看護学雑誌 48巻4号 (1984年4月)

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 池田 きょうは糖尿病の患者さんとご家族の方々にお集まりいただいております.いろいろなお話を伺いながら,‘患者から学ぶ生活ケア’というテーマで,看護の面で参考となるような点を掘り起こしてみたいと思います.

 特に,発症から長い病歴の中で,外来通療,入院治療,あるいは子供の糖尿病ですとサマーキャンプに参加するとか,多くの場所で医療スタッフとの接触があります.中でも看護婦さんとはほかの医療スタッフ,例えば医師・栄養士さんなどと比べても,接する機会が非常に多く,また病気について,あるいはその生活全般について話し合う機会が,特に入院の場合には大変多いと思うんですね.

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はじめに

 糖尿病では,患者教育(指導)がその診療の要であることは,すでに常識となっている.‘糖尿病は合併症の病気である’と言われているように,糖尿病それ自体で死ぬよりも,むしろ合併症の悪化が死を招くことの方が多い現在では,糖尿病をいかによくコントロールし,合併症を防止していくかが,治療の最大目標である.

 糖尿病では,診断と同時に患者は,主として食生活を中心にその生活習慣の修正を求められる.慢性疾患である以上,そのコントロールは生涯継続するものであり,患者教育においては,個々の病状および生活に則した個別的指導と並び,闘病意欲を持続できるように,患者はもちろんのこと,家族も含めた包括的な働きかけが重要である.

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はじめに

 かつて,糖尿病は尿に糖が排泄される病気と解釈され,尿糖の消失が治療の主目的とされ,食事療法も極端な低糖質食が中心であった.ところが,インスリンの発見以来,その治療目的は変化し,単に高血糖の防止だけでなく,体内でのインスリンの需要のアンバランスを是正し,合併症を予防することへと変化してきた.

 そして,その目的達成には,患者が自らの知識と意識で日常生活をコントロールし,特に,食事療法を実行することが不可欠となり,栄養指導の重要性が叫ばれている.

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はじめに

 糖尿病患者の治療に際して最も大切なことは,自己管理の実践であろう.そのためには,なぜ自己管理が必要なのかを患者自身が理解しなければならない.そこで,われわれ医療職は何をなすべきなのかが問われてくる.このことが患者教育の原点といえる.

 一体‘あなたが主役です’‘主治医はあなた自身です’といわれるのはなぜなのかをわかってもらうためには,患者に病態を理解してもらう医療—納得づくの医療を展開することが大切であり,さらにそれをやり通すという克己心を求める,つまり心身両面からのアプローチが重要なポイントとなる.

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はじめに

 私たちは15年前から,慢性疾患をきちんと管理するために,Comedicalの充実を図りながら,スタッフの専門性を充分に発揮させると同時に,それを有機的に結合させるチーム作りについて模索してきました.そして,全職種参加による糖尿病患者ケアについて,ある程度の成果を得ましたのでここに報告いたします.

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はじめに

 どの病院の外来も混雑している.糖尿病外来も例外ではない.午前5時に病院に到着しても診察時間は10時になる.患者の待ち時間を利用して,ビデオを使い教育し,検査をしながら合併症の教育をする努力をしているが,決して満足すべき状態ではない.その上に大人の患者に混じって子供が診察を受けに来る.この子供たちをみていると,彼らが学校を休むのを極力嫌っている様子がありありと分かる.また,子供たちは年々成長し,成人に達するが,せめて学生の間にもう少しきめ細かに教育してあげられたら,という思いがあった.

 1980年に糖尿病外来に来ている若年糖尿病患者(20歳未満)が15名いることが分かった.そこで,彼らを別個に教育した方がよいと判断し,月1回外来を日曜日に行うことにした.ちょうど1980年9月のことである.現在は登録患者数も33人にふえ,この会の呼称を‘わかば会’とした.私どもの糖尿病患者の会が‘あおば会’なので,単純に‘わかば’にしたのである.実は昔,農村の若いお嫁さんの会にわかば会というのがあって,少し抵抗感があったが,みんながそれでよいというので結局‘わかば会’に落ち着いた.

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はじめに

 当院で糖尿病患者管理が本格的にスタートしたのは約10年前からです.手作業で始まった患者管理も今では大型コンピュータが導入され,集団教育入院,スタッフの充実,システムの定着と少しずつその管理のあり方も変わってきました.年を追うごとに登録される患者は増え,中断する患者も後を断たないのが現状です.当院でも患者管理の矛盾と悩みは続いています.

 本報告では当院における糖尿病患者管理システムの概要,外来での指導内容と留意点,教育入院,在宅患者管理などを中心に看護の現状をまとめてみました.

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資料1簡易血糖測定用具

 簡易血糖測定法はその名の通り,あくまでも簡易法として扱われてきたが,この方面における技術の進歩は目覚ましく,簡易血糖測定法に対する信頼は年ごとに高まっている.現在この方法は,日常の外来診療やベッドサイドでの臨床検査法として,さらに在宅糖尿病患者の血糖自己測定の手段としての価値も認められている.

 簡易血糖測定法には試験紙と機器を組み合わせて用いるものとして,①Dextro meterⅡ-Dextrostix(D-D法,エームス社),②Mediscope-Refromat-glucose法(M-R法,山之内製薬),③Hemascope-Hemalet-glucose法(H-H法,小玉)と,最近発売された目視法としてのBM test blood sugar 20-800法(20-800法,ベーリンガーマンハイムジャパン)がある.

AGING アメリカの老人ケア見てある記・4

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 アメリカで老人医療・ケアを専門に提供する場としては,大学関係の老年科のほか,民間ホームから出発したセンター方式があります.今回はその中からいくつかを紹介します.

選ばれた母親 障害のある我が子と生きて・4

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どうか泣いてほしい!

 8月.半年ぶりに神奈川県立こども医療センターで診てもらいました.6か月ごとの予約をとっているので行ったのですが,投薬も受けておらず,ただその後の経過を見せに行った,というふうでした.一応,薬の副作用のチェック等で,血液と尿の検査をしました.脳波やCTスキャンなども,病巣が広がることもないため,今のところ特に必要ないとのことです.CTをとって分かることは,‘萎縮してしまった脳の発育がない’ということだけ.

 優秀な女医さんだけに,患者や家族との話し方もずばずばと明確で逆にはっきり言ってくれるので,あきらめもつくというものです.でも,後になってその一言一言を振り返って考え込むほどに,ショックは大きくなるばかりです.

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 布団からちょこっと顔を歯し,ニコッとしながら‘ひがしさん’と呼んでくれたのである.精神分裂病の無為,自閉で他者とのかかわりも拒んでいたH君に,一緒に過ごしていることを態度で示そうと考え,毎日30分ずつベッドに腰かけ始めてから85日目だった.

 分裂病の自閉をどのようにとらえるかにはいろいろな考えがある.人生の最初は母子関係で始まり,その後経験する対人関係の中から,‘人間は身近で重要な人を見習って,無意識に自分の中に取り入れ,次第に自分らしさを獲得していく’と言われている.

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モーレツ社員が病気になるとき

 田中さんは,入社以来,絵に描いたようなモーレツ社員でした.海外生活も合わせると10年以上になります.奥さんとは,2度目の海外出張の内示を受けたときに,急いで見合いをして結婚しました.というのも,最初のときにつくづく独身での海外赴任の味気なさに閉口したからでした.

 そうした田中さんは,今では大会社の課長補佐.課長との仲もうまくいっていて,海外との連絡に,商談に,接待に,毎日午前様の生活を送っていました.

CHECK IT UP 日常ケアを見直そう・28

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 ナイチンゲールの残した数々の逸話の中に,死んだ馬と水源の話がある.つまり,ナイチンゲールが,クリミヤの病院の上下水道を整備したり,衛生委員会の設置を要求するにあたって,使用後の浴槽の水がきちんと排水できるかどうか,自分で見張りに立った時のことである.彼女が発見したのは,病院への給水が,馬の死体を通って流れてきていたというのである.これでは,病人に汚染した水で薬をのませるということになる.

 この話は,ちょうど,不完全な消毒過程や,いい加減な操作で滅菌物や消毒済のものを取り扱うのと同じ構造ではないだろうか.院内感染のメカニズムは決してこのように単純なものではないにしても,まず基本的なことから見直す必要のあることを痛感する.

人工臓器・4 最先端の技術を探る

人工血液
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人工血液とは

 血液は血漿成分と血球成分(赤血球,白血球,血小板)とから成っている.血漿成分はリンゲル液などである程度代用がきくが,酸素を各細胞に運搬し,二酸化炭素を排出する赤血球の代用物は全くなかった.人間は大量の出血があると,容易に生命の危機に陥ってしまうが,それは主に,赤血球による酸素運搬がなくなり,組織が死滅してしまうためと考えられる.

 それゆえ,血液の持つ最も本質的な機能は,その酸素運搬能にあるという考え方から,酸素を運搬する輸液剤のことを人工血液と呼ぶようになった.人工血液の研究は1946年にBurkらが始めたのが最初だが,1970年代には主として日本において,光野や大柳らによって研究され,現在では臨床試験の段階はすみ,厚生省の製造許可を待っている段階である.

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 ある冬の日,澄みわたった空からやわらかな日射しが注ぐなかを,思い思いの運動着に身を包んだ女性たちが足早に歩いていく.男性1人を含む4人のグループが,50mほど遅れてそれにつづいている.先ほど軽いジョギングでカメラの前を通りすぎていった女性は,すでに公園の角を曲がって,なだらかな上り坂にさしかかったところだ.チェックポイントになっているその角には,トレーナーの佐々木さんが先回りして待ち構えている.この運動療法に初めて参加した人の脈をとり,ペースの指示を出すためである.周囲750mの衣笠運動公園の回りを3周する.1周,2周と回るうちに,みんなの額にうっすらと汗がにじんでくる.

 これは衣笠診療所(所長・梅本牧夫)が行っている運動療法教室のひとコマである.

行動医学(最終回)・12

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 前号で述べたように,行動医学的アプローチの実践にはチーム医療が不可欠であるが,チーム医療を行うに当たって,各専門職のチームメンバーによる密な協議が必要なことも当然である.行動医学的アプローチには,何度も繰り返すように多面的な知識,すなわち専門性が加われば加わるほど,そのチーム医療の内容は濃くなる.

 したがって,医師・ナース・看護学生・ケースワーカー・心理士・栄養士,時には家族や患者を参画させて協議を行う習慣がつけられることが必要である.そこで今回は,まずカンファレンスの状況,そしてカンファレンスの上手な進め方,技法などについて述べる.

脳死と植物状態をめぐる諸問題・4(最終回)

植物状態 福間 誠之
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 一般の人たちは,脳の働きがないということで脳死も植物状態も同じように思っている人が多い.医師の中にも,この両者をはっきり区別していない人もある.そこで,今回は植物状態について述べてみたいと思う.

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この10年間でどれだけ進歩したか大学の講座と専門医制度の現状

 渋谷 10年ぐらい前の“看護学雑誌”に載っていたリハビリテーションの特集を読んでみようと思って,いちおう目を通してみたところ,書かれている内容は当時も今もほとんど同じだなという気がしたのですが…….

 荻島 確かに,理念そのものは変わらないだろうと思います.違う見方をすれば,10年間進歩していないというのも確かです.

バイオエシックス・セミナー・4

〈自然な生〉の終わり 木村 利人
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 時は春.

 草木の芽も生えそろい,緑がまぶしくなってくるころです.明治・大正・昭和を生き抜いて83歳で亡くなった作家・正宗白鳥の短編小説に“今年の春”というのがあります.彼の父の死を題材にして書かれたものです.

インフォメーション 新しいナーシングケアのために

被虐待児症候群 池田 由子
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 児童虐待はどの国にも,どの文化にも,どの時代にも存在している問題であるが,広く世人の関心を引くようになったのは19世紀の後半からで,その結果米国や英国に児童虐待防止協会が設立された.

 社会的のみならず,科学的に児童虐待の問題が把握され,防止対策が進んだのは,小児科学,放射線学などの進歩による.米国では1906年に初めて子供のX線撮影が行われたが,1955年にWooley,P.はX線で見られる子供の外傷の多くは,保護者から故意に加えられたものだという見解を発表し,世人に衝撃を与えた.

教育婦長

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国療富山病院付属看護学校より昨年4月に転勤.新任ながら教育委員会の要として活躍.「どこの病院でもそうなのでしょうが,現場には山ほど問題があります.いろんまことを考えすぎると,にっちもさっちも行かなくなるし,問題点をいくら挙げても,それだけではなんの解決にもなりません.とにかく行動を起こさなければ前に進まないのですから.‘今,その人自身が,その場でやれることを考えられ,そのことを実行できるスタッフを育てる’ことを第1の目標に教育内容の企画などを考えています」

ちょっと一言 総婦長のつぶやき

禅林にお供して 石井 松代
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 当院看護部の教育委員会が‘新人1泊研修会’を企画し,毎年秋になると大徳寺の養徳院で合宿をする.今年で5年目になる.坐禅を中心とした和尚の法話とグループワークを行っている.私も欠かさずお供をしている.

 若いころから1度坐禅をしてみたいと思っていた.しかし1人で禅堂に出かけてゆく勇気はなかった.たまたま病院の地域の役員さんが養徳院の檀家ということもあって,その方にお世話していただいたのがきっかけである.

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趣味を看護に生かす

 小学校に入学する時に,病弱だった父親が亡くなったが,幼な心に父親のような体の弱い人のために役立つ人間になりたいという思いが芽生えていた.それに弟たちが3人もいて,母親を助けるためにも早く仕事に就かなければならず,看護婦の道を選んだ.

 もちろん家庭の事情だけでなく,近所に国立熊本病院に勤めている看護婦がいて,あんな人になりたいと,ひそかにあこがれていたからでもあった.敗戦後10年もたっていなかったためか,看護学校の仲間たちも大半が片親しかいなかった.

折々の花 いとしき糖尿病教室の患者たち・1

散るまでは「花」 佐々木 一枝
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 毎日の看護の中で,患者から学びとることは実に多い.ことに中年女性に接しているとそれぞれの生活史がにじみ出ていて,折にふれてはっと自分を振り返る機会を与えられる.それに自分の身辺で心ひかれる女性に出会った時は,同性としてひとしおうれしいものである.

 私の勤務している糖尿病センターは,主として中高年の男女10名前後が1つのグループとして,糖尿病自己管理修得のため1-2週間を一緒に過ごす合宿の場である.各グループごとに患者の個性や糖尿病に対して持っている知識などによって,それぞれのカラーが生まれて,楽しみでもあるがまた苦労もする.そんななかで患者から学んだ話題を拾って紹介したい.

基本情報

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看護学雑誌
48巻4号 (1984年4月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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