臨床婦人科産科 71巻11号 (2017年11月)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

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●遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)は,乳がんの約5%,卵巣がんの約10〜15%を占め,決して珍しい疾患ではない.

●適切な拾い上げ〜カウンセリング〜BRCA検査によりHBOCを診断することは,HBOC患者・家系員に対するサーベイランスや予防手術の提供を可能とする.

●HBOC卵巣がんは進行期の高異型度漿液性癌が多いが,プラチナ感受性が高く予後が良い傾向にあり,PARP阻害薬の効果が期待できる.

●PARP阻害薬の使用も視野に入れ,HBOCに対するカウンセリングやBRCA検査を行える体制,もしくは検査可能な近隣施設との連携体制を整える必要がある.

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●がん治療のコンパニオン診断としてBRCA遺伝学的検査が施行される時代となった.

●遺伝性腫瘍の遺伝学的検査として今後multi-gene panel検査が主流となるだろう.

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●分子標的治療薬では感受性を予測するバイオマーカーが重要である.

●DNA修復にかかわる特定の遺伝子(BRCA1/2やミスマッチ修復遺伝子など)の生殖細胞系変異は,分子標的治療薬のバイオマーカーとなりうる.

●PARP阻害薬と免疫チェックポイント阻害薬は,今後の臨床応用が期待される分子標的治療薬である.

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●単一遺伝子病に対する着床前遺伝子診断(PGD)は,欧米においてはすでに確立された医療サービスと見なされている.さらに新しい技術の導入により,近年は幅広い疾患や目的の異なるPGDに対するall in oneの診断システムの開発が進んでいる.

●わが国におけるPGDは,臨床研究としての実施が義務づけられるなど,今なお限定的な状況にある.

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●世界では,①女性の高年齢,②反復流産,③着床障害,④重度の男性不妊,⑤卵巣機能低下,⑥抗がん剤や放射線療法などのがん治療後,⑦染色体異常の妊娠の既往などがPGSの対象とされている.

●胚の染色体を調べるための材料は,分割期胚の割球ではなく,胚盤胞のtrophectoderm(胎盤になる部分の細胞)が使用されることが多くなった.

●分析法はaCGH(array comparative genomic hybridization)法から,next generation sequencing(NGS)が主流となった.

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●生殖医療における遺伝カウンセリングの担当者には,幅広い知識が求められる.

●最新で正確な情報を整理して提供することは,大きな心理支援となる.

●生殖医療と遺伝医療の専門家の連携が有意義.

周産期医療

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●発達期の環境の変化が,成長後の生活習慣病の発症リスクに影響を及ぼすというdevelopmental origins of health and diseases(DOHaD)学説が提唱されている.

●ゲノムに施されたゲノム以外の情報であるエピゲノムならびに環境因子によるエピゲノムの変容がDOHaD学説の具体的なメカニズムとして注目されている.

●エピゲノムの変容として,DNAのメチル化,クロマチンのリモデリング,non-coding RNA,エピジェネティックな不均等性(asymmetry)などが知られている.

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●NIPTは臨床検査として世界的に普及しているが,どのように行われているかはそれぞれの国の関連学会の指針や医療政策・診療体制によって異なる.

●NIPTの検査手法上の限界は,母体血漿中に含まれるのは胎盤由来cfDNAであること,またcfDNAを胎盤由来と母体由来に物理的に分離して解析できないことに由来する.

●NIPTによって胎児染色体の異数性のみならず微細構造異常の検出も可能で,さらに単一遺伝性疾患を検索する手法・アルゴリズムの開発が進んでいる.

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●胎児構造異常から遺伝的背景をもつ先天異常症が疑われる場合には,胎児DNAを対象にした網羅的ゲノム解析により原因が同定できる可能性がある.

●網羅的ゲノム解析にはマイクロアレイ染色体検査や次世代シーケンス解析が用いられるが,これら解析技術の胎児ゲノム解析での特性や限界を理解して実施する.

●網羅的解析では解析目的以外の二次的所見が得られることがあり,疾患や検査に関し十分な遺伝カウンセリングを行ったうえ,インフォームド・コンセントを得て実施する.

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●染色体異常を対象とした出生前遺伝学的検査には複数の選択肢があり,クライアントが各検査を理解して納得した選択ができるよう,正確な情報提供と意思決定の支援が求められる.

●出生前遺伝学的検査は,望まない結果であった際のことをクライアントが事前に考えておく必要のある検査である.

●胎児染色体異常が診断された場合,産婦人科医のみで遺伝カウンセリングを行うことは困難であり,小児科医など他領域の医師や認定遺伝カウンセラーと連携して行う.

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はじめに

 超緊急帝王切開の定義に明確なものはないが,子宮破裂,常位胎盤早期剝離,臍帯脱出,胎児徐脈など母児の生命に危険が切迫していると判断した場合に行われる帝王切開のことである.

 2010年に厚生労働省より提出された周産期医療体制整備指針では,「地域周産期母子医療センターは,帝王切開が必要な場合に迅速(おおむね30分以内)に手術への対応が可能となるような医師(麻酔科医を含む)およびその他の各種職員の配置が望ましい」とされており1),当院でも超緊急帝王切開時は,30分以内の児娩出を目標にしている.超緊急帝王切開術の円滑な遂行には各部署間の連携協力が必須であり,産科医・麻酔科医のみならず,新生児科医や産科病棟・手術室・NICUスタッフの協力が不可欠である.

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はじめに

 分娩時に母体生命を脅かす大量出血は妊産婦300人に1人の割合で発症する.2010年に「産科危機的出血の対応ガイドライン」が策定され,2017年に「産科危機的出血の治療指針2017」として改定された.産科危機的出血宣言後,RCC/FFPを投与開始し,出血の原因検索・子宮圧迫縫合・interventional radiology(IVR)・子宮摘出などを検討するプロトコールになっている.しかしながら,急速に進行したDIC発症後の原因検索は容易ではないことも多い.

 今回,「弛緩出血および子宮頸管裂傷」の診断で一次施設から搬送となり,最終的に子宮動脈塞栓術が必要であった症例を経験したので,産科危機的出血に対するIVRの適応と併せて報告する.

連載 Estrogen Series・165

精管結紮術 矢沢 珪二郎
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 テネシー州のホワイト郡では,郡内の刑務所で刑期を務める囚人たちに,避妊手術と交換に,刑期を軽減することを提案した.

 男性囚人には精管結紮術を,女性囚人には避妊手術あるいは避妊用インプラントであるNexpranonの皮下挿入と交換に,刑期を軽減することにした.この措置による刑期の軽減は,男女ともに30日であった.

連載 Obstetric News

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 3回に分けて,妊娠中の経腟超音波による子宮頸管長(TVU CL)全例スクリーニングの有益な効果と問題点を取り上げる.

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▶要約

 当院で1か月健診を受けた母親に,産褥2週間ごろに「悩んだり,いらいらしたりした」ことの理由についてアンケート調査を行ったところ,過去の報告と違って授乳以外の問題が多かった.また,約20%の母親は「孤独感」や「理由のわからないこと」で「悩んだり,いらいらしたりした」と回答していたことから,この時期から精神科医等の介入が必要な母親が少なからずいることが示唆された.

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基本情報

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臨床婦人科産科
71巻11号 (2017年11月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

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