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書評「耐性と化学療法」
石山 俊次
1
1日本大学外科
pp.397
発行日 1975年3月25日
Published Date 1975/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403112255
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標題につられて一通り読んでみた.編者の三橋教授には,既に,薬剤と耐性,薬剤耐性エピゾームと耐性因子などの著書があり,この方面の第一人者であることは人のよく知るところである.耐性ブドウ球菌研究会,耐性赤痢研究会,グラム陰性桿菌研究会など,十数年にわたる研究会を通して,集められた豊富な資料と精力的な労作のあとが,人並すぐれた思考力によって見事に結晶したようである.たとえば構成的耐性,人工的耐性のような,多少難解な表現が散見するが,耐性遺伝学そのものが新しい領域だから,これはやむをえない.
耐性の概念がKossikoffによって始められたのが1887年というから,ずいぶんと古い歴史をもっているが,臨床上問題となったのは,選択的な抗菌力の著しい抗生物質ができてからで,1950年から1960年半ばまでが,そのピークであった.従って60年代に合成ペニシリンが完成され,各種の抗生物質が数多く開発されるにつれて,実地上の問題は解決に向ったといえる.しかしこの間に耐性の科学は長足の進歩を遂げて,その伝達や酵素による耐性機構が明らかにされ,新しい物質の開発にまで応用されるに到った経緯は,本書の記載に明瞭である.ことに,R因子,後にプラスミドやr因子の存在は,著者の独壇場である.
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