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第20回日本消化器内視鏡学会総会は,山口大学の竹本忠良教授を会長として,去る5月16日より18日まで3日間,東京の国立教育会館を中心とする会場で盛会裡に行われた.世界をリードするわが国の消化器内視鏡学の発展を推進してきた,竹本会長の本学会にかける並々ならぬ意欲をひしひしと感ずるような,多彩で豊富な企画と熱気と活気に満ちた学会の運営だった.特別講演と教育講演各3題,シンポジウム5題,パネルディスカッション2題,ラウンドテーブルディスカッション6題,インターナショナルセミナー,スモールグループディスカッション,159題に及ぶ一般演題,テーマ展示,さらに夜間の関連研究会と,その演題名を一覧しただけでも,消化不良を起こしかねない盛り沢山の内容を抱えている.それは,本学会発足以来の長年月に亘る目覚ましい進歩の集大成であり,1978年の現時点において到達しえた消化器内視鏡学の俯瞰図ともいうべく,また,将来の内視鏡の進歩の方向を示唆する展望を与えるものでもあった.多数の著名な外人学者もシンポジスト,パネリストとして参加し,最終日にはインターナショナルセミナーも行われるなど,本学会が世界の内視鏡学会の最高水準を行くものとして,名実共に国際的な性格を兼備するに至ったといってよい.5つの会場に亘り,数多いテーマに分かれたスケジュールであるので,当然のことながら筆者が直接見聞しえた演題は限られている.その範囲で,学会印象記を記させて頂く.
まず,特別講演Ⅰとして,長い胃鏡の歴史と伝統の継承の上に,わが国における胃内視鏡検査を発展させる基礎を築かれた近藤台五郎氏が,内視鏡検査の基本が適確な肉眼所見の把握にあり,直視下に内視鏡的に観察する眼を養う重要性を強調された.特別講演として,増田正典氏が「血液疾患と消化器内視鏡」と題して,教室の豊富な症例に基づき講演され,特に鉄欠乏性貧血と萎縮性胃炎との関連やDICに関して示唆に富む発言があった.特別講演は村上忠重氏が,犬の実験胃癌の発生を内視鏡及び生検組織学的に経過観察した成績を人の早期胃癌のそれと対比して,興味ある知見を明らかにされた.
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