産科と婦人科 92巻10号 (2025年10月発行)

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特集　もっと知りたい！妊婦の栄養・食事の疑問点

ねらい石本　人士 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1073-1073

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　“You are what you eat.” という有名な英語の格言があります．自分の体の状態は，自分の体に何をどのように取り入れるかで決まるわけで，この格言は健康管理における栄養の重要性を端的に表現しているといえます．

Ⅰ．総　論

1．妊娠前からの栄養・食事の留意点は？内倉　友香 , 杉山　隆 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1077-1083

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要旨

　妊娠前からのバランスのとれた食事の摂取は，母体の健康や児の健やかな発育に不可欠な要素である．妊娠可能年齢女性の肥満ややせの問題は妊孕性や妊娠後の周産期合併症発症のみならず，次世代の生活習慣病発症リスクに影響を及ぼすことが知られており，妊娠を目指す女性にとってプレコンセプションからの栄養状態改善は社会全体で取り組むべき課題の1つと考えられる．わが国における妊娠前の体型別栄養状態の課題を中心に栄養・食事の留意点について概説する．

2．妊婦の栄養と至適体重増加については？春日　義史 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1085-1090

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要旨

　妊娠中体重増加量（GWG）は不足でも過剰でも周産期予後や出生体重に影響を与え，児の将来の健康に影響を与える可能性がある．GWG管理は周産期予後改善のみならず，将来の医療経済にも影響を与える可能性があるため，啓発活動も含めた管理が重要であることを認識する．

3．わが国における妊婦の栄養管理の歴史とDOHaD学説とのかかわりは？伊東　宏晃 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1091-1097

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要旨

　わが国における妊婦の栄養管理の歴史は，妊娠中毒症（現代の妊娠高血圧症候群に近い概念，診断基準は異なる）を発症した妊婦に対する入院治療としてのエネルギー摂取制限，やがては妊娠中毒症の予防を目的とした外来における一般妊婦を対象とした体重管理に端を発する．その源流は第二次世界大戦の末期にドイツ軍の経済封鎖によるアムステルダム周辺における極端な飢餓状況，いわゆるDutch Famineにおける妊婦の疫学研究にさかのぼる．わが国における妊婦の栄養管理の黎明期から2021年の新たな妊婦の体重増加指導の目安策定までの歴史を紹介し，今後の課題を考察する．

4．DOHaDに関する最新知見は？池ノ上　学 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1099-1103

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要旨

　子宮内環境が胎児発育のみならず，小児期・成人期のメタボリックシンドロームの発症に関連することが明らかとなってきた．新生児体脂肪率と小児期肥満との関連はすでに報告されており，肥満の起原の一部はさらに胎児期までさかのぼる可能性が示唆されている．胎児脂肪量などの新たな指標を用いて胎児発育の評価を行い，胎児期の脂肪蓄積機序を解明していくことにより，児の長期予後に関連する病態の解明や，早期発症メタボリックシンドロームの一次予防へとつながる可能性がある．

5．エコチル調査からみえる妊婦の栄養に関する最新知見は？西郡　秀和 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1104-1109

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要旨

　子どもの健康と環境に関する全国調査（エコチル調査）から，産科的疾患リスク低下や児の健全な発達に向けて，妊娠前（プレコンセプション）から妊娠中における食事の質の向上が大切であり，毎日の朝食習慣や，抗炎症食，発酵食品，食物繊維などをバランスよく積極的に食することの重要性が示された．

6．母体栄養への介入により児のアレルギー疾患発症予防は可能か？成田　雅美 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1110-1114

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要旨

　妊娠中や授乳中の母親の栄養は児のアレルギー疾患の発症に深く関与している．特定の食物除去は児の感作予防にならず，発症予防効果も認められていない．ビタミンDやオメガ3不飽和脂肪酸が不足するとアレルギー疾患のリスクが高まる．腸内細菌叢の異常を改善させるために，プロバイオティクスを妊娠中から内服することによりアトピー性皮膚炎の発症予防効果があることが報告されている．しかし栄養への介入の効果はもともとの食事内容など個人の状況により大きく異なるため注意が必要である．

Ⅱ．各　論

7．妊婦における発酵食品摂取，プロバイオティクスの有用性は？伊藤　実香 , 米田　哲 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1115-1120

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要旨

　妊婦に限らず，発酵食品やプロバイオティクス（PB）の効果が様々な疾患で注目されている．発酵食品は，自然早産や妊娠糖尿病（GDM）の予防効果があることが大規模コホート研究から報告された．また，特定の有益な微生物そのものを摂取するPBについては多くのランダム化比較試験が行われており，GDM症例の耐糖能を改善させる効果，酪酸菌含有PBによる自然早産予防効果が期待されている．発酵食品/PBについては，プレコンセプションケアの一環として，妊娠前から食事に取り入れることをお勧めしたい．

8．妊娠高血圧症候群の栄養に関するエビデンスは？小松　摩耶 , 最上　晴太 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1121-1125

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要旨

　妊娠高血圧症候群（HDP）の発症は生活習慣と深くかかわっており，食事や栄養素に対する介入研究がこれまで数多く報告されている．実際，肥満や糖尿病などの生活習慣病はHDPの発症リスクであることから，栄養状態の改善はHDP発症の抑制に寄与すると考えられる．特に地中海食のような多因子の栄養素をバランスよく摂取する食生活は，HDP発症リスクを減少させる可能性がある．

9．妊婦に対する鉄補給の留意点は？五島　裕之 , 落合　大吾 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1126-1131

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要旨

　鉄欠乏性貧血は栄養学的視点では栄養失調の表現型の1つとされる．妊婦では，胎児へ鉄を供給すること，循環血液量の増加に伴い血液が希釈されることを踏まえて，非妊婦と比較しヘモグロビンの正常下限値が低く設定されている．妊娠中の鉄欠乏性貧血は胎児の予後や産後うつなどとの関連が指摘されており，妊娠中の鉄補給が推奨される．食事量を確保し，鉄以外にも蛋白質，ビタミン，ミネラルを含めた過不足のない栄養を摂ることが重要である．

10．妊婦・胎児にとって注意すべきサプリメント，嗜好品は？山下　隆博 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1132-1137

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要旨

　妊産婦に注意が必要な嗜好品の代表はカフェイン，アルコール，喫煙である．これらには妊娠判明後に完全に中止すべきものと量に気をつけるべきものがある．近年は加熱式たばこが急速に普及するなど，医療者側の知識のアップデートも必要である．

11．感染症予防のために食事で注意することは？松岡　咲子 , 山中　美智子 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1138-1142

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要旨

　妊娠中のListeria monocytogenesやToxoplasma gondiiの感染は，汚染された食品の摂取に起因し，胎児への不可逆的な影響を及ぼし得る感染症として注意が必要である．加熱殺菌をしていないナチュラルチーズや生肉・生ハム・生魚，パテ，洗浄が不十分な生野菜などの食品が原因となり得る．また，妊娠中は免疫力が低下しているため，食中毒に注意する必要がある．生の魚介類や肉類など食品の種類だけでなく保存方法や調理方法，手指消毒などの衛生面の配慮も予防に重要である．

12．妊娠中の魚介類摂食における留意点は？川城　由紀子 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1143-1146

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要旨

　魚介類は胎児の成長発達に欠かせない豊富な栄養素を含んでおり，妊娠期に必要な食材である．しかし，魚介類には水銀が含まれている．水銀は胎盤を通じて胎児に移行することから，妊婦が魚を摂食する際には注意が必要であり，厚生労働省から「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」が出され注意喚起がなされている．妊婦が安心して魚の摂食ができるよう，適切な情報提供が必要である．

13．糖代謝異常合併妊娠の栄養・食事指導はどのように行うか？高橋　嘉名芽 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1147-1152

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要旨

　糖代謝異常合併妊娠には「糖尿病合併妊娠」，妊娠中に糖代謝異常を診断された「妊娠糖尿病」「妊娠中の明らかな糖尿病」がある．糖代謝異常合併妊婦の栄養・食事指導では必要なエネルギーや栄養素を過不足なく摂り，胎児の健全な発育，妊婦の安定した血糖コントロールを目指せるよう，1日の食事の目安量を示す．また分割食の食事時間のスケジュール案を作成する．栄養・食事指導は回数を重ね，困っていることなども含め現状把握から良好な栄養管理につなげる．また出産前には産後の食事について説明し，出産後のバランスのよい食事や注意点などの意識づけを行う．

14．肥満妊婦の行動変容を促す生活指導のポイントは？大谷　紗弥子 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1153-1157

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要旨

　肥満を助長する因子は過食や間食，運動不足，遺伝的要因など多様である．肥満の女性が妊娠した場合，妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病の発症リスク，帝王切開分娩，分娩後多量出血などのリスクも高まる．医療者は肥満妊婦の健康リスクを最小限にとどめ，将来の健康増進につなげるために，評価ツールを活用して患者固有のライフスタイルにおける真の問題点を引き出す．健康行動理論に基づいた保健指導でアプローチをすることが患者の行動変容を促し，健康行動の継続を支えるポイントとなる．

連載　漢方よもやま話・第22回

漢方薬・生薬の副作用について能㔟　充彦 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1158-1161

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1．はじめに

　一般に，生薬や漢方薬は穏やかな作用をもつ反面，副作用は少ないと認識されていますが，医薬品である限りは副作用や有害事象は当然のようにあります．代表的な生薬の副作用や使用上の注意は，それらを配合する漢方薬の安全使用のために必要な知識となります．

連載　弁護士が答えます！法律にまつわるあれこれ

患者がTOLAC/VBACを強く希望した場合はどうしたらよいの？秦　奈峰子 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1162-1163

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Q　当院では，TOLAC/VBAC（帝王切開後経腟分娩）を行っていませんが，患者がTOLAC/VBACを強く希望する場合には，どのような対応をすればよいでしょうか？

連載　産婦人科の最前線を訪ねて・第2回

IFFS 2025 in Tokyo 平塚　大輝 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1165-1168

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発表までのプロセス

　2025年4月26～29日の間，東京で開催された国際生殖医学会（The International Federation of Fertility Societies：IFFS）World Congress 2025に参加し，英語での口頭発表を経験させていただきました．今回は54年ぶりの日本開催だったということで，このような世界的権威のある国際学会で発表する機会を得られたことに大変感謝しております．

症例

低VWF血症に伴う過多月経，重症貧血に対し，LNG-IUSにより治療した1例三原　綺乃 , 武田　晃子 , 真鍋　仁 , 中島　由貴 , 丸尾　原義 , 望月　慎介 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1169-1173

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要旨

　症例は27歳，0妊0産．過多月経，貧血症状，月経困難症を主訴に受診．Hb 4.6mg/dLと高度貧血を認めRCC-LR 4単位輸血した．凝固機能検査では第VIII因子凝固活性42.6%，VWF（von Willebrand因子）活性43%と低値であり低VWF血症と診断した．レボノルゲストレル放出子宮内システム（LNG-IUS）を挿入し，過多月経と貧血は改善した．低VWF血症でも出血傾向を認めない場合もあるが，本症例は若年女性であるため出産時，手術時には注意深く管理を行う必要がある．

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目次 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1074-1075

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お知らせ 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1137-1137

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お知らせ 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1164-1164

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お知らせ 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1174-1174

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お知らせ 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1175-1175

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投稿規定 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1176-1177

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投稿論文チェックリスト 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1178-1178

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投稿同意書 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1179-1179

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バックナンバー 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1182-1182

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本号掲載広告一覧 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1183-1183

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次号予告 92巻10号 , 2025年10月 , pp.1184-1184

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基本情報

産科と婦人科
92巻10号
(2025年10月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0386-9792 診断と治療社

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投稿規定

産科と婦人科 92巻10号 (2025年10月発行)

特集 もっと知りたい！妊婦の栄養・食事の疑問点

Ⅰ．総 論

Ⅱ．各 論

連載 漢方よもやま話・第22回

連載 弁護士が答えます！法律にまつわるあれこれ

連載 産婦人科の最前線を訪ねて・第2回

症例