負荷機能検査・20
フェロカイネティクス
高久 史麿
1
1自治医科大学内科
pp.893-898
発行日 1981年8月15日
Published Date 1981/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542911309
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フェロカイネティクスとは
我々の血液の中を流れている赤血球は,正常でも120日の寿命しか有していない.そのため生体内では老化した赤血球の網内系組織における除去と,それを補うための新しい赤血球の産生が,お互いにバランスを保ちながら絶え間なく行われている.我々が1日に産生する赤血球の数は約2×1011個に及ぶ大量であるが,新しい赤血球の産生に伴って幼若赤血球内におけるヘモグロビンの合成が常に行われている.その際,ヘモグロビン蛋白の主要構成成分である鉄の骨髄内幼若赤血球への供給が絶え間なく,かつ十分に行われて,初めて赤血球の産生が円滑に行われる.
このように造血組織内で日々行われている赤血球の新生に必須の物質である鉄の供給は,血清中のトランスフェリン蛋白と結合した鉄,すなわち血清鉄を介して行われる,図1に示したごとく骨髄中の赤血球の新生,すなわち幼若赤血球内でのヘモグロビンの合成に使われる鉄の大部分のものは,網内系組織において破壊された老化赤血球からの鉄の再利用という形で供給され,その量は正常人で20mg/日以上にも達している.一方,食物を介して体内に入ってくる鉄分は1日1〜2mgというわずかな量で,汗,糞便などの形で生理的に我々の体内から失われていく鉄量を辛うじて補っているにすぎない.
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