臨床婦人科産科 73巻5号 (2019年5月)

今月の臨床 妊婦の腫瘍性疾患の管理―見つけたらどう対応するか

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●妊娠中に見つかった腫瘍性疾患を管理する場合に最も重要なことは,“その疾患自体が妊娠に及ぼす影響”と,“妊娠がその疾患に及ぼす影響”を理解して対応することである.

●妊娠中のCTについては,確定的影響と確率的影響を考慮して行う必要がある.

●妊娠中のMRIについて,単純MRIは全妊娠期間において安全性が証明されつつあるが,ガドリニウムによる造影MRIは注意が必要である.

●妊娠中に見つかった子宮頸管ポリープを切除するかどうかは議論の分かれるところであるが,妊娠中に見つかったコンジローマは治療しておくことがよいだろう.

良性疾患

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●妊婦の成熟囊胞奇形腫の管理は,非妊婦と大きくは変わらない.

●妊娠10週までに,付属器摘出や黄体摘出を行った場合は,プロゲステロンの補充療法を行う.

●茎捻転の頻度は,非妊婦と比較して増加する.

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●妊娠に合併する卵巣子宮内膜症性囊胞の頻度は増加しており,最近では妊娠中に認められる卵巣囊胞のなかで最も頻度が高い.

●子宮内膜症性囊胞は妊娠中,脱落膜化変化・破裂・膿瘍形成・がん化などの多彩な変化を呈することがある.

●著明な脱落膜化変化をきたした場合はがん化との鑑別が難しいが,子宮内膜症性囊胞の妊娠中のがん化はきわめて稀であり,経過観察によって縮小することも期待できる.

●卵巣外の子宮内膜症性病変においては消化管穿孔や血管穿孔をきたした報告もあり,注意が必要である.

●囊胞の有無にかかわらず子宮内膜症合併妊娠においては,前置胎盤,早産などのリスクの上昇が示唆されていることから,これらのリスクに留意した経過観察が必要である.

子宮筋腫合併妊娠 梶山 広明
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●妊娠中の子宮筋腫にみられる最も頻度の高い合併症は変性痛である.症状の多くは一過性であり,日常臨床では保存的管理で対応できる場合が多い.

●胎盤の直下もしくは近接に存在する子宮筋腫には,特に注意を要する.患者およびその家族と,起こりうる合併症の可能性を共有しておく必要がある.

●妊娠中に筋腫核出の手術をすることは,流早産や強出血の可能性が危惧されるため勧められないが,保存療法では改善しない場合,妊娠中に筋腫核出術を行う場合もありうる.

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●妊娠中の良性卵巣腫瘍の手術においては,ルテイン囊胞を除き,6cmを超えたら手術を考慮する.手術時期は妊娠12週以降が望ましい.

●腹腔鏡下手術は開腹手術と比較して低侵襲であり,周術期の合併症や出血量,入院期間も短縮され,周産期予後についても腹腔鏡手術は開腹手術と比較して遜色ない.

●腹腔鏡下手術においては気腹,吊り上げのいずれの方法でも選択可能である.ただし,気腹においては気腹圧を12mmHgまでとし,影響を最小限にするよう留意する.

●増大した子宮により視野確保が困難になったり,マニピュレータを使用できないため,トロッカー穿刺位置の決定や術中体位などは,症例によって事前に十分な戦略を立てて臨むことが肝要である.

悪性疾患

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●薬剤の危険度を評価し,リスクとベネフィットを考慮する.

●どのような腫瘍への化学療法が多いか知っておく.

●個々の薬剤について,ポイントを押さえておく.

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●妊娠中に細胞診異常がみられた際は,漫然と細胞診単独でfollow upするのではなく,コルポスコピーと組織診を併用した管理を行うべきである.

●CIN3までの症例は分娩後高率に病変の消失や減弱がみられる.分娩まで慎重にfollow upしながら待機を基本方針とする.

●浸潤を疑う所見を認めた場合は,妊娠中の子宮頸部円錐切除術を検討する.

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●妊娠中の子宮頸部円錐切除術は,細胞診と組織診,コルポスコピーによる丁寧な観察を行い,その適応を十分に検討する.過剰な切除は避け,必要最小限のcone heightとする“coin biopsy”を心がける.

●早産率低下を目的とした円錐切除術後妊婦に対する予防的子宮頸管縫縮術の有効性を示したエビデンスはなく,個々の症例で慎重に検討する.縫縮術の有無にかかわらず,円錐切除術後妊婦は早産のハイリスク群と認識し管理する.

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●進行期・組織型,胎児の週数などを参考に,母体・胎児の予後,患者・家族の希望を考慮のうえ,治療方針を決定する.

●外科的治療を考慮する際には,特に新生児科医,病理医,麻酔科医との連携が必要不可欠である.

●明確なエビデンスに基づくコンセンサスの得られた治療方針はない.

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●妊娠中に広汎子宮頸部摘出術を行う場合は15〜17週に行うことが望ましい.

●麻酔薬は筋弛緩作用のないプロポフォールを使用することが望ましい.

●絨毛膜羊膜炎などの上行感染を予防する方策の1つとして,頸管を縫合閉鎖している.

妊婦の卵巣がんの管理 秋山 梓
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●妊娠中に診断される悪性腫瘍のうち卵巣がんの頻度は比較的高く,早期で診断される症例が多い.

●胎児の器官形成期である第1三半期での化学療法は推奨されないが,必要時には第2・第3三半期以降で化学療法を行うことは可能であり,TC療法を行うのが比較的安全である.

●妊娠中の卵巣がんに対するエビデンスに基づいた標準治療はない.母体の生命を第一に考え,胎児への影響や家族の意思も勘案して症例ごとに治療を検討していくことが必要である.

妊婦の乳がんの管理 佐々木 浩
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●妊娠関連乳がんは近年の晩婚化,高齢出産の増加により,増加傾向である.

●妊娠関連乳がんは非妊娠乳がんに比較して,腫瘍が大きい,リンパ節転移が多い,ホルモン受容体陰性が多いとされている.

●妊娠期乳がんの治療は,妊娠中期以降に手術・抗がん剤治療を行い,内分泌療法や抗HER2療法は出産後に行うことが勧められる.

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はじめに

 母体血を用いた出生前遺伝学的検査としては,母体血清マーカー検査と母体血中のcell-free胎児DNAを用いた無侵襲的出生前遺伝学的検査(non-invasive prenatal testing : NIPT)が通常想起される.特に国内においては,2013年から臨床研究が始まった13, 18, 21トリソミーを対象とした非確定検査としてのNIPTが注目される.しかし,本来母体血を用いた出生前遺伝学的検査としては,母体血中のcell-free胎児DNAを用いたものだけでなく,母体血中の胎児由来細胞を用いる方法が先行していた.また,母体血中のcell-free胎児DNAは1997年に初めて証明された1)が,これを用いた研究も当初は母体血中に存在しないY染色体上の遺伝子を用いた性別診断1〜3)やRhD陰性母体を対象とした胎児RhD血液型判定4)などが主たる対象であった.

 本稿では胎児染色体異数性以外を対象とした母体血を用いた出生前遺伝学的検査についてまとめてみたい.

連載 Obstetric News

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 満期での陣痛発来前破水(PROM)をただちに遂娩した場合と待機管理した場合で比較したメタ分析で,陣痛誘発は分娩時間の短縮と,絨毛膜羊膜炎,子宮内膜炎,およびNICUの収容率を上昇させずに帝王切開または器械的経腟分娩を減少させることが報告されている.

 待機管理に比べ,陣痛誘発による有益な効果があることから,妊娠37週0日以降のPROM妊婦では,自然陣痛が発来しない場合,一般的にはオキシトシン点滴で陣痛誘発をすべきである.陣痛誘発方法には,オキシトシン,卵膜剝離,人工破膜,乳頭刺激,プロスタグランジンEアナログがある.

連載 Estrogen Series・181

ハワイ大学学生 矢沢 珪二郎
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 ハワイは各種の人種が混合した社会である.

 図1にハワイ大学学生の人種別の変化を示す.そのなかで,日系人の占める割合は全体の学生の8%に過ぎない.

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▶要約

 症例は38歳.がん検診目的で受診した近医にて左卵巣囊腫の指摘を受け,当院を紹介受診.超音波検査・MRI検査にて,単房性で充実部分のない約7cmの左卵巣囊腫を認めた.腫瘍マーカーの上昇もなく,上皮性良性卵巣腫瘍の診断で腹腔鏡下左卵巣腫瘍摘出術を施行.腫瘍壁は非常に薄く,術中破綻.術中迅速診断ではfollicular cystで悪性所見なし.永久標本では,囊胞性顆粒膜細胞腫の診断であった.妊孕性温存希望のため,腹腔鏡下左付属器切除術+大網切除+腹腔内洗浄細胞診+腹腔内観察を追加で行った.追加切除標本では遺残病変なしであった.術中破綻を認め,stageⅠCとなったため術後補助化学療法としてPVB療法を4クール施行.術後3年経過し,再発兆候は認めていない.本症例では充実部分を認めない単房性囊胞性腫瘤であったため診断に苦慮した.腹腔鏡下手術を行うにあたっては予期せぬ境界悪性・悪性腫瘍に遭遇する可能性があることを念頭に置いて手術操作を行う必要がある.

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臨床婦人科産科
73巻5号 (2019年5月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

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