文献抄録
胃癌胃全摘後の栄養状態,小腸機能と空腸粘膜組織形態
片井 均
1
,
石引 久弥
1
1慶応大学医学部外科
pp.1975
発行日 1987年12月20日
Published Date 1987/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407209887
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胃全摘術後の栄養障害は当然発生するものとしばしば考えられている.しかし,その発生頻度・原因は議論のあるところである.術後栄養障害の原因として,摂取カロリー不足,細菌異常増殖,十二指腸バイパス手術などによる膵酵素の相対的不足,小腸粘膜障害,小腸通過時間短縮などがあげられている.しかし,これらは検討方法の相違によると考えられる点もあり,研究の中には異なる再建方式を同時に検討しているものもある.
今回の研究では1980年6月より1982年7月までに胃全摘とRoux-en-Y再建をうけた胃癌患者25例を対象とした.さらに,TNM分類でM1の患者と観察期間中の死亡例を除くと,対象は術後1〜3年になる47〜71歳の12例となつた.7例はリンパ節転移陽性であり,そのうち4例に2〜12ヵ月の抗癌化学療法が施行されていた.3ヵ月毎に追跡し,食事指導を行い摂取カロリーは男2,500Cal,女2,000Calとした.また,5日間の入院により栄養状態,小腸吸収能,空腸組織検査を行つた.血清アルブミン値,血清コリンエステラーゼ,血清総鉄結合能,腕筋周径,上腕三頭筋部皮膚皺襞厚を測定して,2項目以上の異常を栄養障害とした.小腸吸収能検査として糞便中脂肪量,ブドウ糖負荷試験,Dキシロース試験,ビタミンB12吸収試験を施行した.さらに,内視鏡下に食道空腸吻合部より約20cmの空腸生検を行い,HE,PAS染色標本について絨毛,陰窩,杯細胞を定量的に観察した.
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