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迷切胃腸吻合と迷切幽門成形術後のダンピング症状発現の比較を実験的に研究したもので,50名の患者を対象とし,その半数づつに迷切胃腸吻合と迷切幽門成形術が行なわれた.さまざまな程度の臨床的ダンピング症状が迷切胃腸吻合術後に14名(56%),迷切幽門成形術後に10名(40%)発現した.迷切胃腸吻合に比べ幽門成形術の方が症状は強くなかった.実験的発現方法としては,患者達を14時間断食させた後坐位で50%グルコース水溶液150ccを経口的に与え,その摂取前,および10分20分,30分,60分,120分後に循環血漿量を測定した.この実験的な方法ではいろいろな激しいダンピング症状が起り,迷切胃腸吻合後のものには20名(80%),迷切幽門成形後のものには17名(68%)に起った,両グループにおいて臨床的ダンピング症状と試験食後に生じた症状との間にはっきりと相間があった.しかし多くの症例で実験的に引き起される症状はより激しく,通常臨床的にダンパーでないものにも数人現われている.試験食直後の時期には血漿量の減少が50例中49例にみられ,両グループ間には差異がなかった.また両グループの血漿量の減少平均でも差異は見られなかった.臨床的観察ではダンピング症状の強さは,迷切胃腸吻合に比較して,迷切幽門成形グループの方が影響が少なかった.しかし実験的には両グループ間に有意の差は認められなかった.ふだん臨床的ダンピングの現われないものでも,試験食を用いることで症状が現われ,実験的に引き起された症状と血漿量の減少との間に相関が見られ,血漿量の減少の値は,症状のないものに比較してあるものの方が等しいか,または多かった.両グループ間には血漿量の減少の有意の差は見られなかったし,臨床的または実験的ダンピング症状の程度との間にも相関は認められなかった.
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