臨床検査 34巻6号 (1990年6月)

今月の主題 フローサイトメトリー

総説

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 フローサイトメーターの原理について光学系の仕組み,サンプルをノズルまで運び正確に計測できるようにした特殊流体系,その計測値を増幅しコンピュータに記憶させるまでの電気系,さらに細胞の分別採集の仕組みなどについて説明した.応用面では細胞膜表面の検索,細胞周期の計測,細胞内核酸,蛋白,RNAの定量,染色体分析への応用などについて説明した.

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 FCMは近年,モノクローナル抗体の開発とあいまって,リンパ球サブセット分析用の機器として普及している.また,浮遊細胞としては,血液,胸水,腹水細胞や培養細胞などがあげられるが,FCMで分析対象とされるのは,これらの検体に含まれる白血球系の細胞,とりわけリンパ球が主体である.

 本稿では,血液や胸水,腹水からのリンパ球およびリンパ節などの組織に含まれるリンパ球の分離法の実際を解説した.

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 フローサイトメトリー用の試料作製法として,固形材料からの細胞分散について概括する.方法としては,①機械的分散法,②酵素による分散法,③キレート剤による分散法,④界面活性剤による分散法などがある.この内,トリプシンなどの蛋白分解酵素を用いる方法がもっとも一般的であるが,あらゆる分析に共通の分散法はなく,それぞれの目的にもっとも適合した分散法およびその条件を選択することが重要である.

細胞表面抗原染色法 高瀬 浩造
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 細胞表面抗原分析における染色操作は特に重要なステップであり,検討に値する部分である.末梢血リンパ球サブセット分析と腫瘍細胞表面マーカー分析ではいくつかの違いがあるが染色法そのものは共通であり,どちらにも対応できるだけの方法論の検討と問題点の洗い出しが必要である.染色操作の中で特に問題となるステップは,特に非特異反応の対策と実際の抗体の選択である.また,将来的な精度管理に関連して各種コントロールの意義の認識およびその設定方法の確立が重要である.なお読者の利用の便を考え,実際の表面抗原分析に際して発生しうる問題についてのQ&Aもあげた.

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 DNA染色はフローサイトメトリー研究においてもっとも基本的で重要な手技である.これまでに数多くの染色が研究・開発され,現在ではpropidium iodide,chromomycin A3,Hoechst33342などによる数種の染色法が,実験の目的や用いる細胞の種類に違いによって使い分けられている.さらに最近ではacridine orangeによるDNA-RNA同時二重染色や,抗BrdUモノクローナル抗体を用いたBrdU-DNA同時二重染色も行われ,単にDNA量の測定にとどまらず細胞動態に関するより多くの情報が得られるようになってきている.これらの新しい方法も含めてDNA分析に用いられる主要な染色法について解説する.

セル・ソーティング 木根渕 猛
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 FACS (Fluorescence Activated Cell Sorter)のたぐいまれな機能は文字どおりソーティング機能である.多様な細胞のさまざまな顔を解析しながら,しかも特定の顔をもつ目標の細胞だけを分離回収できる.リンパ球の顔(phenotype)を特徴づける糖蛋白質や糖脂質は細胞表面マーカーと呼ばれ,CD分類によって識別されている.本稿ではそれらのマーカーを特異的に認識するモノクローナル抗体を駆使して,特定のリンパ球サブセットを無菌的に分離回収する技術を述べる.

病態解説

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 フローサイトメーターとモノクローナル抗体を用いて,造血器腫瘍の細胞表面抗原(表面マーカー)を解析した結果について記載した.特に従来のsingle color分析のみならずtwo color分析により,さらに詳細な検討ができるようになる点を強調した.また,あまたあるモノクローナル抗体を有効に選択し,必要最小限の抗体数で,表面マーカー上血液腫瘍の正確な診断ができるようなフローチャートを提唱した.

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 FCMによる造血器腫瘍のDNA量解析により2つの重要な生物学的情報が得られる.それは腫瘍の細胞回転の解析と異数体の検出である.前者では悪性度の判定,治療への反応性,予後判定因子における有用性が解明されつつあり,後者ではDNA異数体が腫瘍マーカーとして経過の観察,予後判定に有用なことが明らかとなっている.これらはFCMの出現によりはじめて検索可能となった課題であり,今後一層の臨床応用が期待される.

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 バセドウ病,慢性関節リウマチと全身性エリテマトーデスの末梢血リンパ球サブセットはCD4/CD8細胞比でみて症例によりheterogenousであった.疾患の活動期には活性化や免疫記憶T細胞が増加しており,臨床経過に従って変動する.バセドウ病の甲状腺組織や慢性関節リウマチの滑膜には著明な単核球浸潤がみられ,活性化T細胞や免疫記憶T細胞であるHLA―DR, CD25やCD26抗原陽性T細胞が増加している.CD4細胞では,virgin CD4CD45RA細胞は少なく,memory CD4CDw29細胞が主として浸潤しており,helper T細胞としての機能を発揮していることが示唆される.B細胞ではresting B細胞から形質細胞への種々の分化,成熟過程の細胞が検出される.浸潤単核球は細胞接着分子(CD2, LFA-1, VLA-1)を発現し,上皮細胞や血管内皮細胞と相互に作用して,免疫応答の永続化に関与していると考えられる.

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 フローサイトメトリーを用いて固形腫瘍のDNAを測定し,その病態との対比を各種の腫瘍において試みた.DNA aneuploidyは悪性腫瘍では,高頻度に見られ,診断的価値はきわめて高いものの,逆に病態を的確に表現しているとはいえない.DNA indexと病態との関係についての報告は多くはないが,一般的にはDIは予後因子となりうる.予後因子としては,proliferative fractionの大きさが有用とされている.

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 出産および輸血による感作によって抗血小板抗体が産生される.抗体が産生されると出血傾向が出現したり,血小板輸血無効状態に陥る例がある.この同種抗体の80%以上は抗HLA抗体であるが,血小板特異抗体も存在する.このため血小板パネルを用いた抗体検査も重要であり,フローサイトメトリー法は有用な方法である.

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 赤血球FCM法は凝集法とは異なり,抗体結合状態や個々の血球抗原密度の測定が可能である.本法は微量の混入血球を検出しうることから,血液型不適合骨髄移植例のドナー由来血球,生着確認,血球分化に伴う抗原発現などの解析に応用できる.また各血液型血球抗原の蛍光強度の比較測定は,変異型の抗原基数,gene dosage effectの解析,抗原のホモ-ヘテロ接合の検討に有用である.

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 フローサイトメトリー(FCM)による各種細胞学的特性の測定のうち核DNA量の分布パターン,すなわちDNAプロイディパターンの分析はパラフィン包埋材料から容易に行いうるためにここ数年の間に急速に広まり,主に腫瘍細胞の検討に利用されている.近い将来FCMによるDNA型分析は研究レベルから日常の検査レベルになることが予想される.手技について成書の記載1)を補うように要点を述べると,まずパラフィンブロックの薄切から始まり,脱パラフィン,親水化,酵素処理および核の機械的分離,DNA蛍光染色,FCM測定,ヒストグラム解析の手順となる(表1,2).核浮遊液の調整はHedleyらの方法2)を改変し,核の蛍光染色はVindelφvらの方法3)を改変したものである.薄切はミクロトームを用いて50μmの厚さにすると核の破片による影響が少ない4).薄切されたスライスは核浮遊液にするので美しく切れている必要はないが,専門の技師は経験のない厚さでかえってとまどうかも知れない.

また組織所見再確認のため染色標本も作成しておくとよい.薄切量は小指頭大の面積が切れれば測定可能であるが壊死や細胞融解などの存在で有効面積が減少している場合や正常組織が多く含まれている場合には薄切数を増やしたり予め正常部分をトリミングしたりすることも必要である.したがって既存の染色標本がある場合には必ず事前に確認しておく.薄切したスライスは1週間以内に測定しているが,3~4週間経ったものでも得られるヒストグラムの質に差は認めなかった.しかし,カビが生えたり腐敗や変質する可能性もない訳ではないので早目に測定したほうがよいであろう.脱パラフィンは薄切したスライスを10 mlくらいのガラス試験管に入れ,キシレンを3ml加えてボルテックスミックスし10分間程静置,上清吸引除去後再びキシレン3mlを加え同様にする

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1.はじめに

 近年,フローサイトメトリー(FCM)は細胞の表面抗原やDNA量の分析に広く用いられている.表面抗原の検索はリンパ球亜群の分析に,また造血器腫瘍ではCALLAなどの"腫瘍関連抗原"の検出に非常に有用となる.一方,DNA量の検索は細胞回転の分析および腫瘍特異的マーカーであるDNA異数体(DNA aneuploidy;DA)の検出1)に有用である.もし細胞表面抗原とDNA量の同時測定が可能となれば腫瘍細胞の同定,検出率の向上だけでなく,腫瘍細胞の生理学的特徴の検索,すなわちCALLA陽性細胞群のみの細胞回転の分析や,逆にDAを示す細胞のみの表面抗原の分析などに非常に役だつ2)

 FCMによる細胞表面抗原およびDNA量の同時測定に関しては,これまでリンパ球を対象とした報告が多少見られるが2~4),非特異反応の出現などの問題点が指摘されており,われわれも一部4)追試を行ったが満足な結果は得られなかった.本稿ではこれら2つの同時測定に関し,われわれの基礎的実験結果を中心に,臨床応用も含めて話を進める.

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1.はじめに

 細胞内pH ([pH]i)は酵素反応や蛋白合成をはじめ細胞内の種々の反応に影響を与えており,一般的には,[pH]iが上昇すると細胞の代謝活性が増すように見える.一方,生理的な[pH]iは,細胞内からHを積極的に排出する機構により維持されることが示唆され,この機構のひとつとして,Na/Hexchangerが注目されている1,2).細胞増殖を刺激する物質の多くが,Na/Hexchangerの活性化とそれに伴う細胞内アルカリ化をおこす3)ことから,Na/Hexchangerの活性化あるいは[pH]iの上昇が,細胞の活性化や増殖の開始あるいは維持に何らかの役割を果たす可能性が考えられている1,4).このように,細胞内反応の制御機構や細胞の活性化を理解するうえで,[pH]iの測定は重要である.従来のpH電極,弱酸,弱塩素色素などを用いた測定法は,操作の繁雑さ,測定感度や応答速度,必要な細胞数などの点で問題があった.近年開発された蛍光pH指示薬BCECF(Bis (carboxyethyl) carboxyfluorescein)はこれらの欠点を解決しており,BCECFと蛍光分光光度計を用いて[pH]iの測定が行われるようになった5).しかしこの方法では細胞浮遊液全体の蛍光を測定するにすぎない.われわれはさらに詳細な検討を目的に,個々の細胞の蛍光が測定できるフローサイトメーターを用いた測定を試みたので紹介する.

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1.はじめに

 フローサイトメトリー(FCM)が開発されてから20年以上経過して装置自体の性能も向上し,多重染色や細胞をソーティングすることも以前に比べるとはるかに容易にできるようになっている.同時に分子生物学の方法論も飛躍的に向上したため,FCMを分子生物学に応用する試みもたくさん行われるようになってきた.本稿ではそのうちすでに実用化されているものを中心にその概略を紹介する.

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1.はじめに

 染色体分析は,従来主にバンディング法によりなされている.しかし近年バイオテクノロージの進歩によりDNAプローブを利用することで染色体の観察が可能となった1,2).最近LawrenceLivermore National Laboratory(the U. S. Department of Energy)でヒト染色体おのおのに対する特異的DNAプローブが作製されfluorescence in situ hybridizationを利用することにより蛍光顕微鏡にて直接染色体の観察が可能となった.

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 1975年,Köhler, Milsteinがマウス抗体産生細胞とマウス骨髄細胞を融合させてモノクローナル抗体を作成することに成功した.以来,造血器細胞分化抗原に対する膨大な数のモノクローナル抗体が作成されている.これらモノクローナル抗体の臨床への導入は,造血器細胞の免疫学的分類,治療応用への有用な亜群の同定,残存する白血病細胞の検索,骨髄allograftよりのT細胞の除去,骨髄autograftよりの残存白血病細胞の除去,Immunotoxinによる造血器悪性腫瘍の治療など,盛んに行われている.しかしながら,臨床家が指数関数的に作成されるモノクローナル抗体すべてに精通することは難しくなり,またこれらモノクローナル抗体の中には同一の抗原を認識する抗体が重複して存在していることも事実である.こういった背景から,モノクローナル抗体を世界的なレベルで統一し,すべての研究者が同一の基盤に立って,モノクローナル抗体を評価し,臨床・研究に応用する必要性が考えられた.

 CD(Cluster of differentiation)番号による抗体の表示法は,ヒト白血球分化抗原および分化抗原を認識するモノクローナル抗体に関する国際的に統一された表示法である.

カラーグラフ

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 糸球体腎炎の発症においては,補体系の演ずる役割は大きいが,特に膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)では重要視されている.MPGNはその名が示すとおり,係蹄壁の肥厚性変化と,tuft内の細胞増殖性病変を示し,その病理形態像から3型に分けられる.

学会印象記 第59回日本寄生虫学会大会

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 第59回日本寄生虫学会は九州大学医学部寄生虫学教室の石井洋一教授を大会長に,平成2年4月2,3の両日,桜満開の九州大学医学部構内で開催された.福岡市での開催は昭和28年以来,実に37年振りである.国際化の今日,特にアジア諸国との友好を深めたいとの大会長の意図で,招待講演は外国人学者によるものであった.また,ジュネーブとマニラからのWHO関係者,アメリカ大陸,アジア諸国,ケニアなどから来日中の研究者の出席もあって,国際色に富んだ学会となった.

 一般口演201題のほか,特別講演1題,招待講演2題および宿題報告1題の内容であった.最近の傾向として免疫関係の演題が多く,58題(29%)の発表があった.虫種別ではマラリアの14題など原虫類が64題,一方蠕虫類は住血吸虫の19題を始め143題であった.

腎臓病の病理・6

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 糸球体腎炎発症に際して補体系の関与する役割は大きい.補体の活性化には,抗原抗体複合体によって活性化が引き起こされる古典的経路と,免疫複合体とは関係なく活性化される第二経路があり,膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)のType 1は前者,Type 2は後者による補体の活性化がそれぞれの病因において重要な役割を演ずるとされる.MPGNは病理形態学的に,糸球体の細胞増殖性変化と,係蹄壁の肥厚の両者を呈するが,Type 2は特にその電子顕微鏡的特徴から,Dense deposit diseaseともよばれる.ところで,乳幼児期の腎疾患としては,これまで述べてきた原発性腎炎以外にも,遺伝性糸球体疾患があげられ,その診断に際しては,慎重でなければならない.

TOPICS

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 Lipoprotein(a)[Lp(a)]はlow density lipoprotein(LDL)にapo(a)と呼ばれるglycoproteinが結合したmacromolecular complexであり,動脈硬化の新しい危険因子として最近注目を集めている.Lp(a)は,今後臨床検査レベルで測定が行われていくと思われる.

 Lp(a)は1963年にノルウェーの遺伝学者Bergにより,ヒトLDLで免疫したウサギの抗体で検出できるLDLのvariantとして発見された.実際,Lp(a)粒子は直径21~26nm,分子量3.1~5.6×106で,脂質組成やapoB-100を持つなどLDLに類似しているが,apo(a)を含む点で異なっている.apo(a)はkringleと呼ばれる特徴的な繰り返し構造を持ち,S-S結合によりapoB-100と結合している(図1).Bergは,Ouchterlony法を用いて,ノルウェー人の34%にLp(a)が存在することを示し,家系調査からLp(a)は,Mendel式の常染色体優性遺伝をすると述べた.

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 急性膵炎の診断には緊急を要する場合が多い.また,その成因には多数の活性化膵酵素による全身の多臓器障害(multiple organ failure;MOF)が関与しており,急性膵炎の重症度判定や経過観察には,これら多因子の総合判定が必要である.したがって,急性膵炎を念頭におく場合は,膵リパーゼ,エラスターゼ,アミラーゼのほかに,アミラーゼアイソザイム,白血球数,CRP,胸・腹部単純X線写真,尿・血液生化学検査,CT, USなどを,病態に応じた治療を行いながら実施する必要がある1).臨床上,急性膵炎の重症型を早期診断できるような,簡便かつ信頼性の高い検査法の開発が待たれていたが,1988年Hurleyら2)により報告された尿中トリプシノゲン活性化ペプタイド(TAP)の測定法は,トリプシノゲンの活性化ペプタイド内の5つのアミノ酸よりなるペプタイド鎖(Asp-Asp-Asp-Asp-Lys)のC末端に対する特異抗体に基づくRIA法(測定限界;10-11mol/l)である.これらの抗体はトリプシノゲン蛋白とは結合せず,遊離のTAPとのみ結合する.膵臓内のトリプシノゲン活性化によって生じた遊離のTAPは腹腔内や大循環系に放出され,その後,速やかに腎で濾過され,尿中に排泄される.すなわち,膵臓トリプシノゲンの活性化の程度は,尿中TAPを測定することによって定量化しうるわけであり,このTAP値が急性膵炎重症度の早期診断に有用である.

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 動脈硬化病巣においては泡沫細胞といわれるコレステロールエステルを大量に貪食した細胞が存在している.泡沫細胞は集ぞくしてfatty streakとなり,さらにatheromatous plaqueを形成して,血管の狭窄,閉塞を引き起こすことになる.泡沫細胞はマクロファージが血中のコレステロールを取り込んで形成されると考えられており,そのコレステロールはLDL (低比重リポタンパク質)由来と考えられている.

 マクロファージでは,LDL受容体はほとんど発現しておらずに,代わりに陰性荷電の増しているリポタンパク質,例えば酸化LDLやアセチルLDLを取り込む活性が高度に上昇している.LDL受容体の発見者であるBrownとGoldsteinらは,1979年にマクロファージのアセチルLDL/スカベンジャー受容体(スカベンジャー受容体と略す)が変性LDLと結合し,取り込むことによって泡沫細胞化し,動脈硬化が発症するというスカベンジャー経路仮説を提唱した.その後10年間にわたり,スカベンジャー受容体の重要性を示すデータが蓄積してきたが,スカベンジャー受容体の実態が不明であることや,多様な陰性荷電を持つ巨大分子でスカベンジャー受容体機能が阻害されることなどにより,単一の受容体機能であるのか,それともマクロファージの持つ貪食能の一部なのか不明の点が多かった.

オートクリン機序 烏山 一
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 オートクリン(autocrine)機序という概念は,もともと癌化細胞の自律性増殖を説明するものとして提唱された仮説である1).すなわち,細胞がその増殖に必要な因子を自ら産生,分泌すると同時に,細胞表面に増殖因子特異的なレセプターを発現した場合,リガンドとレセプターの結合により,シグナル伝達が恒常的に起こる.その結果,細胞は正常な増殖のコントロールから逸脱し,癌化するという考え方である.このような例として,マウス肉腫ウイルスによってトランスフォームした細胞が発癌増殖因子(TGF)を分泌しており,この因子が細胞の癌化に関与していることが示された.さらに,サル肉腫ウイルスの持つ癌遺伝子sisの産物が血小板由来増殖因子(PDGF)と相同であることが明らかとなり,オートクリン仮説が裏付けられた.最近では,クローン化された遺伝子を線維芽細胞や造血系細胞に導入,発現させることにより,発癌増殖因子α(TGFα),上皮増殖因子(EGF),線維芽細胞増殖因子(FGF),顆粒球・マクロファージ・コロニー刺激因子(GM-CSF)やマクロファージ・コロニー刺激因子(CSF-1)の自己分泌と癌化との関連が,実験的に証明されてきている.

 リンパ球の増殖,分化は種々の液性因子によってコントロールされているが,成人T細胞白血病や骨髄腫のようなリンパ球系の腫瘍では,その発症にオートクリン機序が関与している可能性が示されている.

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 NADPH酸化酵素の十分に可溶化された無細胞系での測定法を報告する.本測定法を用いたNADPH酸化酵素のNADPHに対するKmとVmaxはそれぞれ平均38.2μmol/lと78.2nmol O2/107細胞当量/分であった.

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 心筋ミオシン軽鎖(MLC)は,心筋特異性の高い蛋白である.今回,われわれはモノクロナール抗体を用いた血中MLC Ⅱ測定系を確立するため,基礎的検討を行い,さらに急性心筋梗塞(AMI)患者における血中MLC Ⅱ濃度を測定した.本測定系は精度に優れ健常人150例での血中MLC Ⅱ値は1.5±4.8ng/ml(mean±2SD),AMI患者30例の血中MLC Ⅱピーク値は,15±22ng/mlでありAMI患者において有意に高値を示した.

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 多発性筋炎,皮膚筋炎の診断に欠かせない抗Jo-1抗体の検出について検討した.HEp-2細胞による蛍光抗体間接法では,抗Jo-1抗体陽性血清は大別して3通りのパターンをもっており,細胞質染色のみのもの,細胞質と核染色の両者をもつもの,細胞質は染らずhomogeneous,speckled,nucleolar型核染色のものがみられた.これらの血清は,寒天ゲル内免疫拡散法では,同一の抗Jo-1抗体陽性として検出され,それ故抗Jo-1抗体は蛍光染色でみる染色パターンの一定の型に対応しないと考えられた.

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 〔問〕フック現象について説明してください.

 〔問〕ELISAプレート(普通の赤血球凝集反応用プレート)またはポリスチレンに抗原を吸着させるには実際にどのように行えばよいか,その操作法を具体的にご教示ください.

質疑応答 一般検査

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 〔問〕無晶性塩とはどのような状態のものをいうのですか.また,その除去法と,各除去法を用いた場合,他の有形成分(円柱など)に与える影響についてご教示ください.また,無晶性尿酸塩とは尿酸とNa,無晶性リン酸塩とはリン酸とNaが結合したものですか.

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 〔問〕当院ではこの数年間,遠沈用試験管1本(約10ml)の尿が病棟・外来から検査科に提出されています.しかし現今,尿の精度管理の沈渣の必要尿量は約10 mlとされ,この尿量から糖,蛋白の定量に100μl必要で,医師から尿の混濁の証明,脂肪の有無などが依頼された場合,まったくのお手上げです.そこで,尿を遠沈した上清で糖,蛋白の定量を指示され,遠沈前後で蛋白の定量を実施したところ,遠沈後に若干の低下がみられました.尿検査のための尿量はいくらあればよいのか,ご教示ください.

基本情報

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臨床検査
34巻6号 (1990年6月)
電子版ISSN:1882-1367 印刷版ISSN:0485-1420 医学書院

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