胃と腸 1巻3号 (1966年6月)

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Ⅰ.緒言

 胃生検法はこれを盲目生検法と狙撃生検法の二つに大別するのが普通である.盲目的に生検するか直視下に狙って生検するかでわけたものである.このほか生検鉗子を使用するか,陰圧吸引した組織を刃で切断するかの相差によっても分類することができよう.

 挿入察観したり,胃カメラ撮影をやったりして苦労したものである.同じ吸引生検法でもX線透視下に生検器の位置をコントロールしたり,目的の部位に用手誘導した場合はまったく盲目的な採取とはいえないにしても,直視下採取のように限局性病変にたいし正確に狙撃生検を行なうことは不可能である.

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現在の精密検査の診断の限界,問題になっているもの,また,診断できないもの

現在の最高の検査は,X線検査に内視鏡検査(胃カメラ,ファイバースコープ,ファイバースコープ付胃カメラ),細胞診検査(細胞診,生検)を併用することである.不必要な併用は研究面の場合をのぞいて,なるべく避けたい.しかし現状では,最高の検査という立場からすると,併用という言葉で表現することもおかしいほど諸検査は一体となっていて,ただ診断という言葉でしか表現できないほど融合しているのが実態であろう.そんな診断でみつけた症例を第94図に示した.

 ルーチン検査より高級な診断として,「綿密な慎重な透視下の圧迫検査」が,まず行なわれなくてはならない.それに,さらに,X線検査で見逃し内視鏡検査で発見されたものを,再度検査するものもある.

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症例 田○林○衛,68歳,男,酒造業

〔家族歴〕:母方の祖父は萎縮腎,母方の祖母は脳卒中で死亡しているが,他に特記すべき遺伝負荷はない.

〔既往歴〕:昭和38年1月書字障害,軽度の歩行障害,計算の間違いなどの症状があり,脳軟化症として約6カ月の治療を受け,上記の症状は完解した.

〔現病歴〕:10年前に某医の診断を受け,胃下垂症として治療をうけたことがあるが,特別の自覚症状はなかった.約1年前より軽度の倦怠感および食欲不振を訴え,また家人に少しやせたようだといわれ,精査を希望して昭和40年12月2日山形内科に入院した,この間,中山教授の発表している食道癌の初発症状のような自覚症状はない(第1表).酒は1日2合,煙草は1日30~35本,便通1日1回.

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症例

患者:児○信○ 60歳 男

主訴:左季肋部痛(特に早朝空腹時)

既往歴:

 (1)昭和29年:虫垂切除術

 (2)昭和30年:右外鼠径ヘルニアの手術

 (3)昭和31年:心疾患で入院治療

早期胃癌の症例 中島 義麿
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症例:影○善○ 50歳 ♂

主訴:空腹時にしくしく痛み背中にひびく

症状:胸やけ(+)やせる8kg位,其他異常なし

既往症:1年前11月某医にて胃潰瘍と言われ胃液検査

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 胃癌について早期癌というものが,肉眼的な所見から全面的にとりあげられるようになったのは,村上教授のたゆまざる癌への形態学的な観察にはじまるといってよいであろう.

 すでに現在全国的に普及した早期癌の肉眼的分類は,内視鏡像に肉眼的所見ないしは組織学的所見のうらづけをもつものであり,私としてはBorrmannの業績と同等に,その価値を認めたいと思っている.そもそもある一群の疾病の分類は,実際に簡単で,かつまた利用価値の多いものが,最後まで残るということは歴史が証明している.もちろん多年にわたって多少の論議や,異論が提出され検討され,さらに理想的なものになっていくことは当然である.当初から完壁を求めることはそれ自体無理であり,あえていえばその後に多くの混乱をきたすことはいうまでもない.かかる意味合からも村上教授を中心として分類した早期癌の,主として深達度に重点をおいた内視鏡学的分類は,永遠に残るものと考えている.(第四回総会,昭和37年)

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パネルの要旨

 司会(常岡) 今日は「上部胃癌」について,先日の消化器病学会パネルをふりかえっていろいろお話願いたいと存じます.まず,順序として芦沢先生から,パネルでお

話になった要旨を10分以内にお話願って,あとみなさんでいろいろ討議して頂きたいと思います.

 芦沢 上部冑ガンのパネルをやれといわれた時にまず老えたのですけれども,上部とはどこかということ.もう1つは,ガンは,早期ガンを含めて,ガンのカメラ像というのは大体みなゆきわたっていますので,上部でも撮れさえすれば大体診断がつくんじゃないかということで,まず2つを,条件よく―条件よくと一言でいうことは非常に問題があるのですけれども―上部をとにかく条件よく撮れば,上部にしろガンの診断は,いままでの得られた知識を振返って考えてみれば,割合に易しいんじゃないか.それでその撮り方を初めにお話したわけです.それからもう1つは場所の問題ですけれども,CMA分類がありますけれども,なにかやっていますうちに,fornixというものは,別の場所として,つまり病変の発生する際になにか特性があるんじゃないか,と申しますのは,わたしたちのところで経験したfornixの病変というのは,submucosal Tumorの大きいのが3例と,小さいのが1例.その他ガンにしても割合にrandwallが厚いというか,高いのが多いような感じでした.それにひきかえて体部になりますと,そういう特徴よりも,むしろえぐれる方の特徴が強く打出される.つまりfornixと体部では,盛り上りとえぐれという2つの差がありそうな感じがしてCMA分類に従わず,あえてfornixというところを別に打出して,そうして体部を上部,中部,下部と分けて,とりあえず胃上部という場合には,体上部とfornixというふうにしたわけです.大体そうしますと,CMA分類と一致いたします.そこで最後に,実験的になにかそういうことを証明できないかというのでやったのが,幽門腺領域に吉田肉腫を植えこみますと,植え方にこつがあるわけですがかならずつきます.その際に迷走神経を食道切端で切除しておきますと,その幽門腺に植えた吉田肉腫の上部への伸びが著しいような……それが分泌,運動その他なにに関係しているかはわかりませんけれども,そういうような傾向がみられます.そういうことを今後は考えに入れて,診断というものもやってゆかなければならないんじゃないか.場所による病変の現れ方の特殊性というようなものも,なにか考えられるんじゃないかというようなことをちっと感じましたので,それをお話したのです.

技術解説

胃カメラ(その2) 城所 仂
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 前回は前準備から幽門部への挿入までについて述べて来た.このシリーズではお座なりの記述を避けて,ごく平易に感ずるままに述べて行くつもりで記述をすすめてゆくことにしている.話の都合では少しく脱線するかも知れないが,それはそれとして一応意味のあることと考えている.

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3.透視撮影の実技

 私は前号で,はじめて胃の透視を試みる方えと題して,かなり初歩的なことを,それも主として心がまえとか考え方などといった,多分に心理的な面に紙数を使ってしまったようである.科学的でないといわれようと,胃のレントゲン診断で誤診したり.撮影がうまくゆかないというお話を聞いた場合,よくよく検討してみると,考え方の出発が違っていると思われることが沢山あることも事実だからである.

 粘膜の微細病変を描写するには,二重造影が一番よいというお話しをしたら,

「二重造影をすると大きい病変はわかりますけど,粘膜に萎縮があると像があまりはっきりしませんね」「いや,小さい病変の方がよく……」「でも粘膜像がよく出ないでしょ」「萎縮がある位の方が,低酸のことが多いからバリウムの凝固も少なくかえっていいと思うのですが」「でもレリーフがずっと少なくなって読みにくいでしょ」「空気を入れるのは,そのレリーフを少なくして,粘膜面そのものを描写しようというわけでして……」「でもレリーフで粘膜面を読影するのでしょ」

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 第25回日本医学放射線学会総会は昭和41年4月8,9,10日に鹿児島県医師会館ホールで開催された.その第2日4月9日の午前9.52―11.22(討論30分を含む)に食道・胃の診断及び治療(演題169-204)の部門が開かれた.当日は豪雨にもかかわらず満堂の会員が熱心に視聴したわけである.以下その演題を示してみよう.

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<質問>

 同じ切除標本を臨床病理の係の先生にみていただいた場合に,ある人は癌であるとし,ある人は癌とはいい切れないと判定される場合があるのですが,これは,どういうところに原因があると理解すればよいのでしょうか.村上先生にお願いいたします.

編集後記 市川 平三郎
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 倉皇の間にあって出発した本誌も,ここに3号を迎えることができた.編輯者の間では既に本年中に発行される本誌の大凡その企画は出揃っているので,これから相次いで斬新な内容が発表されることであろう.どうか期待していただきたい.

 本誌では,三回に亘って連載された白壁氏の早期胃癌のレントゲン診断が完結する.美しい写真と,膨大な文献一覧は,大いに読者の参考になることであろう.ファイバースコープによる直視下生検は,この道の開拓者としての常岡氏の面目躍如たるものが感ぜられる.

基本情報

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胃と腸
1巻3号 (1966年6月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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