胃と腸ノート
興味ある胃病変の病理解説(3)
下田 忠和
1
,
佐野 量造
1
1国立がんセンター病理部第1組織病理
pp.360
発行日 1975年3月25日
Published Date 1975/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403112240
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症例 3 37歳.女.(九大温研,和田博士例)
本病変は胃幽門部から胃体部にかけての広範な拡がりを示している(Fig. 1).胃角に相当する前壁及び後壁には明瞭な粘膜ヒダの集中を認め接吻潰瘍あるいは不規則な多発潰瘍の存在を示している.集中する粘膜ヒダの先端は不規則なこん棒状の腫大を示しており,一見進行癌を思わせる.しかし個々の腫大した粘膜ヒダに融合像はなく,また先端に癌を疑わせるⅡcの“やせ”はみられない.すなわちこれらの粘膜ヒダの先端は中心陥凹に向って丸味を有している.部分的にⅡc様のヒダの中断は認められるが,これが非連続性に出現しており,Ⅱcとしての全周を追跡できない.さらに,周辺の粘膜面では粘膜ヒダが部分的に不規則な腫大を示している.これらの肉眼所見よりリンパ腫が最も考えられる.その割面(Fig. 2)をみると前壁側の潰瘍はUl-Ⅳで,周囲の粘膜内及び粘膜下層にはFig.3に示すような腫瘍細胞が増殖している.組織学的には大部分は胞体が乏しく,クロマチンに富んだ比較的円形の核を有する細胞が増殖しており,成熟したリンパ球に類似している.わずかに異形核を有する細胞の出現を認めるが分化したリンパ肉腫(Lymphocytic lymphsarcoma)である(Fig. 3).リンパ管転移は認められなかった.
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