臨床外科 45巻3号 (1990年3月)

特集 新しい手術材料—特徴と使い方

バイパス手術の材料 岩井 武尚
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 バイパス手術対象例は増加の—途をたどっているが,バイパス材料にも新工夫を中心に変化が生じている.体内に埋め込むバイパスでは動脈間の非解剖学的バイパスや静脈間バイパスの材料として外側をリングやスパイラルで補強した人工血管が広く使用されるようになった.また,人工血管の器質化や抗血栓性を補強するために内皮細胞seedingやヘパリン化などのアイデアが現実のものとなりつつある.静脈弁を破壊して太い方から細い方へ動脈血を流せるようにしたin-situグラフトは下肢の血行再建では重要な位置を占めるようになった.一時的バイパス材料としては,ヘパリン親水性材料をコーティングしたチューブや遠心ポンプの利用が全身ヘパリンの使用量を極度に抑えることに成功している.

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 消化器外科手術におけるドレーンの使用目的には,治療的ドレーン(therapeutlc drain),予防的ドレーン(prophylactic drain),情報ドレーン(information drain)の3種があり,われわれは日頃これらの手段を目的に応じ使いわけ治療にあたっている.ドレーンの材質や構造も用途に応じて新しいものが登場してきているが,本項ではわれわれが日常臨床で使用しているものを中心に取り上げた.われわれが繁用するドレーンの材質はシリコーンラバー製のものが多く,ペンローズドレーンやデュープルドレーン,トリプルルーメンカテーテルなどである.今回はこれらドレーンの特徴と留置および管理方法を症例を呈示して述べた.

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 腹腔内手術時に使われる各種チューブのうちいくつかを紹介した.胆道手術に際しては古くから使われているT-tubeの材質選択につき述べたが,腹腔内に位置する部分はラテックス製材が推奨される.その他,多目的に使用可能なRTBD-tubeについて述べたが,有効簡便で各種手術に使用可能で今後の臨床応用の幅が広がるものと思われる.

 膵臓手術に必要な膵管チューブには金属針を接続することで有用性が増した.肝臓癌治療に用いられる動注用ポンプ,また超音波装置を利用した肝亜区域切除に有用な門脈閉塞用バルーンチューブを紹介した.腹水治療にはDenver Shuntが有用である.

局所止血剤 中村 紀夫
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 局所止血剤として多くの薬剤が用いられているが,最近開発された2種類の局所止血剤を中心として述べた.いずれも止血機構のなかで一次止血および二次止血の機序を利用したもので,従来の止血剤よりも優れた臨床成績が得られている.局所止血剤の位置づけは,圧迫,結紮,縫合などの基本的手技を十分に駆使し,なお止血が困難な場合や肝・膵などの実質臓器からのoozingで他に方法がない場合に用いるべきものであり,あくまでも補助的材料としての認識が必要である.さらに,それぞれの局所止血剤の特徴を十分に把握したうえで,どれを選択するかを決める必要がある.

接着剤 松田 武久 , 中島 伸之
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 優れた接着機能を有する生体組織接着剤は従来の吻合技術を補強したり,あるいは新しい接合技術を提供するものと期待される.本稿では,著者らが数年前より開発した合成高分子系接着剤を紹介する.宿主血管との力学的適合性を設計概念に組込んだ弾性接着剤であり,接着機能性と組織再修復性に極めて優れている.

縫合糸 小林 寛伊
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 最近臨床に供されている縫合糸の種類は急増しており,これらの適切な適応を決定するためには,各々の物理的特性および組織内における強度変化などを十分理解し,対象とする組織に適した縫合糸を選択しなければならない.そのような資料となる幾つかの特徴について,これまで検討を続けて来た結果に言及したい.

不織布 永井 勲
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 織らない布である不織布の開発は,材料革命の一つとも言われている,不織布の製造工程は,単純で,人手を多く要することなく大量に製品を作り得るため,ディスポーザブルとして用いるのに適している.また,さまざまな材料を自由に組み合わせて作り得て,しかもいろいろな製造方法があるため,目的に合わせて多彩な特徴のある布を作り得る.これらの特徴はいろいろな専門分野で利用されることになる.

 医療の場でも,不織布の使用は有利な点が多いが,特に手術に際して使用される材料は,血液や体液で汚染されるため,ディスポーザブル製品の使用が望まれる.今後も不織布製品の使用頻度は増加する傾向にある.手術に際して使用される個々の不織布製品について,その長所短所を含めて言及する.

カラーグラフ Practice of Endoscopy

食道内視鏡シリーズ・ⅩⅧ

食道の異物 遠藤 光夫
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 従来,食道異物の摘出は耳鼻科医によって主に行われてきたが,ファイバースコープ,電子スコープによる内視鏡検査の普及で,内科,外科医も遭遇する機会が増えてきた.

一般外科医のための形成外科手技・15

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はじめに

 現在では手術用顕微鏡が広く普及し,ほとんどすべての外科系領域で広くマイクロサージャリーが応用されている.マイクロサージャリーは,その扱う組織や外科手技の相違により次のごとく分類される.①手術用顕微鏡下に組織の剥離をする.(microsurgical dissection) ②手術用顕微鏡下に微小血管を吻合する.(microvascular surgery) ③手術用顕微鏡下に微小神経を縫合する.(microneuro-surgery)

 このうちでmicrosurgical dissectionは,最も広く行われている手技で,脳神経外科における脳腫瘍の剥離,耳鼻咽喉科における鼓室形成術,眼科における白内障や角膜などの手術に利用されている1)

イラストレイテッドセミナー 一般外科手術手技のポイント

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食道手術に必要な周辺臓器との関係

心の行脚・6

辞書の有難さに思う 井口 潔
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 九州大学を定年のあと勤めていた佐賀県立病院もまた定年で辞めて,今や晴れて管理責任から解放された自由の身となり,日頃の思索をまとめる絶好の機会が到来した.ものを書くからには,しっかりした辞典を座右に備えておくのが武士のたしなみと,岩波の広辞苑の机上版と小学館の古語大辞典を求めた.二つ合わせると7キロの重さである.

 さて,ふと思って辞書を引くと,意外な知識に出合うことが時折ある.「稽古」を引いたときには眼を洗われる思いがした.

胆道手術の要点—血管処理からみた術式の展開・8

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はじめに

 腫瘍が左肝管に偏在して浸潤している例は多くなく,むしろ左門脈幹が腫瘍浸潤あるいは圧迫により閉塞しているために本術式が適応されることが多い.また肝右葉より切除容積が小さく,耐術性が高いことは利点の一つともいえる.しかし胆管切除の範囲に限界があり,また胆管枝を深く追求して切除した場合の再建はやや困難である.

胆道手術の要点—血管処理からみた術式の展開・9

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はじめに

 上部胆管癌に対する手術術式をこれまで4回に分けて述べてきたが,本稿ではそれらを補足するため各手技の要点を述べる.上部胆管癌の手術は腫瘍の拡がりや肝予備機能の如何によって非定型的切除,たとえば肝中心二区域切除なども行われるが,参考文献を参照されたい1)

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はじめに

 各種悪性腫瘍の所属リンパ節には,稀にサルコイド様肉芽腫(サルコイド反応)を認めることが知られている.これらの多くは,進行癌において認められ,早期癌ではあまり報告がない.著者らは,早期胃癌にサルコイド反応のみられた症例を経験し,本邦での早期胃癌における合併例6例とともに,臨床病理学的検討を加えたので報告する.

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はじめに

 α-fetoprotein(AFP)は典型的な癌胎児性蛋白のひとつであり,Tatarinovら1)がヒトの原発性肝癌に見つけだして以来,原発性肝癌や胎児性癌の腫瘍マーカーとして臨床的に診断および治療効果の判定に用いられてきた.一方,これらの癌以外にもAFP値の上昇が認められる場合があるが,多くは胃癌であり,胆嚢癌では稀とされている2).今回われわれは,AFPが高値を示し,免疫組織化学染色により腫瘍細胞にAFPの局在を証明した胆嚢癌症例を経験したので,本邦報告例の文献的考察も加えて報告する.

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はじめに

 高脂血症と膵炎の関連は欧米では以前より注目されていたが,その臨床像・機序が浮き彫りにされ始めたのは近年になってからである.両者の関係としては,高脂血症が膵炎の原因になる場合と,膵炎によって二次的に高脂血症が起こる場合がある.最近になって,本邦でも高脂血症によると思われる膵炎が報告され始めた.最近,高脂血症による重症膵炎の1例を経験したので報告する.

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はじめに

 von Recklinghausen病1)(以下R病)における神経線維腫の中には表皮直下よりび漫性に増殖し,時には筋層まで浸潤して巨大な腫瘤を形成するpachyder-matocele2)(以下本症)と呼ばれるものがある.われわれは13歳時腫瘍内出血のため緊急手術を行い,以後およそ3年毎に腫瘍部分切除術を行っている20歳男性の症例を経験したので,本症の外科的治療の問題点を中心に考察を加え報告する.

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はじめに

 腸回転異常症は,胎児期の腸管回転過程の異常により起こる先天異常であり,その回転の停止した段階により分類されている.一般に新生児乳児期に多くみられ,年長児や成人発症例は比較的稀である.今回われわれは,16歳男性の中腸軸捻を合併した腸回転異常症を経験したので報告する.

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はじめに

 皮膚筋炎は悪性腫瘍を合併する頻度の高い自己免疫疾患であり,両者の合併例の予後は不良とされている.一方,Dukes A直腸癌の予後は一般に良好であり,根治手術後短期間で再発することは稀である.今回著者らは,根治手術後4ヵ月で局所再発により死亡した皮膚筋炎合併Dukes A直腸癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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はじめに

 大腸癌は他の消化器癌に比し局所の進展傾向が強いため,他臓器浸潤を伴う進行癌が多く,癌病巣周囲の随伴性炎症を伴うことが多いとされている.しかし,他臓器への瘻孔形成例の報告は稀である.

 最近,われわれはS状結腸癌が子宮に瘻孔を形成し,内子宮口が閉鎖していたため子宮留膿腫となり,内圧の亢進により子宮が破裂した稀な症例を経験したので,若干の考察を加えて報告する.

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はじめに

 閉鎖孔ヘルニアは術前診断が困難でイレウスを起こし,開腹術によって診断される場合が多い.われわれは最近,イレウス症状を起こした3例をヘルニオグラフィーにより両側閉鎖孔ヘルニアと術前に診断し,鼠径法および大腿法による手術によって治癒せしめた.ヘルニオグラフィーは本症の診断,治療に非常に有用であったので報告する.

基本情報

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臨床外科
45巻3号 (1990年3月)
電子版ISSN:1882-1278 印刷版ISSN:0386-9857 医学書院

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