臨床検査 25巻8号 (1981年8月)

今月の主題 血小板

カラーグラフ

実験的血小板血栓 福武 勝博
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 血小板血栓を生成する成因は基礎疾患によっていろいろであるが,生理的な意味で,あるいは生体防衛反応の立場からなると,血小板血栓の役割は止血血栓の初期構造としての意義が最も高いものであろう.そこで我々は小動物の腸間膜の血管を針で穿刺して出血させ,その後に局所の血管内外に生成する血小板血栓の動きと止血状態について16ミリフィルムで撮影,観察したことがある.最も単純な形での血小板血栓の動態をよく表しており,参考になる部分もあるので,コマ撮り風にアレンジしてみたのが,このカラーグラフである.

技術解説

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 プロスタサイクリン(PGI2)とトロンボキサン(TXA2)も,他のプロスタグランジン(PG)と同じように,不飽和脂肪酸であるアラキトン酸(AA)から共通の中間体であるPG-エンドペルオキサイドを経由して生合成される.PGI2の産生部位は主として動脈血管内皮であり,TXA2は血小板と考えられる.TAX2は血小板凝集作用が強く動脈収縮を惹起させるが,これに拮抗するようにPGI2は血小板凝集抑制と動脈血管弛緩作用が強い.PGI2,TXA2の発見によって血液血管系のダイナミズム,血管損傷における修復機構など生体の生理機能におけるその役割や,出血傾向,血栓症,動脈硬化症,狭心症など循環器領域の各種疾患との関係など病態生理的側に面おけるこれらの物質の重要性がクローズアップされ,その量的バランスの正確な把握もまた急務と考えられるに至っている.

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 血小板は生体の止血に重要な細胞である.血小板に関する各種の分析が検査室でなされており,疾患の診断及び治療に役立っている.これらの血小板の検査,特に機能検査をするうえにまず必要なのが,血小板の分離である,一方,血小板膜もある種の血小板機能異常症で異常になることが判明しており,最近,検査室レベルでも膜の分析を行うことが考え.られるようになった.

 ここでは血小板及び膜の分離法について述べるが,主に血小板機能検査(凝集能,放出能)及び血小板膜蛋白分析などを目的とした分離法について述べる.血小板の分離法は,多血小板血漿(PRP)と洗浄血小板及びゲル濾過血小板(gel filtered piatelets)の3種類の方法について記述する.

βTGの測定 新井 仁
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 血小板機能検査として生体内の状態をより正確に表現する検査法が期待されている.しかし,従来行われている方法では,精度や手技上おのずと限界がある.βトロンボグロブリン(βTG)は正常な状態では血漿中にはほとんど存在しないが,放出反応に際して循環血中に遊離される血小板蛋白であり,ラジオイムノアッセイ(RIA)により測定可能となった.

 βTGは血小板第4因子(PF4),血小板フィブリノゲンや血小板由来成長因子(PDGF)とともに血小板α顆粒中に存在し1,2),ADP,コラゲンやトロンビンにより血小板から放出される.81個のアミノ酸から成る分子量8,851のサブユニットから成り二硫化物の橋(disulfide bridges)を形成し,βTGの分子量は約36,000である.その分子構造はlowaffinity PF 4(LA-PF 4)と類似している3,4).βTGとLA-PF 4とは構造上の類似のほかに免疫化学的にも類似している5).最近のNiewiarowskiら5)の報告によれば,LA-PF 4がまず血小板より放出され,同時に血小板より放出されるプロテアーゼによりβTGに分解されるとしている.

総説

多能性細胞としての血小板 山中 學
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 今から約100年前Bizzozero1)が,赤血球や白血球とは別の,独立した細胞として血小板の存在を明らかにし,血管壁傷害部への血小板付着が血栓形成の最初の反応であることを示した.またウサギやモルモットの腸間膜小血管を顕微鏡下に観察して,流血中の血小板の形態が小円盤であることを認め,また指尖から採取した血液の塗抹標本での,血小板凝集塊形成,それへの線維素の集陶,時間的経過による変形などを詳しく記録した.

 それ以来,血小板は生体の止血仮応に重要な役割を果たすものとして認識されてきた.臨床的には血管,血液凝固因子とともに,血小板の異常は出血性素因の原因として常に注目されていた.

臨床検査の問題点・142

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 血小板寿命の測定には,血小板にラジオアイソトープを標識するRI法と,血小板中のマロンジアルデヒド(MDA)を測定する二つの方法がある.前者は検査環境に制約があり,後者には被検者以外の血小板は使えないという短所がある.日常検査の中にどう取り入れていったらよいか…….

(カットは51Cr標識による血小板の寿命曲線)

検査と疾患—その動きと考え方・56

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 症例 35歳,主婦.

 主訴 不正子宮出血.

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 病理組織標本の作製においては,通常のミクロトーム刀に代わって替刃式ミクロトーム刀が広く用いられるようになった.その利点は,①常に鋭利な刃を用いることにより良質な薄切切片の作製が容易となり,診断への貢献度が増したこと,②ミクロトーム刀研磨のための労力,費用が不要なこと,しかも研磨によって必ずしも砥ぎ上がりが希望どおりできるとは限らない,③コストも高くないこと,などが挙げられる.

 クリオスタットにこの替刃刀を利用することを考えたが,通常ミクロトーム用のものを直ちには使用できない.替刃刀をホルダーに固定する保持板が厚いので,クリオスタットのアンチロールにぶつかり使用できない,施設によってはAOミクロトーム用替刃刀を使用している所もあるが,これは保持板と刃の接合部の段に切片がぶつかり,3〜5μmの切片を得ることは困難である.ここでは,ごく簡単に通常のミクロトーム用替刃刀の利用を紹介したい.

Ex Laboratorio Clinico・56

血小板の収縮系 日高 弘義
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はじめに

 筋肉組織に収縮系が存在し,その主役になるのがアクトミオシンであることは,既に1957年H.E.Huxley1)の報告により明らかにされている.このアクトミオシンが血小板にも多量に存在していることがBetlex-Galland and Lu-scher2,3)によって見いだされて以来,この血小板の収縮系の役割につき多くの推測がなされている.血小板の形態変化,放出反応,凝集反応,粘着現象などにかかわっているとするのが最も自然な考え方と言える.本稿では血小板機能における収縮系の役割について述べるとともに,血小板収縮系蛋白であるアクトミオシンの調節機構についても,最近の研究成果を中心に解説する.

負荷機能検査・20

フェロカイネティクス 高久 史麿
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フェロカイネティクスとは

 我々の血液の中を流れている赤血球は,正常でも120日の寿命しか有していない.そのため生体内では老化した赤血球の網内系組織における除去と,それを補うための新しい赤血球の産生が,お互いにバランスを保ちながら絶え間なく行われている.我々が1日に産生する赤血球の数は約2×1011個に及ぶ大量であるが,新しい赤血球の産生に伴って幼若赤血球内におけるヘモグロビンの合成が常に行われている.その際,ヘモグロビン蛋白の主要構成成分である鉄の骨髄内幼若赤血球への供給が絶え間なく,かつ十分に行われて,初めて赤血球の産生が円滑に行われる.

 このように造血組織内で日々行われている赤血球の新生に必須の物質である鉄の供給は,血清中のトランスフェリン蛋白と結合した鉄,すなわち血清鉄を介して行われる,図1に示したごとく骨髄中の赤血球の新生,すなわち幼若赤血球内でのヘモグロビンの合成に使われる鉄の大部分のものは,網内系組織において破壊された老化赤血球からの鉄の再利用という形で供給され,その量は正常人で20mg/日以上にも達している.一方,食物を介して体内に入ってくる鉄分は1日1〜2mgというわずかな量で,汗,糞便などの形で生理的に我々の体内から失われていく鉄量を辛うじて補っているにすぎない.

アイソエンザイム・8

γGTP 尾崎 監治 , 澤武 紀雄 , 服部 信
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はじめに

 γ glutamyl transpeptidasc (γGTP)はグルタチオンなどのγグルタミルペプチドを加水分解し,その分解したγグルタミル基を他のペプチドやアミノ酸に転移させる作用を有する酵素である.本酵素は生体内に広く分布し,健常成人では腎に最も活性が高く,膵がこれに次ぎ,正常肝では活性は低い1).しかし,種々の肝胆道疾患において肝および血清γGTPの活性が上昇することが知られており,今日血清γGTP活性の測定が肝胆道疾患の血清酵素学的診断法として普及していることは周知のごとくである.

 一方,γGTPのアイソエンザイムについては1965年Kokotらの濾紙電気泳動による報告以来,種々の支持体を用いた検討が試みられてきたが,その臨床的意義については十分解明されていなかった.著者らは電気泳動法として現在最も分離能が優れていると考えられるポリアクリルアミド・グラジェントゲル・スラブを支持体に用いる方法により,種々の肝胆道疾患患者血清におけるγGTPアイソエンザイムを検討した結果,肝細胞癌患者血清中に特異的に出現するアイソエンザイム(novelγGTP)を見いだした2〜9).本稿では,著者らが行っているnove1γGTPの検出法を中心に解説し,併せて,その臨床的意義について述べる.

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はじめに

 アルカリホスファターゼはいろいろな組織に広く分布する酵素であり,流血中では白血球細胞に認められる.白血球内のアルカリホスファターゼ活性はLAPもしくはNAPと称され,慢性骨髄性白血病や発作性夜間血色素尿症など,主として血液疾患の診断や病状経過を追跡する際の重要な臨床検査項目の一つとなっている.LAP値の測定は組織化学的方法に基づいて行われ,通常,標本の染色性を確認するため,検体のほかに正常対照が置かれる.

 ところが最近我々はLAP測定時に,対照に置いた正常成人女性のLAP値が測定日によって著明に変動し,正常対照となしえなかったケースを何度か経験したので,その原因を追究するために正常人のLAP値変動に関する検討を行った.またLAPと並んで臨床検査上,よく実施されるペルオキシダーゼ(PO)活性についての検討も併せ行ったので,その結果を報告する.

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はじめに

 酵素グリシルプロリル・ジペプチジル・アミノペプチダーゼ(以下GPDAP)はペプチドのN末端よりグリシルプロリンを水解遊離するジペプチジル・アミノペプチダーゼの一種であり,1966年米国のNIHでHopsu-HavuとGlenner1)により発見された。

 血清中のGPDAP活性が肝疾患2,3),特に肝癌4)で特異的に上昇し,胃癌2,5),肺癌6),急性リソバ性白血病6)などの癌や慢性関節リウマチ7,8),全身性紅斑性狼瘡8)などの膠原病で低下するという興味ある報告がなされ,酵素GPDAPは最近とみに注目されてきた.

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はじめに

 種々のマイトジェンにより,リンパ球幼若化現象を検査する場合など,培養液にウシ胎児血清(FCS)を添加することは日常的に行われている.ところが,FCSはそのロットによってはリンパ球の分化に抑制的,あるいは増強的な影響を与える1,2).FCSのこのような免疫反応の抑制的,増強的な効果が,他のいかなるマイトジェンも必要とせず50%硫安で塩析され,セファデックスG−200カラムの第一ピークに溶出されるような高分子で起こることを突き止めた.また,この分画の存在下にヒト末梢リンパ球を培養すると,リンパ球は幼若化し,幼若化したリンパ球中には,抗体産生系に添加することにより抑制的に働くT細胞サブセツトが存在することを見いだしたので報告する.

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はじめに

 末梢運動神経最大伝導速度の測定は,末梢神経疾患の電気的診断法の一つとして,知覚神経伝導速度の測定とともに日常検査に取り入れられ広く利用されている.末梢運動神経伝導速度(motor nerve conduction velocity;MCV)の小児の正常値について,我が国での報告は極めて少なく.年齢別の正常値として日常検査に利用できるものは余りない.

 著者らは神奈川県立こども医療センター筋電図室において検査を行った例から,適当と思われるものを取り出して正常値を得るために検討した.

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はじめに

 不活性型レニンの存在は,1971年Lumbers1)により羊水中及び血漿中に初めて認められた.その後相次いでレニン様物質の存在が指摘され,これらレニン様物質の多くは何らかの機序により活性化される不活性型レニンであることが明らかにされた.不活性型レニンの活性化は通常,①酸性処理(acid activation),②低温処理(cryo activation),③トリブシンなどのプロテアーゼ処理による方法が知られている.

 今回我々は,従来法では不可能であったアンジオテンシンI (ANG I)の高濃度測定系を新たに開発して,酸性処理による不活性型レニン及び活性型レニンの測定系を確立し,その臨床応用について検討を行ったので服告する.

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はじめに

 抗原(または抗体)を感作したポリスチレンラテックス粒子と対応する抗体(または抗原)溶液とをスライド上で混合し,凝集の有無を判定するラテックス受身凝集反応は,Singerら1)によってリウマチ因子の検出に応用されてから,数多くの日常臨床検査に広く応用されている2).これらの方法は簡便・迅速に実施しうるが,定性反応であり,定量的目的には倍数希釈した検体について最終凝集価を求める方法によらざるを得ず,それでも半定量検査の域を出なかった.しかるに,沢井ら3)は近赤外光による比濁法によりラテックス凝集反応を定量的に観察しうることを見いだした.この原理を応用したラテックス近赤外比濁法(latex photometric immuno assay;LPIA)の装置が三菱化成工業によって,世界に先がけて開発された.

 今回,我々はこのLPIAシステムを用いたα1胎児蛋白(AFP)測定法について検討する機会を得,満足すべき成績を得たので,その成績について報告する.

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 総コレステロール(TC)の測定法は,大半の施設で酵素法が使用さわているので,酵素法に限定して話を進める.一般に検査データが極端値(0も含む)を示す原因として,①体外での原因(試料,試薬の汚染,手技的誤りなど),②体内での原因(病的変動,薬剤の干渉及びその副作用など)が考えられる.

 極端値の原因が体外で,発生たとする.まず,汚染の場合TCではよほど高濃度に汚染されない限り測定値が0mg/dlになることは考えにくく,他の検体にも同一現象が出ることが多い.手技的誤りの場合,コントロール血清または他の検体にも同様の現象が出ているか,いないかでほぼ見当がつく.いずれにしても,原理の異なる測定法(例えば化学法)で再検すべきである.

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緒言

 近年,血中トリヨードサイロニン(T3)の測定はMa-claganらの化学的測定法1,2)からcompetitive proteinbinding assay(CPBA),そしてラジオイムノアッセイ(RIA)へ変遷し,更にエンザイムイムノアツセイ(EIA)へと発展しつつある.現在広く用いられている血中T3測定法はRIAであるが,アイソトープの半減期,特殊測定機器の必要性及び放射線管理区域の設備,更に廃棄物ならびに放射線障害に対する取り扱い上の問題点がある.EIAではこれらの問題点が解消され,いずれの検査室でも血中T3の測定が可能である.

 今回著者らは,チューブ内壁にT3特異抗体をコーティングし,標識物にペルオキシダーゼ(POD)を用いたcompetitive solid phase EIA法による血中T3測定の機会が得られ,基礎的検討及びRIAとの比較検討を行ったのでそれらの成績について報告する.

検査室の用語事典

凝固・線溶検査 藤巻 道男
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73)セライト;celife

血漿凝固因子である接触因子の第ⅩⅡ因子及び第ⅩⅠ因子,その他にFletchcr因子,Fitzge-rald因子を吸着,活性化させる試剤である.これにはセライト512があり,APTTの測定用試薬としても用いられており,プラテリン・プラス・アクチベーターがある.

細胞診 浦部 幹雄
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73)すり合わせ法;two slide method

2枚のスライドグラスを動かして均一に伸展させて作製する塗抹標本の要領である.細胞診標本として多用される.

質疑応答

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 〔問〕各種のpH (水素イオン濃度)が使える試験紙を使っていますが,どのような化学的変化で色が変わるのでしょうか.

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 〔問〕Ⅰ,Ⅱ型の上昇及びV型の上昇による由来臓器のについては推定が容易ですが,Ⅲ,Ⅳ型などの上昇についての評価はどうなのでしょうか.また胸膜に炎症がある場合,どのようなパターンになるのでしょうか.

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 〔問〕ヘパプラスチンテスト(エーザイ)の測定手技には"採血用ピペットにて血液を正確に0.01ml採り,これを保温調製試薬の液面上,試験管内壁に向けて吹き出し,ピペットを試薬と血液の混液で1回洗う"となっていますが,メスピペットで検体血液を吹き出すと,試薬が蛋白体であるので細かい泡が生じるときがあります.また泡が生じないように混液でピペットの先端を静かに洗うと,その間3秒ほどかかってしまいます.そこで何か良い方法があれば具体的にお教えください.

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 〔問〕(1)最も一般的な術式を御解説ください.

(2) O型血球を使用する場合,交差試験用(ACD加血液)パイロットの有効期限内のものは使用できませんか.

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 〔問〕先日,抗C+抗e抗体と思われる抗体を検出しました.確認のため,C (−) c (+) E (+) e (+)の0型血球を使用し血清2,血球2の割合で1時間室温放置後4℃に1昼夜放置し吸収させましたが,うまくゆきませんでした.抗体の吸収はどのような方法で行うのがいちばん良いのでしょうか.

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 〔問〕市販のトリコモナス培地を使用して培養検査をしていますが,生鮮標本の鏡検で虫体を検出していながら,培養すると増殖しないことがあります.培養法は直接鏡検法に比べ検出率はどのくらいなのでしょうか.またどのようなときに培養法が行われるのでしょうか.培養の注意点と併せてお教えください.

基本情報

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臨床検査
25巻8号 (1981年8月)
電子版ISSN:1882-1367 印刷版ISSN:0485-1420 医学書院

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