Topics Respiration & Circulation
No-reflow現象
赤石 誠
1,2
1慶應義塾大学医学部呼吸循環器内科
2慶應義塾大学中央臨床検査部心機能室
pp.211-212
発行日 1997年2月15日
Published Date 1997/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901429
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■最近の動向 No-reflow現象とは,一定時間の虚血の後に冠動脈を再灌流しても,心筋への血流が回復しない現象をいう.その原因として,①白血球による微小血管の閉塞,②心筋の浮腫や拘縮による微小血管の圧迫,③血管内皮の膨化,④血管の攣縮が考えられている.Klonerらの古典的な犬の実験により,このNo-reflow現象は40分間の冠動脈閉塞では生じず,90分間の冠動脈閉塞で生じることが示されている.また,このNo-reflow現象が生じる部分は,心筋虚血が最も強い心内膜下領域であることも示されている.
現在,No-reflow現象とは,心外膜上の冠動脈に閉塞がないのに微小血管抵抗が高いために冠動脈血流が得られない状態と,心外膜上の冠動脈に閉塞がなく,冠動脈血流が得られているにもかかわらず,灌流域の心筋への血流が得られない状態の両者を指している.いずれも急性心筋梗塞症における血管再疎通後にしばしば認められる現象である.急性心筋梗塞症に対する再灌流療法が,一般的な治療法となっている今日,閉塞している冠動脈をPTCAや血栓溶解療法により再疎通させても心筋への血流が回復しないというNo-reflow現象は,心筋梗塞症の再灌流後の心筋の病態にもたらす意義,治療法を含めて,私たちが真剣に議論しなくてはならない問題の一つである.
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