臨床外科 42巻13号 (1987年12月)

特集 外科的感染症と抗生物質の選択

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 過去1年半の間に15種の新しい化学療法剤が発売となつた.特に注目されるのは,特異な化学構造と抗菌スペクトラムを有するカルバペネム(imipenem),モノバクタム(aztreonam)や,βラクタマーゼ阻害剤のsulbactamの登場である.また,第3世代セフェムにも半減期の極めて長いceftriaxone,抗緑膿菌作用の優れたceftazidime,in vivo効果の優れるcefpimizole,黄色ブ菌にも良好なMICを有するcefzonam,特異な抗菌作用機序を有するcefminoxなど,特徴のあるものが多い,さらに,経口用のペニシリン,セフェム,マクロライド,新キノロンにも改良の加えられたものが臨床応用されている.

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 リムルステストは患者の流血中エンドトキシンを検出する方法である.本法が陽性となる症例は当然ながらグラム陰性菌感染が最も多いが,その意味は単に起炎菌の診断の範囲にとどまらない,むしろ重症度・予後と相関があり,エンドトキシン血症という一つの実体(entity)を示すものといえる.

 現行のリムルステストはいくつかの改良を要する点を有している.その第一はライセートからfactor Gを除去することであり,第二点は血中インヒビダー除去法の確立である.

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 腹膜炎の治療は外科的療法が優先される.化学療法は全身性感染への波及を防止することが第1目標であり,適切な外科治療と全身管理が行われて初めて,化学療法の効果が期待される.腹膜炎の起炎菌は穿孔部位によつてある程度一定の傾向が認められる.例えば,胃・十二指腸穿孔ではグラム陽性菌が,大腸穿孔ではグラム陰性菌,特にE.coli, Klebsiella, P.aerrginosa, B.fragilisが多い.したがつて,菌不明のまま治療を開始せざるをえない場合には,これらのことを参考にして抗生剤を選択する.薬剤の投与は静脈内投与が主体であり,腹腔内投与は補助療法である.抗生剤の投与量,投与期間は病態によつて自ずから異なってくるが,乱用は避けるべきである.

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 急性胆嚢炎や急性胆管炎の初期治療は,合併症に対する全身管理と起炎菌に対する適切な抗生剤の選択と同時に,胆汁うつ滞に対する緊急胆道ドレナージが劇的効果を発揮する,今回,自験胆石手術1,779例を対象に急性胆嚢炎,急性胆管炎の初期治療を検討した.入院時の胆道感染例は359例(20.2%)である.年齢別には高齢者が多く重症頻度も高い.胆汁中の細菌検出では,グラム陰性桿菌E.coli, Klebsiella, Enterobacterが60%を占め,嫌気性菌Clostridium perfringensが増加している.起炎菌に対する薬剤感受性からみると,第2,第3セフェム剤かPIPC等のβ—lactam剤の撰択が有効である,初期治療としての胆道ドレナージは,急性胆嚢炎39.0%,急性肌管炎26.2%で,高齢者では80.7%の施行率である.

外傷・熱傷後感染 鈴木 宏昌 , 小林 国男
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 外傷は局所の感染防御能を破壊するばかりでなく,多発外傷や広範囲熱傷などの重症外傷では免疫能など全身の感染防御能が種々の程度に障害されている.また,病原体の特徴としては常在菌による創部感染以外に外来性の細菌による感染があり,さらに重症外傷患者では免疫能の低下による院内感染が問題である.

 外傷に伴う感染症の治療は,異物の除去やデブリドマンによる局所の物理的な細菌除去とともに,障害された全身の感染防御能に対する処置(栄養管理や免疫療法)が重要である,受傷部位と病態によつて起因菌を予測することはそれほど困難ではなく,抗菌剤の投与は感受性ある薬剤を必要最小限投与する.

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 東北大学抗酸菌病研究所外科において,1981年1月から1986年12月までに行われた手術1,262例の中から,重篤な肺合併症を生じた17例を対象として,その背景因子,治療,予防対策について考察した,術前肺機能検査成績では,明らかな閉塞性障害が認められ,MVV,▽50,▽25の値が術後肺合併症の予知因子となることが再確認された.喀痰細菌検査では術前と術直後の起菌炎が一致しない症例が多く,術前頻回の検査はもちろんのこと,摘出標本からの培養も考慮にいれた術中からのきめ細かな検索の必要性が痛感された,抗生剤の選択は,起炎菌の同定を基本とし,術直後から抗菌スペクトルの広い抗生剤を2剤以上併用することが望ましいと考えられた.

尿路感染症 岡田 敬司
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 尿路感染症起炎菌として,東海大学付属病院外来,入院での尿中検出菌の頻度を述べた.外来,入院とも菌種の多様化がみられ,とくに入院ではGPCの増加が著明で,第3世代セフェム使用の影響が大きいと思われた.次に尿路感染症の診断,治療について,最近4年間に市販された抗菌薬を中心にまとめた.新しい系統の薬剤として,経口では新キノロンとβ—lactarnase inhibitor+PC系薬剤,注射ではAZT,IPM/CSなどが登場したが,それに伴い種々のadverse effectが問題となつている.特に新キノロンでは併用薬にふれ,これら薬剤の使用にあたつては,種々の問題もあることを認識したうえで使用せねばならないことを述べた.

術後感染・創感染 由良 二郎
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 術後感染は優れた抗生物質の開発にもかかわらず,今日においてもなお問題となつている.1980年代になつてグラム陰性桿菌を対象にいわゆる第三世代といわれる薬剤が使用されるようになつて,相当の効果が得られてはいるが反面,グラム陽性球菌,とくに黄色ブドウ球菌,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌による感染が増加傾向にあり問題となつてきた.このたびこれらにも対処し得る新しい薬剤として,セブゾナム,フロモキセフ,イミペネムなどの第四世代ともいわれる強力な抗生剤が開発された.またモノバクタムであるアザクタムとセファマイシン系のセフミノックスも出現した.これら薬剤の術後感染に対する有用性とその使用法について述べた.

カラーグラフ Practice of Endoscopy

胆道内視鏡シリーズ・3

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1.瘻孔造設ならびに作成法

 術後胆道鏡は,いずれの場合も,術後3週間を待つてチューブを抜去し,その周囲に完成した瘻孔を介して行われる(図1).留置するチューブは16Fr.以上,できれば18Fr.のものを使用する必要がある.

イラストレイテッドセミナー 一般外科手術手技のポイント

Lesson7 虫垂切除術 小越 章平
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 さあ,今回はアッペに行こう。はじめての開腹術であり,自分の初アッペの興奮は今でも鮮明に覚えている。しかし,手術そのものは,当時の助教授が前立ちしてくれたが,「ここやれ,ここしばれ」といわれながらあっという間に終ってしまい印象がうすい。我々の入局した頃はアッペは非常に多かった。しかし,現在は抗生物質の発達と食生活の変化もあると思うが昔ほど症例は多くない。そのためにもチャンスを十分に生かして勉強してほしい。

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 胃全摘術後の栄養障害は当然発生するものとしばしば考えられている.しかし,その発生頻度・原因は議論のあるところである.術後栄養障害の原因として,摂取カロリー不足,細菌異常増殖,十二指腸バイパス手術などによる膵酵素の相対的不足,小腸粘膜障害,小腸通過時間短縮などがあげられている.しかし,これらは検討方法の相違によると考えられる点もあり,研究の中には異なる再建方式を同時に検討しているものもある.

 今回の研究では1980年6月より1982年7月までに胃全摘とRoux-en-Y再建をうけた胃癌患者25例を対象とした.さらに,TNM分類でM1の患者と観察期間中の死亡例を除くと,対象は術後1〜3年になる47〜71歳の12例となつた.7例はリンパ節転移陽性であり,そのうち4例に2〜12ヵ月の抗癌化学療法が施行されていた.3ヵ月毎に追跡し,食事指導を行い摂取カロリーは男2,500Cal,女2,000Calとした.また,5日間の入院により栄養状態,小腸吸収能,空腸組織検査を行つた.血清アルブミン値,血清コリンエステラーゼ,血清総鉄結合能,腕筋周径,上腕三頭筋部皮膚皺襞厚を測定して,2項目以上の異常を栄養障害とした.小腸吸収能検査として糞便中脂肪量,ブドウ糖負荷試験,Dキシロース試験,ビタミンB12吸収試験を施行した.さらに,内視鏡下に食道空腸吻合部より約20cmの空腸生検を行い,HE,PAS染色標本について絨毛,陰窩,杯細胞を定量的に観察した.

Caseに学ぶ 一般外科医のための血管外科応用手技・7

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はじめに

 上大静脈に浸潤し,その切除再建を必要とする縦隔腫瘍はほとんどが胸腺原発でその大部分は胸腺腫である.上大静脈症候群の原因疾患中,最も多いのは肺癌で,縦隔腫瘍がこれに続くが,肺癌ではこのような場合手術適応とならない症例が多いのに対し,胸腺腫では遠隔転移が少なく,進行例でも局所切除,放射線治療の併用によつて長期生存が得られるため,上大静脈切除再建を含めて積極的に手術が施行されている.

 上大静脈浸潤のある悪性胸腺腫の1手術例を呈示し,上大静脈再建を中心に手術手技上の問題点について述べる.

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はじめに

 従来よりわれわれは,胃癌治療成績の向上という目的には治療法の改良も重要であるが,第一義的には可能な限り初期の段階の胃癌を発見して治療を開始する,すなわち「early detection, early resection」が最上であるという方針で診療を行つてきた.それゆえ近年における当施設における切除胃癌中の早期胃癌の割合は50%を越え,また5mm以下の微小胃癌の数もこの5年間で倍増している,とはいつても早期胃癌の手術後の追跡調査ではやはり再発死亡する症例1)が存在している.今回は早期胃癌全体と比較することにより,どのような症例が再発危険性が高いかの検討を行つてみた.

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はじめに

 後腹膜腫瘍の多く(80〜90%)は悪性リンパ腫や種々の肉腫などの悪性腫瘍であつて,嚢胞性腫瘍は全体の3〜6%を占めるにすぎず,その大部分の症例が良性嚢腫と報告されている1-3).最近,筆者らは後腹膜嚢腫の臨床診断で嚢腫摘出術を行い,術後の病理学的検査にて卵巣の漿液性嚢胞腺腫に類似した組織像を示す漿液性嚢胞腺腫と診断された後腹膜嚢腫の症例を経験した.このような症例は極めて稀で,かつ嚢腫の発生起源を検討するのに興味ある例と考え,文献的考察を加え報告する.

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はじめに

 心臓は放射線照射に対して影響を受け難い臓器1)であるが,心のう・心筋・冠動脈に関する損傷の報告2-4)はみられる.胸部放射線治療後,刺激伝導系障害が完全房室ブロックに陥り,ペースメーカー移植を要した症例報告5-8)は極めて少ない.

 われわれは乳癌手術後,放射線治療を行い,16年後に完全房室ブロックに陥り,ペースメーカー移植術を行つた症例を治験したので報告する.

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はじめに

 漏斗胸は先天性奇形として分類されており遺伝的素因濃厚な疾患であるが,その成因については諸説があり決定的なものはない.

 今回私どもは,一家系に4世代にわたり発症した漏斗胸を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

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はじめに

 脾血管腫は非常に稀な疾患とされ,1987年6月まで本邦で47例の報告1)を散見するにすぎない,われわれは最近,症状が全くなく,検診にて発見され,手術を行つた本症の1例を経験したので,本邦報告例に若干の文献的考察を加えて検討する.

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はじめに

 Von Recklinghausen病(以下R病と略す)は皮膚および末梢神経に発生する神経線維腫,café au lait spotを主徴とし,骨格系,中枢神経系などに多彩な症候を呈する遺伝性疾患であるが,その合併症の1つとして悪性神経鞘腫の発生がある,われわれはR病に伴つた頸部迷走神経由来の悪性神経鞘腫を経験したので報告し,その臨床像,診断などについて若干の考察を加えた.

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はじめに

 食道アカラシアはその経過中正常人より高率に食道癌を合併するといわれているが,アカラシア自体が比較的頻度の少ない疾患であるため,一般臨床医が癌合併例に遭遇することは稀である.われわれはその稀な食道アカラシアに合併した食道癌の1切除例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

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はじめに

 回盲部に発生する非特異性潰瘍は,その病因・病態について不明な点が多く,しばしば診断に難渋する.

 最近われわれは,長期間,腸型Behcet病と診断,治療されてきた単純性非特異性潰瘍の1例を経験したので報告する.

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基本情報

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臨床外科
42巻13号 (1987年12月)
電子版ISSN:1882-1278 印刷版ISSN:0386-9857 医学書院

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