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胃・十二指腸併存潰瘍(十二指腸潰瘍)の切除は癒着の程度の強弱によってしばしば困難な場合があり,しばらく前まではFinstererの曠置手術(十二指腸潰瘍はそのまま残し幽門部で胃を切断し,断端はそのまま縫合閉鎖してBillroth Ⅱ法の胃空腸吻合をする)が一般的であった.この方法は十二指腸潰瘍の病巣部を胃液や食物などに直接さらされなくなるから潰瘍が自然治癒するであろう,という発想からこのような手術法がしばしば行われていた.したがって十二指腸潰瘍でありながら十二指腸のついていない切除胃標本がしばしば採取されていた.そこで以下に使用した材料の蒐集をわれわれ自身の関係した教室のみの胃切除材料としたのは,原則として十二指腸に多少の癒着はあっても十二指腸を十分に剥離し潰瘍は完全に胃につけて切除する.そしてなるべくBillroth Ⅰ法の胃十二指腸吻合を行う(生理的に近い状態)という方針をとっているので,その切除標本の集計のほうが信用できると考えたからである.しかしこれらの症例はいずれも外科的に切除された材料であるので,内科的な十分な経過観察を行った症例とはある程度の差のある恐れがあることを断っておきたい.
さて,われわれの関係教室(昭和大学外科)で経験した十二指腸潰瘍の病理所見については,1961年に岩堀1)が,また1965年に村上ら2)が,それぞれの期間の統計的観察を行い報告している.当時対象とした十二指腸潰瘍は,単独例98例,併存例61例計159例である.当時の統計によると十二指腸潰瘍の病理学的な傾向にはほとんど差異がないと報告されている.しかしわれわれがいつも心にとめていたものに単独十二指腸潰瘍と平行して,それより数の少ない胃潰瘍との併存十二指腸潰瘍を経験することである.病理学的な詳細な検索をすればするほどその数は増してくる.両者間に何らかの病理学的,あるいは臨床的な差異があるのではなかろうかという点で常にわれわれの脳裏にこびりついていた.しかし3種(胃潰瘍,十二指腸潰瘍,胃・十二指腸併存潰瘍)の消化性潰瘍のうちで,この併存十二指腸潰瘍は数がもっとも少なく,統計観察を行うのに不十分であったので,われわれ3)は1967年に単独十二指腸潰瘍57例,併存十二指腸潰瘍49例計106例について,前回と同様の統計的観察を試み2~3の知見を得ているが,今回はそれらの症例にその後採取された症例および順天堂大学消化器外科で切除された症例を加え統計的観察を行ったので報告する.
A study of 762 various specimens of the resected stomach for gastroduodenal ulcers was conducted and the following results were obtained.
1) The ratio of gastric ulcer to duodenal ulcer and to gastroduodenal ulcer is 3 : 2 : 1.
2) Kissing ulcer is rarely found in gastroduodenal ulcer.
3) Most duodenal ulcers are located in the anterior wall and in the lesser curvature as well, but 13% showed linear ulcer in the greater curvature.
4) Most duodenal ulcers are not more than 0.99 cm away from the pyloric ring, and they are apt to easily cause pyloric stenosis and pyloric insufficiency.
5) Ulcers with deep Ul-Ⅳ are observed in the majority of duodenal ulcers. In the case of gastroduodenal ulcer, most are fairly shallow Ul-Ⅲ ulcers.
6) In comparison to the therapeutic coefficient of 11.5 of duodenal ulcers, that of gastroduodenal ulcers is higher, being 4.0.
7) Regarding the depth of gastroduodenal ulcers, the most frequent combination of ulcers in the stomach and duodenum is Ul-Ⅳ and Ul-Ⅲ.
8) Perforation in duodenal ulcers exists in ulcers with in the range of 1.0~1.99 cm away from the pyloric ring, but for gastroduodenal ulcer the perforation rate is 2.9%, which is quite low.
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