臨床婦人科産科 75巻8号 (2021年8月)

今月の臨床 エキスパートに聞く 耐性菌と院内感染―産婦人科医に必要な基礎知識

耐性菌総論

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●薬剤耐性菌対策は,国際的にも取り組むべき公衆衛生重要課題の1つである.

●国内でのメチシリン耐性黄色ブドウ球菌およびフルオロキノロン耐性大腸菌の菌血症における死者数は,それぞれ約4,000人と推定されている.

●薬剤耐性菌を拡大させないために,感染症発生動向調査にてリスク管理を行っている.

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●抗菌薬の適正使用とは,不必要な使用を避けつつ,必要な場合には,適切な抗菌薬の選択に加え,適切な投与経路で,量・期間ともに十分に使用することである.

●原因菌や抗菌薬の特性を理解したうえで,検査の意義を十分に吟味し,「念のため」の抗菌薬使用や「とりあえず」の広域抗菌薬の選択を避ける.

●耐性菌が検出された場合には,治療対象となるかどうかの判断に加え,接触予防策などの感染対策が必要となる.

耐性菌各論―診断法と制御・治療戦略

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●近年,市中感染型MRSA(CA-MRSA)が増加傾向にある.

●産婦人科におけるMRSA感染症は,妊娠期に発症する場合もあるが非常に稀であり,産褥期に発症することが多い.

●MRSA感染症に対しての第一選択薬は,現時点でもVCMであると考えられるが,抗MRSA薬の選択に関しては各施設でのMRSAの感受性をもとに使用を検討することになる.

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●バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)は多剤耐性の腸管内常在菌で,VRE感染症の多くは保菌者の排泄物(糞便・尿)を介した院内感染および自己感染が原因である(接触感染・経口感染).

●VRE感染症を診断した際には5類感染症(全数把握)として届けるとともに,ただちに入院患者の保菌状況の調査(検便)と環境の汚染状況の調査を行い,感染対策を徹底する.

●VREには複数の耐性型と菌種があり,主な耐性型はVanA型とVanB型,問題となる菌種はEnterococcus faecalisE. feaciumで,年間100症例程の報告がある.

●治療は薬剤感受性結果をもとにした抗菌薬の投与であるが,E. faecalisではアンピシリンとゲンタマイシンの併用,E. feaciumではリネゾリドやダプトマイシンなどが用いられる.

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●MDRP,MDRAの定義は感染症法の規定と国外の定義で異なる.

●MDRPやMDRAが検出された場合,速やかに感染対策を実施し,治療対象とすべき原因菌か定着菌なのかを考える.

●MDRPやMDRAの国内における治療法は確立しておらず,必ず専門家とともに治療にあたる.

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●クラスA βラクタマーゼが,ペニシリン以外も分解可能なものに変異している.

●世界中で増加傾向にあり,市中で糞便中にESBL産生菌を保菌している.

●病態により,カルバペネム薬を温存して治療する.

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●CREとはカルバペネム系抗菌薬に耐性を獲得した腸内細菌科細菌の総称である.CREには,カルバペネマーゼ産生のCREとカルバペネマーゼ非産生のCREが存在する.カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌はCPEと呼ばれ,必ずしもCRE=CPEとはならない.

●CPEによる菌血症では,カルバペネマーゼ非産生菌によるものと比較して治療予後が悪いと報告されており,治療する際には両者の鑑別が必要である.

●カルバペネマーゼ非産生のCRE感染症に対する治療は,薬剤感受性試験の結果にもとづき抗菌薬を選択し,CPE感染症では併用療法が基本となる.

●CRE,CPEともに感染症治療および感染制御のうえで重要な耐性菌である.薬剤耐性遺伝子がプラスミド上に存在するCPEではより厳重な感染対策が必要である.

産婦人科診療時に耐性菌が検出された際の対応

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●妊婦GBSスクリーニングにおいて,薬剤耐性を有する一般細菌が偶発的に分離されることがある.

●腟内や腸管内に存在する薬剤耐性菌としてMRSA,ESBL産生菌,BLNAR,淋菌などが挙げられる.

●薬剤耐性菌の保菌妊婦は,標準予防策(スタンダード・プリコーション)を心掛け,新生児への水平感染を予防する.

●妊婦GBSスクリーニングで得られた薬剤耐性菌の保菌情報は,母体の尿路感染症,帝王切開または産褥熱の治療,また早期新生児感染症の治療において抗菌薬を選択するうえで有益な情報となる.産科医だけでなく小児科医の間で情報共有が必要である.

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●NICUでは,耐性菌対策においては,ゾーニングや環境管理のルール遵守が非常に難しい.

●CDCからMRSAを含む黄色ブドウ球菌対策のガイドラインが発出され,その概要を紹介した.

●近年NICUにおいても薬剤耐性グラム陰性菌が問題となってきており,今後感染対策や抗菌薬適正使用の知見の集積が望まれる.

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●院内感染だけでなく,市中感染でも耐性菌が検出されるようになっている.

●骨盤腹膜炎や細菌性腟症の原因菌は多彩であるが,問題となる耐性菌は,①基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBLs)産生大腸菌,②メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)がある.今後,カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)やバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の可能性も考えられる.

●耐性菌が検出された場合は,感染症の専門医や抗菌薬適正使用支援チームなどに相談して,感染対策や抗菌薬適正使用に努める.

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●医療関連感染は,何か1つのシステムを作っておけば自動的に予防できるというものではない.ICTの役割や感染対策の必要性を理解したうえで,病院で勤務するそれぞれの職員が感染対策を実施することが必要である.

●医療現場では,スタッフの汚染された手指によって医療関連感染が伝播する.手指衛生は最も基本的で重要な感染対策の1つであるが,医療行為としての手指衛生はこれまで幼少期から培ってきた日常生活における手洗いとは別ものであることをしっかり理解し,新たに訓練し習得する必要がある.

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●環境消毒薬にはアルコール系・次亜塩素酸系・第四級アンモニウム塩系・過酢酸・過酸化水素などがあり,室内環境消毒法として紫外線(UV)照射法や過酸化水素噴霧法がある.それぞれの特徴を理解して,用途に合わせて複数組み合わせて使用する.

●血液・体液などによる目に見える汚染がある場合は,消毒薬効果減弱をきたすことから,消毒効果を最大限に引き出すために消毒前に汚染を取り除く必要がある.

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▶要旨

 子宮頸部神経内分泌癌は稀な腫瘍であるが,急速に進展することに加え,有効な治療法が確立されていないことから,きわめて予後不良である.われわれは遠隔転移を伴う子宮頸部神経内分泌癌に対し,パクリタキセル+シスプラチン+ベバシズマブ併用化学療法(TP+BEV療法)が奏効した症例を経験した.患者は40歳,2妊2産.9か月前に当院で経腟正常分娩により生児を得た.右臀部痛および浮腫を主訴に当院を再診,多発肺転移および多発肝転移を伴う子宮頸部神経内分泌癌ⅣB期と診断された.TP+BEV療法を施行したところ,原発巣,転移巣はいずれも著明に縮小した.化学療法8サイクル施行後に腹式筋膜外単純子宮全摘出術および両側付属器摘出術を施行し,病理組織学的奏効を確認した.術後も同併用療法を継続しており,治療開始後10か月現在,無増悪生存を維持している.

連載 Obstetric News

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 米国食品医薬品局(FDA)は,2021年4月に新しい経口避妊薬(COCs)〔ドロスピレノン(DRSP)3mgとエステトロール(E4)14.2 mgを配合〕を承認した.ミスラ社が開発したNextstellisは,E4を配合した最初で唯一の避妊薬である.

 E4は,弱いエストロゲンステロイドホルモンであり,人の妊娠中にのみ検出可能なレベルでみられる.エステトロールは胎児の肝臓によって独占的に生産される.現在は植物源から生産できる.

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基本情報

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臨床婦人科産科
75巻8号 (2021年8月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

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