呼吸と循環 23巻12号 (1975年12月)

巻頭言

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 動脈硬化の予防は人類の大きな悲願の一つといえるものであり,ことに先進国においてはきわめて重要な問題になってきている。

 その具体的な方法については,現在なお種々検討されている段階といえるが,動脈硬化の初期段階と考えられる病理学的変化はすでに小児期より明らかに認められること,動脈硬化症の危険因子の約半分はすでに小児期から存在すること,冠動脈硬化性心疾患はすでに30歳代においてもかなり認められることなどから,その予防を考えるばあいに,小児科年齢のレベルよりスタートしないと間に合わないと考えられることより,小児期からの動脈硬化症の予防というテーマはきわめて重大な意義を持つものと考えられる。

綜説

N2 narcosis 梨本 一郎
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 動物が高圧空気環境にさらされるとき,ある限度をこえるとnarcosisの状態を呈する。ヒトの場合,その徴候や症状は,アルコール摂取やhypoxia,それに麻酔の初期によく似ている。

 約100年前にGreen1)が潜水中の圧縮空気を呼吸することが,ねむけを生じること,また160ftの潜水で幻覚と判断力の低下を発見,その後Paul Bert2)がその著書で大深度でのダイバーのnarcoticな状態を記載して以来,潜水中のnarcosisの危険やその対策について注意が払われてきた3)4)

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 133Xeによる肺の局所的機能検査には,1955年のKnippingi)らの研究に始まる長い歴史がある。当時は,空気に133Xe混合し,体外からの計測によって,局所的肺機能を定性的に分析したが,定量的解析は行なわれなかった。1960年,Dyson2),West3)〜5)らによって15O2,あるいはC15O2の応用がはじめられ,肺内の局所的換気血流について,一連の重要な生理学的知見が得られ,同時に,臨床への応用もこころみられたが,15O2の半減期が,きわめて短時間であり,サイクロトロンの設備を必要としたため,臨床検査法としての普及はみられなかった。1961年,Ball6)らは,ふたたび133Xeに着目し,これを用いて局所的換気血流分布の定量的解析をこころみた。133Xeは,半減期5.27日の物理的に不活性な気体で,37℃で,O2の3倍,CO2の1/7の溶解度を示し,それが放出するβ線は,組織に吸収されるが,0.030MeVのX線,0.081 MeVのγ線は,体外計測に利用され,低エネルギーのため防御が容易である。Ba11らの研究は,臨床応用へと発展し,今日の133Xeによる局所的肺機能検査の基礎を築いた。

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 びまん性汎細気管支炎について解説するまえに,この一つのclinical entity (と筆者は考えている)が,どうして見出され,このような名称を与えられたかの経緯に触れなければならない。

 本誌の読者ならば既に聴き慣れた用語である慢性閉塞性疾患という,閉塞性換気障害を共通の所見とする疾患群をまとめた用語が現われて15年になるが,この用語の起源をただせば,イギリスにおける慢性気管支炎の概念とアメリカにおける肺気腫の概念との政治的(学問的ではない)妥協の産物であったのだと筆者には思われる。なぜなら慢性気管支炎という気道の慢性炎症と,気腔の拡大・肺胞嚢の破壊融合拡張という肺実質の病変とを一つのわくの中で混同されてはたまったものではないからである。しかし,イギリスの慢性気管支炎とアメリカの肺気腫とを結びつけようとする試みは実際にいくつか行なわれたのである1)2)3)。そして,高率にこの両者は同じ病変を表現しているという結論を出した。1958年コロラドのAspenで行なわれた肺気腫のシンポジウムには"chronic bronchitis"syndromeいわゆる"慢性気管支炎"症候群という副題がついている4)

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 地球表面に棲息するすべての生物にとって,大気圧だけが生理的な環境圧力である。大気圧よりも高い気圧環境はきわめて異常な環境条件であり,これらの生物はそのような異常環境のなかにおかれたとき,通常では決して示さない異常な反応現象を呈する。高い気圧環境に関する医学的な研究の究極の目標は,これらの異常な反応現象を適確に捕捉して,これを鍵として生物ないし生命現象の未開の分野の解明に資することにあるであろう。

 しかし一方,異常な環境条件としての高い気圧に対して生体が呈する異常反応現象のなかには,治療医学のなかに導入して臨床医療に応用できるものも少なくはない。そしてこれらを通覧してみると,現在では,主として二つの方向があるように思われる。その一つは潜水病,潜函病などのいわゆる減圧症に対する再圧療法であり,いま一つが高気圧酸素治療法である。

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I.わが国におけるlmpedance plethysmography研究のその後

 無侵襲生体計測法の1つとして,しかも心拍出量連続測定の可能性をもつものとして,Impedance plethysmographyへの関心が急速に臨床家の中に高まって来たこと,そして74年3月までわが国において本法についての検討がどのようになされて来たかについて,本誌22巻9号4頁1)に報告した。かかる趨勢に対し新しい計測法の長所と限界,計測法の基準化などを基礎的に検討する必要のあることが日本ME学会から指摘され,日本ME学会の専門別研究会の1つとしてImpedance Plethysmography研究会が74年4月より発足することも同報告の末尾にふれておいた。その後の研究の進みは本研究会の活動情況に反映されているものと言えよう。

 図1は本研究会参加登録者を75年4月にまとめたものである。日本全国から130余名の方々がその希望をよせられ,研究会発足を支持された。図上クローズドサークルはM (医療関係者)側の,オープンサークルはE (医用電子工学関係者)側の参加者を示し,大きいサークルはそれぞれ1コ10名の登録者を示す。

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 無侵襲生体計測法として,生体の電気特性を利用する方法が考えられている。循環動態の無侵襲計測法としても生体の電気特性を利用する方法が考えられ,測定が容易であり,装置が安価で安全であるなどの利点のために種々の目的に利用されるようになってきた。今後も,このような利点のためにますます広く利用されるようになると考えられるが,正しい測定のためには,ある程度の基礎的知識(きわめて簡単に理解できる程度で十分)を持つ必要がある。本文では心拍出量の測定についての問題点を考えながら,基礎的な問題を解説したいと思っている。電気にあまり親しみのない読者を対象として平易に記述したつもりなので御一読頂きたい。数式などもできるだけ少なくしたので,数式の導き出される過程を御理解頂きたい。

装置と方法

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 周産期における児の低酸素症が脳障害の主要な原因の一つであることはいうまでもないが,逆に酸素の過剰投与に伴う高酸素血症も未熟網膜症やBronchopulmonary dysplasiaなどの原因として重視されている。

 したがって,新生児のintact survivalを目ざすためには,適正な酸素治療を行う必要がある。酸素治療は動脈血の酸素分圧PaO2を指標とすることが望ましいが,新生児においては動脈血のsampllngに技術的な困難を伴うし,動脈管シャント(ductal shunt)に関する問題もある。さらに児のoxygenati。の状態は経時的にかなりの変動を示すので,採血による一時点でのPaO2の測定ではなお理想的とはいい難い。この問題を克服し,酸素治療に伴う後障害を防ぐべく適正な酸素治療を行うためにはpreductalでのPaO2の連続測定が望まれる。

Bedside Teaching

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 動脈管開存症(PDA)が逆短絡を示すとき,合併症のないPDAと異なる点として問題となるのは臨床像の違いと手術適応のきめ方である。臨床像というより診断上の問題であるが,このような例では心雑音は必ずしも特徴的な連続性雑音とはならず,雑音がなかったり,収縮期雑音だけであったりする。ことに最近は拡張期雑音のみがきかれる例が注目され,雑音の成因が論じられている。著者らも先にこのような症例2例を経験し報告したが1,2),そのうち手術治療を行なった1例2)を紹介し,肺高血圧を伴うPDAにおける問題点について述べてみたい。

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 ヒス束電位図(以下HBEと略)の不整脈分析における有用性は広く認められており1),特に房室伝導障害の障害部位の診断には,従来の心電図のみでは知りえなかったより詳細な情報を得ることが可能である2)。著者等はこれまでに24例の完全房室ブロックの症例においてHBEを記録したが,そのうち4例にHの分裂を認め,伝導途絶部位がヒス束内に限局すると考えられる所見を得たので報告する。

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基本情報

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呼吸と循環
23巻12号 (1975年12月)
電子版ISSN:1882-1200 印刷版ISSN:0452-3458 医学書院

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