今月の主題 早期胃癌〔2〕
綜説
病理組織学的観点よりみた早期胃癌診断の問題点
村上 忠重
1
,
安井 昭
1
,
中山 旭
1
,
児玉 寿太郎
1
1昭和大学第一外科
pp.111-123
発行日 1966年5月25日
Published Date 1966/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403111975
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1.はじめに
内視鏡学会案による肉眼的な早期胃癌分類法の原案を作製する時に,一番心配したのはⅡ表面型であった.言葉には出さないが,Ⅰ隆起型にはポリープ癌を,Ⅲ陥凹型には潰瘍癌を,それぞれの典型像と考えていたので,その診断についてそんなに問題が起こるとは考えていなかった.これに反しⅡ表面型については,私どもは当時実際にはほとんど知るところがなかった.進行した胃癌の辺縁や,あるいはそれと全く離れて副所見として偶然見いだされる癌の姿から,早期癌の大体の形を想像して,Ⅱa,Ⅱb,Ⅱc.の3亜型をきめたというのが実情に近い.
ところが今日では,Ⅱa,Ⅱcの診断にはむしろ議論が少なく,むしろⅠ隆起型と良性ポリープとの鑑別,皿陥凹型と良性潰瘍との鑑別のほうが視覚的にはむずかしいとさえいわれるようになった.わずか数年間に,見方にこれだけの相異が生じてきたということは,その間の診断技術の進歩が,いかに目ざましいものであったかをもっとも雄弁に物語る.そして最初に予想しなかった鑑別の困難さは,狙撃的生検または狙撃的細胞診という,新らしい診断技術によって救われようとしている.すなわち肉眼単位における診断学が,顕微鏡単位における診断学に,その位置をゆずりつつあるというべきであろう.
さて,このような傾向は,果してⅡ表面型にもあてはまるであろうか? 表面型だけは顕微鏡的診断にたよらないで,肉眼的診断の単位で,どの程度確診が可能であろうか? こんなことを以下,実例の病理組織学的な面から考えてみたい.
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