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はじめに
心臓にはさまざまなカリウムチャネルが存在し,それぞれが心臓の活動電位の各時相あるいは,ある特定の生理的条件下にのみで開口し,お互いに役割を分担して複雑な活動電位波形を形成している.その波形は,心拍数や体温などによって微妙に影響を受けながら心臓全体として正常な電気的興奮を起こすが,それらはいずれもチャネルを介して行われている.
カリウムチャネルを開口する主な薬剤を例記すると,β刺激薬はアデニールシクラーゼを活性化し,Aキナーゼを介して遅延整流型外向きカリウムチャネルを活性化し,アセチルコリンはGタンパクを介してアセチルコリン感受性カリウムチャネルを活性化する.また細胞外から投与されたアデノシンはアデノシンレセプターを介してATP感受性カリウムチャネルの開口を促すとされている.
そのなかでも最近ATP感受性カリウムチャネル開口薬としてニコランジル,ピナシジル,クロマカリムなどの薬剤が登場し,臨床的にもこれらの薬剤をみる機会が多くなりつつある.ATP感受性カリウムチャネル開口薬はもともと降圧剤として開発されてきた薬剤であるが,後述するように心筋にも直接作用がある.しかし,心臓に対するこの薬剤の臨床的意味付けは未だ一定していない.特に不整脈の分野においては,催不整脈作用があると考えられたり,あるいは逆に抗不整脈作用を示すと考えられたり意見の分かれるところである.従来のVaughan Williams分類にある抗不整脈薬の多くは,チャネルを阻害することによって効果を発現していたのに対し,開口薬を抗不整脈薬として使用するという発想は比較的新しい考え方である.
ここでは,主にATP感受性カリウムチャネル開口薬がその病態から抗不整脈作用を発揮することが期待されている疾患を挙げ,現在の臨床的あるいは基礎研究におけるそれら薬剤の立場を述べる.
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