胃と腸 1巻2号 (1966年5月)

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1.はじめに

 内視鏡学会案による肉眼的な早期胃癌分類法の原案を作製する時に,一番心配したのはⅡ表面型であった.言葉には出さないが,Ⅰ隆起型にはポリープ癌を,Ⅲ陥凹型には潰瘍癌を,それぞれの典型像と考えていたので,その診断についてそんなに問題が起こるとは考えていなかった.これに反しⅡ表面型については,私どもは当時実際にはほとんど知るところがなかった.進行した胃癌の辺縁や,あるいはそれと全く離れて副所見として偶然見いだされる癌の姿から,早期癌の大体の形を想像して,Ⅱa,Ⅱb,Ⅱc.の3亜型をきめたというのが実情に近い.

 ところが今日では,Ⅱa,Ⅱcの診断にはむしろ議論が少なく,むしろⅠ隆起型と良性ポリープとの鑑別,皿陥凹型と良性潰瘍との鑑別のほうが視覚的にはむずかしいとさえいわれるようになった.わずか数年間に,見方にこれだけの相異が生じてきたということは,その間の診断技術の進歩が,いかに目ざましいものであったかをもっとも雄弁に物語る.そして最初に予想しなかった鑑別の困難さは,狙撃的生検または狙撃的細胞診という,新らしい診断技術によって救われようとしている.すなわち肉眼単位における診断学が,顕微鏡単位における診断学に,その位置をゆずりつつあるというべきであろう.

 さて,このような傾向は,果してⅡ表面型にもあてはまるであろうか? 表面型だけは顕微鏡的診断にたよらないで,肉眼的診断の単位で,どの程度確診が可能であろうか? こんなことを以下,実例の病理組織学的な面から考えてみたい.

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現在のところ,よいと思われるX線検査の進め方,われわれがルーチン検査と考えるもの

 われわれが,X線検査をふりかえってみたとき,これこれの症例の病変は,楽にみつけることができたというものがある.そんな症例をまとめたのが図1である.

 表面隆起型(Ⅱa型)は3cm以上のものであり,表面陥凹型(Ⅱc型)は4cm以上のものであった.

胃隆起性病変 山田 達哉 , 福富 久之
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1.はじめに

 最近における胃X線診断技術の進歩や胃カメラの発達によって,潰瘍瘢痕や早期癌といったような微細な病変とともに,かつては比較的まれな疾患とされていた,いわゆる胃ポリープも,直径が5mm前後の小さなものまで術前診断できるようになってきた.その結果,いわゆる胃ポリープ.は日常しばしば遭遇する疾患となり,現在では決して珍らしい存在ではなくなった.それにもかかわらず,第3回日本胃集団検診学会秋季大会および第3回日本内視鏡学会秋季大会における合同シンポジウムで,「胃ポリープについて一発見頻度と診断」というテーマを与えられた著者らは,症例を検討し整理してゆく途上で,大きな壁に直面してしまったのである.すなわち今迄はあまり深く考えもせずに,胃内腔に突出した一定の形態のものを,いわゆる胃ポリープとして取扱い,観察し診断してきたのであるが,多数の症例を細かく検討しているうちに「胃ポリープ」とは何か?という根本的な問題に疑問が生じ,完全に前進をはばまれてしまったのである.この問題が解決されなければ,臨床的立場からの発見頻度とか診断とかは無意味なものになってしまう恐れがあるからである.

 そこでわれわれは,いわゆる胃ポリープについて,いろいろと再検討を行なってみた.その結果われわれ臨床にたづさわるものにとって,かなり便利と思われる一つの試案をまとめることができたので報告し,諸家の御批判を仰ぎたいと思う.

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Ⅰ.症例

 患者:内○清○,58歳女

 主訴:心窩部痛

 既往症:20年前に,開腹,胆囊に姻虫が入りこんでいたということで,胆囊摘出をうけている.

 家族歴:特記すべきことなし.

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Ⅰ.まえがき

 早期胃癌の診断も日進月歩し,今日では径1cm前後のものまで診断し得るようになってきた反面,微細なエロジオン,瘢痕化潰瘍,小さなポリープ,限局性の萎縮性胃炎などとの鑑別診断が一段と困難となってきた.ここに述べる例は早期胃癌と多くのエロジオンの共存した興味ある症例であり,41年3月の早期胃癌研究会においても有意義な討論が交わされた症例であるので,ここに報告する.

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1.緒言

 胃における悪性腫瘍の中,肉腫の占める割合は内外報告例共に0.5~2.0%で,また全肉腫に対する胃肉腫の発生頻度は報告者によって多少の相違はあるが,およそ3~5%といわれている.しかも胃肉腫の70%はリンパ肉腫であり,平滑筋肉腫は10~25%にすぎず,外国においてはかなりの症例が集計せられているが,本邦においては最近岡野37)(1964)が報告したものを含めて30余例を数えるのみである.

 われわれは最近胃外発育型および胃内発育型を示す噴門部胃平滑筋肉腫の2例を経験したのでこれをここに報告する.

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 常岡(司会) 僭越ではございますが,司会の役をつとめさせていただきます.

 今年は3月20日から25日までの6日間東京の国立教育会館で,内視鏡学会,胃集団検診学会,消化器病学会と消化器病関係の3つの学会が連続して行なわれたわけですが,その中で特に胃と腸に関係があるものをテーマにしていろいろご意見なり印象なりあるいは将来のためのいろいろなお話をお伺いしたいと思います.

技術解説

胃カメラ(その1) 城所 仂
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 胃カメラは生まれてからすでに16年を経て,今日ではX線検査と並んでroutineに広く用いられている.

 その原因として撮影の技術が割合容易であり,少し練習すれば誰にでも取り扱いができること,撮影にともなう危険性が少ないこと,患者の苦痛が割合に少ないこと,およびX線検査と同様,外来において簡単に実施できることなどが挙げられる.

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1.まえがき

 “技術解説”というのは学問ではない.いってみれば,どうすれば,診断し易い,写真が撮れるかというお話である.建築学者が,耐火建築のためには,また耐震建築のためには,どういう素材でどんな土台をつくり,どんな組立てをすればよいか,そのときの力学的バランスはこうだから,その部分の素材はかくあるべきだとかいうのとはわけが違う.そういうものを作るのには,どういう具合に組立てていったら要領がよいかというのが技術解説だから,いわば,職人向のお話なのである.

 人生には偶然というものがある.小学校のとき私は,唱歌と手工(音楽とか工作などとはいわないのである)が両方ともに甲だったことはなかった.今学期はうまい歌い方をしたから唱歌は甲だろうと思っていると,手工でとちってみたり,その逆である,どうもこんなことをいうと年が知れてしまう.ともあれ,そんな男が職人の分野の解説をすることになってしまったのには,いろんな理由があるかもしれないが,私が学問をきらいなことがばれてしまったのか,それとも偶然としか思えない.

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質問

Va型の胃カメラの,適応について芦沢教授に,又この型のカメラでも特に撮影がむずかしいという部位がもしあればどの部位でしょうか.

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 十二指腸潰瘍の合併症防止に対してとられる外科的処置としてのVagotomyの役割については今までにもしばしばのべられてきた.

 Dragstedtらは迷走神経系のHyperactivityはほとんどの十二指腸潰瘍の患者に胃液の増量と酸度の上昇をひきおこすといっている.

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 迷切胃腸吻合と迷切幽門成形術後のダンピング症状発現の比較を実験的に研究したもので,50名の患者を対象とし,その半数づつに迷切胃腸吻合と迷切幽門成形術が行なわれた.さまざまな程度の臨床的ダンピング症状が迷切胃腸吻合術後に14名(56%),迷切幽門成形術後に10名(40%)発現した.迷切胃腸吻合に比べ幽門成形術の方が症状は強くなかった.実験的発現方法としては,患者達を14時間断食させた後坐位で50%グルコース水溶液150ccを経口的に与え,その摂取前,および10分20分,30分,60分,120分後に循環血漿量を測定した.この実験的な方法ではいろいろな激しいダンピング症状が起り,迷切胃腸吻合後のものには20名(80%),迷切幽門成形後のものには17名(68%)に起った,両グループにおいて臨床的ダンピング症状と試験食後に生じた症状との間にはっきりと相間があった.しかし多くの症例で実験的に引き起される症状はより激しく,通常臨床的にダンパーでないものにも数人現われている.試験食直後の時期には血漿量の減少が50例中49例にみられ,両グループ間には差異がなかった.また両グループの血漿量の減少平均でも差異は見られなかった.臨床的観察ではダンピング症状の強さは,迷切胃腸吻合に比較して,迷切幽門成形グループの方が影響が少なかった.しかし実験的には両グループ間に有意の差は認められなかった.ふだん臨床的ダンピングの現われないものでも,試験食を用いることで症状が現われ,実験的に引き起された症状と血漿量の減少との間に相関が見られ,血漿量の減少の値は,症状のないものに比較してあるものの方が等しいか,または多かった.両グループ間には血漿量の減少の有意の差は見られなかったし,臨床的または実験的ダンピング症状の程度との間にも相関は認められなかった.

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 Carbonie Anhydrese(C. A.)の阻害剤であるAcetazolamide(A. Z.)は,in vitroで胃液分泌を阻害する.胃粘膜をA. Z.の存在の下でさらにincubateすると粘膜の潰瘍と穿孔をきたす.著者らは,Altamiranoによる血流の保たれた犬胃粘膜のvivo-vitro標本を用いA. Z.による粘膜傷害と酸分泌の検討を行なった.実験はbasal period,histamine period,A. Z. period(80mg/kg i. v.)の三期よりなり,Mediumには各濃度のHCl,庶糖液,Na2SO4液を用いた.長期に160mEq/LのHClで胃粘膜をincubateしてもA. Z.を投与しなければ,またA. Z.を加えてもHC1が30mEq/L以下であれば粘膜の傷害は起らない.これに対しMediumが160mEq/L HClであればhistamine刺激の有無にかかわらず,A. Z.によって傷害がみられる.160mEq/L HCl中でincubateした場合,胃粘膜表面34cm2のH+の動きをみるとbasal periodではMediumより0.091~0.180mEq/20minの消失,histamine periodでは0.867mEq/20minの分泌,A. Z. periodでは0.555mEq/20minで消失が測定される.

 従来A. Z.やCO2欠乏によって胃粘膜傷害が起るのは粘膜内でH+が分泌されるときにH2O由来のOH-が中和されないためであるといわれ,著者らの実験の一部もそれで説明されるが,高濃度HCl中ではhistamineを投与せず,酸生成がない場合でもA. Z.で傷害がみられたのは,むしろ問題が粘膜表面の内因性,外因性の酸の存在にあることを示唆する,A. Z.投与後,胃粘膜は高濃度のHClに対するbarrierを保てなくなり,MediumからH+の消失が起り,組織学的にはoxyntic cellではなく,表面粘膜細胞に強くみられる傷害を伴う.

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 L. R. Dragstedt Gainesbille, Fla.(Arch. Surg. 19, Dec. 1965,1005~1010)

 1955年に初めて報告されたZollinger-Ellison症候群は,一般の消化性潰瘍の問題をクローズアップすることとなった.私どもは犬を使ってPavlovの小胃を応用し,食物と混合しない純粋の胃液を空虚な小腸に流し込み,典型的な消化性潰瘍を作ることができた.粘稠な胃液は腐蝕性が強い.しかし正常の状態では胃も十二指腸も消化されることはない.これは,いわゆる“mucus barrier”によって保護されているためであり,潰瘍は局所の死,すなわち血管攣縮,血栓,栓塞などにより抵抗力の減弱した部位に発生するという考えが多くの支持をえた.しかし金属円盤による焼灼,化学物質の局所注入,結紮による血管閉塞などの方法によって作られた人工潰瘍は,5~6週間以内に完全に治ってしまう.形態の類似は意味がない.消化性潰瘍の特徴はChronicity,Progression,Failure to healである.十二指腸潰瘍の発生はストレスにより迷走神経が高度に緊張し,胃液分泌過多になるためである.十二指腸潰瘍の患者は食物やアルコールやヒスタミンに対する胃液分泌量が,正常の人の25~50%も多く,ことに夜間空腹時には4,5倍にもなる.しかしVagotomyにより,この分泌過多を抑えることができる.Gastrinは十二指腸潰瘍の発生には重要な役割を持たないが,胃潰瘍の発生には主役を演ずる.胃内の食物の異常な滞留により,胃前庭部粘膜からGastrinが血流中に遊離をつづけ,胃液分泌を促進する.粘稠な胃液は胃壁を腐蝕するに十分な濃度(pH3~2以下)に達する.胃十二指腸潰瘍併存は,おそらく,まず十二指腸潰瘍が発生し,幽門狭窄によって,食物の異常滞留をきたし,その結果潰瘍を併発したものであろう.胃潰瘍の手術は胃前庭粘膜のGartrinに対する感受性を弱めるためにVagotomyが有効であり,同時に食物の排出をよくするためのPyloroplasty,あるいはGastroenterostomyを行うがよい.

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 症例数は145例で,術後の経過観察期間は3ケ月から7年半,平均30か月である.

 術前の病像は,133例中9%が胃または十二指腸穿孔,11%が大量吐血,4%が高度の幽門狭窄で,残る62%が疼痛のため手術をうけている.すなわちファミリードクター,内科,外科医より,どうしようもないとさじを投げられた患者である.

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 Hisamine-induced Pancreatitis: John J. Schrogie, P. Holt, Richard C. Hartley, and Lloyd G. Bartholomew. (Gastroenterulogy 49, 672~675, 1965)

 薬理学的研究ではhistamineは膵の分泌細胞を刺激することが示されている.histamineによる胃酸分泌試験のさい,急性膵炎を引きおこした2例を報告し,考察を加えた.

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 この論文は,1947年以来一部の外科医によって提唱された胃癌の根治手術としてのtotal Gastrectomyについて著者の経験とその批判および胃癌治療に対する今後の方向を論じたものである.

 totalは理論的には正しいことは,次のような事実が証明する.すなわち2~3の切片によって断端には癌残存がなく根治手術と考えられた36例の切除胃について10ケの切片で再検索すると,中16例に癌残存をみとめた.したがって腫瘍から4~5cmの余裕で切除すると小彎自体が15~16cmであるので高位の胃癌ではtotalより方法はない.そこで著者は,10年間に経験した137例の胃癌の中任意の46例にtotalを施行した.術式の内訳は,食道空腸吻合42例(Roux-en-Y9例を含む)食道・十二指腸吻合4(interposition3例を含む)である.46例中2例は直接死,44例は一応退院した,5年生存例は11例である.合併症として問題になるのは,ダンピングと貧血であるが,11例の生存例の中4例は,高度のダンピングから生存していることを後悔するほどである.貧血は,最初低血素性から漸次Megaloblasticに移行し,11例中4例に経験した.さらに大きな問題は栄養管理である,患者は生存していても,元気がなく,ダンピングの有無にかかわらず食餌で悩まされる.

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 64歳男子,20年来無酸症と下肢の反復する浮腫があり,これに急激な腹痛を伴ない,粘液の大量の吐出と増強するやせが認められた.血清アルブーミン3.37g/dl,静脈内RIHSA投与によるアルブーミン半減期は2.8日で異常に短かく,糞便中のアルブーミンは僅かに増加していた.

 X線検査では粘膜皺壁が非常に厚くなり,所々で硬化像を示し悪性を否定できなかった.内視鏡検査は行なわれていない.

編集後記 芦沢 真六
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 関連学会も一通り終り,また新しい意欲を持って,毎日の診療,研究にとりかかられたことと思います.

 第1号をご覧になれば,この雑誌の当初の目的であった,写真をできるだけ多く,生のものに近くという目的がほぼ達せられていることにご満足いただけたことと思います.ぢっと見つめていると1枚の写真の語る内容にただその写真の説明を読んだだけのことではなく,そこまでの写真にまでした多くの人の努力の結晶をも感じとられることでしょう.

基本情報

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胃と腸
1巻2号 (1966年5月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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