臨床外科 21巻3号 (1966年3月)

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 傷病者の緊急輸送に関連して.従来体験してきたいろいろな条件のなかに,ときとして.陸上輸送を困難にする場合が多かつた.そこでこの問題を解決するために,当然「傷病者の航空輸送」という計画が起こつてくるのである.

 改めていうまでもないが.年々激しさを増してゆく交通事情,複雑な都市構成と人口の流動,反面陸上輸送の中断される辺地,離島等の救急対策を考えて見ると,平面的な輸送活動の他に,立体的活動を計画編成し発展させてゆくことは,これから要求される救急活動の過程において,重要な課題であるといえよう.

グラフ 外科病理アトラス

乳腺症 増田 強三
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 乳腺症Mastopathieは1927年にMoszkowiczによつて命名された乳腺の疾患であるが,すでにそれ以前にも乳腺に嚢腫性の変化あるいは,上皮細胞の増殖や委縮像,細胞浸潤,汗腺上皮への化生等の多彩な変化があらわれる疾患のあることをCooper等が報告し、同義語と目される病名は50以上にも及んでいる.最近米国あたりはCystic Disease of theBreastという病名が多く用いられているようである.本症の本態に関しては、古来多数の意見があるが,大別すると次のようである.

 1)腫瘍性変化とみなすもの 2) 慢性炎症変化とみなすもの 3) 退行了性変化とみなすもの 4) 寄形性変化とみなすもの 5) 以上の諸変化を総合して生殖腺の機能失調に起因するものとして一つの疾病慨念に統一しようとするもの

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はじめに

 癌の唯一の根本治療法として,幾多の手術々式が考案され,早期診断と相俟つて,手術成績も改善されてはきている.しかしながら,今日なお根治手術に加え,放射線療法,あるいは化学療法とでき得るかぎりの処置をほどこしても,患者の大部分が,いわゆる再発で死亡しているのが事実である.

 このように癌の外科的治療が,術後再発のために,その成績向上が,阻ばまれているとすれば,再発癌の早期発見,早期手術こそ必要であると思われる.すなわち,再発癌の診断は,初回手術時の癌進展状況,組織像の示す悪性度,腫瘍の種類,あるいは補助療法等によりそれぞれ異なつてくるので,原発癌にも増して困難なのである.数年前に,Wangensteen等によつて癌の治療成績向上の目的で根治手術のできたものは,術後灯発症状がなくても,ある期間を置いて積極的に開腹を行ない,再発所見のあつたものの内13.7%が救助し得たということを述べ,いわゆるsecond look ope—rationの実施を提唱していることは,すでにご存知のことと思う.すなわち,癌根治性の盲点ともいうべき再発癌に対する状況を,新鮮な状態において究めるためと,これに加えて,再発の状態から,不適応,不十分であつた原発癌の手術療法を是正し得る可能性があるということである.

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はじめに

 近年同種組織の移植がさかんに研究されるようになり,免疫学の新しい一分野として幾多の新知見が得られている.免疫学的寛容を得る方法も小動物で成功し,全身X線照射や代謝拮抗剤を投与して移植免疫反応を抑制する方法は臨床面にも応用され,腎移植ではかなりの成功例を得る所まできた.しかし現在用いられている免疫反応抑制方法には,まだ副作用が少なからずあり,移植した同種組織のRejectionを防ぐために十分の処置を行なうと,そのX線照射や化学薬剤の毒性のためにRecipientが死亡することさえある.

 そこで移植免疫の機序をさらに解明し,副作用のより少ない反応抑制方法が見出されれば,その有用性は高い.免疫学的手段による寛容性の獲得が今日引続き研究の対象にされているのも日的の一つはそこにあり,たとえそれ自体によつて強力な寛容性が得られなくても,免疫反応抑制剤と協調的に作用させることにより,同種組織移植を一層安全に行ないうるものにする可能性が考えられる.

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 慢性腎不全の患者が尿毒症に移行すると,現在のところ根本的な治療法は全くなく,人工腎臓や腹膜灌流を頻回にくりかえすことにより延命効果をあげ得るのみであろう.しかしもし他人から腎臓をもらい受け,これにより腎機能を維持することができるならば,患者にとつて大きな光明となるであろうとの考えから,腎移植に関する動物実験を行なつた.

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I.緒言

 イレウス患者の生体内における生理機構の混乱は想像以上のものがあり,外科的手術によつてその原因の除去,あるいは罹患腸管の切除,あるいは糞瘻造設等の適切なる処置が施行され得たとしても,その予後は決して楽観を許さないことはわれわれ実地臨床医家のしばしば経験するところである.

 すなわち患者に満足すべき手術と術後の十分なる水分電解質の補給等が行なわれ,安心していると患者が忽然として鬼籍に入り,われわれ外科医を驚かすことがある.

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はじめに

 近年,交通機関の発展に伴い,交通災害が激増し,ほとんど毎日のように新聞紙上に報道され,死亡者の大都分は頭部外傷によるものが圧倒的に多い.この原因は根本的には道路条件が悪い上に,自動車の数が多すぎるというアンバランスのためであるが,現況下では交通災害により発生した緊急患者の運命を左右するものは,初診時における頭部外傷診断の適,不適による治療方針により決定されるものと思われる.その一方法として,頭蓋内の急性変化を最も早く知るには,外傷により続発する脳浮腫に伴う眼底の変化を観察することが容易簡単であると考え,約1年半の間,頭部外傷患者の眼底検査を行なつてみた.眼底については,視神経乳頭の境界鮮明度,浮腫,轡血状態ならびに網膜∫血管の変動について観察し,頭部外傷患者の意識消失時でも容易に操作し得る興和株式会社製RCHn型眼底カメラにて撮影した.

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 連続性雑音を来す疾患のうちで最も多いのは,ボタロー氏管(あるいは動脈管)開存症である.その定型的のものは,診断が容易であるが,非定型的の場合は診断に困難をきたす場合があり,大動脈中隔欠損、冠動静脈瘻,Valsalva 洞動脈瘤破裂,心室中隔欠損を体う大動脈弁閉鎖不全との鑑別を行なう必要がある.これらの疾患は心雑音が類似しているだけでなく,脈圧の増大すなわち最低血圧がしばしば0を示し,心電図上,左室肥大を示すなどの類似点が多いが,手術の場合に,その到達方法が異なるので,その術前の診断は確実でなければならない.

 そこで,ボタロー氏管開存症を中心にして,連続性雑音あるいはto and fro mur murを示す上記の疾患の特徴をあげ,診断の要点を記すこととする.

読影のポイント

脳波の読み方(3) 喜多村 孝一
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 脳波は正常な成人においては,安静覚醒時にはかなり安定した規則正しい波形を示す,ということは前号にのべたとおりである.ところが.正常人においても,意識の変化には脳波はきわめて敏感に反応する.生理的な意識の変化である睡眠によつても脳波は著るしい変貌を示すのである.

手術手技 乳幼児の手術手技・2

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はじめに

 従来,乳児の肥厚性幽門狭窄症は本邦においては比較的稀とされていたが,ここ数年来,全国的に本症の手術例は著しく増加しており、かつて考えられていた程少ないものとは思われ難い形勢となつてきている.本症の治療上,保存的療法と外科的療法との何れをとるかについても従来から議論のあるところであるが,外科的療法の利点が広く認識されてきているのが世界的な趨勢であり,本邦においても小児外科の普及とともに本症の外科的療法の利点が一般に理解されるにつれて、本症の手術はさらに一般的なものとなるものと思われ,ここに取りあげてみたしだいである.

 本症の手術々式としては,Ramstedtの幽門筋切開術Pyloromyotomyが簡便で,結果も優秀であり,内外を問わずもつぱら本法が用いられている.しかしながら,本症患児は持続する嘔吐によつて水分電解質失調および栄養障害をきたし,Poor riskの状態にあるのが普通であり,術前充分に全身状態の改善を計つておくことがきわめて重要であり,一面外科医の立場から早期手術が望まれるゆえんでもある.手術侵襲が少ないからといつて,患児の状態を重視することなく安易にメスを執ることは,予期に反した結果に終りやすいものであり,厳に戒しめられるべきことである.

新雑誌誕生 3月下旬創刊号刊行

「臨床整形外科」創刊の辞
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 新しい酒を醸すには新しい革嚢が必要とされる.動きが多く,変わり方の激しい医学の領域においては、とくにそのことが要請される.整形外科は医学の領域のなかでも,特に新しい進展の多い分野である.ゆえに.この分野の日進月歩の知識を盛つた雑誌には,新しい工夫がなければならない.

外来の治療 実地医家のための外来治療・9

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 脳神経外科外来を訪れる第3の主要症状は,けいれん,ふるえ,よちよち歩き,等である.けいれんと称する中に,全身的のもの,部分的のもの,を区別する必要がある.また,ふるえも全身性のもの,部分的のもの,がある.

アンケート

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 外傷による新鮮骨折患者が救急室に運ばれて来た場合はまず迅速かつ適確に診察して患者の状態を把握するように努めることが第1である.意識の状態,瞳孔反射.皮膚粘膜の蒼白化の有無,脈搏,呼吸,血圧,精神状態等の全身の一般状態の観察から始めらるべきで,いたずらに局所の所見のみにとらわれることは避けねばならない.われわれの所に運ばれる救急患者の中には生命をおびやかす程度のショック状態をみることは比較的稀であるのは幸いであるが,骨折時には多かれ少なかれ全身性反応があり,激烈な疼痛,機能障害等から受傷直後精神的ないわゆる1次性ショックの状態を来たしやすい状態にあり,この状態は臨床的に顔貌無感覚,顔面蒼白.冷汗,浅い呼吸,血圧下,脈搏頻少という症状を呈する.このさいの処置は一般に薬剤による疼痛の除去,安静,保温,精神安定剤の投与等により数時間で消退することが多い.以上の場合は末梢血管が拡張するのみで循環血液量に著変は無いが,外傷後30分ないし11時間の問に血液循環最の減少を来たしていわゆる2次性ショックを起こす場合がある.これは多発性骨折や高度の副損傷の存在する場合,特に出血が多量の時にしばしば見られるもので,この場合適切な処置をとらないと虚脱状態となり死の転帰をとる可能性がある.かかる場合は骨折の救急処置中最も危険かつ重大な時期であり,万全を期さねばならない.

新しい検査法・3

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はじめに

 ご承知のように,Kussmaulが1868年硬性管を胃に挿入して,胃内視鏡のいとぐちをつけて以来,画期的な発展はWolff-Schindler(1922)の軟性胃鏡の開発で,戦後わが国においては優秀な光学技術をもととしたガストロカメラ(オリンパス)の開発が行なわれ,明瞭な胃粘膜面のカラー写真がとれるようになり,今日ではガストロカメラが目本全国至るところで使用され流行している.しかしガストロカメラだけで十分かというとやはり直接視したいという考えをすてることはできない.曲つた管の内部を見るという方法は工業上の必要があつて,ガラス線維を束ねたものを用いて実用に供されていたが,Hirschowitzはこれを応用したファイバーガストロスコープを発表し1962年にはすぐ数台が日本にも輸入された,HirschowitzのGastroduodenal Fiberscopeは15万本のガラス線維を適当に束ねたもので,全長にわたつて適度の柔軟性があり,像は鮮明で,それまでのレンズ系を用いた軟式胃鏡より取扱いはずつと楽であり,かつ適度のかたさがあるので視野の選択操作が可能で,柔らかいことにばかり努力しすぎたものたとえばガストロカメラより盲点は少ないのがまた特徴である.

 こうしてはじめて外科医の要求にこたえる胃内視鏡が提供されたことになつた.

外国雑誌より

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 わが国では,胃の2/3切除が胃十二指腸潰瘍に対する標準的手術々式として採用されており,それで術後に残胃や胃腸吻合部に潰瘍が再発することは非常に少ない.それに比べて,最近のアメリカの文献では,胃切除だけでは潰瘍再発率が相当高く,迷走神経切断を合併して行なう方法があらためて強調されてきたようである.この手術成績のちがいは入種的な素因によるものと思われる.今後日本において迷走神経切断術を検討するとしても,こういつた根本的な点における相違を念頭において行なう必要があると思う.

 最近のRheaらの報告1)を見ても,十二指腸潰瘍に対して胃切除のみを行なつたときには,12%の症例が術後再発している.彼我の胃切除術の成績に大きな違いがあることをよく表わしているので,簡単に紹介してみたい.この報告は,従来胃の手術に対してよく研究を行なつているNashvilleのVanderbilt大学外科からのもので,最近10年間は胃幽門部切除に迷走神経切断を合併して行なう方法を標準術式として採用しているが,その前30年間は胃切除術が主として行なわれていた.すなわち胃の末梢側50〜70%を切除し,古典的なBil-lroth II法で吻合する方法である.遠隔成績の調査は,できる限り患者を直接病院に呼出して検査しているが,それのできないものでは患者本人ならびに家庭医に問合せ状を出して調べている.

トピックス

弁膜の外科 工藤 武彦
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 弁膜疾患は全心臓疾患のほぼ40%を占める重要な心疾患の一つであるが,この中で僧帽弁は約60%と最も多い.ついで大動脈弁疾患(20%),両者の合併10%となつている.三尖弁疾患は剖検上はかなり頻度の高いものとされるが,臨床的には僧帽弁疾患などに合併しているため,二次的な相対的閉鎖不全症もかなりあるものと考えられる.肺動脈弁疾患では肺動脈弁狭窄症が臨床的に重要であるが,これは先天的な疾患であり,チアノーゼを呈することから別な範鋳に属するのでここでは省略する.いずれにせよ,「弁膜症」は古くから知られ,また最もpopularな疾患であるに拘らず,その治療においては未解決な点が多い.

 これら弁膜症の外科的治療の歴史は相当に古く,1925年に今なおロンドンで健在なSouttarが生体の心臓内に指を入れて僧帽弁を探知したのに端を発し,わずかに遅れて,ハーバード大学のCutlerらが最初の僧帽弁狭窄の裂開の経験を発表した.しかし,7例のうち6例は死亡し,7例目は全く改善されなかつた.僧帽弁狭窄症に対する最初の手術成功例は1948年,Harkenらによつてもたらされ,はからずもこれが心内手術成功の最初の例ともなつたことは衆知のことである.翌年に,Baileyらも彼らの症例について報告したが,Commissurotomyの名称と共に本法の術式を確立した.

海外だより

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 筆者は1964年11月より1965年10月まで文部省長期在外研究員,フランス政府給費技術留学生として約11カ月Parisのl「'」Hôpital BroussaisのProf.Ch.Dubostのところと,LyonのCentre de chirurgie cardio-vas-culaire Paul SantyのProf.Paul Santy, Prof.PierreMarionのところを中心にフランスの心臓血管外科を見学し,その間,ヨーロッパ各地の心臓外科およびHyper-baricのCentreを見学する機会を持つことができました.フランス滞在中私にとつて印象的であつた2,3の事柄について述べてみたいと思います.

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 最近,池田前首相や作家の高見順氏など,有名人が相ついでガンで斃れたことがキッカケとなり,日刊紙や週刊誌がつぎつぎとキャンペーンを行ない,ガンについての啓蒙運動が行なわれてきている.

 啓蒙運動は大いに結構であるが,ガンの早期発見,ガン撲滅運動とただやたらにお題目を唱え,「あなたはガンにねらわれている」というようなキャッチフレーズで宣伝しても,具体的な対策が検討され,強力に実施されなければ,百害あつて一利なく,空念仏に終るばかりでなく,いたずらにガンノイローゼの患者を巷間に隘れさせるに過ぎない.

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 迷いは人間的である。神には迷いはない.動物にも迷いはないであろう.ある行動を念頭し,これを実行する場合,われわれに,もし迷いがないとしたら,そのものは神であるか動物であるだろう.人間が知性的であるということは,半面人間に迷いがあるからともいえよう.迷いのない知性があるとは考えられないからである.迷いのない人間は独断家でもあろう.それは独断が知的でなく神的であり動物的だからである.私たちは人間である限り自由に迷えるともいえよう.「自由」は人間の特質であるからである.不確実なものに対してわれわれが迷うことは確実なものを求めるからである.その希求があればこそ確実に迷うのである.むしろ,たしかに迷うべきものこそ人間だともいえよう.不安な.ものに対する迷いは安定なものへの希求があるという前提が内在していることである.迷うことを知らないものは不幸である.迷うものは幸せである.迷いから人間の向上が期待されるからである.迷いは岐路に立つことでもある.岐路を認めることによつて迷いが生ずるのでもある.岐路のない行為は直線的で安易である.

 盲目でも進める道路である.岐路の発見が人生である.

印象記

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 小児外科,この比較的新しい,外科の領域への興味にひかれ,2年ほど前,私は,アメリカよりイギリスに参りました.国際小児科学会は,今年はスコットランドのエジンバラ市で行なわれ,出席する機会に恵まれましたので簡単に内容をお伝えしたいと思います.

 この学会の母体は,British Association of PaediatricSurgeonsで,創設されたころは,イギリスの小児外科学会であつたものが,地理的関係より,アメリカ,ヨーロッパ諸国よりの参加者が年を追うにつれ,ふえ,現在では文字通り,国際学会となつたわけです.

他科の知識 循環器疾患の治療・2

不整脈の治療 森 博愛
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I.不整脈の臨床的評価

 不整脈は術前,術中,または術後合併症としてしばしばみられるが,単に表面的な症状または所見にとらわれ,その基礎に横たわる病態生理学的機構についての考察が不十分なまま放置され,単に対症療法のみに終始する場合もしばしばみられる.

 不整脈を臨床的に正しく評価するには,次の諸点に注意する必要がある.

他科の意見

麻酔科より外科へ(1) 岡田 和夫
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まえがき

 外科手術の手技の進歩と共に,抗生物質,輸液,輸血の発達,これに麻酔学の発展が加わつて外科手術患者の適応は量質ともに拡がり,予後もまた大いに改善されたことは世人の認めるところである.

 麻酔学のいかなる進歩があるかは,種々のところで語られているので,ここでは麻酔科の医師がある程度,専門的に知つているが,外科医の先生にもう一度認識していただいた方がいいと思われる点について述べてみる.

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 大きな外科侵襲の後に,体液に変化の起ることは前稿に述べたとおりでありますが,これと関連して,電解質方画ではほとんど常に低Na血症が認められます.その機序については,ArielとかMooreらによつていろいろと考察が行なわれていますが,結局この手術直後の電解質の低い値は,輸液に続発して細胞外液が稀釈されること,および侵襲によつて細胞膜の機能に変化をきたし細胞内の水分および電解質を細胞外液中に通過せしめ,細胞外のNaを種々の体組織の細胞内へ移行せしめることによるのであろう,と考えられております.

 これまでに述べてきた水分電解質に関する種々のことがらは,実地臨床的には結局,加療としての輸液の問題に連なるものであります.そこで,輸液に関連のあるこれらの事項について,以下触れてみたいと思います.およそ輸液の施行に当つて,その全体を把握するためにはつぎのような3つの知見が必要とされるのであります.すなわら,細胞外液の濃度と,平衡の検索,および全身体の組成であります.手術患者がその臨床検査成績においても術前良好な状態にあり,あるいは加療によつて十分に補正されている場合には,術後投与すべき輸液の質と量とは,喪失されたものを補うということで、水分および電解質に関するかぎり等しい量でよいわけであります.

器械の使い方

心臓血管カテーテル(1) 藤本 淳
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 心臓血管カテーテルは体表面から容易に到達し得ない心臓腔や血管内の種々な部位の血行動態(血圧測定・色素稀釈法),血液性状(血液酸素・炭酸ガス),内腔の状態(造影法)を知るために開発されたものである.その他薬剤の選択的注入や輸液にまで利用されている.心臓血管内に挿入されるものであるから内膜を損傷しないこと,直接に血液に接触するから血液成分の損傷や異常をきたさないこと,所定の部位に誘導されるために通常レントゲン線不透過性の工夫が行なわれている.なお心臓カテーテルは単に挿入するものではなく種々の機能検査を行なうために利用されるものであるから,その目的に合致するように種々なtransducerがつけられているものもある.構造は基本として中空の管にレントゲン線不透過性物質が塗布してあるという簡単なものであるが,塗料の関係で国産品として推奨し得る製品はなく外国品に依存しなければならぬ.各メーカーでは特殊品の注文をうけつけることになつているがわが国では注文が不可能であるから,メーカーの標準品を正しく選択して採用しなければならぬ.そこで心臓血管カテーテルの種類を整理し,取扱の実際についてまとめておきたいと思う.なお心臓カテーテルの手技は習練を要するものであるが,記述は困難であるので各施設においてその技術を伝えることを忘れないでほしい.また初めて行なわれる人は習熟した人の技術を見て慾しいと思う.

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 藤田(司会)自衛隊中央病院臨床病理検討会第300回記念の第2例は,去る6月4日,第286回のC.C.で検討した症例ですが,その後,外科の方に転科して手術を受けましたが,7月16日に亡くなつておられます.C.C.のときの臨床診断は胆道癌となつております,内科,外科を問わず活発なご発言をお願いします.それでは,外科の高島医官から経過をどうぞ.

 高島 患者は69歳の女性です.主訴は心窩部痛と黄疸で,家族歴では弟さんが胃癌で亡くなり,姉さんはバセドウ氏病で亡くなつておられます.

外国文献

大量輸血,他
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 大量輸血の問題は日本では,数年,あまり問題にされなくなつた.日本外科学会は忘れつぽい.Wilson (J.A.M.A.194:851,1965)は1959〜1963年の,24時間以内に5000mlを輸血した209例を吟味している.計213回の大量輸血.このうち95例(45%)死亡.手術室内ショック死9,48時間内死41例,7日以内死76.死亡例は十分に検討した.輸血量が10〜14uより15〜19u.さらに20〜24uというように量が多いほど死亡率が高くなる.10〜14u118名では34%死亡.15〜24u77例では49%死亡.25u以上18名では1例のみ生存.また年齢が進むほど死亡が高い.40歳以下では10〜14uで29%死亡,60歳以上では47%の死亡である.受傷部は頭・頸・四肢が予後最もよく,死亡14%腹部損傷最も悪く60%以上.癌,感染などが先駆していたものは70%の死亡で高い(含併なきもの31%).輸血までショックの継続15分以内では死亡7%,20分以上つづいたものでは死亡57%,先駆疾患があつてショックを加えたものでは実に93%の死亡であつた.輸血による出血傾向34例,このうち,7例は出血死.

基本情報

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臨床外科
21巻3号 (1966年3月)
電子版ISSN:1882-1278 印刷版ISSN:0386-9857 医学書院

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