歴:1976年8月中旬から,食事とは関係なく心窩部痛を来たすようになった.特に夜間に心窩部痛がつよく,運動時には痛みのため胸苦しくなってきたため,同年9月上旬国立小倉病院内科を受診し精査をうけた.その結果,胃腸吻合部の悪性病変を疑われて,手術適応検討のため同院外科へ10月上旬に入院した.

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 小児期にみられる大部分の巨大結腸症はHirschsprung病として従来からよく知られている.その本態は腸管内在神経の先天的欠除congenital aganglionoslsで,それより口側の腸管が2次的に拡張するものである.また,Hirschsprung病類縁疾患として腸管内在神経の先天的質的量的異常も最近問題となっている.いずれにしてもこれらの疾患は新生児期に発症するのが普通である.

 これに対し成人における巨大結腸症は日常しばしば遭遇する疾患であるにもかかわらず,その本態,病因に関しては不明のものが多い.なかには,稀に成人になって発見されるHirschsprung病も含まれるが,大部分は小児期の便通は正常で,後天的原因によるものと推定されている.しかも,成人の巨大結腸症で病理学的に十分検索され原因が明らかにされた報告例は本邦ではほとんどみられない.

学会印象記

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 第20回日本消化器内視鏡学会総会は,山口大学の竹本忠良教授を会長として,去る5月16日より18日まで3日間,東京の国立教育会館を中心とする会場で盛会裡に行われた.世界をリードするわが国の消化器内視鏡学の発展を推進してきた,竹本会長の本学会にかける並々ならぬ意欲をひしひしと感ずるような,多彩で豊富な企画と熱気と活気に満ちた学会の運営だった.特別講演と教育講演各3題,シンポジウム5題,パネルディスカッション2題,ラウンドテーブルディスカッション6題,インターナショナルセミナー,スモールグループディスカッション,159題に及ぶ一般演題,テーマ展示,さらに夜間の関連研究会と,その演題名を一覧しただけでも,消化不良を起こしかねない盛り沢山の内容を抱えている.それは,本学会発足以来の長年月に亘る目覚ましい進歩の集大成であり,1978年の現時点において到達しえた消化器内視鏡学の俯瞰図ともいうべく,また,将来の内視鏡の進歩の方向を示唆する展望を与えるものでもあった.多数の著名な外人学者もシンポジスト,パネリストとして参加し,最終日にはインターナショナルセミナーも行われるなど,本学会が世界の内視鏡学会の最高水準を行くものとして,名実共に国際的な性格を兼備するに至ったといってよい.5つの会場に亘り,数多いテーマに分かれたスケジュールであるので,当然のことながら筆者が直接見聞しえた演題は限られている.その範囲で,学会印象記を記させて頂く.

 まず,特別講演Ⅰとして,長い胃鏡の歴史と伝統の継承の上に,わが国における胃内視鏡検査を発展させる基礎を築かれた近藤台五郎氏が,内視鏡検査の基本が適確な肉眼所見の把握にあり,直視下に内視鏡的に観察する眼を養う重要性を強調された.特別講演として,増田正典氏が「血液疾患と消化器内視鏡」と題して,教室の豊富な症例に基づき講演され,特に鉄欠乏性貧血と萎縮性胃炎との関連やDICに関して示唆に富む発言があった.特別講演は村上忠重氏が,犬の実験胃癌の発生を内視鏡及び生検組織学的に経過観察した成績を人の早期胃癌のそれと対比して,興味ある知見を明らかにされた.

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欧文目次

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The Spectrum of Radiographic Features of Aberrant Pancreatic Rests Involving the Stomach: W. J. Kilman, R. N. Berg (Radiology 123: 291~296, 1977)

 胃腸系統での異所性膵組織は,先天性異常で,しばしば上部消化管のX線検査ではじめて発見される.通常,遠位幽門洞または幽門前域にあり,中心陥凹または臍をもつ小さな筋肉性腫瘍として示される.著者らは,立証された数例を経験しているが,それらは,大きくて無茎性であったり,近位幽門洞にあったり,中心陥凹がなかったり,腫瘤の割に大きな臍をもっていたりして,種々様々であった.

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 近年,胆道疾患・膵疾患の研究,診療は目ざましく発展した.なかでも,まず第1にあげられるのが,経皮的経肝性胆道造影法(PTC)や内視鏡的逆行性胆管膵管造影法(ERCP)など,直接的胆道造影法の応用とその普及である.

 胆道疾患の診断には経口的,静注法などの排泄性胆囊造影法が広く用いられているが,これらの方法の最大の欠点は,病変が存在するときにしばしば胆囊が造影されないこと,また黄疸の診断に役立たないことにあった.しかし,直接胆道造影法の応用によって,多くの胆道・膵疾患,とくに閉塞性黄疸症例からも重要な診断根拠が得られるようになった.

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 まさに時宜をえた著書である.閉塞性黄疸や胆道感染症で四苦八苦したのはついこの間のことである.PTCDの出現により,開腹せずに減黄処置が可能となり,一期的に根治手術ができるようになったことは隔世の感がある.PTCDさまさまであり,本法は外科医にとっても内科医にとっても,ましてや患者にとっては救世主とすらいえる.

 著者の高田講師はこの道のパイオニアである.先人の苦労したものを誰でもが,何時でも,何処にいてもできるようにルーチン化した功績は大きい.本人の努力はいうまでもないが,消化器病センターという格好の場と,羽生教授という素晴らしい師を得てこそ,これが完成されたのだと思う.

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 近年,飲酒者ならびに飲酒量の増加に伴いアルコール性肝障害例に接する機会が多くなったが,また新薬開発の進展によって薬剤性肝障害も増加しつつある.このときにあたって伊藤進博士が「肝障害―アルコール・薬物障害例とその病像」なる著書を刊行されたことは,誠に時宜をえたものと思う.著者は,本邦に肝生検法が導入された当初から,これによる肝組織像の研究に取り組んでこられ,多くの業蹟を発表されつつある篤学の士である.

 肝疾患の診断の項においては,問診,触診などの診断法に始まり,臨床所見からみた鑑別診断,さらに肝機能検査,生検法から電顕像にいたるまで,初心者にも,きわめて理解しやすく解説されており,これによってまず肝疾患全体の診断法を十分に把握することができる.

編集後記 五ノ井 哲朗
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 今月の主題は,胃・十二指腸併存潰瘍である.併存潰瘍について,このような多数例によって,このような多方面にわたって検討が加えられたことはかつてなかったことである.潰瘍研究の大勢はいま,個々の潰瘍病変の問題から,潰瘍の長期経過の問題へ,潰瘍症の問題へと向かっているように見える.併存潰瘍はこのような問題を考える上での,ひとつのキーワードである.

 3つの主題論文ではそれぞれX線診断,内視鏡診断,手術標本に現れた併存潰瘍の全体的な眺望が明らかにされ,8つの主題症例では,その具体的な在りようが詳細に吟味されている.座談会では,これらの数字や症例によって何を考えるべきかという模索が試みられた.しかしながら,なお,解明された事柄よりも提起された問題の方がはるかに多いといわねばなるまい.

基本情報

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胃と腸
13巻10号 (1978年10月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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